クエスト:ジ・アルティメット・ファイト』:2001、アメリカ&日本
The Quest :Way Of The Ultimate Fighter

<スタッフ&キャスト>

監督…ポール・マイケル・グレイザー
原案…ジャン=クロード・ヴァン・ダム
脚本…スティーヴン・E・デ・スーザ
製作…ロジャー・バーンバウム&ジャン=クロード・ヴァン・ダム
製作総指揮…ピーター・マクドナルド
音楽…ベイジル・ポールドゥリス

ケヴィン・アームストロング・・・ジャン=クロード・ヴァン・ダム
レオ・ワイザー・・・ドナルド・サザーランド
ジョアンナ・モートン・・・アリッサ・ミラノ
ジミー・ライ・・・ユン・ピョウ
セルゲイ・ブート・・・ヴォルク・ハン
アルコ・ヘルマンス・・・セーム・シュルト
ポール・クレメント・・・マイク・ベルナルド
サンダーボルト・マーフィー・・・スコット・ノートン
クラウディオ・ペレイラ・・・カルロス・ニュートン
タナベ・アキラ・・・グレート草津
スペル・ヴィエント・・・フライ・トルメンタJr.


<ストーリー>

ケヴィン・アームストロング(ジャン=クロード・ヴァン・ダム)は数々の大会で優勝し、自ら道場も開いているマーシャルアーツの達人。道場の経営には、ジョアンナ・モートン(アリッサ・ミラノ)が協力してくれている。今日もケヴィンは、弟子に技術を教えている。
そんな中、道場に2人組の男達が姿を現した。道場破りかとケヴィンの教え子達が騒ぎ出すが、その男達はケヴィンとジョアンナに近付き、1枚の紙を差し出した。ケヴィンが紙を受け取って書かれている内容を見てみると、それは格闘技大会への招待状だった。

その大会の名称は“クエスト”。それは世界各国から様々な格闘技の選手16人が集められて戦うという、異種格闘技トーナメントらしい。ケヴィンはアメリカ代表として、そしてマーシャルアーツの代表として、出場選手の1人に選ばれたのだった。
それは優勝すれば賞金1000万ドルが手に入る大会だが、優勝者以外に賞金は与えられない。出場したことに対する報酬もゼロだ。招待状に書かれていた主催者レオ・ワイザー(ドナルド・サザーランド)の名前を見て、ケヴィンとジョアンナは驚く。2人はその名前に聞き覚えがあった。

ケヴィンは幼い頃に、両親を交通事故で亡くした。そんな彼を引き取って育ててくれたのは、ジョアンナの父親フランクだった。フランクはケヴィンとジョアンナを血の繋がりの有無で区別せず、だからケヴィンとジョアンナは仲の良い兄妹のように育った。
フランクは新薬の開発を進めており、その共同研究者がワイザーだった。しかし利用目的や開発の方針の食い違いで、2人は対立するようになった。ワイザーはフランクを裏切って罠に陥れ、フランクは名誉も財産も全て失った。フランクは失意の内に病に倒れ、そして他界したのだった。

大会への参加を決めたケヴィンに、ジョアンナは同行を申し出る。一度は断ったケヴィンだが、ジョアンナが執拗に食い下がったために連れていくことにした。2人が招待状に書かれた場所に向かうと、そこには巨大なドーム型の建築物があった。
中に入った2人は、待っていた妖しげな女性に案内されて大きな部屋へと通された。そこにはスタッフや出場選手らしき人々が集まっていた。入口付近でケヴィンが立ち止まっていると、後から入ってきた男とぶつかってしまった。中国人らしきその男は、どうやら出場選手のようだ。

しばらくすると、部屋の向こう側の一段高くなった場所にワイザーが姿を現した。ワイザーは選手達に挨拶し、健闘を祈る言葉を掛けて立ち去った。レオの顔を見たジョアンナは、思わず拳を握り締めていた。ケヴィンはジョアンナの様子に気付いたが、彼自身は表情1つ変えなかった。
部屋を出たレオは、近寄ってきた助手に話し掛けていた。「あいつの調子はどうだ?」とレオが尋ねると、助手は「パーフェクトな状態にあります」と答える。レオは微笑んでうなずき、「上手くいくかどうかは、全てあいつ次第だからな。慎重に扱ってくれ」と助手に告げる。

