ヘルレイザー外伝/キャンディマンvsピンヘッド』:2005、イギリス&アメリカ
Candyman vs. Pinhead

<スタッフ&キャスト>

監督…ジェームズ・ウォン
キャラクター原案…クライヴ・バーカー
脚本…ジェームズ・ウォン&
マット・グリーンバーグ
製作…ジェームズ・ウォン&クリストファー・フィッグ
製作総指揮…クライヴ・バーカー&シガージョン・サイヴァッツォン
音楽…
クリストファー・ヤング

キャロライン・バーンサイド…レベッカ・ゲイハート
キャンディマン…トニー・トッド
ピンヘッド…ダグ・ブラッドリー
マイケル・バーンサイド…リーランド・オーサー
アン・・・クリスティン・クローク


<ストーリー>

ブロンクスに住むキャロライン・バーンサイド(レベッカ・ゲイハート)は、血だらけになった夫の椅子を見つめていた。彼女の夫で都市伝説研究家のマイケル(リーランド・オーサー)は、失踪してしまったのだ。キャロラインは、妊娠中の身だった。
キャロラインには友人アン(
クリスティン・クローク)と一緒にいたという明確なアリバイがあり、刑事達も彼女が犯人だとは疑っていなかった。しかし血が付着したマイケルの仕事場に、色々と不審な点が多かった。刑事の質問にキャロラインは「マイケルは何者かに連れ去られてしまったのよ」と告げるが、犯人については答えなかった。

キャロラインは、最近になってマイケルの様子がおかしいことに気付いていた。マイケルは毎日のように悪夢にうなされ、何かに怯えるようになった。「自分は連れ去られるだろうが、決して私の持ち物に触れてはいけない」とマイケルは口にしていた。
キャロラインはマイケルが精神的に病んでいるのだと考えていたが、彼は姿を消してしまった。キャロラインはマイケルの書斎に行き、調べることにした。そして彼女は、マイケルが書いた、キャンディマンの伝説に関するレポートを見つけた。

マイケルは以前、「幾つかの研究を並行して進めているが、最も重視しているのはキャンディマンの伝説だ」と語っていた。キャンディマンとは、鏡の前で名前を5回唱えると現れると言われている殺人鬼だ。キャロラインは、マイケルのレポートを読んだ。
そこには、キャンディマンの生前の姿がダニエル・ロバターユという黒人奴隷で、農場主の娘と禁断の恋に落ちて虐殺されたことが書かれていた。その後、農場主の娘はダニエルの子供を出産したという。その農場主の娘の名前は、キャロラインだった。

キャロラインは、マイケルの失踪がキャンディマンに関係あるのではないかと考えた。彼女は鏡の前に行き、キャンディマンの名前を5回唱えたが、何も変化は無かった。だが、その夜遅く、キャロラインが悪夢に目覚めると、そこにキャンディマンが立っていた。
キャロラインは、「あなたがマイケルを連れ去ったのね。夫を返して」と告げ、殴り掛かろうとする。だが、軽くかわしたキャンディマンは、マイケル失踪への関与を否定した。そして、「私を呼び出したからには、生け贄となってもらう」と言って姿を消した。

翌朝、キャロラインは再びマイケルの書斎に行き、彼の日記を発見した。そこには、「とんでもない物を手に入れてしまった。しかし、もう元に戻ることは不可能だ。いずれ私は地獄の快楽の犠牲者となるだろう」と書かれていた。不意に、背後で小さな物音がした。キャロラインが振り向くと、模様の入った小さな箱が床に落ちていた。
その夜、キャロラインは悪夢にうなされる。顔面に無数の針が刺さった怪しげな男と仲間達によって、マイケルがズタズタに切り裂かれて死んでしまうのだ。キャロラインが悲鳴を上げて飛び起きると、枕元には昼間の箱が置かれていた。しかし、それは不可思議な出来事だった。キャロラインは箱を発見した後、書斎の棚に置いてきたのだから。

キャロラインは箱に関心を持ち、マイケルの研究資料を片っ端から調べた。すると、そこに“パズル・ボックス”についての記述があった。パズル・ボックスの謎を解いた者は、セノバイトと呼ばれる魔導師たちによって地獄の苦痛を与えられるという。
キャロラインは、パズル・ボックスを手に取って調べてみた。そこへキャンディマンが現れ、生け贄になるよう要求する。キャンディマンがキャロラインの手を掴んだ時、同時にパズル・ボックスにも触れた。その時、2人の手の中でパズル・ボックスが変形する。

書斎の床に、黒い点が出現した。それは渦を巻くように、あっという間に広がって行った。底の見えない巨大な穴は、キャロラインとキャンディマンを飲み込んでしまった。パズル・ボックスが解かれたことにより、魔界への門が開かれたのだ。
気が付くと、キャロラインは1人になっていた。暗闇の中で、彼女はマイケルの体が切り刻まれ、消失する幻影を見た。光が差し込み、彼女の前にセノバイトのピンヘッド(ダグ・ブラッドリー)と仲間達が現れた。キャロラインは、夫を殺したのが彼らだと確信した。

