『バトルランナーZ』:1989、アメリカ
The Super Running Man
<スタッフ&キャスト>
監督…ジョセフ・ジトー
脚本…ゲイル・モーガン・ヒックマン
製作…ティム・ジンネマン
製作総指揮…キース・バリッシュ
音楽…デヴィッド・マイケル・フランクベン・リチャーズ…アーノルド・シュワルツェネッガー
ジョージ・ワッツ…マイケル・ラーナー
ロジャー・カードス…ロディー・パイパー
アンバー・メンデス…マリア・コンチータ・アロンゾ
タイガー…ボロ・ヤン
バーバリアン…ヴァーノン・ウェルズ
ブラスター…アンディー・ロビンソン
サラマンダー…エリアス・コーティアス
<ストーリー>
2017年。アメリカ合衆国は警察国家と化し、あらゆる娯楽は国家の統制下に置かれた。マスコミも政府によって管理されることになった。テレビ局ICSでは法務省の認可を受けた殺人ゲームショー“ランニング・マン”を放送しており、この番組に民衆は熱狂していた。
市民の抹殺指令を拒否して逮捕された警察官のベン・リチャーズ(アーノルド・シュワルツェネッガー)は脱獄し、ミュージシャンのアンバー・メンデス(マリア・コンチータ・アロンゾ)を人質にして逃亡を図る。だが、“ランニング・マン”の視聴率上昇を狙う司会者デイモン・キリアンに捕まってしまう。リチャーズは脱獄仲間のラフリンやワイス、そして放送局の陰謀を知ってしまったアンバーと共に、強制的に番組に参加させられることになった。“ランニング・マン”は、「ランナー」と呼ばれる参加者が、「ストーカー」と呼ばれる戦士の追跡を受けながら4つのブロックを3時間以内に抜けるというゲームだ。
リチャーズは襲い掛かってくるストーカーを打ち倒し、次々にブロックを抜けていく。彼は地下に秘密基地を構えていたレジスタンスと接触し、協力を得ることになった。リチャーズは全てのストーカーを倒し、最後には司会者デイモン・キリアンを撃滅して番組を消滅に追い込んだのであった。そして時は過ぎ、今は2020年。政府の横暴に対する民衆の暴動は、次第に広がりつつあった。その先頭に立つのは、ロジャー・カードス(ロディー・パイパー)率いるレジスタンス組織“SKRB”だった。彼らは“ランニング・マン”を消滅に追い込んだリチャーズを、偉大なる英雄として信奉していた。
政府首脳は、レジスタンス対策に頭を悩ませていた。緊急会議では様々な意見が交わされ、メディア担当部長ジョージ・ワッツ(マイケル・ラーナー)が「彼らの活動のシンボルであるリチャーズを目に見える形で葬り去ることが、大きなダメージを与えることに繋がる」と発言する。テレビ局ICSでは“ランニング・マン”が終了した後、2019年になって新しい殺人ゲームショー“スーパー・ランニング・マン”の放映が始まっていた。開始当初は高い人気を誇っていた“スーパー・ランニング・マン”だが、最近は視聴率の低下が目立つようになっていた。
番組のプロデューサーでもあるワッツは、1周年記念のスペシャル版に、リチャーズを参加させようと考えていた。そうすれば、公然とリチャーズを抹殺することが可能だ。リチャーズを参加させることで視聴率も期待できる。ワッツはリチャーズの捜索を部下に命じた。リチャーズは恋人のアンバーと共に、ハワイで安穏とした生活を送っていた。彼はアメリカ本土で自分が信奉の対象になっていることなど、全く知らなかった。彼は政府打倒の意志で“ランニング・マン”を消滅させたわけではなく、今も政治への感心は全く無いのだ。
ハワイでは“ランニング・マン”が放送されていなかったため、リチャーズのことを知る人もいない。彼はアンバーと共同でリゾート施設の経営者となり、何の不自由も無く幸せに暮らしていた。リチャーズとアンバーは結婚することになり、式の日取りも決まった。そんな中、ワッツの部下の2人組がリチャーズに接触し、“スーパー・ランニング・マン”への出演を依頼する。2人組はゲームにクリアして得られる賞金に加えて、多額の報酬を出すと告げる。しかしリチャーズは本土に戻るつもりは無く、2人組を追い返す。
結婚式の当日、リチャーズは教会で花嫁の入場を待っていたが、アンバーは姿を現さない。あの2人組に連れ去られたのだ。リチャーズの元には、「アンバーを返して欲しければ“スーパー・ランニング・マン”に参加しろ」と書かれたメモが残された。アメリカ本土に上陸したリチャーズは、タクシーに乗ってICSへと向かう。だが、その途中で暴動を起こした民衆と警察隊の争いに巻き込まれてしまう。車を降りた運転手に案内されて、リチャーズは騒動を避けて路地裏へと入って行き、ある廃屋へと向かった。
