『クイック&デッド:アナザー・ストーリー』:1999、アメリカ
The Quick And The
Dead :Unexpected Trajectory
<スタッフ&キャスト>
監督…サム・ライミ
脚本…アダム・リフキン
製作…ロバート・G・タパート
音楽…ダニー・エルフマンビビ…ミラ・ソルヴィーノ
ブロイ…マイケル・キートン
スカッティー…デニス・ホッパー
バズロー…ジョー・ペシ
レプカ…スティーブ・ブシェーミ
ロット…カイル・マクラクラン
ジャムシール…ピーター・トゥイアソソポ
エルマー…ヴィゴ・モーテンセン
ジャニス…ブリジット・ウィルソン
<ストーリー>
女ガンマンのビビ(ミラ・ソルヴィーノ)が、リデンプションの街にやって来た。彼女は一枚の紙を手にしており、街の顔役であるバズロー(ジョー・ペシ)が酒を飲んでいるバーへ入った。手にしているのはバズローが近くの街に配った紙だ。そこには「この街を救ってくれる凄腕のガンマンを求む」と書かれている。
リデンプションはスカッティー(デニス・ホッパー)率いる悪党一味に何度も襲撃され、その度に金や食料を奪われたり、女をさらわれたりしていた。そんな状況を打開すべく、バズローはスカッティ達を撃退してくれる勇者を探していたのだった。だが、ビビを見たバズローは彼女の申し出を本気にしない。ビビが本気だと詰め寄ると、女1人に何が出来るのかと笑い出す。そこでビビは帰るフリをして、自分の背後にいるバズローに向けて銃を撃った。バズローの被った帽子が弾き飛ばされ、彼はビビの申し出を受け入れることにした。
ビビはバズローに、スカッティー達を撃退した時に貰える宝箱の話を確認する。伝説のガンマンである早撃ち名人エルマー(ヴィゴ・モーテンセン)がこの街で亡くなった時に所持していたもので、それ以来ずっと保管されてきたという宝箱だ。バズローは確かに仕事が成功すれば宝箱を渡すと約束する。宝箱を狙ってスカッティーの一味撃退を申し出たのは、何もビビだけではない。イヤミな笑いのレプカ(スティーブ・ブシェーミ)、巨漢のジャムシール(ピーター・トゥイアソソポ)、オシャレに気を使うロット(カイル・マクラクラン)、クールな男ブロイ(マイケル・キートン)といった連中も、スカッティ一味撃退に名乗りを上げた。バズローは、スカッティの首を取った者に宝箱を与えると告げる。
それにしても、この街には保安官はいないのかと気になるビビ。保安官はいるのだが、スカッティー達が来た時も何もしないで見ているだけだという。「安月給で無駄に死にたくはないからな」と言うブロイ。実は彼が保安官だったのだ。街の人が苦しんでいるのに、どうして助けないのかとブロイに詰め寄るビビ。するとブロイは「正義感だけでは人は生きていけないんだ」と語る。彼は「報酬があればそれに見合う仕事はキッチリやる」と言い、エルマーの宝を貰えるならスカッティー達を退治するだけの腕はあると話す。
最初からそうすればさらわれずに済んだ女性も多いだろうとビビが非難すると、「キミだって宝が欲しくてやってきた、ただの賞金稼ぎじゃないか」と言われてしまう。「それは…」とビビが言葉に詰まっていると、そこへスカッティ一味が現れた。ロットとジャムシールがスカッティー達の前に立ちはだかった。ビビは慌ててスカッティー達に駆け寄ろうとするが、ブロイが引き止める。「先を越される」と言うビビだが、ブロイは落ち着き払って「あの2人にスカッティ退治は無理だ」と答える。
馬から降りたスカッティーにすかさず銃を向けたジャムシールだったが、次の瞬間にはスカッティーの放った銃弾に倒れていた。続いてロットが横に走りながら連続で銃を撃つが、スカッティーは当たる寸前で弾丸をかわし、一発でロットを倒す。「面白い趣向だった。今回はこのまま帰ってやろう」と言い残し、去っていくスカッティー達。その後ろ姿を目にしながら、「奴には弾丸の軌道が見えるんだ」とビビに話すブロイ。だから普通に撃っても、弾丸は絶対に当たらないという。
