『映画 ひみつのアッコちゃん』:2012、日本

小学5年生で10歳のアッコは大人への憧れが強く、ママのメイク道具を勝手に学校へ持って行き、化粧をする。友達のモコと話していると、クラスメイトの大将や弟の少将、モコの弟のカン吉がバカにしてきた。アッコか無視して教室を出ようとすると、大将はサッカーボールを投げ付ける。それがランドセルに命中し、廊下に落ちたコンパクトが割れてしまう。その夜、鏡の墓を作ってベッドに入っていたアッコの前に、鏡の精が現れた。鏡の国から来たという彼は、アッコが鏡を大切にしてくれていたことに礼を述べる。そして壊れた鏡の代わりに、魔法のコンパクトを差し出した。それを使えば、何にでも変身できるという。
呪文を教えた鏡の精は、「絶対に内緒だよ。他の人に知られたら鏡の魔法は効かなくなってしまうからね」と告げ、姿を消した。本気にしなかったアッコだが、部屋に戻ってから、試しに呪文を唱えて「大人の私になおれ」と言ってみた。すると彼女は、大人の姿に変身した。大喜びの彼女は、フィギュアの選手、キャビン・アテンダントと、次々に憧れの姿へと変身する。しかしママがやって来る声がしたので、慌てて元の姿に戻った。
次の日、アッコはモコと遊園地に出掛ける。大将たちが乗り物のチケットを奪って逃亡したので、アッコは婦警に変身して取り戻した。アッコが転倒してコンパクトを落とすと、通り掛かった早瀬尚人という男が拾ってくれた。アッコは尚人と一緒に、観覧車に乗った。彼が27歳と聞き、「そんな大人なのに、どうしてこんな時間に遊園地にいるの」と尋ねる。尚人は「一日の最後に、ここの観覧車に乗るの、好きなんだ」と述べた。夕景を一緒に見て感動したアッコは、尚人に好意を抱いた。
翌日から塾の特訓コースが始まった。アッコは親戚として塾へ行き、「アッコは外国で暮らしている父親の元へ行ったので欠席します」と塾の職員に説明した。大人の姿で遊びに出掛けた彼女は、百貨店で行われている赤塚化粧品のコスメ・フェアに興味を示す。販売部員にメイクしてもらった彼女は、「大人って最高」と浮かれる。そこへ尚人が通り掛かったので、アッコは「あの時は」と驚いて声を掛ける。だが、アッコが大人の姿なので、尚人は分からない。慌ててアッコは「手違い」と誤魔化した。
尚人から化粧品の感想を訊かれたアッコは、「すっごく高い」「ケースが可愛くない」などと素直な意見を述べる。赤塚の企画開発室の室長待遇という役職にある尚人は、アッコをアルバイトとして本社へ連れて行き、企画会議を見学させる。彼は会社の実権を握る熱海専務に向かって、「新体制になってから企画開発室の提案する事業計画はこの会議で否決されてきたことですし、これから定例会議以外は欠席させてもらいますんで」と挑戦的に言い放つ。
尚人は「皆さんが役員である限り、この会社は潰れるだろうと思ってる」と告げ、アッコを連れて会議室を出て行く。熱海は役員たちに「経営を立て直すために他の企業から新しい手法を受け入れた方が早い」と述べ、増資の申し出を引き受けたゴールド興業の鬼頭会長を紹介する。増資の件は、次の株主総会に掛けられる予定だ。一方、アッコは尚人から、アルバイトの内容について「簡単な雑用と新しい製品のテスト」と性滅を受けた。彼の部下・青山マリが来たので、アッコは「大学生です」と咄嗟に告げた。
翌日からアッコは、塾に行くフリをしてアルバイトに赴く。彼女がコピー機の使い方も敬語の使い方も知らないので、社員の黒川朋美たちは呆れたり腹を立てたりする。尚人から新製品のフェイスパウダーのパッケージについて感想を求められたアッコは、「なんか普通。友達にも自慢できないし。買わなくてもいいかな」と述べた。どうすれば買いたくなるか問われた彼女は、「なんかキラキラしてて、お星様みたいな」と言う。しかし社員たちは面倒な作業の多さを理由に、全く乗って来なかった。
アッコは親しくなった守衛に、尚人のことを尋ねる。尚人が学生時代か研究してしたバイオ成分を基にして、赤塚の化粧品は大ヒットしていた。「尚人が何を考えているか知りたい」とアッコが口にすると、守衛は彼が本当に心の内を話せる相手を教えてくれる。それは前の社長である中村だった。アッコは中村に変身し、尚人に声を掛ける。中村は尚人のような若手社員の意見を積極的に取り入れていたが、熱海一派のクーデターによって子会社に飛ばされていた。
尚人は中村に、増資より新製品を開発することの重要性を熱く語る。アッコは「カッコイイ、見直しちゃった」と言い、あるアイデアを思い付く。彼女は中村として、小中学生の女の子や子供たちを尚人に紹介した。そういった子供たちに向けた化粧品シリーズの新企画を進めるためだ。しかし会社にやって来た子供たちは勝手に大事な製品やデータを勝手に触り、社員たちに多大な迷惑を掛けた。
アッコの「色んな色があるとワクワクする」という何気無い言葉で、尚人は中途半端に終わっていた研究を再開させようと考える。彼は気温や体温で色が変化するリップグロスの企画を徹夜で考え、熱海に提出した。しかし熱海は「こんな子供騙しのアイデアにリスクは犯せない」と却下し、それより残っている在庫を売ることを考えろと命じる。アッコは前田総理の夫人に変身し、食事会に出席したりマスコミの取材を受けたりして、赤塚の化粧品を宣伝した。
