『ダーティハリー6』:1994、アメリカ
The executioner

<スタッフ&キャスト>

監督…ジョン・アーヴィン
キャラクター創作…ハリー・ジュリアン・フィンク&R・M・フィンク
原案…マイケル・フロスト・ベックナー&エリック・レッド
脚本…エリック・レッド
製作…クリント・イーストウッド
音楽…ラロ・シフリン

ハリー・キャラハン…クリント・イーストウッド
ダグラス・ベル…ダレン・E・バロウズ
ルイス・ワシントン…カートウッド・スミス
ラリー・メドウズ…ビリー・ドラゴ


<ストーリー>

サンフランシスコ市警殺人課の刑事ハリー・キャラハン(クリント・イーストウッド)は、その荒っぽい捜査方法から“ダーティ・ハリー”と呼ばれている。彼の相棒になった刑事は、ほとんどの人間が捜査の途中に犯罪者に殺されて殉職している。
ある日、殺人犯を発見したハリーは走って追い掛けるが、相手のスピードに付いていけずに息切れしてしまう。向こうで待ち構えていた刑事が犯人を逮捕するのを確認したハリーは、心臓を押さえてその場に座り込み、「そろそろ潮時かな」とつぶやいた。

ハリーは刑事課長のルイス・ワシントン(カートウッド・スミス)に会い、退職を考えていることを話す。ルイスはハリーを引き止めようとはせず、「それじゃあ、お前にとっては今度の男が最後の相棒になるわけだな」と告げる。
ハリーの相棒だった刑事は、最近の事件で殉職していた。そのため、新しい相棒として新人のダグラス・ベル(ダレン・E・バロウズ)がやって来た。ダグラスは、かつてハリーがコンビを組んでいたジョージ・ベルの息子だった。

ハリーは「よろしく頼むぜ」と言って握手を求めるが、ダグラスは手を出さずに冷たい態度を取る。ダグラスはハリーに、「上からの命令なのでコンビを組みましたが、あなたの捜査方法に協力する気は全くありません」と告げる。
ダグラスの父ジョージは、ハリーと共に捜査をしている途中で犯人に殺害されていた。そのため、ダグラスはハリーの勝手な行動が原因で父親が殺されたと考えていた。ダグラスにとって、ハリーは憎むべき存在だったのだ。

銀行の頭取を乗せた車が、豪邸から外へ出ようとしていた。しかし、外に出た直後に、向こうから来た車に当たりそうになってしまった。その車から出てきたラリー・メドウズ(ビリー・ドラゴ)は、いきなり頭取と運転手を射殺する。
事件現場に到着したハリーとダグラスは、頭取の車に残されていた紙を見せられる。そこには「明日の午前10時までに1000万ドルを用意しなければ、次の犠牲者が出る」と、サンフランシスコ市長に対して金を要求する言葉が書かれていた。

翌日の午前10時、市長の元へメドウズから電話が掛かってきた。金は用意できたかと尋ねるメドウズに、市長はもう少し待ってほしいと告げる。市長は時間稼ぎをするつもりだったのだが、メドウズは「では、次の犠牲者が出る」と言って電話を切る。
出版社の社長がタクシーに乗り込んだ。しかし、タクシーは指示した目的地とは全く違う方向へと走って行く。不審に思った社長が運転者に声を掛けると、人気の無い場所で車が止まる。そして運転していたメドウズは社長を射殺した。

メドウズはタクシーの中に、再び金を要求するメモを残した。今度も翌日の午前10時がタイムリミットとなっている。犯人が元過激派グループの一員だったラリー・メドウズであることは、警察もすぐに突き止めた。しかし、彼の居場所が分からない。
ハリーはメドウズと親しかった過激派グループの一員ヘインズを尋問する。彼は何も知らないと言うが、ハリーは殴り付けて証言を得ようとする。ダグラスはハリーを羽交い締めにして、「あなたのやっていることは捜査ではなく単なる暴力だ」と非難する。

市長は金を用意し、メドウズからの電話に答える。メドウズは取り引きの現場を指定し、市長が1人で金を持って来るよう指示する。市長は金を持って現場に向かうが、多くの刑事がメドウズに分からないように張り込んでいる。
1人の男が市長に近付き、いきなりアタッシュケースを奪って走り去ろうとする。慌てて刑事が男を取り押さえるが、彼はメドウズから指示された通りに動いただけだった。それは刑事が張り込んでいることを確かめるための、メドウズの罠だったのだ。
メドウズは市長に電話を掛け、「次の犠牲者が出る。今度は1人では済まない」と告げる。ハリーはヘインズに銃を突き付け、メドウズの居場所を尋ねる。ヘインズは自分は知らないが、ハーモンという男なら知っているかもしれないと話す。

ハリーはダグラスや同僚刑事と共にハーモンの元を訪れて彼を捕まえるが、一緒にいた男は逃げ出してしまう。ダグラスが男を追い詰め、銃を向けて出てくるよう告げる。男は柱に体の右半分が隠れて見えない状態だが、後ろを向いたままで手を挙げる。
男は怯えたような声で、「出て行くから撃たないでくれ」と口にする。その弱々しい声を聞いたダグラスは、「撃たないから出て来い」と告げて銃を持った手を下げる。次の瞬間、銃声がして男が崩れ落ちた。ダグラスが振り向くと、拳銃を構えたハリーが立っていた。

