Abraxas Poolのアルバムを手に入れた。存在を知ってからおよそ1年ぶりである。
インターネットでサンタナのコンガ・プレイヤーだったマイケル・カラベロの名前を入力して検索していて、偶然見つけたのだが、アルバムに参加しているメンバーのラインナップが衝撃的だった。

グレッグ・ロウリー (ヴォーカル、キーボード)
マイケル・シュリーヴ(ドラムス)
マイケル・カラベロ (コンガ、パーカッション)
ホセ・チェピート・アレアス (ティンバレス、パーカッション)
ニール・ショーン(ギター)
アルフォンソ・ジョンソン (ベース)

僕と同じように30年もの間、サンタナを聴き続けているオールド・ファンなら、このラインナップを見ればこころ動かされずにはいられないだろう。ベースギターをデヴィッド・ブラウンにして、ギターをカルロス・サンタナにすれば、そこにはたちまちデビュー当時のサンタナが出現するのだから。しかもニール・ショーンは17歳でサンタナに加入して3rdアルバムと4thアルバムの「キャラバンサライ」でカルロスと互角に渡り合った天才ギタリスト、アルフォンソ・ジョンソンもデヴィッド・ブラウンからダグ・ロウチ、デヴィッド・マーゲンと続いたサンタナのレギュラー・ベーシストの系譜に名を連ねていたし、それ以前はウェザー・リポートなどでも活躍していた名ベーシストだ。
そして何よりも、サンタナのリズムセクションを支えた3人、マイケル・シュリーヴ、マイケル・カラベロ、ホセ・チェピート・アレアス が揃い踏みをしている。3rdアルバム以降に、この3人が揃ってアルバムに参加したことがあっただろうか。3rdから「キャラバンサライ」に至るメンバーの離合集散の中で、シュリーヴとチェピートはバンドに残って次の「ウェルカム」のレコーディングにも参加したが、カラベロは3rdアルバムを最後にサンタナとは縁切れになっていたはずだ。
だから、欲しかった。いろいろと調べて見ると、国内盤もリリースされていたことがわかったが、既に廃盤だった。英語のできない身には、個人輸入はつらい。さりとて海外に知人がいるわけでもない。
そんなわけで入手する当てもなく、輸入CDを置いているCDショップに立ち寄った際に、惰性のように棚を見て回るくらいのことしかできず、半ばはあきらめていたのだったが。
それは、アーティストの名前をABC順に並べた棚の、Aのところで見つけたのではなかった。やはり見つからないのかと思いながらサンタナの棚を見ると、そこに……!
思いがけない邂逅に、いい年齢をして少しは動揺していたのかも知れない。Abraxas Poolと一緒に買って帰ったサンタナの「インナー・シークレッツ」は、何ヶ月か前に同じ店で買っていたのだった。
帰宅し、書斎のマッキントッシュを起動してヘッドフォンを装備した。マッキントッシュのCDトレイに買ってきたばかりのAbraxas Poolを乗せる。ややあって、ヘッドフォンからコンガとティンバレスの激しいバトルが流れてくる……そこからの50分は、僕にとってまさしく至福の時間だった。ラストナンバーの「jingo」では、グレッグ・ロウリーのハモンドオルガンが抑制された音量で懐かしいメロディを奏で始め、マイケル・カラベロのコンガが心地よいリズムを刻み始めると、思わず「来た、来た!」と叫んでしまっていたほどだ。
そこにいたのはサンタナだ。カルロス・サンタナというギタリストのファミリー・ネームではなく、バンドの固有名詞としてのサンタナが、そこにいた。カルロスがいようといまいと、この音楽がサンタナ以外の何だというのだ。
たとえば「すべては終わりぬ」や「祭典」や「グァヒーラ」や「ジャングル・ストラット」といった、初期サンタナの代表的名曲の間に、このアルバムに収録された曲を、どれでもいい、挟み込んで一緒に流したなら、そこに別のバンドの曲が挿入されているという違和感なぞ、誰も感じないに違いない。だが、それらの曲の間に、最近のサンタナのヒット曲である「スムース」を挿入したなら、きっと違和感を覚えるだろう。「スーパーナチュラル」は、サンタナの音楽がかなりラテンに回帰したアルバムではあるが、しかしそれほどに、今のサンタナとデビュー当時のサンタナとでは曲の樣相が変化しているといわざるを得ない。

「パーカッションと一緒に演奏するってことが、どんなに素晴らしいか、忘れていたよ」
ソロアルバム「Beyond The Thunder」でマイケル・カラベロ とホセ・チェピート・アレアス をゲストに迎えたニール・ショーンが、グレッグ・ロウリー に言ったこのひとことがこのプロジェクトの始まりだった。
「ニールがオリジナルのサンタナをやろうじゃないかって呼びかけてるんだ」
ドイツでレコーディングをしていたマイケル・シュリーヴは、電話の向こうからそう言うグレッグ・ロウリーの言葉に「そいつは魅力的なアイデアだ」と思った。
そしてグレッグ・ロウリーの家にアルフォンソ・ジョンソン を除く5人が集まり、ジャムセッションが行われた。
「何年もの間、離れずに一緒に演奏を続けてきたみたいな、ごく自然なセッションだったよ」
そうマイケル・シュリーヴは言う。
そうしてレコーディングされたのがAbraxas Poolだ。

Abraxas Poolはサンタナのいないサンタナといわれたそうだ。だが僕の感想は少し違う。Abraxas Poolはサンタナ以上にサンタナらしい、それが僕の感想だ。