『北京原人2 Do You Remember?』:2001、日本
<スタッフ&キャスト>
監督…佐藤純彌
脚本…丸山昇一
造型…原口智生
音楽…本多俊之真山友徳…高島政伸
大曽根里菜…中山忍
大曽根泰三…寺田農
吉田喜重郎…佐野浅夫
高梨洋一…宇梶剛士
ケンジ…高野拳磁
<ストーリー>
2011年、中国の山岳地帯に日本の生命科学研究所のメンバーがやって来た。リーダーの高梨洋一(宇梶剛士)や隊員の大曽根里菜(中山忍)は、山中を捜索する。彼らは生命科学研究所の所長で里菜の父親でもある大曽根泰三(寺田農)の指令を受け、中国を訪れていた。
彼らは洞窟を発見し、中に入る。そこには2体の北京原人の遺体があった。さらに近くを調べると、生きている北京原人が潜んでいた。近寄ってくる北京原人に麻酔注射を打ち、彼らは2つの遺体と眠らせた北京原人を連れて日本へと戻っていくのであった。生命科学研究所は2001年に現在の所長・大曽根泰三の父親である当時の所長の指揮で、化石から抽出したDNAを使って北京原人を現代に甦らせるプロジェクトを実行した。3体の北京原人が人工的に作り出され、それぞれタカシ、ハナコ、ケンジと名付けられた。
しかし、所員だった佐倉竜彦や中国電視台の宗美々によって、3体の北京原人は中国に放たれた。それから10年後、父親の死去に伴なって新しく所長に就いた大曽根は、北京原人プロジェクトの再開を決定。そして中国で北京原人を捜索し、発見したのであった。遺体となって発見されたのは、タカシとハナコ。そして生きていた北京原人はケンジだった。生命科学研究所では、タカシとハナコの死因の調査と、ケンジを使った実験が行われることになった。高梨や里菜は、ケンジの実験に携わることになった。
北京原人に人間的な生活が可能なのかを調べる実験の中で、「しつけ」と称してケンジに対する暴力的な行為が平然と行われる。そのようなやり方に疑問を抱いた里菜は反対意見を述べるが、全く聞き入れてもらえない。そんな中、ケンジが檻を破って逃亡してしまう。新進気鋭の若手画家として活躍する真山友徳(高島政伸)は、軽井沢に住んでいる。彼は毎朝のジョギングを日課にしており、同じくジョギングしている老人・吉田喜重郎(佐野浅夫)と顔を合わせて挨拶を交わすのも日課のようになっている。2人は途中から同じコースを走る。
真山と吉田老人はジョギングを通じて親しい関係になった。吉田は仕事を引退して今は悠々自適の生活を送っているらしい。吉田はいつも体格の良い怖そうな2人の男と一緒に走っている。そのため、真山は吉田が暴力団の組長か何かだったのではないかと思ったりしている。ジョギングを終えて自宅に戻った真山は、庭で何かが動いたのに気付く。強盗でも侵入したのかと思い、恐る恐る声を掛ける真山。すると突然、毛むくじゃらの怪物が現れる。その時点では真山は知る由も無かったが、それは研究所から逃げ出したケンジであった。
驚いて腰を抜かす真山だが、ケンジが何か怯えた様子を示していることに気付く。そこで真山は身振り手振りで、自分が危害を加える存在ではないことを必死に示す。ケンジはゆっくりと真山に近付き、彼の体や顔に触れる。真山はケンジを自宅に招き入れる。真山は最初はギクシャクした態度でケンジに接していたが、次第に友達のような関係になっていく。ケンジは真山の行動を見ながら、人間の生活様式を覚えていく。下手ではあるが食事の時にスプーンを使ったり、トイレで用を足したりするようになる。
真山がテレビのお笑い番組を見て笑うと、その横でケンジが真似をして笑ったりする。真山が絵を描き始めるとケンジも筆を持つので、真山はケンジのためにキャンパスを用意してやる。ジョギングにも付いてこようとするが、真山は危険だから外に出ることだけはいけないと言い聞かせた。逃亡したケンジを捜索していた里菜は、ちょっとした偶然から真山と出会い、彼がケンジのことを知っているのではないかと推測する。真山の家を覗いた里菜はケンジを発見するが、真山とじゃれ合っているケンジが研究所にいた頃とは違って活気に満ちていることに驚く。
里菜は所長や高梨に連絡し、ケンジを発見したことを伝える。高梨は連れ帰るよう指示するが、里菜は現在の状況を説明し、優れた実験データが取れると説き伏せる。所長の許可が出たため、里菜が真山とケンジの生活を調査することになった。里菜は画廊のオーナーと偽って真山の家を訪れる。慌ててケンジを屋根裏部屋に隠す真山。彼が自分から目を離した隙に、里菜は最新鋭の小型盗撮カメラを仕掛けた。里菜は何食わぬ顔をして早々に立ち去り、研究所が用意した近くの別荘から様子を見守る。
真山とケンジが仲良く過ごす様子を何日か見る内に、里菜は2人に親近感を覚えるようになっていた。しかし研究所からは、「もうデータは充分に取れたはずだから、ケンジを連れ帰るための応援メンバーを送る」と連絡が入る。里菜は急いで真山の家に向かった。いきなり真山の家に上がり込んだ里菜は、彼にケンジを連れて今すぐに逃げるよう告げる。なぜケンジのことを知っているのかと驚く真山だが、ただならぬ里菜の様子に押され、彼女と共にケンジを連れて自宅を飛び出した。真山達は里菜の車に乗って逃亡する。
