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夢野久作の生涯は、波瀾万丈と表現せざるを得ない。明治の政界の裏面に縦横の活躍をしていた杉山茂丸の嫡男として出生し、幼くして母と生別を余儀なくされ、長じては杉山茂丸の嫡男であるがゆえの様々な試練を経て、漸く自我を解放し得る「探偵小説作家」となりながらも、父茂丸の死後わずか半年あまりで自らも急逝した。
久作の送った人生がどのようなものであったのかは、長男杉山龍丸が、その著「わが父・夢野久作」をはじめとする種々の著述を遺していることや、山本巌、多田茂治らの著作によってその輪郭は示されているし、やはり龍丸が編集した「夢野久作の日記」によって、一部分ではあるが久作自身による人生記録も読むことができる。
夢野久作は陸軍少尉の肩書きを持つ軍人である。禅宗の僧侶である。新聞記者であり、喜多流謡曲教授であり、郵便局長になったこともあった。そしてそれらの人生経験の上に立って、探偵小説作家であったのだが、同時に巨大な父の影と自我の相克に苦しむ一人の人間であった。
一人の人間の人生における他人との出会いや交友関係を辿る作業は、通常極めて困難である。夢野久作がもしも九州に蟠踞して探偵小説を書き続けただけの作家であったならば、その人的交流の様相を掘り下げることは困難であっただろうし、また自ずと限定された範囲でしか可能とはならないであろう。
しかし久作の場合は、前述の如き多彩な顔を持っていたことや、子息龍丸による著述活動、西原和海らの精力的な研究によって、幅広い人的交流の姿が我々の前に提示されている。そしてその姿を知るにつれ、久作の人生における父・杉山茂丸の巨大さも浮き彫りになってくる。
このウェブサイトは、夢野久作が生前に関わりをもった様々な人々の簡単な人物誌である。夢野久作という人物に迫るためのひとつのアプローチを提示できればと考えている。 |
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各項目の執筆にあたり参照した文献は、それぞれの項目の末尾に明記したが、「夢野久作の日記」(杉山龍丸編・葦書房・1984)及び「新潮日本人名辞典」(新潮社辞典編集部編・新潮社・1995)については、各項目に共通する基礎資料として参照したので、ここに一括して明記しておく。
なお、各文献の出版年は初出年ではなく、筆者が参照したものの版行年である。
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