『新・ロッキー/魂を受け継ぐ者』:1999、アメリカ
Rockey Junior

<スタッフ&キャスト>

監督…ジョン・G・アヴィルドセン
脚本&製作総指揮…シルヴェスター・スタローン
製作…ロバート・チャトフ&アーウィン・ウィンクラー
音楽…ビル・コンティー

ロッキー・ジュニア…セージ・スタローン
ロッキー・バルボア…シルヴェスター・スタローン
エイドリアン…タリア・シャイア
ジャック・ロドニー…ヴィンセント・ヤング
ポーリー…バート・ヤング
シュガー・レイ・レナード…シュガー・レイ・レナード


<ストーリー>

偉大なるボクサーだったロッキー・バルボア(シルヴェスター・スタローン)は、現在はボクシングジム「スタリオンジム」の会長として後継者を育成する毎日を過ごしている。ジムは設備も非常に充実しており、有望な選手が何人も揃っている。
ロッキーの息子ロッキー・ジュニア(セージ・スタローン)もボクシングをやっている。だが彼は所属先としてスタリオンジムではなく、別のジムを選んだ。ジュニアはロッキーの義兄ポーリー(バート・ヤング)が経営する弱小ジムに所属している。小さくて貧しいジムだ。

小さな試合会場でジュニアの試合が行われていた。セコンドについたポーリーがボディを狙えと必死にアドバイスを送るが、ジュニアはムキになって相手の顔面ばかりを狙い続ける。試合の結果は引き分け。これで成績は3勝2敗2分となった。
ロッキーは妻エイドリアン(タリア・シャイア)と共に観戦に来ていた。控え室に行き、声を掛けるエイドリアン。続いてロッキーが試合に関してコメントしようとするが、ジュニアはそれを無視するように帰ろうとする。人の話しを聞けと怒るロッキーだが、ジュニアは「アンタには関係無い」と突っぱねる。

翌日、ジュニアはポーリージムで練習を再開する。練習しながら、彼はこれまでのことを思い出す。周囲からは「ロッキーの息子だから強いのだろう」と言われる。ロッキーからは「俺の血を引いているのだから絶対にやれるはず」だと言われる。
プレッシャーの中で戦ったデビュー戦は散々な出来でノックアウト負け。取材に来ていた記者が「あれでもロッキーの息子なのか」「才能は引き継がなかったようだ」と言っているのを耳にする。それがさらにプレッシャーとなり、思うようなボクシングが出来ない。プレッシャーを打ち破ろうとするかのように、彼はサンドバッグを殴り続ける。

ロッキーの家で、彼とポーリーが話している。「あいつには才能がある。だが必要以上にロッキー・バルボアを意識して、違うボクシングをやろうとしている。だから強力なボディアッパーや右フックを持っているのに、あまり使おうとしない」とポーリーは話す。
ロッキーは「あいつは俺以上に強くなる素質がある。あいつはチャンピオンになれる男だ」と言う。話が終わり、ポーリーが去ろうとする。手を振ったロッキーだったが、突然胸を押さえて苦しみ出し、その場に崩れ落ちる。

病院に入院することになったロッキー。ポーリーに呼ばれ、ジュニアもやって来た。医者はエイドリアンやジュニア達に、ロッキーの体が病魔に侵されており、あと何か月持つかという命だと宣告する。ショックで倒れそうになるエイドリアン。一方、ジュニアは動揺しながらも平静を装う。
病室へ行くエイドリアン。涙をこらえ、気丈に振る舞う。ロッキーには不治の病だということを告知せずにいようと考えたのだ。ロッキーは「最近ちょっと忙しかったから倒れただけだ」と健康をアピール。エイドリアンは「しばらく休んで、元気になったら仕事に戻ればいいわ」と答える。