明日の1回戦に備えて、ケヴィンとジョアンナは用意された部屋に入った。その日の夜、ケヴィンは隣のジョアンナが入っている部屋の扉が開く音に気付く。ケヴィンは起き上がり、廊下に出てジョアンナを探す。すると、ジョアンナは周囲の様子を伺いながら廊下を歩いていた。
ケヴィンがジョアンナを捕まえると、彼女は「ワイザーに自分達のことを思い出させる」と言う。ケヴィンは自分が優勝するまでは行動は控えて欲しいと言って、ジョアンナを説得する。部屋に戻る途中、ケヴィンとジョアンナは昼間にぶつかった男が庭で不審な動きをしているのを目撃する。

翌日、ケヴィンとジョアンナは、地下に作られた闘技場へと案内された。そして8角形のリングで、トーナメントの1回戦が開始された。ケヴィンの相手はメキシコから来たルチャ・リブレの覆面レスラー、スペル・ヴィエント(フライ・トルメンタJr.)だ。
“風仮面”と呼ばれるだけあって、ヴィエントは素早い動きでケヴィンを翻弄する。ルチャ特有のトリッキーな技の数々に、ケヴィンは戸惑う。しかし、余裕を持ったヴィエントがフライング・ボディアタックに来たところを横蹴りで迎撃し、連続キックから最後は上段回し蹴りでノックアウトした。

試合を終えたケヴィンは、残りの試合を観戦する。
まずはオランダのキックボクシング選手アルコ・ヘルマンス(セーム・シュルト)が、韓国のテコンドー選手を破った。続いてカナダのプロレスラー、サンダーボルト・マーフィー(スコット・ノートン)がフィリピンのムエタイ選手に勝利した。

日本の空手家タナベ・アキラ(グレート草津)は、イギリスの選手に勝った。南アフリカのボクサー、ポール・クレメント(マイク・ベルナルド)はドイツのキャッチの選手に勝利した。ブラジルの柔術家クラウディオ・ペレイラ(カルロス・ニュートン)は、グルジアの柔道選手を絞め落とした。

中国のジミー・ライ(ユン・ピョウ)は、前日の夜にケヴィンが不審な様子を目撃した男だ。カンフーを使う彼は、インド代表の選手に勝利した。
1回戦最後の試合では、ロシアのセルゲイ・ブート(ヴォルク・ハン)がコマンドサンボの特殊な関節技で、オーストラリアの選手の骨を折って勝利した。

その日の夜、ケヴィンは再びジミーの不審な行動を目撃し、後を追う。すると、ジミーは闘技場の裏側に向かって歩いていく。尾行の途中で物音を立ててしまい、ケヴィンはジミーに気付かれる。警備員が向こうから来るのが分かったため、ケヴィンとジミーは慌てて立ち去る。
選手の宿泊施設まで戻ってきたケヴィンとジミーに、部屋から出てきたジョアンナが声を掛ける。とりあえずケヴィンは彼女の部屋にジミーを連れ込んだ。ケヴィンがジミーに不審な動きのことを問うが、彼は君には関係の無いことだと言って説明を拒否する。

2人のやり取りを聞いていたジョアンナが、「あなたもワイザーに恨みを抱いているの?」とジミーに尋ねる。どういう意味かと尋ねるジミーに、ジョアンナは過去の経緯を話す。それを聞いたジミーは、「君達は信用してもいいかもしれない」と言い、自分が潜入捜査官だということを明かす。
彼はワイザーが新しいドラッグを開発し、中国マフィアと手を組んで密売しようとしているという情報を得ていた。その新しいドラッグは、服用した人間の脅威的な運動能力を引き出す代わりに、通常よりかなり早いスピードで老化現象を引き起こすらしい。

つまり、そのドラッグを使えば、戦争やテロで活躍する優れた戦士を作り出すことが出来るのだ。ただし、老化が早いために戦士は使い捨てのように扱いとなる。ジミーによれば、そのドラッグの絶大な効果を実証するため、ワイザーは今大会を開いたというのだ。
ワイザーは今回のトーナメントに中国マフィアのボスを招待し、実際にドラッグを服用させた戦士の能力を見せることで、商談を成立させようと考えているらしい。そして、そのドラッグを与えられた戦士が、出場選手の中にいるという。

翌日、トーナメントの準々決勝が行われた。ケヴィンの相手は、カナダの巨漢プロレスラー、サンダーボルト・マーフィーだ。相手のパワーと巨体に苦しめられるケヴィン。軽々と持ち上げられ、投げ飛ばされる。高く抱え上げられ、マットに叩き付けられる。
ベアハッグで絞め付けられたケヴィンは、相手のこめかみにチョップを入れて脱出。しゃがみ込むような形で、相手の足に水面蹴りを食らわす。相手が膝を付いたところへ、ケヴィンが勢いを付けて飛び込むようなキックを入れる。これでケヴィンの勝利が決まった。

