あとがき
この作品は当初、20ページ程度の短編になる予定でした。だから設定メモを作ったりせず、頭の中で考えたまま書いていきました(ちなみに私ってメモを書くのが苦手なんです)。結果的に三倍以上の長さになってしまったんですが、自分の中では自然な流れでした。
「恨みは、どこまで人を駆り立てられるか?」というテーマで書き始めたのが、執筆中にあれこれ考え初めて、いつの間にか「“恨みを晴らす”とはどういうことか?」になっていました。世の中には話の通じない人、考えのかみ合わない人がいます。そんな相手に対して、どうすれば思いを伝えることができるのか? そう考えたら矢も盾もたまらなくなり、急遽ストーリーの軌道修正をおこないました。
タイトル先行で構想を練り始めたとき、登場人物を日本人でなくそうとか、外国を舞台にしようなどということはまったく意識していなかったのに、気づいたらそうなってました。今となってはどういう経緯で着想を得たのか覚えてないんですが、空から降ってきたストーリーをそのまんま形にしたという感じです。
ロンドンは20年前に一度訪問しただけで、ニューヨーク、ブラジルは一度も行ったことがありません。ニューヨークは、テレビやインターネットで情報が得られたし、映画や海外ドラマでもなじみの街なので、イメージしやすかったですね。
問題はブラジル。テレビで紹介されることがあっても、これまで意識して観ていたわけじゃなかったので、いざ書くとなると弱りました。半年ほど前にNHS-BSで放送された番組がかろうじて記憶に残っていたのが唯一(その時はまさか小説舞台にしようなんて想像もしていませんでしたが)。それは『アマゾン・サル進化の最前線を行く』という番組で、作品中にも登場したサル、ウアカリの調査に関するものでした。じつは作品を発表する直前の10月8日に再放送されたので、観ていたらなんと、マナウスもチラッと映った! でも港だけだった! 書き直すことはありませんでしたが「浸水林」という言葉だけ使わせてもらいました。
今回は初めて一挙公開という方法をとりました。少しずつじゃ読みにくいというご意見もあったのでやってみたんですが、書いてる途中で最初の方を書き直したりできるのがありがたかったですね。反対に、書き終えるまで手応えがないので、たえず不安が付きまといましたね。やっぱり小出しに書くのがいいな。
まだまだ意あって力足らず。さらに修行をつづけます。今後とも、どうかごひいきに…。
2004年10月18日 作者記す
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