玉置浩二の魅力

 ヴォーカリストとして

 繊細で情感のこもった曲、パワフルな曲など、幅広いジャンルを歌いこなせる力量を持つ。
 前者の代表は『恋の予感』『コール』、後者のそれは『じれったい』『キ・ツ・イ』あたりだろうか。
 玉置浩二は、歌詞の一文字一文字を、非常に大切に歌う。
 今、日本のポップス界の状況はラップの影響もあり、言葉をめいっぱい詰め込む傾向にある。情報理論の言葉で言えば、玉置浩二の曲はその文字の少なさゆえ「情報量が少ない」となろう。しかし私には、あの早口でまくし立てられる流行の曲など比較にならないほどのものを玉置浩二の声から伝わってくる。
 玉置浩二は歌がうまい、と言われることが多い。私もそう言う。
 しかし私流に説明すると「日本人のこころを日本人の胸の奥底深くに誰よりも伝えられる希有の歌手」となる。

 作曲家として

 よくこんなに無理のないメロディを作るもんだと感心させられる。無理のない、とは換言すると「むかしからあったような」とも言える。作曲したことのあるひとなら分かるだろうが、そういう曲を作ることがいかに難しいか。
 そしてこれはヴォーカリストの魅力にも通じるところだが、作るメロディがじつに日本的なのである。何が日本的であるか説明せよと言われると困るが、メロディから日本の風景が浮かんでくる、ということなのだ。
 私の好きな歌手にもうひとり飛鳥 涼がいる。彼のメロディは大陸的と評されることがある。その彼はいま世界に撃って出ている。私は日本を代表する歌手として、次に玉置浩二に世界に出ていってほしい。日本的ということで世界に紹介したいのだ。期待している。


 作品批評

 『安全地帯I』を初めて聴いたのは、『VI』が発表された頃だったと思う。なんちゅ〜あっけらかんとしたアルバムや!とビックリしたような記憶がある。タイトルがほぼ全部英語だったし。まだ松井五郎氏は入ってなかった頃であり、安全地帯としては実に異質。洋楽っぽいのである。玉置浩二のヴォーカルもまだ細い印象を受ける。
 『ワインレッドの心』のヒットに端を発した安全地帯の1980年代の驀進はすごかった。『安全地帯II』はその『ワインレッドの心』や『真夜中すぎの恋』など現在でも皆がよく知っている大ヒット曲を収録した全10曲より構成され、まさにスキのない作品。「夜の都会」「危ない恋」の似合うバンドであった。
 『安全地帯III 抱きしめたい』は前作の延長ながら、大ヒット曲『恋の予感』より感情を抑え、深化した楽曲が目立つ。『Lazy Daisy』『Kissから』といった明るめの曲があるにもかかわらず、シングルの影響で、一般的なバンドイメージは変わらず。
 『安全地帯IV』の頃、玉置浩二が賭とも言った『悲しみにさよなら』が大大大ヒット。現に今でもCMに使われたりするからねぇ。私はこの曲のスケールの大きさにようやくファンになったのであった。それでこのアルバムが私が最初に買った1枚。『夢のつづき』など隠れた名曲もあり。
 『安全地帯V』。ここでクリエイター安全地帯が爆発する。LPで3枚組、CDにして2枚組という超大作で世に問われた。私は「安全地帯のホワイトアルバム」と呼ぶが、ここに収録された曲の中には、単なる1枚のアルバムであれば間違いなく落ちていたであろう曲もたくさんある。だが逆にそれが従来の枠を超えた歌詞や演奏やアレンジを表現する場となり得たのである。語弊があるかも知れないが、歌謡曲提供者から音楽制作集団に変貌を遂げたと言っても過言ではないくらいの変わりようである。
 『安全地帯VI』は再び1枚のアルバムであるが、その分、完成度は高い。私は安全地帯史上最高の作だと思ってる。だからひとにも安全地帯入門編として奨めている。実際に奨めた。買わせたぞコンサート会場で。それはさておき、『I Love Youからはじめよう』『Shade Mind』のような、従来になかった「力強い安全地帯」という要素が初めて前面に出た。彼らもそれが気に入ったのか、以後、楽曲にもそれが定着した感がある。
 『安全地帯VII』はしばしの活動休止期間を置いた後に発表された。おりからのバンドブームの影響を受けたのか、それを意識した作品群である。ただ前作までの上り調子に比べるとトーンダウンした感じがする。どこがどうとは言いにくいのだが、しいて言えば、心に残るバラードが無いこと、バンド的な楽曲によるアレンジの薄さ、従来の焼き直し的な作品の存在、などであろうか。あぁこんなこと言わんといたら良かった。し、しかしながら、『きみは眠る』は大変気に入った。見事な曲である。なにせこれに影響された私も1曲作ってしまったくらいだから。あと『この道は何処へ』をヒントにしても1つ作ったな。
 『安全地帯VIII 太陽』になるとさらに私の評価は下がる。どうもアルバムを通してすきま風を感じるというか。シングル曲である『いつも君のそばに』でさえ目新しいものでなく、退行してるのでは、とまで思ってしまった。

