椎名作品二次創作小説投稿広場


枠越え


投稿者名:YOSI
投稿日時:02/ 8/27

世界が音も立てずに崩れていく――――例えでは無く実際に崩れているのだ。
その世界の中心とも呼べる場所には青黒く細身のシルエットと、禍々しい雰囲気を持つ者がいた。
不気味な男だった。
手には血塗られた刃物の如き細く赤い爪が伸びており、その背には一対の死神の鎌を思わせる鋭利な刃の翼が生えている。

そして細身な体に対し細長い爪と巨大な翼が在るせいか、全体的にカマキリの様な印象が見受けられる。
「オゾム程度の魂では魔次元を保つ力が足りなかったか・・・・・・?」
崩壊していく世界―――男が言うには「魔次元」―――の中で呟いた。
その口調には微かだが、驚きと感嘆の響きが混じっている。
「まあいい、今は魔次元を崩壊させるに足る強き魂が集まった事を喜ぼう・・・・」
そこまで言った時、男の姿は崩壊していく世界に飲み込まれていった……




美神除霊事務所

「あ〜〜暇ね〜〜〜」
机に突っ伏しながらダレきった口調で美神は誰とも無しに呟いた。
本の整理をしながらそれを聞いていたおキヌは苦笑しつつも――自分に言ったかどうかは判らなかったが――それに答える。
「美神さん暇って・・・・下水道に出る「都市下水名物白いワニ」の除霊断ったばかりじゃないですか。」
「おキヌちゃん、あなた、たった三百万ぽっちの為に臭い下水道の中で、何時出るか分からない霊を待ってたいの?わたしはやーよ。」
机からソファーに移り、寝転がりながら本に目を向け、心底面倒くさそうに言う美神
「それにね、おキヌちゃん。なーんか私の霊感に引っかかってるのよ、これからとんでもないことが起こるって感じのね。と言うことはそれなりの報酬があるってことでしょ?」
本から目を外さず美神はおキヌに語った。
それを聞き、少し思い出すような素振りを見せた後、
「美神さん、何かピートさんの時も同じ様なこと言ってました――」
バタン
思い出したことをおキヌが口に・・・・し終わる前に、突然ドアが開きおキヌの言葉は遮られた。
呼び鈴も押さず突然、室内に入り言葉を遮ったのは小竜姫だった。
「美神さ――」
急いで何かを言おうとしていたが、
「来たーーーっ!!で、どんな仕事っ!?いえ、内容より先に報酬を教えて!!」
「ほ、ほんとに来た・・・・?」
狐につままれた様な顔で呆然とするおキヌとは対照的に、目を輝かせながら自分に迫ってくる美神に、先程のおキヌのように小竜姫も又、言葉を遮られた。
一方、美神はそんなことには構わずに、答えを聞くために小竜姫に迫っていく。

しかし、それに答えたのは美神の異様な雰囲気に引いている小竜姫・・・・ではなく、その後ろから出てきたヒャクメだった
ヒャクメが持ってきていた鞄を開けたのだ。
すると、鞄の中から鞄の容積をはるかに超えた量の金塊が溢れ出て、辺りを金塊の海にしていく。
それを見、更に異様な雰囲気をグングン倍増させながら、目を¥マークにしている美神

「よくこんなに金がありますねー」
そんなドロドロした空気は何処吹く風と言うように純粋な疑問を口にするおキヌ
「天界では金を生成する術がありますから。」
それに答える小竜姫・・・・・・・・迂闊にも美神に聞こえる範囲内で。
「・・・・・・ぜ・・・・い」
「え?何ですか?美神さん」
美神が何事か呟いたが聞き取れなかったので聞き返す小竜姫
いや、実は聞こえていたのかも知れない。
しかし脳がこの人物からこの言葉が発せられる筈が無い、と認識していたのだろう。
その言葉とは――
「この金塊、全部いらない。」
だった。

これを聞いた瞬間、古くからのつきあいの二人を除いた全員が身構えた。
「ヒャクメ!!」
神剣を抜刀し美神の方に構えつつヒャクメに声をかける小竜姫
「わかってるのねー!!」
答えながら全ての感覚器官を使い、目の前の美神の照合を始めるヒャクメ
「キサマッ!美神殿を何処にやった!!」
霊波刀を出し、今にも美神に飛びかかろうとするシロ
「一応、この世界での私の保護者なんだから、さっさと返しなさい。」
静かに言いながらも辺りに狐火を出し、油断無く身構えるタマモ
「あ・・・・あああああ」
その光景を見て、何やら「あ」を連発しながら顔面蒼白になっているおキヌ
「・・・・・・・・・・・・」
無言でその場から逃げようと、ドアの方へ移動している横島

そして当の美神はニッコリと笑みを浮かべ、キッパリハッキリサラリと言い放った。
「シロとタマモ、二ヶ月肉、油揚げ禁止、野菜とご飯で生活しなさい。
ヒャクメ、時間移動を制御できずに、終始人間に頼りっぱなしだった雑魚神族って言いふらしてあげる。
小竜姫様、修業場ぶっ壊して人間に直してもらったってサルにちくるから。
ついでにそこで逃げようとしてる馬鹿、三ヶ月間給料半分ね。」
この言葉が放たれた直後、その家では四人の女性の悲鳴と一人の男性の抗議の声が木霊し、更に数瞬後、抗議の声を発した人物と同じ人物が発したとは思えないほど悲痛な悲鳴が響いた。


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