『沈黙の大都会』:1999、アメリカ
Shot In The Shot
<スタッフ&キャスト>
監督…クリストファー・ケイン
原案…スティーヴン・セガール
脚本…ジェブ・スチュアート&アレクサンドラ・セロス
製作…スティーヴン・セガール&ジュリアス・R・ナッソー
製作総指揮…ゲーリー・ゴールドスタイン
音楽…ハンス・ジマーマニー・ブランズウィック…スティーヴン・セガール
ジェシカ・ロバートソン…シンシア・ギブ
ブルーノ・オグラディー…ロバート・パトリック
フランク・ホルムズ…トビン・ベル
<ストーリー>
マニー・ブランズウィック(スティーヴン・セガール)は元ロサンゼルス市警の刑事だったが、バルダック社の麻薬密輸疑惑を捜査している中で先輩刑事ジョーが殉職したのをきっかけに、警察を辞職した。今は武道を教える道場を開いている。
マニーが道場で生徒に稽古を付けていると、ジョーの娘ジェシカ・ロバートソン(シンシア・ギブ)が訪れた。2人が会うのは久しぶりだった。ジェシカは現在、ケーブルテレビのリポーター兼カメラマンをしているらしい。これから日本人画家のインタビューに向かうと告げ、ジェシカはマニーと別れた。ジェシカが道場を去って歩いていると、路地裏で何やら声がするのを耳にした。彼女が路地裏に入っていくと、そこでは数人の男達が一人の中年男を囲んでいるところだった。身を隠すようにしながら、ジェシカはカメラを男達に向けた。
男達の会話に耳を傾けるジェシカ。どうやら男達はバルダック社の人間で、中年男ランディ・ハーパーも元社員だったらしい。バルダック社が裏で行っている麻薬取り引きに加担することに嫌気が差して辞任したが、それをバルダック社は裏切り行為だと考えているらしい。しばらく会話が続いていたが、いきなり男達のボスらしき人物が「バルダック社を裏切る者はこうなるんだ」と言って、いきなり銃を中年男に向けて発射する。驚いたジェシカは思わず音を立ててしまい、男達に気付かれる。慌てて現場から逃げ出したジェシカ。
ジェシカは真っ直ぐにマニーの道場へ向かった。男達のリーダーであるブルーノ・オグラディー(ロバート・パトリック)は、仲間にジェシカを追わせ、自分はバルダック社の社長フランク・ホルムズ(トビン・ベル)に連絡を取る。ジェシカが道場に駆け込むと、既に練習時間を終えてマニーだけが残っていた。ジェシカが助けを求めているところへ、ブルーノの手下がやって来る。女を引き渡せと要求する男達に対し、「神聖な道場がお前達によって汚されてしまった」と言い放つマニー。
飛び掛かって来る男達を全てなぎ倒し、退散させるマニー。ジェシカから事情を聞き、すぐにこの場所から離れなければならないと告げるマニー。ひとまずマニーの自宅に向かうことにして、2人は車に乗って道場を離れる。だが、マニーとジェシカを追ってくる不審な車があった。車の中にいた男達がいきなりマニー達に向けて銃撃を開始。激しいカーチェイスになるが、なんとか追ってきた車を障害に激突させ、走行不能にすることに成功。2人はマニーの自宅に向かった。
ジェシカの撮影したビデオを見たマニーは、ブルーノに見覚えがあった。バルダック社の麻薬密輸疑惑を追っていた時、FBIの早まった行動が原因でジョーは死亡した。その時にFBIで陣頭指揮を取っていたのがブルーノだったのだ。その時、マニーは家の外に気配を感じた。するとライフルを持った数人の男達が、家の中に向けて一斉射撃を開始した。慌ててジェシカの頭を押さえ、床に伏せるマニー。しばらくすると射撃は止み、続いて男達が家に突入してきた。
マニーは近付いてきた男の腕を捻って銃を奪い、男達を撃滅する。マニーはジェシカを安全な場所に連れていく必要があると考え、郊外にある自分の隠れ家へ向かった。それは日本的な建築物で、調度品も和風の物ばかりという家だ。ジェシカを隠れ家に残し、マニーは犯罪の確実な証拠をつかむために深夜のバルダック本社に潜入する。だが、中に入ると昼間に人が働いていたような気配が全く無く、まるで空き部屋のようになっている。資料らしきものも無く、電話も一つしか置かれていない。
その一つだけ置いてある電話が急に鳴り響いた。しばらく様子を伺っていたマニーだが、鳴り止む気配が無いので受話器を取った。すると、電話を掛けてきたのはブルーノだった。ジェシカを誘拐したので、返して欲しければビデオテープを持って来いというのだ。急いで指定されたバルダック社の倉庫へ向かうマニー。そこには社長のフランク、ブルーノを始めとする彼の手下達、そして時限爆弾を体に取り付けられたジェシカの姿もあった。フランクは余裕の態度を示し、ビデオテープを渡すよう要求する。