宿屋に戻ったビビは、いつの間にか眠り込んでいた。彼女は幼い頃の夢を見ていた。父親と楽しそうに遊ぶビビ。幼い彼女が父親に手作りの首飾りをプレゼントし、父親が大切にすると約束したところで目が覚めた。酒場に行ったビビは、レプカに声を掛けられた。スカッティーの強さを目にしたレプカは1人ではとても敵わないと感じ、ビビに手を組もうと申し入れてきたのだ。宝は半分ずつにしようと言うレプカだが、ビビはあっさりと申し出を断る。
それでもしつこく誘うレプカだが、強く拒否されたことに怒り、殴りかかろうとする。だが振り上げた手を後ろからブロイがつかんで止める。レプカはブロイにも共闘を申し込むが、ブロイは「笑い方の下品な男とは組まない」と言って断る。完全にキレたレプカはライフルをブロイに向けるが、ブロイは自分の銃を撃ってレプカのライフルを弾き飛ばす。さらに空中を飛ぶライフルの引き金を撃ち、それによってライフルから発射させた弾丸がレプカの額をかすめる。
「バカにしやがって!」と顔を真っ赤にするレプカに、ビビが2発の銃弾を発射。するとレプカのズボンが脱げてしまう。「お前ら最低だ」と捨て台詞を残し、レプカは酒場を去る。ビビとブロイはお互いの射撃技術を誉め合い、酒を酌み交わす。翌日、同じベッドで朝を迎えたビビとブロイ。2人が何か話そうとした時、外で大きな物音がした。スカッティ一味が再びやって来たのだ。たまたま外で作業をしていた宿屋の娘ジャニス(ブリジット・ウィルソン)が彼らに目を付けられる。スカッティーの手下がジャニスに近寄ろうとするが、ジャニスは慌てて宿屋の中に入る。
だが、すぐにジャニスは宿屋の中から出てきた。いや、レプカに連れ出されたのだ。レプカはスカッティーには太刀打ちできないと考え、御機嫌を取って仲間になろうとしたのだ。そこで彼はジャニスを捕まえ、スカッティーの前に差し出したというわけだ。スカッティーはジャニスを馬に乗せ、レプカに付いてくるよう命令する。スカッティー達が街を去ろうとするのを見て、ビビが着替えようとすると、ブロイは既に出掛ける準備を始めていた。「俺は奴らを追う。一緒に来たかったら別に構わないぞ」と言うブロイ。
「付いていくわけじゃないわよ。たまたま考えが同じだっただけ」と言い返し、ビビはブロイと共に宿屋を出てスカッティー達を追う。馬で荒野を走り、小高い丘を一つ越え、山のふもとにある森の中にスカッティー達のアジトはあった。すぐにスカッティー達の前に出て行こうとするビビを引き止め、夜になるのを待つように言うブロイ。夜になれば酒宴が始まり、彼らも油断するはずだというのだ。2人は夜を待った。ブロイの言った通り、一味は酒盛りをして騒ぎ始めた。
まだ早いといって止めようとするブロイを押しのけ、ビビは彼らの前に姿を現した。いきなりスカッティーに銃を向けたビビだが、スカッティーは弾道を見極め、あっさり弾丸をかわしてみせる。その間にジャニスはスカッティーの元から逃げて、ビビの背後に隠れた。「女を殺すのは惜しいな」と言いながら、手元においてあった銃を取ったスカッティー。ビビは連続して銃弾を発射するが、全てスカッティにかわされる。逆にスカッティーが放った銃弾がビビの右肩を直撃。ビビは銃を落としてしまう。ニヤニヤしながら次の狙いを定めるスカッティー。
「次は左の肩でいこうか」と言いながらスカッティーが引き金を引こうとした時、馬に乗ったブロイが銃を撃ちながら走ってきた。馬を降りたブロイは「早く乗れ」と言って有無を言わさずビビとジャニスを馬に乗せ、その場から逃げさせる。さらにブロイももう1頭の馬を呼び寄せ、走り去る。スカッティーの手下が数人、ビビやブロイを追ってくるが、ブロイの銃撃に撃退される。そのまま街まで戻ったビビとブロイ。「スカッティーを殺すチャンスだったのに、どうして逃げたの」と詰め寄るビビに、「あの場面では勝ち目が無かった。自分でも分かっていたはずだ」と言うブロイ。
