『西部警察・劇場版』:2002、日本

<スタッフ&キャスト>

監督…大河原孝夫
脚本…柏原寛司
企画…小林正彦
製作…古賀正行
音楽…川崎真弘

大門圭介(西部警察署・捜査課長)…渡哲也
鳩村英次(西部警察署・部長刑事)…舘ひろし
鷹城靖治(西部警察署・捜査係長)…神田正輝
半田要太郎(西部警察署・刑事)…深江卓次
浅井琢磨(西部警察署・刑事)…徳重聡
永峰洋一(永峰政治経済研究所・所長)…清水鉱治
里山文雄(永峰政治経済研究所・副所長)…郷田ほづみ
大門明子(スナック・セブンのママ)…古手川裕子
中崎剛(西部警察署・刑事)…木村昇
三原直樹(西部警察署・刑事)…渡邉邦門
坂口吉弥(西部警察署・刑事)…宮下裕治
熊谷輝彦(西部警察署・刑事)…池田努
相場勇(西部警察署・刑事)…金児憲史
ウラン(スナック・セブンの店員)…ウラン


<ストーリー>

亜細亜銀行西部支店を、西部警察署捜査課長の大門圭介(渡哲也)、刑事の鳩村英次(舘ひろし)、鷹城靖治(神田正輝)、半田要太郎(深江卓次)、浅井琢磨(徳重聡)、中崎剛(木村昇)、三原直樹(渡邉邦門)、坂口吉弥(宮下裕治)、熊谷輝彦(池田努)、相場勇(金児憲史)らが包囲している。
銀行には、強盗グループが人質を取って立てこもっていた。全ての人質を解放した強盗グループだが、包囲した警官に向けて発砲してきた。西部署の面々は、強盗グループとの激しい銃撃戦に突入する。犯人の中には死傷者が出たが、西部署は事件を解決することができた。

逮捕された強盗グループは事情聴取に対して完全黙秘を貫き通し、名前さえも分からない状態だ。しかし、大門の妹・明子(古手川裕子)が営むスナック・セブンの店員で歌手のウラン(ウラン)が、偶然にも犯人の1人と高校時代に同級生だったことから、捜査はようやく進み始める。
城西中央病院に侵入した男が、屋上から銃の乱射を開始した。到着した警官が病院に向かおうとするが、格好の標的となるためうかつに近付けない。そんな中、ヘリコプターで現場上空に到着した鳩村刑事が、ライフルで犯人を狙撃して事件を解決する。

永峰政治経済研究所。所長の永峰洋一(清水鉱治)は副所長の里山文雄(郷田ほづみ)と共に、病院乱射事件のニュースをテレビで見ている。「なかなかやるじゃないか」とつぶやく永峰に、里山は「早速、次の作戦を実行せよと指示を出します」と話す。
ウランの知り合いだった銀行襲撃事件の犯人の1人は、東都大学の学生だった。さらに、犯人の中には東都大学の出身者がいた。その人物は、病院乱射事件の犯人と同じ時期に武蔵野刑務所に収容されていたことが分かった。捜査の中で、東都大学がキーワードとして浮かび上がってきた。

城西警備保障の現金輸送車が襲われた。金の入ったスーツケースを奪って車で逃走する犯人グループを、西部署の面々が追い掛ける。バイクに乗った半田刑事は細い路地を通って先回りし、犯人グループの車を路肩に衝突させて逮捕に貢献する。
永峰と里山は、ある大きな部屋に若者を集めていた。里山は若者達に、「一連の作戦は成功したとは言い難い。しかし、そのことで我々の信念が揺らぐようなことがあってはならない」と熱く訴える。永峰は「これからが本当の勝負だ」と語り、若者達は「よし」「やるぞ」と口々に叫ぶ。

同僚と共に東都大学に出向いた浅井刑事は、聞き込みをする自分達に気付いて不審な動きをする男を目撃する。話を聞こうとした浅井だが、男は慌てて逃げ出してしまう。男の落としたビラには、「民衆に危機を与えよ」という言葉と「日本再生会」という文字が書かれていた。
浅井は逃げる男を追い掛け、大学の構内を走り回る。男は中庭から校舎の中へ、そしてグラウンドへと逃げ続ける。ナイフを持ち出した男と格闘になった浅井は、もみ合いになって男と共に2階からプールへと落下する。ずぶ濡れになりながらも、浅井は男を逮捕した。

