続・魔界転生』:1983、日本

<スタッフ&キャスト>

監督…深作欣二
脚本…深作欣二&高田宏治
製作…角川春樹
音楽…大野雄二

柳生十兵衛光巌…千葉真一
天草四郎時貞…沢田研二
風魔小太郎…丹波哲郎
荒木又右衛門…平幹二朗
石川五右衛門…中尾彬
ルイス…ジョージ・ケネディー
摩阿姫(お吉)…松坂慶子
幡随院長兵衛…中康治
前田一閑…寺田農
桂了和尚…
大滝秀治
与力…角川春樹


<ストーリー>

かつて徳川幕府への恨みを抱いて甦った天草四郎時貞(沢田研二)は、宮本武蔵や細川ガラシャ夫人を転生させて復讐計画を進めたが、柳生十兵衛(千葉真一)に妨害された。天草は十兵衛に斬られた首を抱え、「復讐を続ける」と告げて炎の中に消えた。
それから数年後、天草四郎は再び行動を開始した。彼は剣客・荒木又右衛門(平幹二郎)と大泥棒・石川五右衛門(中尾彬)を魔界から転生させた。今度こそ、幕府転覆を十兵衛に阻止されるわけにはいかない。天草は、「既に手は打ってある」とつぶやいた。

柳生十兵衛は養生のため、江戸にいる知り合いの医者・前田一閑(寺田農)の元に身を寄せていた。お吉(松坂慶子)という女が、十兵衛の世話を焼いていた。お吉が倒れていたところを十兵衛と一閑が助け、一閑の所で住まわせることにしたのだ。
十兵衛とお吉が町を歩いている途中、ささいなことで2人組の町奴に文句を付けられた。2人組がケンカを仕掛けようとしたところへ、町奴の頭領・幡随院長兵衛(中康治)が現れた。長兵衛は2人組を諌めて立ち去らせ、十兵衛とお吉に詫びを入れた。

天草四郎は新たな仲間として、忍者の風魔小太郎(丹波哲郎)を復活させた。江戸の町を偵察する小太郎を目撃した長兵衛は、不審に思って後を追う。小太郎は路地裏でお吉と接触し、「これを使って奴を殺すのだ」と告げて何かを渡し、姿を消した。
長兵衛はお吉に詰め寄るが、そこへ十兵衛が駆け付ける。怪しげな男から何かを受け取ったはずだと言う長兵衛だが、お吉は何も知らないと首を振る。十兵衛と長兵衛は戦うことになるが、お吉が割って入ったため、それぞれ引き上げることにした。一方、天草四郎は宣教師のルイス(ジョージ・ケネディー)を復活させていた。

お吉は、小太郎との会話を思い出していた。あの時、小太郎は「既に柳生十兵衛を信用させる段階は終わった。奴は、完全にお前を信じ切っている。これは天草四郎様から預かった毒薬だ。これを使って奴を殺すのだ」と告げたのだった。十兵衛を暗殺する役目を命じられているお吉だが、本気で彼に惹かれてしまったため、悩んでいた。
江戸では、奉行所の役人や旗本が殺される事件が次々に起きた。十兵衛は、それが魔界転生衆の仕業だと気付いた。天草は当初、十兵衛を殺した後で行動を開始する予定だった。しかし五右衛門が先走って旗本を殺したため、その動きを早めたのだった。

長兵衛は、江戸で起きている事件が人間の仕業ではないと確信していた。彼は幡随院へ行き、親しくしている桂了和尚(大滝秀治)と話した。桂了は、「“魔”が広がりつつある」と告げた。幡随院は、その“魔”を倒すための宝具が代々伝わる寺だった。
長兵衛が去った後、天源寺に潜入する一団の姿があった。五右衛門と、天草が用意した魔界の手下達だった。異変に気付いた長兵衛が寺に戻ると、ちょうど五右衛門の一味が宝具の入った箱を持って逃げるところだった。

長兵衛は五右衛門の一味を追い掛け、戦いとなった。そこへ十兵衛が現れ、長兵衛に加勢する。2人は手下達を倒すが、その間に五右衛門が箱を持って逃亡してしまった。十兵衛は説明を求める長兵衛に、ともかく幡随院へ行こうと告げた。
十兵衛と長兵衛が幡随院へ戻ると、一味に襲われた桂了が虫の息となっていた。桂了は、奪われた箱に宝具は入っておらず、掛け軸の裏に隠してあると言い残して息絶えた。掛け軸の裏には隠し扉があり、その中には刀があった。十兵衛は天草の野望を打ち砕くため、長兵衛は桂了の仇討ちのため、協力することにした。

その頃、お吉の元を又右衛門が訪れていた。又右衛門は「早く十兵衛を始末せねば、お前も天草四郎殿に殺されかねない」と静かに忠告し、立ち去った。お吉は、自分の過去を回想した。彼女の正体は、前田利家の娘・摩阿姫だった。
戻ってきた十兵衛に、お吉は毒を持った茶を用意した。だが、十兵衛が口を付ける直前、お吉は慌てて茶碗を叩き落とした。外で待っていた長兵衛は、物音で中に入って来た。お吉は十兵衛と長兵衛に、自らの正体を明かした。すると、天草の幻影が天井に浮かび上がり、「いずれ十兵衛だけでなく、お吉や長兵衛も殺す」と告げて消えた。