その廃屋には、カードスが待っていた。タクシーの運転手はSKRBのメンバーだったのだ。カードスは自分達のレジスタンス組織について説明し、リチャーズを信奉していることを話す。彼はリチャーズに、先頭に立って自分達と共に戦って欲しいと頼む。リチャーズはカードスに、「自分には政府を倒そうという気持ちは無いし、“スーパー・ランニング・マン”に参加するためICSへ行かなければいけない」と告げる。するとカードスは、「メディア担当部長ワッツは、番組を使ってアンタを殺すつもりだ」と話す。
リチャーズはカードスに、アンバーが人質に取られていることを告げる。カードスはアンバー救出を手伝うと語るが、リチャーズは彼を完全には信用しなかった。そこでリチャーズは番組に参加し、その一方でカードスとSKRBの精鋭メンバーがアンバー救出作戦を展開することになった。リチャーズはICSの本社ビルでワッツに対面し、アンバーに会わせることをを要求する。しかしワッツはモニターに写るアンバーの姿を見せただけで、直接の面会を許さなかった。リチャーズは“スーパー・ランニング・マン”の撮影スタジオに連れて行かれる。
控え室に通されたリチャーズは、密かに仕込んでいた超小型通話機でカードスに連絡を取る。カードスはアンバーがICSのスタジオに監禁されている可能性が高いという情報を入手し、既に仲間と共に行動を開始していた。“スーパー・ランニング・マン”の生放送が始まった。基本的なルールは全て“ランニング・マン”と同じで、違うのはランナーがストーカーに追い掛けられるのではなく、「キャッチャー」と呼ばれる戦士が待ち伏せているということだ。
番組が始まった頃、スタジオの外にはSKRBを含む民衆が集まっていた。リチャーズを番組に出演させたことへの抗議行動として、SKRBの幹部が演説を行っている。そんな彼らの周囲を、武装した警官隊が取り囲んでいる。いよいよゲームが開始され、リチャーズは第1ブロックへと向かった。ある場所まで来た時、急に周囲に立っている幾つもの鉄柱から炎が噴き出した。そして、1人目のキャッチャーであるサラマンダー(エリアス・コーティアス)が姿を現した。
サラマンダーは火の付いた棒を両手に持ち、襲い掛かってくる。火炎地獄の中で、リチャーズは敵の攻撃を避けながらチャンスを狙う。サラマンダーの体勢が崩れたところを後ろから突き倒したリチャーズは、鉄柱を引き抜いて投げ付け、勝利した。スタジオに侵入していたカードス達は、関係者以外立ち入り禁止と書かれた扉を開けて中に入った。同じ頃、リチャーズは第2ブロックへ突入していた。そしてリチャーズは、周囲が全て電流網という場所に辿り着いた。網に触れば確実に感電死だ。
リチャーズの前に、2人目のキャッチャーであるブラスター(アンディー・ロビンソン)が現れた。ブラスターはチェーン付きの鉄球で襲ってくる。リチャーズはチェーンをつかんでブラスターを振り回し、そのまま電流網に叩き付けて感電死させる。カードス達は警備員を倒し、アンバーを見つけ出した。彼女にも武器を渡し、カードス達は急いで現場から立ち去った。同じ頃、リチャーズは第3ブロックへ入っていた。彼は手摺りの無い橋を渡り始めるが、眼下には巨大な針が幾つも突き出している。
橋の上で、リチャーズは3人目のキャッチャーであるバーバリアン(ヴァーノン・ウェルズ)と戦うことになった。バーバリアンは斧を振り回して襲ってくる。巧みに背後に回ったリチャーズは、バーバリアンを橋から突き落とし、巨大な針に串刺しにした。リチャーズは超小型通話機を通じて、カードスからアンバー救出の連絡を受け、第4ブロックの近くにワッツのいる幹部室があるはずだと知らされる。辺りを見回したリチャーズは、自分を見下ろしているワッツの姿に気付く。
ワッツはリチャーズが第4ブロックまで辿り着いたことにやや驚いていたものの、最後のキャッチャーが彼を始末するだろうと考えていた。そして、もしリチャーズが第4ブロックをクリアしたとしても、事故に見せ掛けて爆死させる準備は整っていた。リチャーズの前に、最後のキャッチャーであるタイガー(ボロ・ヤン)が現れた。タイガーは青竜刀を持って襲ってくる。リチャーズは頬を切られながらも、青竜刀を払い落とすことに成功した。すると、タイガーは今度は素手で殴り掛かってきた。