ジュニアの次の試合での対戦相手か決まった。連続KO中で世界挑戦を目前に控えているハードパンチャー、ジャック・ロドニー(ヴィンセント・ヤング)だ。確かに強いが、勝つためには少し汚い手も平気で使う。しかし上手くやるので、反則で負けるようなことは無い。
彼は実力ほどに知名度が無いため、彼の所属ジムは世界タイトル戦を前に名前を売ろうと「ロッキー」の名前を利用することを考えたのだ。世界挑戦の前の試合で負けるわけにはいかないが、ジュニアの成績を考えれば、絶対に勝てるとロドニー側は考えている。あくまでも調整相手としてジュニアを選んだのだ。

試合に向けて練習を開始するジュニア。ポーリーはジュニアに一度くらいロッキーの見舞いに行くように言うが、ジュニアは全く行く気が無い。ポーリーは怒り出す。そしてロッキーが影からジュニアのサポートをしていたことを話す。
ポーリーがジュニアに教えてきたアドバイスの多くがロッキーの言葉だったこと、金銭面やマッチメイクでもロッキーの援助があったことを、ポーリーはジュニアに話す。そして「あいつはお前のことを本当に愛しているんだ」と言う。黙って言葉を聞くジュニア。

試合に関する合同記者会見が行われることになった。ジャックは余裕の態度で記者の質問に答えていく。「ロッキーは偉大だったが息子は大したことがない」「これだけ違うということは、本当の子供じゃないのかもしれない」と嘲笑するジャック。
ジュニアは怒りを必死に押し殺していた。だが会見を病室のテレビで見ていたロッキーは今にもテレビを壊しそうな勢いで怒っていた。「自分が戦うわけではないのだから」と言って落ち着かせようとするエイドリアン。

練習するジュニア。サンドバッグを叩き、ミット打ちをやる。縄跳び、腹筋運動も欠かせない。さらにロードワークに励む。そして彼はロードワークの途中で立ち止まった。そこはロッキーの入院する病院の前だった。
病室では、ロッキーがエイドリアンと話していた。かなり病状の悪化しているロッキーだが、自分の体よりもジュニアの心配をしている。ジャックは病室の外で、2人の会話をこっそり聞いていた。

しばらく会話を聞いた後、ジュニアはそのまま帰ろうとする。しかし、その際に物音を出してしまい、エイドリアンに気付かれる。ジュニアはロッキーと顔を合わせることになった。
練習は上手くいっているか尋ねるロッキー。順調だと答えるジュニア。それほど会話は多くない。少しだけの会話の後、帰ろうとするジュニア。しかし立ち止まり、振り返ってロッキーに言う。「俺、今度の試合、絶対勝つよ」と。「ああ、頑張れ」とロッキーは言う。

いよいよ試合当日。ロッキーは病室でエイドリアンと一緒にテレビ観戦しているが、もはや体を起こすことさえ困難な状態になっている。やがて、ジャックとジュニアが入場してきた。
ジャックは余裕の笑顔を見せ、観客に手を振る。一方、ジュニアは緊張した面持ちでリングに上がる。そしていよいよ、試合のゴングが鳴らされた。

試合に入ってもジュニアを馬鹿にするような態度を取るジャックだが、第1ラウンドにカウンターで強いフックを当てられ、思わずダウンしそうになる。慌てて本気になって戦い始めるジャック。一方、ジュニアはこれまでと違い、まるで現役時代のロッキー・バルボアのようなファイトを見せる。
本気になったジャックだったが、第2ラウンド以降もジュニアの優勢が続く。そこで形勢を変えようとしたジャックは第5ラウンドにローブローを当てる。謝ってみせるが、わざとローにパンチを入れたのだ。うずくまるジュニア。何とか立ち上がるが、ダメージは大きい。

ローブローでダメージを与えたジャックが有利に立つが、ダウンを奪うまでには至らない。そこでさらにダメージを与えるため、第8ラウンドにはバッティングを仕掛ける。不可抗力をアピールするジャック。このバッティングでジュニアは額から流血し、視界が狭くなってしまう。
ジャックのパンチが見えづらくなり、ついに右ストレートを食らってダウンしてしまうジュニア。何とか立ち上がるが、さらにジャックのラッシュを浴びる。流血が酷くなり、ジュニアはドクターチェックを受ける。まだやれる、やらせてくれと頼むジュニア。試合は続行。さらにパンチを浴びるジュニア。もはや試合は一方的になりつつあった。

