品川正治さんの言葉
      (経済同友会終身幹事)




     『 戦争を始めるのも人間、止めるのも人間 』

     九条がつくる21世紀日本のかたち

      21世紀の「国のかたち」を決める上で、日本は何よりも「平和憲法」を守りぬき、
      国家の理念として座標軸にすべきである。私は経済人の一人として、
      平和憲法をもつ日本の経済システムはどうあるべきかを明確にする必要がある
      と考えてきた。平和憲法にふさわしい経済システムを早く確立しなければ、
      理念だけで終わってしまうのではないかと危機感も強い。経済の成長主義に
      とらわれている限り、平和憲法をまもるのはそれだけ困難になる。軍産複合体の
      推進、経済大国としてのアジアでの主導権争い、経済のグローバル化に
      伴う海外派兵へ道を開くからだ。


      九条を変えたら国のあり方が変わる

      戦争に大義があるか、という問いの大切なことは言うまでもない
      しかし、戦争をはじめてしまえば、すべての力は「勝つため」に動員され、
     「勝つために」との価値観が、すべての価値観の最上位にくることは
      用の東西を問わず主権国家の宿命である。
      科学も技術も文化も思想も「勝つ」ために動員され、国家主権は寸毫の余地も残さず
     「勝つ」ことに全力を傾注する。これが戦争であり、それは大国と小国とを問わない。
     経済も外交も戦時体制、すなわち「勝つ」ことが最上位の目的として行われる。
      アメリカの国益とは今やアメリカの勝利をおいてほかにない。
     すでにグローバリズムは資本主義、市場経済の普遍化を求める言葉ではなく、
     アメリカの戦略用語、石油資本、軍需産業さらにはアメリカの金融資本の世界支配
     の用語になりつつあるのである。
     アメリカはいまや名実ともに戦争国家である。

     私は、理想主義者ではない。大義の戦争もないと断じ戦力を保持せず、
     国の交戦権を認めない「九条二項」が20世紀において国際的に
     普遍性があるとは考えてはいない。それは日本国民の
     「終戦=二度と戦争をしない」という決意と中国をはじめアジアに対する
     贖罪から生まれた日本にしかない理念である。
     ところが、戦後の支配階級や支配政党は、その決意を一度もしたことがない。
     しかし彼らは国民の九条に対する思いの強さから、改憲は無理と考え、
     条文を変えないまま解釈改憲を重ねてきた。
     その結果、九条二項の旗は今やボロボロになっている。
     だが、国民は旗竿をまだ放していない。

     どう戦略的に九条を守っていくか。この問題がいま生きる、われわれの
     真の課題だと思っている。現在の憲法の危機的状況を乗り越え、
     国民が九条を守りきったならば、日本の21世紀の姿は大きく変わる。
     アメリカに追従する外交が大きく変わり、
     国際社会における日本の位置づけが大きく変わり、
     日中関係を含めたアジアの情勢も変わらざるをえなくなる。

            著書 『9条がつくる脱アメリカ型社会』青灯社 から抜粋



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