オバマ大統領と日本のノーベル賞受賞者 
                  
      アメリカでは初の黒人大統領が誕生し、世界中から期待が集まっています。
    経済政策とともに注目されているのが環境への取組み。
    ブッシュ政権時の京都議定書からの離脱に始まり、
    アメリカ抜きでは意味を成さない地球環境へ施策、
    世界の足並みをそろえる意味でも大胆な政策転換が期待されるところです。
    昨今バイオエネルギーは、原料となる穀物の原価高騰によりそれを食料と
    してきた人たちへ十分供給されなくなるなど深刻な問題を引き起こしています。
    先進国のエネルギー需要を満たすために餓える人が出るということは
    あってはならないことです。
    地球温暖化の主な原因とされるCO2を削減するということが言われますが、
    ガソリン車からハイブリッド車へ、省エネの電化製品へ、自然エネルギーの活用、
    これらはいいとしても世界レベルで電力供給へまた原子力発電が進みそうな
    懸念があります。
    ポーランドは1980年代に国民の反対で原発建設計画を中止しましたが、
    エネルギーのロシア依存を下げるために2020年までに原発を稼働させるとして
    最近はフランスへ協力要請をしているようです。
    同様にスロバキアやブルガリアも
    停止している原発の再稼働をする準備を進めています。
    ドイツも2021年までにすべての原発をとめるとしていた決定を見直す動きがあり、
    また今まで原発を持たなかったサウジアアラビアをはじめとする中東産油国が
    競って原発建設を計画しています。
    そこには石油は外国へ売る商品であるということと核保有国に後れをとらない
    ということがあるようです。
    またインドはすでに原発を稼働させていますが、
    昨年インドへの核関連の輸出が例外的に解禁されたことをご存じでしょうか。
    これは重大なことです。1974年にインドは核実験を行ない核兵器を持つ国に
    なっています。
    しかもNPT(核不拡散条約)に加盟していません。
    NSG(原子力供給グループ)は核燃料、原子炉、核関連技術を制約することで
    核の拡散を防ごうと作られたもので日本を含む45カ国が加盟しています。
    インドはNSG輸出禁止国でした。ところが昨年ウイーンで開かれた会合で例外的な
    決定がされました。
    これもエネルギー不足のインドに地球気候変動へ影響の少ない原発を
    進めるためだそうです。
    ウラン鉱石はインド国内でも産出しますが、核兵器と原発と両方に
    使えるほど十分ではありません。
    その国へ原発用にと核燃料、原子炉、核関連技術を輸出することの
    危険性は大だと言えます。
    同様にパキスタンも欲しいといったらどうなるのでしょうか?
    この例外的措置はNSGで議論され、
    反対していた国もありましたが、アメリカの主導で最終的に全会一致でインドへの
    解禁が決まりました。
    なぜでしょうか?
    ここには核輸出という大きなビジネスチャンスが潜んでいるからです。
    採決前に日本の超党派の国会議員51名が政府に対し賛成しないように
    要望書を送りましたが、
    日本政府は賛成票を投じました。
    核の恐ろしさを十分に知っている唯一の被爆国である日本の責任は
    大きいものがあります。
    またアメリカは世界最大の武器輸出国です。
    地球温暖化対策との大義名分で核技術までもが商取引の材料にされている現状を
    オバマ大統領は是正する用意はあるのでしょうか?注目したいところです。

      日本にとっていいニュースもありました。
    昨年は日本の科学者4人が同時にノーベル賞を受賞しました。
    その中のお一人で化学賞を受賞された下村 脩(しもむら おさむ、クラゲ博士)氏は、
    授賞の記念講演の冒頭、
    16歳の時に体験した原爆投下で廃虚となった長崎の写真をスクリーンに映し出し、
    核の脅威を科学者としてアピールされたそうです。それは下村氏の科学者としての
    良心なのだと思いました。
    日本で初めてノーベル賞を受賞された湯川秀樹博士も
    核兵器と戦争の廃絶を訴えたラッセル=アインシュタイン宣言(1955年)の
    署名者の一人となり科学者の社会的責任を明確にされ、
    その後世界平和アピール委員会を発足され平和憲法の尊重と核兵器廃絶に
    積極的な発言を生涯続けられました。
          今回物理学賞受賞の益川敏英(ますかわとしひで)氏も
    その理念を引き継ぎ、
    授賞の記念講演で「自国が引き起こした無謀で悲惨な戦争」
    という表現で太平洋戦争に言及された。
    世界中から受賞者が集まる受賞式でそのような話をされた原点は
    「科学の成果は平和に貢献しなければならず、
    政治が悪ければ研究成果が戦争に利用される。」ということにつきると思う。
    最近の新聞報道によると、益川氏は憲法九条(戦争放棄をうたう平和憲法)が
    危機にあるなら研究活動に代えて反戦運動へ軸足を移すと発言されている。
    実際、日本を「戦争のできる国」に戻したい人たちが改憲に動いているという
    政治的状況があるのです。
    国際貢献は軍隊を送ることだけでなく、
    平和憲法をもつ日本がモデルケースとして
    できることはたくさんあるのではないでしょうか。
    戦後60年以上がたち、戦争経験者が少なくなり核だけでなく
    戦争の恐ろしさそのものまでもが風化し、
    テレビの画面でまるで映画のシーンのようにミサイルが飛ぶ映像を見る私たちへ
    「核兵器と人類は共存できない。」という科学者からのメッセージだと思いました。
    日本政府の一部首脳の「日本も核兵器を持つ議論くらいしたっていいじゃないか・・」
    というような節操のない発言への戒めでもあるのでしょう。
    また益川氏は、世界中が期待するオバマ大統領誕生について、
    黒人差別が当然とされてきたアメリカで黒人大統領が誕生するなんて誰が信じただろう。
    だから楽天的に考えれば200年後には戦争だってなくせるかもしれないと・・・・
    200年も待たなくても私たち一人ひとりの思いと行動があれば
    もっと早く核兵器も戦争もなくせます。核も不拡散ではなく全廃できます。
    エコライフが一人ひとりの自覚でできるのと同じように核廃絶へ
    みんなでアピールを繰り返しましょう。

    核兵器は悪魔の武器であり、
      核廃棄物は最悪のゴミであり、
        戦争は最大の環境破壊です。




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