ベトナム 国家芸術家/民謡歌手との交流 国立VOV放送局出演
●国家芸術家、そして民間歌手の両領域における民謡・および
少数民族芸能の取り込みと変容について
ホイアンにかつてあった日本人街の歴史を見るとわかるように、日本とベトナムの関係は意外に古い。
2001年10月13から15にかけて行われたベトナム文化交流では、現地の伝統音楽の現状について調査するのに加え、ベトナムを代表する二大音楽家と交流し、プロジェクトの真価を問うと
共に、今後のベトナムにおける音楽交流の方向性を探るという企画を展開した。当企画については、スポンサーシップに電通がつき、日本での放送をFM東京が担当した。音楽家の一人は、ベトナム初の国家芸術家、ド・ロック氏で、もう一人はギターと月琴の弾き語りで絶大な人気を誇る民謡歌手、キム・シン氏である。おふたりについて簡単に紹介をしておくと、ド・ロック氏はハノイ音楽大学で音楽を学んだ後、ベトナムの少数民族の文化研究に基づき、少数民族の楽器を改良して合奏楽器として取り入れること
を推進すると同時に、その奏法の発展にも取り組み、大きな成果を上げた。この実績により、国から表彰を受け、現在も管楽器・打楽器のトップアーティストとして国内外で演奏を続けている。
氏の実績としてよく知られているものは、中部高原の少数民族の楽器「ト・ルン」のバチの改良で、もともとは簡単な竹の棒であったバチを改良し、前後にヘッドをつけて素早い連打奏法を可能に
した。これによってトルンは高度な演奏技巧を駆使できるようになったのである。ホーチミン在住。来日した事もある。一方、キム・シン氏は南部の芸能であるカイルオンの活動に関わり、ベトナムの
民謡をもとにした同時代的なオリジナル作品なども多数作曲。ハノイ在住。
おおまかなツアー内容は以下の通りである。
1.ド・ロック氏宅での交流
2.キム・シン氏宅での交流
3.VOV放送局でのキム・シン氏とのコラボレーション
と、三木俊治インタビュー、番組放送。
4.帰国後、収録内容をFM東京より放送
【ツアー体制】
●日本側キャスト 三木俊治、三木理恵、木場大輔
日本側スタッフ 田中良和(電通)、坂上みき(FM東京)田口ランディ(作家)
●ベトナム側スタッフ VOV放送局、しのみどり(通訳)
ド・ロック氏との交流

氏の家に向うメンバー、三木理恵、木場大輔、そしてホーチミン大学の講師で、コーディネーターを勤めるしのみどり氏。

ド・ロック氏。
専門は竹製の打楽器と管楽器で、ナイフ一本で全ての楽器を作る。奥様も打楽器奏者としてアンサンブルの一員を勤め、世界を回られている。
演奏中の笛は尺八型の縦笛。

氏製作の笛。
横笛、縦笛、リード楽器などの材料は特注でタイグェン省から運ばれてくる。
それぞれの楽器の完成度はきわめて高いもので、芸術楽器の名に恥じるところはない。
左から3番目の竹琴のスティックが氏の発明したトルンのバチ。

日本の音階に調律された笛の実演。

三木俊治との合奏。

木場大輔が、交流用に編曲した「津軽じょんがら節・胡弓バージョン」を実演。

ひょうたん楽器による日本民謡はかなり興味をひいた。

「これは全く新しい音色の楽器です。創意工夫が素晴らしいと思います。」
とのコメントを得られた。

ベトナム交流用に開発した、ダンバウ(一弦琴)形の楽器「白鳥」の説明をしの氏から受けるド・ロック氏。
ベトナム音楽について真剣に研究をしているという日本側の熱意は伝わったようである。

次は木場大輔のソロによる12弦琴「大木」の演奏。
弾奏・擦奏などの奏法を駆使したプレゼンに対しては、「この楽器はインドのシタールのような感じや他の色々な楽器の要素が融合され、新らしい世界を作ることに成功しています」
とのコメントを得た。