一足違いで真山の家に到着した高梨達は、中に誰もいないことを確認。里菜の裏切り行為を確信した高梨は大曽根に連絡を入れ、真山達を探し始める。一方、里菜から詳しい説明を受けた真山は衣料品店で服を買い求め、ケンジに着せて人間らしく見せかけようとする。生命科学研究所では、タカシとハナコの死因が明らかになった。古代に生活していた北京原人が悪化した現代の環境に適応できず、病気になって死亡したというのだ。その頃、ケンジは体の不調を訴えていた。原因が分からずに何の対応も出来ず、困り果てる真山と里菜。
そんな彼らの元へ、高梨達が姿を現す。彼らは衰弱したケンジを救うためには、研究所に連れ帰るしかないと告げる。それでも逃げようとする態度を見せた里菜だが、真山はケンジの命を救うことが何より大切だと語り、研究所へ連れ帰ることに同意する。ワクチンを注射することで、ケンジは次第に回復していく。ケンジに付き添うことを望んだ真山だが、研究所から追い出されるような形で自宅へ戻ってくる。落ち込む真山の様子を見た吉田老人が声を掛けるが、真山は力無い笑顔で「大丈夫です」と答える。
立ち去ろうとする真山を、吉田に同行する2人の男が強引に引き止める。真山は吉田に「ちょっと友達のことが気になるだけです」と告げる。詳しく聞きたがる吉田に、真山は「病気になった友達が施設に入ってしまい、会わせてもらえない」と語る。研究所では、完全に復調したケンジを使って実験が再開されようとしていた。里菜は「暴力で抑え付けるのではなく、真山のように接することが大切だ」と訴えるが、高梨は「素人のやり方が正しいはずがない。我々はプロだ」と言って、全く受け入れようとはしない。
そこで里菜は、深夜にケンジを連れて研究所を抜け出す。真山の自宅に向けて車を走らせる里菜。研究所では脱走に気付いた高梨が追い掛けようとしていた。すると大曽根が彼に声を掛け、里菜の父親として責任を果たすためにも同行すると告げる。真山の家に到着した里菜は、激しくドアを叩く。ドアを開けた真山に、ケンジが飛び付いた。真山もケンジも久しぶりの再会を喜んだ。しかし喜びもつかの間、彼らの元に大曽根と高梨が現れた。「いったい、ケンジをどうしたいというのだ?」と大曽根は真山に質問する。
真山は「実験材料にするのではなく、もっとケンジを自由にしてあげたい」と告げる。しかし大曽根から、「例えば開放したとしても、どうせ捕まって殺されるのがオチだ。放すわけにいかないとしたら、動物園にでも入れて見世物にするのか」と言われ、返答に困ってしまう。そこへ、吉田老人がいつもの体格の良い2人の男と共に姿を現した。そして彼は大曽根に向かって「久しぶりだな」と声を掛ける。実は吉田は“影のドン”と呼ばれるほどの経済界の大物で、政界にも顔が聞き、生命科学研究所に資金援助をしている男だったのだ。
吉田は「真山君は私の親しい友人だ。その彼の友人に対して失礼な扱いをされては困る」と言う。そして、長野に所有している自身の広大な敷地をケンジのために提供すると告げる。それなら世間の目にさらされることも無く、自由に暮らせるのではないかというのだ。長野にある吉田の所有地。そこにはケンジと真山、そして里菜の姿があった。広々とした大地に立ち、ケンジは空に向かって「ウパー!」と叫ぶ。真山の自宅の奥には、ケンジの描いた絵があった。そしてその横には、真山がケンジの姿を描いた絵が飾られているのであった。
<解説>
1997年に公開された『北京原人 Who are you?』は、センス・オブ・ワンダー、ファンタジー、歴史ミステリー、ヒューマン・ドラマ、アクション、ユーモア、ラブ・ストーリーといった多くの要素を詰め込み、豪華な配役とワールドワイドな展開で見せた、日本映画界では久しぶりの大作SF映画であった。
その続編である『北京原人2 Do You Remember?』は、人間と北京原人の心の交流に重点を置いたヒューマン・ストーリーになっている。センス・オブ・ワンダーではなく、センス・オブ・フレンドシップを描き出すことで、すさんだ現代社会にメッセージを投じているのだ。前作の出演者の大半が続編への出演に難色を示したため、主要メンバーのキャスティングは大幅に入れ替わっている。主人公の真山友徳は高島政伸、ヒロイン大曽根里菜を中山忍が演じている。他に寺田農、佐野浅夫、宇梶剛士といった面々が脇を固めている。また、北京原人ケンジの中にプロレスラーの高野拳磁が入っているのも注目ポイントだろう。
監督は前作に引き続き、『敦煌』『おろしや国酔夢譚』の佐藤純彌。脚本は『ウォータームーン』『REX 恐竜物語』の丸山昇一。北京原人の造型は平成ガメラシリーズ3部作で怪獣造型を担当した原口智生が務め、故・伊丹十三の監督作品に携わっていた本多俊之が音楽を担当している。
<蛇足>
日本映画界が久しぶりに送り出した、超大作のポンコツ映画。それが『北京原人 Who are you?』だ。大マジメに作ったのに観客を爆笑(失笑?)の渦に巻き込んでしまうという、ある意味ではスゴイ作品である。そんなオイシイ素材を使わない手は無い。
というわけで、続編を作ってみたわけである。ただし、残念ながら『北京原人 Who are you?』ほどのトンチンカンな内容を作り出すほどのクレイジーな脳味噌は、私の中には無かったようだ。そのため、比較的おとなしいシナリオになっているのは御容赦をば。
なお、この映画は存在自体がフィクションです。
こんな映画、実際にはありません。