自分でも殺されると感じただけに、ビビには言い返す言葉が無かった。ブロイは彼女に、「だが、奴を倒す方法はある。そのためには2人の協力が必要だ。俺と組もう。宝は半分ずつにすればいい」と言う。しかしビビは、「無理よ。半分ずつになんて出来ないわ」と首を横に振る。それでも、とにかくスカッティーを倒さないことには宝は手に入らない。とりあえず宝の分配方法は後回しにして、2人は手を組むことにした。ブロイはスカッティーを倒す方法をビビに話す。スカッティーが弾丸をかわせるのは弾道を見極めているからだ。だから、弾道が見えなければいい。
そのためには、彼の見えない場所から銃撃することが必要だ。しかし遠い場所から撃ったとしても、彼に銃弾が近付く前に気付かれるだろう。彼には弾丸の動きがスローに感じられるのだ。だから、なるべく近くで、しかも背後から銃撃すれば倒すことが出来るだろうというのだ。2人は再びスカッティーの元へ向かうことを決めた。出発は明日の正午。ブロイがスカッティの正面から狙い、その間にビビが背後に回り込むという計画が立てられた。役割分担は2つのダイスを振って大きい目を出した者が背後に回ると決めた。最初にブロイが11を出したが、ビビが12を出したのだ。
前回の戦いで銃を落としたビビ。手元には父の使っていた古びた銃しかない。仕方なくその銃に弾を込めていたビビだが、それを見ていたブロイが「そんなオンボロ銃では真っ直ぐに飛ぶかどうかも心配だ」と言って、新品の銃を手渡す。次の日、戦いの場に向かう気持ちを高ぶらせるビビ。しかし、わざわざ行くまでもなく、スカッティー達は自分達から街へやって来た。そうなるとビビ達の計画が少し狂ってしまう。それでも、場所が違うだけで基本的には同じだと言うブロイ。
「今日は気分が悪いから、街が荒らされるのが見たいぞ」と言うスカッティー。そこで彼の手下やレプカは馬を降りて街を荒らし始める。我慢できずに飛び出したビビは、スカッティーの手下を撃ちまくる。仕方なく、ブロイもビビに加勢。スカッティー達も反撃し、激しい撃ち合いが開始された。やがてスカッティー達は次々と倒れていき、レプカもビビとブロイに挟み撃ちにされ、グルグルと体を回転させるようにして死亡。最後に残ったのはスカッティーただ一人。それでも、スカッティーは余裕の笑みを浮かべて馬から降りてきた。
ブロイがスカッティーと対峙する間に、ビビは上手く背後に回り込んだ。ブロイが銃を撃つと同時に、ビビも引き金を引く。だが、スカッティーはブロイの銃弾だけでなく、ビビの銃弾も簡単にかわしてみせた。「俺は後ろにも目が付いているんだ」と言って笑うスカッティー。スカッティーは呆然としているブロイとビビを連続して射撃。ブロイは足と脇腹を撃たれ、ビビは右手と腕の付け根を撃たれて銃を落としてしまう。スカッティーはブロイとビビを見比べ、「まずは女から行くか」と言ってビビの方へ歩み寄って行く。
ビビは傷の痛みに片膝を付いた拍子に、左手が腰の後ろにある父の銃に触れた。彼女は昨晩のブロイの言葉を思い出した。「そんなオンボロ銃では真っ直ぐに飛ぶかどうかも心配だ」という言葉。スカッティーは目の前まで近付いている。そして彼はビビに銃を向ける。「終わりだ」とスカッティーが口に出した瞬間、ビビは左手で腰から銃を取って連続で発射した。弾道を見極め、簡単にかわそうとしたスカッティー。だが銃弾は予期せぬ方向に曲がり、スカッティーの体に次々と命中。スカッティーはその場に崩れ落ちた。
「そ、そんなバカな」とつぶやいて死んでいくスカッティー。「世の中、全てが予想通りにいくわけじゃないのよ」と言って立ち上がるビビ。ゆっくりブロイに近付き、傷の心配をする。ブロイは大丈夫だと答え、スカッティーを倒したことを喜ぶ。ビビはブロイと一緒にバズローの元に行き、スカッティー退治を報告して宝箱を受け取った。ビビがブロイを見ると、ブロイは「キミがスカッティーを撃ったんだから、宝はキミの物だ」と言う。ビビは微笑み、「どうせあなたが貰っても何の価値も無い物よ」と言う。