ラッシュを掛けてくるタイガーに、壁際に追い詰められるリチャーズ。しかしタイガーの大振りのパンチをかわし、体勢を入れ替えた。頭からのタックルでタイガーを壁に叩き付けたリチャーズは、タックルの連続で勝利を収めた。全てのキャッチャーを倒したリチャーズの前に、カードス達が現れた。カードスはリチャーズに、バズーカ砲を渡す。リチャーズはバズーカ砲を構え、幹部室に向けて撃ち込んだ。幹部室は部屋ごと落下し、中からワッツが這い出してきた。
カードスはリチャーズに、ワッツが第4ブロック出口に爆弾を仕掛けていたと話す。マシンガンを構えたリチャーズは、ワッツの足元に向けて発射する。銃撃を避けようとしたワッツは出口に向かってしまい、自分の仕掛けた爆弾で爆死した。「これで終わったな」と言うカードスだが、リチャーズは、「いや、まだ終わっていない」と答える。彼は「ワッツを倒しても、殺人ゲームが消滅するわけじゃない。政府のやり方が変わらなければ、同じことは繰り返されるだろう」と語る。
リチャーズはカードスに、「横暴を繰り返す政府を倒さなければ、俺は本当に平穏な生活を取り戻すことは出来ないだろう。そのために、お前達と一緒に戦う」と宣言する。リチャーズは、カードス達と共に政府打倒に立ち上がることを決意したのだった。
<解説>
ホラー小説の大家スティーヴン・キングがリチャード・バックマン名義で書いた小説を基にして、暴力の渦巻く近未来で行われるテレビの殺人ゲームショーを描いたバイオレンス・アクション映画があった。それが1987年の『バトルランナー』である。
それから2年後、『バトルランナー』がパワーアップして帰って来た。恐るべき殺人ゲームショー“ランニング・マン”は、暴力と狂気の増した“スーパー・ランニング・マン”へと姿を変えた。そしてベン・リチャーズは、新たな脅威に挑むことになる。前作に引き続き、主役のベン・リチャーズを演じるのはアーノルド・シュワルツェネッガー。今や押しも押されぬアクションスターとなった彼が、この作品でも余すところ無くマッチョな肉体と人間離れしたパワーを見せ付けてくれる。
『ダブルボーダー』や『カラーズ/天使の消えた街』のマリア・コンチータ・アロンゾも、前作に引き続いての登場となる。彼女が演じるアンバーは前作ではリチャーズと共に戦ったが、今回は捕らわれの身となって助けを求めることになる。リチャーズをサポートするロジャー・カードスを演じるのは、プロレスラーとして活躍しているロディー・パイパー。『ゼイリブ』では主演を務めている。ジョージ・ワッツを演じるのは、『バイブス/秘宝の謎』『エイトメン・アウト』のマイケル・ラーナーだ。
タイガーを演じるボロ・ヤンは、『燃えよドラゴン』や『ブラッド・スポーツ』の他、日本では『Gメン’75』の香港スペシャルでもお馴染みの顔だ。『マッドマックス2』『インナースペース』のヴァーノン・ウェルズが、バーバリアンを演じている。
ブラスターを演じているのは、『ダーティハリー』の犯人役で強烈な印象を残し、その後も『コブラ』などに出演しているアンディー・ロビンソン。サラマンダー役は、『恋しくて』『ブルーウォーターで乾杯』のエリアス・コーティアスである。監督は『地獄のヒーロー』や『パニッシャー』など、多くのアクション映画を手掛けてきたジョセフ・ジトー。『必殺マグナム』『バトルガンM−16』のゲイル・モーガン・ヒックマンが、バイオレンス・アクションの醍醐味を見せるシナリオを書き上げた。
製作を務めるのは、『ロング・ライダーズ』『ファンダンゴ』のティム・ジンネマン。製作総指揮は、『エンドレス・ラブ』『ナインハーフ』のキース・バリッシュ。そして音楽を担当するのは、『野獣捜査線』『刑事ニコ/法の死角』のデヴィッド・マイケル・フランクである。
<蛇足>
アーノルド・シュワルツェネッガー主演作の続編は『イレイザー2』というのを作ったわけですが、あの時は主演をドルフ・ラングレンに変更してしまいました。なので、シュワちゃん主演作品を扱うのは、これが初めてということになります。
シュワちゃん主演作品は扱いたいなあ、スティーヴン・キング原作映画も扱ってみたいなあ、という意識がある中で、両方の条件を満たす作品が『バトルランナー』。というわけで、私のバカ魂が刺激された結果、こんな続編が完成しましたとさ。ちなみに、『バトルランナー2』ではなく『バトルランナーZ』となっているのは、当時のTVアニメ『ドラゴンボールZ』から“Z”を拝借したから。原題を無視して流行を邦題に取り入れるというのは、日本では少なくないことでゲスな。
なお、この映画は存在自体がフィクションです。
こんな映画、実際にはありません。