お吉は、天草がバテレン秘法の最終奥義を使うため、その準備を進めていることを語った。十兵衛と長兵衛は、お吉の案内で駿河の天呪山(てんじゅやま)へ向かった。そこでは、最終奥義に必要な“魅苦苦(みくく)の粉”が精製されているというのだ。
天呪山に足を踏み入れた十兵衛達は、魔界転生衆のアジトを発見する。そこには天草、又右衛門、ルイスの姿があった。既に彼らは、魅苦苦の粉を手に入れていた。天草は「今は相手をしている暇など無い」と言い残し、後を手下に任せて逃亡した。

十兵衛と長兵衛は又右衛門とルイスを倒すが、お吉が刃に倒れてしまう。お吉は「相模の鬼賀森(おにがもり)で解咀(げぞ)の花を見つけ、破堂島(はどうじま)の空魔殿で呪文を唱えることで最終奥義が完成する」と言い残し、息を引き取った。
十兵衛は空魔殿、長兵衛は鬼賀森と、2人は別々に行動することにした。空魔殿に乗り込んだ十兵衛の前に、風魔小太郎と手下達が現れる。一方、鬼賀森に入った長兵衛の前には、五右衛門と手下達が現れた。それぞれの場所で、戦いが始まった。

十兵衛は小太郎と手下達を倒し、空魔殿の奥へと急いだ。天草を見つけた十兵衛は、刀を向ける。一方、鬼賀森では長兵衛が五右衛門と手下達を倒していた。鬼賀森での出来事を察知した天草は、不完全な形ながらも最終奥義の呪文を唱えた。
天草はバテレン秘法最終奥義“斬火徒変化(きりひとへんげ)”によって、炎の魔物へと変身した。天草の圧倒的な力の前に、十兵衛は苦戦を余儀無くされる。だが、お吉の幻影が現れ、十兵衛に手を貸す。十兵衛は天草の触手に腹を貫かれながらも、刀を敵の額に突き刺した。十兵衛と天草は、相討ちで共に果てた。天草の姿は、溶けて消えた。

こうして、天草の野望は阻止された。
しかし、十兵衛の死体が転がる空魔殿に、消えたはずの天草の声が響いた。
「この世に人間がいる限り、復讐は終わらない」という声が。


<解説>

魔界転生−まかい・てんしょう。
1981年、山田風太郎の小説が、映画となって登場した。
奇想天外な設定、独特の世界観、豪華な配役、美しい美術や衣裳。
観客は、絶賛の言葉と盛大なる拍手を贈った。

人々の声に押されるように、続編の企画が進められた。
第1作の深作欣二監督が、引き続いてメガホンを執ることが早々に決まった。
『柳生一族の陰謀』『宇宙からのメッセージ』など多くの作品を手掛け、日本を代表する監督の1人である深作監督は、前作以上に気合いを入れて挑んだ。深作監督は『野性の証明』や『復活の日』の高田宏治と共に、脚本を書き上げた。
音楽には、『犬神家の一族』『人間の証明』『この子の七つのお祝に』など、これまでに何度も角川作品に携わっている大野雄二が起用された。
深作欣二も、製作を務める角川春樹も、「全ての面で前作を超えるクオリティーでなければ、続編を作る意味が無い」という意見で一致した。

出演者には、豪華な面々が集まった。
まず、前作から引き続いて柳生十兵衛を演じる千葉真一。
『新幹線大爆破』『空手バカ一代』『戦国自衛隊』など多くの映画で見事な活躍を見せ続けている彼は、現在の日本で最も熱いアクション俳優と言っていいだろう。
そして、こちらも前作から引き続いて天草四郎を演じる沢田研二。
“タイガースのジュリー”としての人気アイドルから完全に脱皮し、『太陽を盗んだ男』などの映画やドラマ出演で、俳優としての才能も豊かであることを証明している。

他に、風魔小太郎を演じるのは、『鬼龍院花子の生涯』や『誘拐報道』などで渋い存在感を見せた丹波哲郎。荒木又右衛門には、『智恵子抄』『徳川一族の崩壊』の平幹二朗。石川五右衛門役には、『本陣殺人事件』『悪霊島』の中尾彬。ハリウッドから招いたジョージ・ケネディーは、ルイス神父役で大物俳優の貫禄を見せる。
『青春の門』『道頓堀川』の松坂慶子は、摩阿姫(お吉)役で可憐な色気を振り撒いている。『戦国自衛隊』の中康治は、幡随院長兵衛として流麗な殺陣を披露している。さらに『真田幸村の謀略』『セーラー服と機関銃』の寺田農が前田一閑役で、『皇帝のいない八月』『影武者』の大滝秀治が桂了和尚で脇を固めている。


<蛇足>

角川映画を何か1つ取り上げてみたいという気持ちがあったので、『戦国自衛隊』と『魔界転生』を候補に考えて、後者を選んだ次第です。『魔界転生』は、エンディングが「続編を作る気なの?」と思わせるような形になっていましたので。

ただ、“ポンコツ映画愛護協会”でも書いたんですけど、『魔界転生』って時代設定の部分に問題を抱えていて、そこが続編を作る時に困るポイントなんですよね。
詳しいことは“ポンコツ〜”の『魔界転生』のページを読んでいただくと分かりますが、家光の時代のはずなのに、家綱を将軍として登場させているんですよ。

そういう事情があるため、この続編を考える時に「ハッキリとした年代を確定させられない」「将軍を登場させることが出来ない」という2つの問題があったんですよね。
というわけで、一応は前作を1945年の出来事だと解釈し、この続編は柳生十兵衛が死んだとされている1950年の設定にしてあります。
まあ、「だから何だ」と言われても、困ってしまうわけですが。


なお、この映画は存在自体がフィクションです。
こんな映画、実際にはありません。

 

*妄想映画大王