アッコは冬休みの課題をズルして完成させるが、担任のサトウ先生から「楽して作った物は頭の中に残らない。苦労して作った方が喜びも大きい」と優しく諌められる。だが、アッコには理解できなかった。一方、赤塚の株価が急上昇し、企画開発室を潰す狙いが外れたため、熱海は苛立っていた。そんな彼に、鬼頭は「ここからが勝負ですよ」と落ち着いて微笑する。ある週刊誌に、赤塚の化粧品が発がん性物質を含んでいるという記事が出た。もちろん根も葉もないデッチ上げだ。記事を読んだ尚人は、内部からのリークだと確信した。
尚人が怒っている様子を目撃したアッコは、自分が遅刻したことに腹を立てているのだと思い込んだ。叱られたくない彼女は、熱海に変身した。すると熱海の部下が声を掛け、鬼頭から電話が入っていることを知らせた。専務室で受話器を取ったアッコは、熱海と鬼頭が赤塚を乗っ取る計画で結託していることを知る。さらにアッコは、マリが専務室に入っていくのを目撃した。アッコから電話のことを聞いた尚人は、熱海が社長のポストと引き換えに会社を売る気だと気付く。
尚人は中村と会って事情を説明し、「事業提携を阻止しないと、赤塚は取り返しの付かないことになります。赤塚の伝統が無くなります」と語る。すると中村は穏やかな態度で、「無くなっても仕方が無いんじゃないかなあ。それはお客さんが判断することだ」と言う。アッコはマリが専務室から出て来るのを目撃し、彼女に変身して部屋に戻った。すると熱海と鬼頭は株主総会に向けた相談をしており、筆頭株主である大庭鶴子のことを話題にしていた。
鬼頭は手下たちに指示し、開発工場の作業を全てストップさせる。鬼頭の腹心は工場の職員たちに対し、「ゴールド興業が本格的に経営に参画した暁には、皆さんの8割がリストラの対象になります」と通告する。尚人が諦めの態度で弱々しく笑うと、アッコは平手打ちを浴びせて「どうして諦めるなんて言うの」と鋭く告げる。尚人が「諦めなきゃならない時だってあるんだ。資本の論理の前には、個人が出来ることなんて限界がある」と怒鳴ると、アッコは大声を上げて泣き出した。
アッコは「ママは、赤塚の化粧品はダサいけど質はいいって褒めてた。お化粧するめと、お肌もツルッて」と話し、鶴子に味方になってもらえばどうかと尚人に持ち掛ける。尚人は筆頭株主と会うことに難色を示すが、アッコが「私が行きます」と言うので同行した。尚人が説得を試みると、鶴子は「このままだと株券が紙切れになる」と業績を改善して株価を上げるよう求めた。アッコは無邪気な態度で、会社の味方になるよう鶴子に頼んだ。
尚人はアッコを退席させた後、鶴子の使っている化粧品を全て言い当てる。彼は「私が守りたいのは、その化粧品なんです。大事なのは会社が無くなるかどうかじゃない。お客様や社会から求められるかどうかなんです。もう一度チャンスを」と頭を下げるが、「そろそろ次のお客さんが来るの。お帰りになって」と冷たく告げられる。彼と入れ違いでやって来たのは、熱海と鬼頭一派だった。そして、その集団の中にはマリの姿もあった。鬼頭は手下に命じて尚人を痛め付けると、「大庭さんも他の株主も、こっちに付いてるんですよ。次はどうなっても知りませんよ」と脅しを掛けた。
定時株主総会の当日がやって来た。取締役5名の再任に関する審議に入った時、尚人は挙手し、新たな取締役5名を選任する修正動議を提出した。鬼頭は手下に命じ、尚人を会場からつまみ出させようとする。尚人と彼を指示する社員たちが鬼頭一派と揉み合う中、アッコは壇上に上がってマイクを握り、自分のことを語り出す。まるで経営と無関係なトンチンカンな内容なので全員が呆れるが、アッコは構わずに喋り続けた。
アッコは「会社には退屈な仕事や面倒な仕事もたくさんあって、でも大変に思っていたところも大事なところだったんだって分かったんです。だからきっと、熱海専務たちも本当は一杯いいところもあるんだと思います。でも暴力は絶対に悪いことだよ。とにかくみんな、自分の頭で大好きな化粧品のことを自由に考えてみましょう」などと述べた。すると尚人が「我々は目先のことに捉われすぎているんじゃないでしょうか。本当は小学生の時に習った、もっとシンプルな、元気に挨拶しよう、お互いに助け合おう、間違っていると分かったら正直に謝ろう、苦しくてもくじけるな、そういうことの中で再生のためのヒントがあるのかもしれない」と語った。
鬼頭は「子供じみた議論はたくさんだ」と言い放ち、その手下たちが怒声を上げて威嚇した。その時、鶴子が立ち上がり、彼女の権限で新たな取締役5名を選任する修正動議を提出する。彼女は「理想の無い企業に将来は無い。私は、より良い化粧品を作ることに前向きな人たちを指示します」と言う。採決の結果は反対が51パーセントで、鶴子の動議は否決される。そこへ守衛が来て、自分も株主なので投票に加えるよう要求した。しかも彼は、議決権の2パーセントに当たる株を保持していた。
守衛の投票がプラスされた結果、新たな取締役5名を選任する修正動議は可決される。アッコも直人も喜ぶが、それで全てが終わったわけではなかった。鬼頭には超大国の軍事研究組織がスポンサーとして付いており、尚人の研究中の技術を軍事利用しようと目論んでいた。しかし鬼頭の技術が手に入らなくなったため、軍事研究組織の指示を受けた鬼頭は工場の生産ラインを爆破しようとする…。