続いては、オランダのキックボクシング選手アルコ・ヘルマンスと日本の空手家タナベ・アキラの戦い。同じ打撃系の選手ではあるが、2メートルを超える身長のヘルマンスがリーチの長さを生かして圧倒する。最後はボディへのパンチでタナベをノックアウトした。
ジミーの相手は、南アフリカのポール・クレメント。ヘビー級の体格を持つ相手のパンチをステップでかわしていたジミーだが、ワイザーの手下が次に登場するセルゲイ・ブートに近付いて怪しい動きをしている様子に気付く。それに気を取られて隙を見せたジミーは、パンチを食らって負けてしまった。

ジミーはスタッフに肩を貸してもらって退場した。そして、リングの上にはセルゲイ・ブートが登場した。そのブートの相手は、ブラジルの柔術家クラウディオ・ペレイラだ。ペレイラは素早い動きでブートにタックルを入れて倒し、続いて寝技へと持ち込んだ。
ペレイラがブートの腕を取って逆関節を極め、完全に勝利したかのように思えたが、ブートは巧みな動きで取られた腕を抜いてしまった。次にペレイラが足を取ろうとした時、ブートは相手の首と足を取った。そして弓矢のようにペレイラの背中を逆に曲げる形にして、首を絞めて失神KOした。

ケヴィンとジョアンナが医務室に行くと、ジミーはベッドの上に座って休んでいた。ケヴィンとジョアンナが近付くと、彼は「奴だ。戦士はセルゲイ・ブートだ」と告げる。
ケヴィンは「どんな相手だろうと、俺は倒してみせる。奴と戦うためにも、必ず決勝まで行く」と言う。

準決勝が開始された。ケヴィンの相手はオランダのヘルマンスだ。ヘルマンスはパンチを主体に攻撃を組み立て、強烈な膝蹴りを出してきた。2発目の膝蹴りを避けたケヴィンはソバットからボディへのパンチ連打、首筋への上段蹴りでノックアウトした。
ブートの相手は南アフリカのポール・クレメント。クレメントのラッシュにリングの端へと追いやられるブート。しかしハンマーパンチをしゃがみ込んでかわしたブートは、相手の腕に絡み付いてテイクダウンを奪い、そのまま腕と首を取って絞め付けて勝利した。

その日の深夜、ケヴィンはジミーと共に、闘技場の裏側に向かった。2人の行動に気付いたジョアンナも付いて来てしまったため、同行を許す。奥に入っていくと、そこには大きな部屋があった。そこにはワイザーの姿があった。
その部屋は、どうやらドラッグの研究室らしい。ワイザーの部下やブートの他に、十数名の筋骨隆々としたファイターらしき面々の姿があった。そのファイター達に対して、研究員が何かを注射していた。どうやらそれが新しいドラッグらしい。

その時、ジョアンナが物音を立ててしまったため、ワイザー達がケヴィン達の存在に気付いてしまう。ワイザーの部下やファイター達が襲い掛かって来たため、ケヴィンとジミーはジョアンナを逃がし、戦いに挑む。
ケヴィンとジミーは奮闘するが、敵の数の多さに苦しむ。しかし、そこへトーナメントに参加していた選手達が姿を現す。ジョアンナが事情を説明し、加勢に駆け付けたのだ。彼らの協力を得て、ケヴィンとジミーは敵を倒していく。

劣勢に陥ったワイザーは、数名の手下やブートと共に奥の扉へと消えていく。ジミーはケヴィンに、この場は自分達に任せてワイザーを追うように告げる。ケヴィンは奥の扉を抜けて、その向こうにある階段を昇っていく。
階段を昇ると、そこは闘技場の屋上部分に繋がっていた。ケヴィンはワイザーの手下を軽く撃退し、ブートと対峙する。ブートの蛇のような動きに苦戦するケヴィンだが、後ろ回し蹴りの連続からジャンプしての回転蹴りでノックアウトする。

残されたワイザーは急に弱気の姿勢になり、金やステータスを与える代わりに助けて欲しいとケヴィンに懇願する。しかしケヴィンが隙を見せた瞬間、ワイザーは銃を取り出した。だが、気付いていたケヴィンはキックで銃を払い落とす。
ケヴィンはワイザーに連続パンチを入れた後、ダッシュしてキックを食らわす。ワイザーは屋上部分から闘技場に落下し、動かなくなった。彼は屋上に来たジミーやジョアンナに、「全て終わった」と告げるのであった。