現金輸送車襲撃事件の犯人グループも、浅井が逮捕した男も、全員が完全黙秘を貫いた。そんな中、交番の爆破事件が連続して発生した。同じタイプの時限爆弾によって起こされた事件だった。浅井が逮捕した男の持っていたビラには、事件の予告とも思える記述があった。
鷹城刑事は自分の覆面パトカーに、事件爆弾がセットされているのを発見する。爆弾処理班を呼んでも、今からでは間に合いそうに無い。鷹城は車に乗り込み、人気の無い場所へと猛スピードで走る。鷹城は崖に向かって車を走らせ、落下の直前に飛び降りる。車は崖下へ転落して爆発した。

捜査が進む中で、西部署の面々は事件と永峰政治経済研究所の関係を調べ始める。やがて刑事達は、元衆議院議員で国防省出身の永峰が、日本再生会という組織を作っていることを突き止める。会員の大半は、永峰の母校である東都大学の学生とOBだった。
日本再生会は、ぬるま湯に浸かって危機感が無い日本人を目覚めさせようとする結社だ。永峰は民衆を目覚めさせるには本当の危機的状況を生み出すしかないと考え、犯罪を実行していたのだ。しかし、西部警察署の活躍は、永峰にとって予想外の事態であり、計画の障害であった。

スナック・セブンで大門が独りで飲んでいると、そこへ里山が現れる。里山は大門に、「我々には民衆を目覚めさせる必要がある。理想を実現するために、あなた達は邪魔だ」と語る。大門は「お前達の理想は、民衆の理想ではない」と告げるが、里山は「革命の信念は、いずれ理解される」と答える。すると大門は、「お前達のやってることは革命ではなく、テロって言うんだ」と冷静に告げる。
里山は大門に「あなたには死んでもらう必要がある」と告げ、拳銃を取り出す。大門は明子とウランを店の奥に下がらせ、「永峰の指示か?」と里山に尋ねる。里山は「自分の判断だ」と告げ、拳銃を大門に向ける。しかし大門は持っていたグラスを投げ付け、里山がひるんだ隙に拳銃を取り出す。銃声が響いた後、頬に傷を負った大門が倒れ込んだ里山を見下ろしていた。

西部署の面々は永峰政治経済研究所に向かうが、既にもぬけの殻だった。捜査の結果、日本再生会のアジトが芝浦の廃工場だということが判明する。廃工場に向かった刑事達は、そこに潜んでいた日本再生会のメンバーを発見し、激しい銃撃戦が開始される。
銃撃戦の末、西部署の刑事達は、そこにいた日本再生会のメンバーを一網打尽にした。だが、そこに永峰の姿は無かった。捕まえた1人の男は刑事に対し、「我々の計画は終わらない」と不敵な言葉を漏らす。そして廃工場からは、都庁を標的としたテロの計画書が発見される。

永峰は日本再生会のメンバーと共に武装した大型トラックに乗り込み、都内を走行していた。改造して装甲を強化したトラックには、爆弾が積み込まれている。彼らが目指すのは、東京都の都庁だ。彼らは爆弾を積んだ大型トラックを都庁に衝突させ、爆破するという計画を実行しようとしていた。
西部署の面々は道路を封鎖して車両の通行をストップし、トラックを止めようとする。だが、トラックの荷台に乗り込んでいる連中や、前後に付いた護衛の車に乗った日本再生会のメンバーが激しい銃撃を浴びせてくる。しかも、トラックは装甲が頑丈で拳銃やライフルでは全く歯が立たない。

西部署の面々はトラックの運転席を狙おうとするが、窓が防弾ガラスになっていた。タイヤを狙おうとしても、そのタイヤを隠すように装甲によってカバーされている。だが、刑事達はトラックの斜め後ろからタイヤを狙って銃撃が可能な、わずかな隙間があることを発見する。
しかし、タイヤを撃ってトラックが横転すれば、爆弾が爆発する危険性も考えられる。そうなれば、多くの都民が巻き添えになってしまう。「爆弾さえ無ければ」という浅井の言葉を聞いて、鳩村は爆弾をクレーンで吊り上げてからトラックのタイヤを撃つという作戦を思い付く。

鳩村の指示を受けた鷹城は、クレーンを装着したヘリコプターに乗り込んで上空を飛行する。他の刑事達は、車やバイクで走行しながら、前後の護衛車とトラックの荷台にいる面々への攻撃を開始する。激しい撃ち合いで負傷する者もいるが、護衛車の面々の排除を完了させる。
都庁までの距離が次第に少なくなってくる中、荷台の面々の排除も終了する。半田はトラックのサイドミラーを破壊し、後ろの様子を見られないようにする。そして他の刑事達がトラックの運転席への銃撃で牽制する中、浅井がジャンプして荷台に乗り込むことに成功する。