「どういう意味だ?」というブロイの質問に答えず、ビビは宝箱を開けた。そこには手作りの首飾りが入っていた。そう、ビビが父親にプレゼントした物だ。ビビはエルマーの娘だったのだ。「私にとっては大切な宝物なのよ」と言って、ビビは再び宝箱を閉じた。
<解説>
シャロン・ストーンが主演し、製作にも協力した西部劇『クイック&デッド』。1995年に作られたこの映画は、ジーン・ハックマン、ラッセル・クロウ、レオナルド・ディカプリオ、ゲイリー・シニーズなどの大物俳優が顔を揃えた作品だった。
しかし、内容はシリアスでハードな西部劇ではなく、どこかマヌケなバカテイストの高い作品だった。『クイック&デッド:アナザー・ストーリー』は、その『クイック&デッド』と同じくリデンプションの街を舞台にした別の物語である。
『クイック&デッド』は早撃ち大会に集まった者達の話だったが、今回は悪党一味を倒し、宝を手に入れようとする者達の姿が描かれている。内容は変わっても、そこに漂うバカテイストは健在である。例えば、スカッティが飛んでくる銃弾を見極める場面。スローモーションで近付く弾丸を軽くかわし、それが背後にいた部下に命中してしまうという展開が待っていたりする。
他にも、血が吹き出ている男がしばらく気付かずに笑っている場面があったり、命中した弾丸で眉間に開いた穴を通して次の弾丸を撃つ場面があったり、やや悪趣味とも思えるようなユーモラスなシーンがたくさん詰まっている。監督は前作と同じくサム・ライミ。『死霊のはらわた』『キャプテン・スーパーマーケット』など、独自の世界を作り上げている映画監督だ。脚本は『スモール・ソルジャーズ』『マスク・オブ・ゾロ』のテッド・エリオットが担当。製作は『ダークマン』『タイムコップ』のロバート・G・タパート、音楽は『メン・イン・ブラック』『スリーピー・ホロウ』など多くの映画音楽を手掛けているダニー・エルフマン。
主演はミラ・ソルヴィーノ。『ミミック』『リプレイスメント・キラー』などに出演する彼女が、キュートでありながら、タフでワイルドな女ガンマンを演じている。ブロイは『バットマン』『マイ・ライフ』のマイケル・キートンが演じている。
スカッティー役は『イージー・ライダー』『スペース・トラッカー』のデニス・ホッパー。凄味を持った、それでいてどこかコミカルな悪党を見事に演じ切っている。バズローは『ホーム・アローン』『いとこのビニー』のジョー・ペシ。ジャニスは『モータル・コンバット』『ラストサマー』のブリジット・ウィルソン。
レプカは『エスケープ・フロム・L.A.』『ファーゴ』のスティーブ・ブシェーミ、ロットは『ブルー・ベルベット』『ヒドゥン』のカイル・マクラクラン、ジャムシールは『ストリートファイター』でエドモンド本田を演じたピーター・トゥイアソソポ。
そしてビビの父エルマーを『クリムゾン・タイド』『G.I.ジェーン』のヴィゴ・モーテンセンが演じている。
<蛇足>
『クイック&デッド』を見た時に思ったのが、「シャロン・ストーンが絡んでいなかったら、もっと面白いバカ西部劇になっただろうなあ」ということ。サム・ライミや他の出演者はバカバカしい内容を楽しんでいるように感じられたが、どうもシャロン一人だけはマジに見えた。
で、この続編をデッチ上げる時に頭に浮かんだ女優は、ジーナ・デイヴィス、ミラ・ソルヴィーノ、ドリュー・バリモア、キャメロン・ディアスといった面々だった。
最初は主人公をジーナ・デイヴィスに決めて、宝箱を賭けた早撃ち大会としてストーリーを考え始めた。それを、悪党を退治するという内容に大幅修正する中で、ヒロインのイメージも変わっていったので、ミラ・ソルヴィーノに変更したわけ。
もはやタイトルの「クイック&デッド」と内容が合ってないような気もするけど、その辺は御容赦をば。
なお、この映画は存在自体がフィクションです。
こんな映画、実際にはありません。