キャロラインは夫の仇討ちをしようとするが、逆にセノバイト達によって拷問機に拘束される。セノバイト達は、キャロラインに“究極の快楽”として拷問を行おうとする。そこにキャンディマンが現れ、自分の生け贄を返すようセノバイト達に要求する。
ピンヘッド達は当然、キャンディマンの要求を飲まなかった。キャロラインは、「あなたの生け贄になるから、こいつらを殺して」とキャンディマンに告げる。キャンディマンは、キャロラインを助けるためではなく自分の生け贄にするために奪還しようとする。

こうして、キャンディマンとセノバイト達との戦いが始まった。ピンヘッドは部下達にキャンディマンの相手を任せ、キャロラインを連れて姿を消した。キャンディマンはセノバイトだけでなく、予想だにしない魔界の動きにも反撃を余儀無くされる。
キャンディマンは混沌に満ちた魔界を巡りながら、立ちはだかるセノバイト達と戦う。一度はキャロラインを奪還したかに思えたが、それは偽者だった。キャンディマンは、セノバイトのジトー、ブランク、トランス、マックスを次々に倒して行く。

ついにキャンディマンは、ピンヘッドとの最終対決を迎えた。ピンヘッドはキャロライン拷問器具に拘束し、体をズタズタに引き裂こうとしているところだった。ピンヘッドは特殊な武器を使い、魔界の力で金縛り状態になったキャンディマンの体を突き刺した。キャンディマンの体は、その場に崩れ落ちて動かなくなった。
だが、その直後、キャンディマンの体から無数の蜂が飛び出し、ピンヘッドの視界を遮った。ピンヘッドの視界が開けた時、目の前にはキャンディマンが立っていた。キャンディマンは、右腕のフックでピンヘッドの体を突き刺した。無数の蜂が、ピンヘッドの体を取り囲んだ。ピンヘッドの体は失われ、蜂はキャンディマンのコートの中に消えた。

突然、門が出現した。それは、魔界から現世に戻る門だ。キャンディマンはキャロラインを抱えて、その門をくぐろうとした。だが、門の飾りが変形し、ピンヘッドになってキャンディマンに襲い掛かった。ピンヘッドとキャンディマンは、激しい戦いを繰り広げる。
地面に投げ出されたキャロラインは、門が少しずつ閉じていくのを目にした。キャロラインは這うようにして門をくぐり、魔界を脱出しようとする。それに気付いたキャンディマンだが、既に遅かった。現世に戻ったキャロラインの目前で門は閉まり、そして消えた。

それから3ヶ月後、キャロラインは赤ん坊を出産した。彼女は息子にマイケル・ジュニアと名付け、夫を失った痛手や3ヶ月前の出来事から立ち直ろうとしていた。キャロラインは自宅に戻るが、ちょっと目を離した隙にマイケル・ジュニアが姿を消してしまう。キャロラインが慌てて探すと、マイケル・ジュニアは鏡の前に座っていた。
マイケル・ジュニアは振り返るが、その顔がピンヘッドに変形する。驚くキャロラインの前で、赤ん坊は鏡に向かってキャンディマンの名前を5回唱えた。するとキャロラインの背後にキャンディマンが現れ、右腕のフックを振り上げるのだった。


<解説>

都市伝説の中に生き続ける恐怖の殺人者、キャンディマン。
地獄の快楽を与えるヘルレイザー・ワールドの統治者、ピンヘッド。
いずれも、ホラー小説界の鬼才クライヴ・バーカーが生み出した存在である。
ヘルレイザーも、キャンディマンも、いずれも映画になり、シリーズ化された。
互いのシリーズは、それぞれに確立した世界観を持っており、キャンディマンとピンヘッドという2つの強烈な個性が交わる可能性など皆無だと思われた。
しかし今、彼らはスクリーンの中で禁断の接触を果たす。
そして、悪夢の対決を繰り広げるのである。

この映画で最も注目すべきは、やはり独特の世界観だろう。
後半、キャンディマンとキャロラインが迷い込む魔界の風景は、醜悪でありながら美しいという、何とも異様でありながら魅力的なヴィジュアル・イメージになっている。
「見るドラッグ」と表現したくなるような、強烈なインパクトを持った世界である。

そして、魔界に登場するセノバイト達も、それぞれに強烈な個性を持っている。
両頬にフックが付いている巨漢、ジトー。
喉元から触手が生えている女、ブランク。
眼球が飛び出しているトランス。
チェーンを体中に巻き付けているマックス。
彼らは決して、無差別な殺人鬼ではない。
彼らは究極の快楽を与えるため、魔界の秩序に基づいて行動する。
ただ、それが普通の人間にとっては、究極の苦痛になるだけのことだ。