監督は川村泰祐、原作は赤塚不二夫「ひみつのアッコちゃん」(協力 フジオプロ)、脚本は山口雅俊&大森美香&福間正浩、脚本協力は中園ミホ、製作指揮は城朋子、製作は藤本鈴子&山口雅俊&秋元一孝&服部洋&堀義貴&弘中謙&阿佐美弘恭&平井文宏&北川直樹&池田純&都築伸一郎、エグゼクティブ・プロデューサーは奥田誠治、企画プロデュースは野間清恵&山口雅俊、プロデューサーは和田倉和利&福島聡司、撮影は唐沢悟、照明は石田健司、美術は岩城南海子、録音は小松将人、編集は森下博昭、視覚効果は松本肇、ライン・プロデューサーは宿崎恵造、音楽は遠藤浩二、音楽プロデューサーは平川智司。
主題歌:『わたしの願い事』 YUKI 作詞:YUKI 作曲:Agree2 編曲:YUKI&玉井健二&百田留衣。
出演は綾瀬はるか、岡田将生、谷原章介、吹石一恵、塚地武雅、大杉漣、香川照之、鹿賀丈史、もたいまさこ、吉田里琴、堀内敬子、肘井美佳、内田春菊、柿澤勇人、堀内まり菜、品川凛生、内田純、小泉諒河、大野百花、伊勢みはと、川原一馬、鈴木アキノフ、久下恵美、安座間美優、福田真夕、七海エリ、山中崇、日中泰景、南好洋、やべけんじ、阿部翔平、宗像大介、水戸ひねき、大橋沙代子、松下美優、三井善忠、堀田勝、貴山侑哉、大竹浩一、西海健二郎、井川哲也、植村喜八郎、阿部光一朗、龍坐、上松大輔、新森大地、山神佳誉、酒井勇樹、山口航太、恵有一、丸木みゆき、南波有沙、丸山優子、諷加、矢部裕貴子ら。


赤塚不二夫の少女漫画『ひみつのアッコちゃん』を基にした実写映画。
監督は『のだめカンタービレ 最終楽章 後編』の川村泰祐。
アッコを綾瀬はるか、尚人を岡田将生、熱海を谷原章介、マリを吹石一恵、守衛を塚地武雅、中村を大杉漣、鏡の精を香川照之、鬼頭を鹿賀丈史、ツルさんをもたいまさこ、10歳のアッコを吉田里琴、あつ子のママを堀内敬子、朋美を肘井美佳、総理夫人を内田春菊、サトウを柿澤勇人、モコを堀内まり菜、カン吉を品川凛生、大将を内田純、少将を小泉諒河が演じている。