マニーはテープを床に置いて滑らせる。それを手に取ったフランクは、「では、死んでもらおう」と言う。すると、手下達がピストルを構えてマニーに向ける。「懸命な君なら、こうなることは予期していただろう?」と言って笑みを浮かべるフランク。マニーは全く表情を変えず、「そうだな」と答える。そして「テープの中身を確かめなくていいのか」とフランクに告げる。フランクがテープをケースから取り出そうとした瞬間、中から大量の煙が発生。フランク達が慌てている隙を見て、マニーは手下の一人に近付いて倒し、銃を奪う。
マニーは次々と手下達を倒して行くが、弾が切れたところにブルーノが立ち塞がった。マニーに質問され、ブルーノはジョーの死が自分の策略だったことを明かす。激しい攻撃に傷を負いながらも、マニーはブルーノを撃退し、フランクを追いかけようとする。そんなマニーに向かって、フランクは「ジェシカを見てみろ」と叫ぶ。すると、ジェシカの体に取り付けられた時限爆弾のカウントダウンが始まっていた。あと1分もすれば爆発してしまう。フランクは「2人ともジョーの側に行くがいい」と捨て台詞を残して逃げてしまった。
マニーは必死に爆破スイッチを解除しようとするが、どうにもならない。焦る中で時間は迫ってくる。時間は残り30秒を切った。まだ解除できない。残り20秒、10秒と少なくなっていく。そして、ついに残り時間が切れ、倉庫は大爆発を起こした。フランクは多くの関係者やマスコミを集めた講演に出席し、スピーチをしていた。巨大な画面を使って会社の業績や新製品の開発に関して説明し、順調にスピーチは進んでいた。
しかし、その途中でいきなり画面の映像が切り替わる。そこに映っていたのは、ブルーノがランディを殺す場面だった。うろたえるフランクに追い討ちをかけるように、続いて会場には、倉庫でフランクが自分の犯した犯罪について話している会話が流れてくる。仕掛けたのはマニーだった。彼は倉庫での会話を密かに盗聴しておいたのだ。そう、マニーとジェシカは倉庫から無事に逃げ出していたのだ。
慌てて会場から逃げ出そうとしたフランクだが、マニーの要請で待機していた警官に取り押さえられる。フランクが連れ去られた後、マニーはジェシカと顔を見合わせる。そして彼は、ジョーの墓参りに行こうとジェシカに言うのだった。
<解説>
鍛錬によって身に付けた本格的な格闘術を生かし、硬派のアクション・スターとして活躍するスティーヴン・セガール。そんなセガールが今作品で挑んだのは、とにかくアクション映画としての醍醐味を前面に押し出すというストレートな勝負だった。
特に捻った設定があるわけでもない。一風変わったキャラクターを演じるわけでもない。これは観客に正面からぶつかっていく、正統派のアクション映画だ。それだけに、アクションシーンの醍醐味を存分に見せつけるための配慮がなされている。格闘術の教室でのセガールと生徒の立ち会い稽古シーンでは、セガールが得意の合気道を披露。フランクの手下との戦いでは、棒や小太刀を使ったアクション、銃やナイフを持った相手との迫力あるアクションを見せる。一瞬の早業で敵を倒していく姿に、観客は感嘆符を発することだろう。
格闘以外にもアクションシーンは用意されている。主人公の自宅を敵が一斉射撃する場面では、約5000発の銃弾が乱れ飛ぶ。他にも激しいカーチェイス、倉庫の派手な爆破など、観客を楽しませる仕掛けがたっぷりと詰め込まれている。監督は、『ヤングガン』『ベスト・キッド4』のクリストファー・ケイン。主演のセガール自身がデビュー作以来となる原案を考え、それを『ダイ・ハード』『逃亡者』のジェブ・スチュアートと『スペシャリスト』『アサシン』のアレクサンドラ・セロスが共同で脚本化した。
製作はセガールと『沈黙の要塞』『グリマーマン』のジュリアス・R・ナッソーが担当。製作総指揮は『沈黙の戦艦』『暴走特急』のゲーリー・ゴールドスタイン。音楽は『シン・レッド・ライン』『グラディエーター』のハンス・ジマー。スティーヴン・セガールの共演者は、ジェシカ役に『栄光のエンブレム』『ブルージーン・コップ』のシンシア・ギブ。ブルーノ役に『ターミネーター2』『素顔のままで』のロバート・パトリック。そしてフランク役が『ザ・ファーム/法律事務所』『クイック&デッド』のトビン・ベル。
さらに、セガールが警察の技術予備人員でロサンゼルス市警と密接な関係だということもあって、ロス市警の現職警官がエキストラとして特別参加している。
<蛇足>
スティーヴン・セガール主演作は、かなり前からデッチ上げようと思っていたのだが、ようやく掲載することができた。結構知られていることだけど、タイトルに“沈黙”と付いているセガール作品の中で、『沈黙の戦艦』の続編は1本も存在しない。本当の続編は『暴走特急』だけだ。
この作品の邦題に関しては、『沈黙の街衝』とか『沈黙の銃弾』とか、最初は漢字2文字で考えていたんだけど、「『沈黙のテロリスト』ってのもあるから、漢字2文字にこだわる必要も無いのか」と気付いて、『沈黙の大都会』に決定。
あえて、微妙にダサい印象も感じさせるタイトルにしてみた。
なお、この映画は存在自体がフィクションです。
こんな映画、実際にはありません。