<解説>

ジャン=クロード・ヴァン・ダムが1996年の主演作『クエスト』の続編を作ろうとした時、まず考えたのは「本物のファイター達を戦わせることは出来ないだろうか」ということだった。それは面白いアイデアではあったが、実現は不可能にも思われた。
だが、ヴァン・ダムはアイデアをアイデアだけで終わらせようとはしなかった。“リアルなファイト”にこだわる彼が着目したのは、日本であった。K−1やPRIDEの行われている日本は、各国から優れた格闘技選手が集まる場所となっていたからだ。

そしてヴァン・ダムのアイデアは、アメリカと日本の合作という形で実現されることになった。日本ではお馴染みのファイター達が勢揃いし、異種格闘技トーナメントで戦う。そんな夢のような光景が、実際に繰り広げられるのである。
ただし、全てがパーフェクトというわけにはいかなかった。例えばカナダ代表を演じるスコット・ノートンはアメリカ人だし、ブラジル代表のカルロス・ニュートンはイギリス領ヴァージン諸島生まれのカナダ育ちだ。また、キックボクシング選手を演じるセーム・シュルトは、実際には空手の選手だ。

しかし、それらの細かい食い違いはあるにせよ、これだけ多くの本物のファイターが集まり、そしてバトルを展開するということには、素直にワクワクさせられる。何しろ、この映画でしか実現が不可能と思われるような対決もあるのだから。
この作品は、まさにドリーム・ファイト・ムービーなのである。

監督は『バトルランナー』や『アフリカン・ダンク』など、アクション映画やスポーツ物を得意とするポール・マイケル・グレイザー。『コマンドー』『ハドソン・ホーク』のスティーヴン・E・デ・スーザが、ヴァン・ダムの原案を脚本化した。
製作は『ネゴシエーター』『ラッシュアワー』のロジャー・バーンバウムがヴァン・ダムと共同で務めている。製作総指揮は『デッドフォール』『グラフィティ・ブリッジ』のピーター・マクドナルド、そして音楽を担当したのは、『沈黙の要塞』『スターシップ・トゥルーパーズ』など数多くの作品に携わっているベイジル・ポールドゥリスである。

主演はジャン=クロード・ヴァン・ダム。『ユニバーサル・ソルジャー』や『サドン・デス』など、様々な映画で活躍する一流のアクション・スターである。ワイザー役は、『鷲は舞いおりた』『普通の人々』のベテラン俳優、ドナルド・サザーランドだ。
ジョアンナ役は『ヒューゴ・プール』『堕落の園』などでアイドル女優から脱皮したアリッサ・ミラノ。そしてジミーを演じるのは、『プロジェクトA』や『スパルタンX』でジャッキー・チェンやサモ・ハン・キンポーとトリオを組んだ、香港映画界を代表するアクション俳優、ユン・ピョウである。

セルゲイ・ブート役のヴォルク・ハンはリングスに参戦していたコマンド・サンボの達人で、軍や警察で指導を務めていた人物だ。アルコ・ヘルマンス役のセーム・シュルトはパンクラスで活躍し、現在はPRIDEのリングで活躍する空手出身の選手だ。
ポール・クレメント役のマイク・ベルナルドはパンチを得意とするK−1ファイターで、日本でも人気の高い選手の1人だ。サンダーボルト・マーフィー役のスコット・ノートンはアームレスリングの元王者で、新日本プロレスのリングで猛威を振るっている。

クラウディオ・ペレイラ役のカルロス・ニュートンは、UFC(アルティメット・ファイティング・チャンピオンシップ)の初代世界ウェルター級王者に輝いた選手だ。日本ではPRIDEのリングに何度か上がっている。
タナベ・アキラ役のグレート草津は正道会館に所属する空手選手で、父親は同名の元プロレスラーだ。スペル・ヴィエント役のフライ・トルメンタJr.は、「暴風神父」の異名を持つ神父のプロレスラー、フライ・トルメンタの教え子である。


<蛇足>

この作品は、ほとんどキャスティング勝負のようなシロモノですな。国と格闘技の種類を決めて、そこに選手の名前を当てはめていく。それが完成した時点で、作品の半分以上は完成したようなものと言えるかもしれない。
この作品は「ヴァン・ダム作品」という位置付けもあるのだが、同時に「スティーヴン・E・デ・スーザの脚本作品」という位置付けもある。『ストリートファイター』のコンビなので、そりゃあ素晴らしい作品になること間違い無しですぜ、奥さん。


なお、この映画は存在自体がフィクションです。
こんな映画、実際にはありません。

 

*妄想映画大王