そして最終ラウンド。ゴングと共に飛び出したジャックのラッシュに、ジュニアはダウン。もう駄目なのか。しかしその時、彼の頭の中にロッキーの姿が浮かんできた。不屈の精神で戦い続けた偉大なボクサーの姿が。
立ち上がるジュニア。そして最後の力を振り絞り、ジャックにパンチを当てていく。激しい打ち合いの中、ジャックがフィニッシュブローの右ストレートを放つ。だがジュニアは左手で跳ね飛ばすようにガードし、ジャックのアゴに右フックを入れる。ジャックはダウン。カウントが入る。ジャックは立てない。ジュニアの大逆転勝利だ。

喜ぶジュニア陣営。リング上でジュニアを抱え上げるポーリー。テレビで観戦していたエイドリアンも喜びを爆発させる。「ジュニアが勝ったわよ」とロッキーに話しかけるエイドリアン。だが返事は無い。ロッキーは既に息絶えていたのだ。
リング上でインタビューを受けるジュニア。父親について質問され、「自分はロッキー・バルボアという偉大なボクサーの血を受け継いだことを誇りに思う」と答える。そしてテレビに向かい、「父さん、見てるか。俺は勝ったぞ。ロッキー・バルボアの息子は勝ったんだぞ」と叫ぶのだった。


<解説>

大ヒットしたボクシング映画『ロッキー』シリーズだが、『ロッキー5』ではロッキー・バルボアがコーチ役になってしまうなど、もはや続編は難しいようにも思われていた。しかしシルヴェスター・スタローンはこの『ロッキー』という作品を終わらせようとはせず、新しい形で続けることを考えていたのだ。
この作品が『ロッキー6』ではなく『新ロッキー』となっているのは、スタローンが息子セージを主役にした新シリーズを構想していたからだ。そこで『ロッキー』シリーズで主役だったロッキー・バルボアを殺してしまうという、思い切った手に出た。
この『新ロッキー』がシリーズ化されるかどうかは、今のところ不明である。

脚本はシルヴェスター・スタローンが担当。単なるボクシング映画にしたくないと考えたスタローンは、“親子の絆”を軸にシナリオを書き上げた。今回は製作総指揮も担当している。
監督は『ロッキー』『ロッキー5』とシリーズに携わってきたジョン・G・アヴィルドセン。音楽も『ロッキー』のビル・コンティが担当しており、製作も『ロッキー』シリーズのロバート・チャトフとアーウィン・ウィンクラー。ボクシングの技術指導も同シリーズのダップ・ハートリー。まさに『ロッキー』ファミリーが終結した形となっている。

キャストはロッキー・ジュニアにスタローンの実の息子セージ・スタローン。ロッキー・バルボアはもちろんシルベスター・スタローン。タリア・シャイアやバート・ヤングといったレギュラーメンバーが脇を固める。
ジュニアの対戦相手となるジャック・ロドニーには、テレビドラマ『ビバリーヒルズ青春白書』でノアを演じたヴィンセント・ヤングが抜擢された。他に5階級を制覇した元世界チャンピオン、シュガー・レイ・レナードが本人役でコメンテーターとして出演している。


<蛇足>

『ロッキー6』ではなく、あくまでも『新・ロッキー』。スタローンのことだから、ホントに『ロッキー6』とか作りそうだし。別にいいんだけどさ、できることなら同じタイトルは避けたいのでね。だから『新・ロッキー』にしておいた。しかしバージェス・メレディスがいないのは少し淋しいやね。

それにしても、意外に大変だなあ、この企画。もっとラクに作れるかと思ったら大間違いだった。ストーリーは自分で考えなきゃならんし(当たり前だけど)、スタッフやキャストを考えるのも思ったより苦労する。つらいのお。やっぱりこの企画、やらなきゃ良かったかも(もう泣き言かいな)。


なお、この映画は存在自体がフィクションです。
こんな映画、実際にはありません。

 

*妄想映画大王