複座型零戦


国立科学博物館にあるこの複座型零戦は、製造機数2機のうちの1機であり、 現存する唯一のものである。しかも、制式のものではなく、 ラバウルにて、破壊された8機の零戦の部品を流用して製造された。とりあえず、 その話をして行こう。


1. 複座型零戦が製造された経緯

海軍の南方作戦の一大基地であったラバウルには、ラバウル航空隊が駐留していたが、 昭和19年には、残機のほとんどを破壊され、"翼なき航空隊"になっていた。
そんなときに、ラバウルの技術者たちは破損した8機の零戦の部品を集め、 偵察用に2機の複座型零式戦闘機を作り上げた。


2. どうやって、帰国したか

国立科学博物館にある複座型零戦は、昭和47年8月、ニューブリテン島ラバウルの北方、 ランバード岬沖110kmの海底から発見された。
本機は引き上げ後に、オーストラリアで復元され、日大の石松教授たちの努力により、 わが国に帰還した。


3. 詳細

ラバウルで、急増されたもののため性能は不明である。 以下、私が撮影した写真を元に解説していきたい。といっても大したことはできないが。

右舷前方
零戦の右前方下部よりの写真。機体番号は53-122らしい。 翼をみると、補助翼が羽布張りでないように見える。

右舷
零戦の右前方を撮った写真。ここからはよく見えないが、 7.7mm機銃の溝があるのと、カウル下部のふくらみから、 かなり初期のタイプ(21型?)の零戦であろうと推測できる。しかし、 復元されたものであるから実際はどうか分からない。

尾輪と着艦フック
艦載用ではないはずなのに、着艦フックが見える。

前席
前部座席。後部座席の写真も撮ったには撮ったが、手すりが邪魔で見えなかった。 ちなみに、後部座席は機体に穴をあけただけのように見える。 前部座席はかなり正確なものであった。7.7mm機銃もついたままのようである。 7.7mm機銃ははじめてみた。


実は、使える写真がこれだけだったりする。 あと、気づいたのは、20mm機銃が初期のものであったこと。 どうやら昭和19年であってもラバウルには21型が存在していたようだ。 いや、もしかしたら、かなり前に破壊されたものなのかなあ。

というわけで、おしまい。再来年くらいにはもうちょっと増えるかもしれない。

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谷山 重亮(sat@kcn.ne.jp)