そんなセノバイト達と戦うキャンディマンも、単なる殺人鬼ではない。
そもそもキャンディマンは、復讐のために伝説の怪人となったのだ。
だから彼には、夫の仇討ちに燃えるキャロラインの気持ちが理解できるはずだ。
もちろん、自分の生け贄を奪い返すためという目的もあるが、それと同時に復讐を果たそうとする彼女の気持ちを汲み取ったからこそ、彼はセノバイト達と戦うのである。

悪夢のゲートは、もう開かれてしまった。
もはや我々に出来るのは、目を背けずに“究極の狂宴”を見守ることだけだ。

監督は、『ファイナル・デスティネーション』『ザ・ワン』のジェームズ・ウォン。彼と共に脚本を担当したのは、『ミミック』『ハロウィンH20』のジェームズ・ウォン&マット・グリーンバーグ。原作小説、そして『キャンディマン』と『ヘルレイザー』の各映画シリーズが持つ雰囲気を大切にしながらも、そこに独自の世界観を上手く持ち込んでいる。

製作は、ジェームズ・ウォンと、『ヴァーチャル・セクシュアリティ』『ドッグ・ソルジャー』のクリストファー・フィッグが担当。製作総指揮を務めたのは、原作者クライヴ・バーカーと、『隣人は静かに笑う』『薔薇の眠り』のシガージョン・サイヴァッツォン。そして音楽を、『バンディッツ』『ソードフィッシュ』のクリストファー・ヤングが担当している。

キャンディマンとピンヘッドの配役は、彼ら以外に考えられないだろう。もちろんキャンディマン役は、『ウィッシュマスター』『シャドウビルダー』のトニー・トッド。そしてピンヘッド役は、『ミディアン』『プロテウス』のダグ・ブラッドリーである。
それぞれの単体シリーズで、ずっと彼らがキャンディマンとピンヘッドを演じ続けていた。彼らがオファーを承諾しなければ、この作品の企画自体が消滅していただろう。しかし、トニー・トッドもダグ・ブラッドリーも、企画を聞いて即座にOKを出した。ファンだけでなく、彼らもキャンディマンとピンヘッドに対する強い思い入れがあるのだ。

ヒロインのキャロラインを演じるのは、『スクリーム2』『ルール』のレベッカ・ゲイハート。殺人鬼に怯えながらも仇討ちに燃えるという難役を、見事にこなしている。マイケルを演じるのは、『ボーン・コレクター』『デアデビル』のリーランド・オーサー。友人アンを、『デストラクション 制御不能』『13ウォーリアーズ』のクリスティン・クロークが演じている。


<蛇足>

『フレディVSジェイソン』とか、『エイリアンVSプレデター』とか、ホラー映画のキャラクターを対決させる映画が幾つか生まれているので、ここでもデッチ上げてみました。
あまり有名なキャラクターだと実際に映画化される可能性があるし、しかしマイナーすぎるキャラクターを扱うのもマズいだろうし、などと考えた結果、クライヴ・バーカー作品に登場する2つの有名キャラクターを戦わせてみることにした次第です。

粗筋だけ読むと、キャンディマンとセノバイト達のバトルが短いように思うでしょうが、自分の中では「映画開始から40分ほどで魔界のシーンになる」という計算です。粗筋の中では、魔界の様子や戦闘についての詳しい描写を省いているということです。
基本的に、ヴィジュアルとアクションで引っ張るタイプの作品というイメージで考えています。ストーリーが云々とか、ドラマが云々という映画ではなく、幻想的で退廃的な魔界の風景と、残酷描写の多い戦闘シーンを多く見せればOK、みたいな感じで。

邦題は『ヘルレイザー外伝』としていますが、どちかと言えばキャンディマンの世界観に近いような気がします。というのも、私は『ヘルレイザー』第1作を随分と昔に見た記憶はあるのですが、内容を全く覚えていないもので、世界観がイマイチ分からんのですわ。かといって、キャンディマンの世界観に詳しいわけでもないんですけど(ダメじゃん)。

ちなみにセノバイトの名前は、ホラー映画の登場人物から拝借しています。
ジトーは『マニアック』のフランク・ジトーから、ブランクは『サスペリア』のマダム・ブランクから、トランスは『シャイニング』のジャック・トランスから、マックスは『ヴィデオドローム』のマックス・レンからの拝借です。選んだ映画に、深い意味はありません。ただ幾つかのホラー映画の中から、名前としてイケそうなモノをチョイスしただけです。

ちなみに話のオチですが、キレイにまとめようと色々と考えたものの、結局は思い付かず、なんか意味深なのか適当なのか良く分からないモノになっちゃいました。


なお、この映画は存在自体がフィクションです。
こんな映画、実際にはありません。

 

*妄想映画大王