ダグラスは「殺す必要は無かった。これは私刑だ。あなたのやっていることは正義ではない。あなたは刑事としては不適格だ」とハリーを批判する。ハリーは「そうだろうよ」と言っただけで、その場からゆっくりと去って行く。
同僚の刑事が、うつ伏せに倒れている男を足で仰向けにする。彼に呼ばれて近付いたダグラスは、男が右手に銃を持っているのを目にする。同僚刑事は、「もしハリーが撃たなかったら、お前は殺されてたかもしれないな」と告げる。

ある豪邸で、結婚パーティーが行われている。花婿と花嫁を、親族や友人が笑顔で祝福している。花婿の父親がグラスを掲げた瞬間、彼は姿を現したメドウズに射殺される。続いて、パーティーの列席者がマシンガンで皆殺しにされる。
警察ではハーモンの尋問が行われていたが、彼はメドウズについて何も知らないと言うばかりだった。そこへハリーが現れ、ハーモンの眉間に拳銃を突き付けてメドウズの居場所を吐くよう強要する。ハーモンは「人権侵害だ。弁護士を呼べ」と騒ぐ。
ハーモンは「マスコミに全て喋ってやる。そしたら刑事をクビになるぞ」と言うが、ハリーは「元から辞めるつもりだ。どうせクビになるんだから、お前を殺してから辞めるか」などと答える。怯えたハーモンは、メドウズの居場所を知っていると口にする。

メドウズが廃墟となった工場を隠れ家にしているとハーモンから聞き出したハリーは、ダグラスや同僚刑事と共に現場へ向かう。ハリー達はメドウズを発見し、銃撃戦となる。ハリーとダグラスは、別の方向からメドウズを追い込むことにした。
ハリーは慎重に歩いていくが、その動きをメドウズが物陰から覗いていた。全く気付かないハリーにメドウズが銃を向け、引き金を引こうとする。その瞬間、銃声と共にメドウズが崩れ落ちた。ハリーが銃声のあった方向を見ると、ダグラスが立っていた。

ハリーはダグラスに近付き、「良くやった」と声を掛けて落ち着かせようとする。その時、彼らの背後でメドウズが体を起こし、銃を構えてハリー達を撃とうとする。しかし、素早く振り向いたハリーが弾丸を発射し、メドウズの眉間を撃ち抜いた。
ハリーはダグラスに、「一つだけ言っておく。俺は自分のやっていることが正義だなんて、一度だって思ったことは無いぜ」と告げる。そしてハリーは警察バッジを外し、炎の立ち上がっているドラム缶に、それを無造作に投げ込んだ。


<解説>

破天荒な暴れっぷりで幾多の犯罪者に鉄槌を下してきた刑事、ダーティハリー。彼が活躍するシリーズが、ついに完結を迎える。1971年から始まったシリーズが、6作目にして終幕となるのだ。それはまるで、1つの時代の終焉を意味するかのようにも思える。
大爆発も、カーチェイスも無い。銃撃戦はあるが、それほど激しいものではない。アクション映画ではあるが、アクションに頼るのではなく、人間ドラマを重視している。苦味を帯びた男の生き様が、観る者の心に強く刻み込まれることだろう。

法律と正義の狭間で戦い続けてきたハリー。今回、彼は自身の刑事としての生き方を問われることになる。彼のやってきたことは、本当に刑事として正しいことだったのか。それとも正義などではなく、単なる私刑であったのか。
その答えを、ハリーが言葉で明確に示すことは無い。いや、最初から明確に答えを出すことなど不可能なのかもしれない。だが、映画を見た人には、おそらくハリーのメッセージが伝わるはずだ。怒りと哀しみが同居する、痛烈なメッセージが。

ハリー・キャラハンを演じるのは、これが当たり役となったクリント・イーストウッド。マカロニ・ウェスタンのヒーローだったイーストウッドは、“ダーティハリーシリーズ”のヒットによって、ハリウッド映画界でも認められる存在となった。
ラリー・メドウズを演じるのは、『デルタフォース2』『サイボーグ2』のビリー・ドラゴ。そしてダグラス・ベル役は、彼の息子であるダレン・E・バロウズ。ルイス・ワシントンを、『ロボコップ』『フォートレス』のカートウッド・スミスが演じている。

監督は『戦争の犬たち』『ハンバーガー・ヒル』のジョン・アーヴィン。『山猫は眠らない』のマイケル・フロスト・ベックナーと『ヒッチャー』『ブルースチール』のエリック・レッドが原案を練り、エリック・レッドが脚本を書き上げた。
主演のクリント・イーストウッドが製作を担当している。彼は製作に携わっただけでなく、作品のシナリオや演出にもアイデアを出している。音楽を手掛けているのは、このシリーズを3作目以外は全て担当してきたラロ・シフリンである。


<蛇足>

というわけで、“ダーティハリー”シリーズの完結編をデッチ上げてみました。たぶん、実際にパート6が作られることは無いと踏んでますので。ちなみに個人的には、「このシリーズは1作目で終わっておけば良かったかも」などと思ったりもします。
どうでもいいことですけど、この作品のキャスティングを考えている段階で、TVドラマ『たどりつけばアラスカ』でエドを演じていたダレン・E・バロウズが、ビリー・ドラゴの息子だと知りました。そう言われてみると、確かに顔が似てますなあ。


なお、この映画は存在自体がフィクションです。
こんな映画、実際にはありません。

 

*妄想映画大王