「綾瀬はるかの主演で『ひみつのアッコちゃん』を実写映画化する」ということを聞いた時点で、ほぼ間違いなく失敗作になるだろうと思った。
少なくとも、広く知られているアニメ版とは大きくかけ離れた内容になるだろうと思った。
なぜなら、原作漫画やアニメ版のアッコちゃんは小学5年生だからだ。
綾瀬はるかが小学生を演じるという配役は有り得ないので、ヒロインの年齢設定は変更され、それに伴ってキャラクター設定も変更されるだろうと、そう思ったのだ。

そんな私の予想は、少しだけ違っていた。
アッコちゃんの年齢設定は小学生のままで、そのアッコちゃんが変身して大人になった姿を、綾瀬はるかが演じているのだ。
しかし、綾瀬はるかが主演なのだから、メインは「小学5年生」のアッコちゃんではなく、変身後の彼女ということになってしまう。
その時点で、やはり原作やアニメ版とは全く違うアプローチだ。
そもそもアニメ版のアッコちゃんは、「大人になりたい」という願望で変身するわけではない。人助けをするために変身するのだ。

変身する大将を「大人の姿」に限定するとしても、大人になったアッコちゃんがメインではなく、小学生のアッコちゃんがモコちゃんと大将といった仲間たちと触れ合い、小学生としての生活を送る様子がメインであるべきだ。
そして、小学生として生活する中で直面した問題を解決するために、大人の姿に変身するという形にすべきだ。
つまり、綾瀬はるかはトップ・ビリングでいいけど、実質的な主人公は吉田里琴であるべきなのだ。
しかし実際には、吉田里琴の出番が少ない。
モコちゃんや大将といった面々は、「原作の主要キャラクターだから、とりあえず出してみた」という程度の扱いになっている。

この映画の企画って、どういう形で進められたんだろうか。
最初に『ひみつのアッコちゃん』の実写映画化という企画が決定して、そこから綾瀬はるかを主演に起用するという案が出て来たんだろうか。それとも、最初から「綾瀬はるかの主演でアッコちゃん」という形で始まったんだろうか。
どうであれ、「綾瀬はるかの主演で『ひみつのアッコちゃん』を実写化する」という形になった時点で、完全にアウトでしょ。そんなの、どう考えても『ひみつのアッコちゃん』にならんよ。
それは例えば、「剛力彩芽の主演で『ベルサイユのばら』を実写映画化する」と言っているようなモンだぞ。
ミスキャストとか、そういうことじゃなくて、それ以前の問題だ。

っていうか、そもそも『ひみつのアッコちゃん』の実写映画化という時点で、興行的にどうなのかと疑問を抱いてしまうんだけどなあ。
今さら『ひみつのアッコちゃん』を実写化して、それを見たいと思う人って、そんなに多くないと思うんだけど。どういう人を観客層に考えてゴーサインが出た企画なんだろうか。
ひょっとすると、「この企画だと興行的に厳しいから、客の呼べる女優を起用しよう」ってことで、綾瀬はるかを使ったのかなあ。
ただ、そうだとしても「だったら、そんな企画は中止しろよ」って話だしね。

この映画って、どういう人に見てもらいたいと思って作られているのか、それも良く分からないんだよな。
まず、明らかに子供を意識しておらず、完全に大人向けの映画として作られている。原作漫画やアニメ版が少女向けだったことを考えると、その時点で違和感は否めない。
で、せめて「かつて少女だった大人の女性を主な観客層として意識し、ファンタジーの色が濃いロマンティック・コメディーとして作っているのかと思いきや、化粧品会社の乗っ取りを巡るドロドロした話がメインなのだ。
その中で、やたらと説教臭いメッセージを、やたらと説教臭い形で押し付けようとするんだよな。

アッコちゃんが様々な人に変身するというところで「綾瀬はるかのコスプレをお楽しみ下さい」という見せ方も出来たはずだが、彼女が女子大生に変身して化粧品会社のアルバイトをするというところで延々と話を進めてしまう。
なので、他の変身パターンは、そんなに見られない。
全く無いわけじゃないけど、あくまでも「化粧品のアルバイト」に関連しての変身だし。
あと、熱海や中村や総理婦人に変身しちゃうと、それは綾瀬はるかじゃなくて、谷原章介や大杉漣や内田春菊だし。

ようするに、これは『ひみつのアッコちゃん』の名前を借りているだけで、実質的には全く別の作品なんだよね。
ハッキリ言ってしまえば、トム・ハンクス主演作『ビッグ』のリメイク的な映画なのだ。
だけどね、『ビッグ』をやりたければ、正式なリメイクとして作るか、あるいはオリジナル作品として作るべきでしょ。
『ひみつのアッコちゃん』の実写化を謳っておいて、この内容はダメだわ。

(観賞日:2013年3月28日)


2012年度 HIHOはくさいアワード:7位

 

*ポンコツ映画愛護協会