鷹城の乗ったヘリコプターがトラックに接近し、浅井はクレーンをキャッチしようとする。だが、トラックもヘリコプターも動くために、なかなか上手くキャッチできない。もはや、都庁はすぐそこまで迫って来ている。ようやくクレーンをキャッチした浅井は、爆弾をクレーンに装着し、合図を送る。
ヘリコプターが高度を上げると共に、半田が浅井にトラックから飛び降りるよう指示を送る。浅井が荷台から飛び降りた次の瞬間、鳩村がトラックのタイヤに銃弾を命中させる。バランスを失って横転したトラックは猛スピードで道路を滑り、都庁の目の前まで来て停止した。

横になって停止したトラックの中から、ドアを蹴破って永峰が姿を現した。負傷した永峰はトラックを降りて、少しの間、体をフラフラさせながら立ち尽くす。だが、急に大声で叫んだかと思うと、都庁に向かって走りながら懐から拳銃を取り出した。しかし次の瞬間、都庁の方向から銃声が響き、永峰は崩れ落ちた。そして、都庁の中から銃を構えた大門が姿を現した。
翌日、西部警察署では、半田と浅井が昨日の事件を報じた新聞に目を通していた。半田に活躍を冷やかされ、照れる浅井。鷹城が浅井を誉めて、鳩村が調子に乗るなと釘を刺す。そんな刑事達の様子を、大門が見守っている。そこへ事件発生の連絡が入り、西部署の面々は出動していくのであった。


<解説>

最初の激しい銃撃戦が終わり、タイトルの文字がスクリーンに映し出される。そして聞こえてくるブラスの咆哮は、あの懐かしい響きである。そう、ついに石原プロが生み出した伝説のアクションドラマ『西部警察』が甦ったのだ。それも、ブラウン管ではなく、スクリーンの中で。

長い間、『西部警察』の復活は大勢の人々が期待しながら、なかなか実現しなかった。それは、何よりも金銭面での問題が大きかった。豪華で派手なアクションを見せるためには、かなりの製作費が必要となる。それにロケーションのために許可を取る難しさもあり、復活は不可能だという声もあった。
しかし、数々の困難を乗り越えて、『西部警察』は甦った。それは何よりも、「もう一度『西部警察』を!」という思いを抱いた人々の、強い情熱が実現させた奇跡である。その情熱が、邦画としては驚異的なダイナミズムと迫力を持った、スーパー・アクション・ムービーを生み出したのである。

この映画は、石原プロが全精力を注ぎ込んだ作品である。TVシリーズを経験している渡哲也と舘ひろしが当時の役名で出演し、神田正輝、深江卓次、さらに徳重聡を始めとする“平成の石原裕次郎を探せ!”オーディションで選ばれたルーキー達も、西部署の刑事として出演する。スナックの店員役で出演し、挿入歌も披露するウランも含めて、石原プロの面々が勢揃いしているのだ。
そんな彼らに立ちはだかる永峰と里山を、様々な作品でバイプレイヤーとして存在感を発揮している清水鉱治と郷田ほづみが演じている。また、TVシリーズで大門の妹・明子を演じていた古手川裕子が同じ役で友情出演しているのは、ファンにとって嬉しいキャスティングだ。


<蛇足>

以前に随想録で予告していた通り、1月頃から書き始めていた『西部警察・劇場版』が、ようやく完成しました。徳重聡さんが映画やドラマでデヴューする前に書き上げてしまおうと思っていたので、とりあえず間に合って良かったかな、と。しかし、そろそろデヴューさせてあげましょうよ。

この作品は、構成をかなりキッチリと計算して書いてます。10分に一度は、必ずアクションの見せ場を作ってあります。しかも、アクションも様々なバリエーションのモノを入れてあります。エンドロールも含めて、合計が約115分の作品に仕上がる、という時間計算をしてあります。
冒頭、強盗グループとの銃撃戦が約15分。それが終わるとテーマ曲が流れ、オープニング・タイトルが入る。そこで刑事が1人ずつ映し出され、名前のテロップが出る。病院での犯人狙撃10分。現金輸送車の追跡10分。大学での犯人追跡10分。爆弾を積んだ車の処理10分。1対1の対決10分。廃工場でのバトル10分。クライマックスのアクション30分、エンドロールが5分という次第です。

ただし、犯人のキャラ設定や動機が弱いという欠点があります。まあ、その辺りは派手なアクションと勢いで誤魔化せば大丈夫かな、と思ったりして。というか、どうせ実現するわけじゃないですし。何しろ単なる妄想ですから。でも、実現して欲しいなあ。ただ、このスタッフだとイヤかもしんない。


なお、この映画は存在自体がフィクションです。
こんな映画、実際にはありません。

 

*妄想映画大王