次に、ド・ロック夫妻による竹琴「ト・ルン」の演奏。
曲目は、氏が作曲され、今やベトナム中のアーティストによって演奏されているタイグェン地方の民謡をもとにしたオリジナル「高原の春」。

これはインドネシアのアンクルンという楽器を改造したもので、超絶的な速さで演奏できる。

日本の尺八を改造した一つ穴の笛で、指を使わずに倍音だけでメロディーを演奏する。

ご一家と。
夕方からは氏の楽団によるライヴ。

サイゴン・ツーリストの主催する伝統芸能ライヴで演奏するド・ロック氏。
(右端)

各々の奏者の独奏風景。
キム・シン氏との交流

キム・シン氏宅。
左は奥様、中央がご令嬢。

2階から降りてこられたキム氏。
70過ぎという。愛想のいい好々爺である。

2階のダングエッ(月琴)、特製ギター、スティールギター、ダンチャイン(十六弦琴)などを演奏してくれるというので、誘いに甘んじて階上へ移動する。ここで、様々な民謡をじかに聞くことが出来た。
VOV放送局でのキム・シン氏とのコラボレーション

コラボレーションの舞台は、国営放送局VOVの来賓室で行われた。
「テロのせいで国際情勢の悪いときに遠い日本からきていただき私は大変感動しています」とキム氏から挨拶を貰う。

FM東京・坂上みき氏。

楽器のセットアップ風景。

ダンバオ系のひょうたん楽器「白鳥」の音色を聞き取ったキム氏が白鳥に興味を寄せる。

最初にキム氏の演奏で収録始める。
月琴伴奏によるベトナム民謡。

氏の特製ギターは、ネックの指板側が深くえぐれており非常に微妙なこぶしが表現できるようになっている。民謡や地域芸能をもとにしながら絶えず新たな音楽を生み出しつづけるキム氏、ド・ロック氏を見る限り、ベトナムのコンテンポラルの現状は、現代音楽というよりも「生きている伝統」という位置付けが適当であるように感じた。

日本で発売されているCDには収録されていない、琴伴奏による詩の朗誦を披露。

ハワイなどで用いられるスティール・ギターが改造され、彼のオリジナル楽器として常用されており、まるで一弦琴ダン・バオのような表現をするのには驚かざるを得ない。

しのみどり氏の「白鳥」とキム氏のスティールギターによるコラボレーション「シナの夜」。
日本の音とベトナムの音が溶け合う。

「ひょうたんの音を早く聞かせて下さい」とキム氏から要望のため、日本側のプレゼンに移る。
木場大輔が柿右衛門ジュニア(胡弓)を渡すと、全体にくまなく触れた後、いきなりベトナム民謡を演奏。続いての木場の「じょんがら」はキム氏より賞賛を受ける。

次にキム氏が低音弦楽器「マルチェロ」に触れて次々に高い評価を行う。
「創意工夫が素晴らしい」
「西側諸国は、このようなプロ用楽器を製作する勉強をする必要がある。」
「チェロは大きいが、(これは)小さいにもかかわらず素晴らしい楽器だ。」
「テンポの速い曲にも向いている。」

ひょうたんメンバーによる合奏「荒城の月」

キム氏のご子息。
この後VOVのスタッフによる三木へのインタビュー。
VOV放送局での放送

3日目。
VOV内に案内され、チーフ・Ngocさんをご紹介頂く。(左端女性)
「テロの危険の中、よく来られました。怖くありませんでしたか?」とねぎらいの言葉。
我々の番組は、この後、一日三回に渡り「日・越音楽交流」として放送された。
楽器製作現場の調査とアーカイヴ

ハノイ北部の楽器店街

ベトナムの楽器店は家内制手工業で、工房と一体化した店の前で何人かの職人が分業して楽器をせっせと作っている。
「ものづくりが生きている」
という実感がある

伝統芸能「水上人形劇」の演奏家が経営する高級楽器店内部。