 さて次に玉置浩二のソロ作品について。
 『All I Do』は、まるでヨーロッパ映画を見ているような異国情緒たっぷりのアレンジで披露された。玉置浩二のヴォーカルの繊細な部分を全面に出して構成された作品群は出色の出来のものが多い。『Hong Kong』『Only You』なんて好きやなぁぁぁ。
 『あこがれ』は発表時期を大きくずらし、歌詞の全面入れ替えまで施された作品。なんといっても聴きものはシングルになった『コール』。見事に歌い上げられている。アルバム全体として抑えられたアレンジのためか、かなり華やかさには欠ける。その分、つい寂しさを感じてしまう。
 『カリント工場の煙突の上に』。会社を移籍しての第一弾。玉置浩二の出身地である北海道、旭川の風土や子供の頃の思い出などをテーマに作られたのでは?と思える作品。最初に聴いたとき、いま未だにその曲調の従来とのギャップに慣れたとは言えない。少なくとも現在の音楽シーンの対極を目指したと言えるだろう。旭川の実家の自分が育った部屋にひとり座って、ギターをかかえて口ずさんだままCDにした、という雰囲気だ。
 『ラブ ソング ブルー』。アルバムとしては納得いかん。元来「玉置浩二の音楽は、世の中の景気の良い時に受けるもので、景気の悪い今はじっと忍耐の時期」が私の持論である。景気の悪い時期には元気な曲が受けるのである。だから玉置浩二にはせめて前作の延長で作ってほしかった。なのにこのアルバムにも収録されている『LOVE SONG』がシングルになってる。正直なんでこんな暗めの曲で・・・と思いました。それでも好きな曲はある。例えば『正義の味方』は元気でいい。それから『最高でしょ?』はかつての安全地帯のにおいがするので好きだ。これもひとまえで歌ったことがあるな私。
 そして遂に『CAFE JAPAN』が登場する。発表前にシングルの『田園』がドラマの主題歌であることも手伝ってかヒットした。久々にベストテン入りした。ファンとしてはやはりうれしい。余勢をかってアルバムの売れ行きも好調だったようだ。このアルバムの批評はもう少し時間を置きたい。

 今年1997年は、安全地帯も再始動するといううれしいニュース。残念ながら武沢 豊氏の参加は希望薄なので心配だが、とにかく見守っていくつもり。バンドとしてソロとして、これからも大衆に迎合せず、歌を大事にした音楽を作っていってもらいたい。40代を迎える彼らにしかできない大人のラヴソングもしくは人生の歌を作っていってほしいと願ってやみません。


 雑感

 玉置浩二は童謡が好きなようだ。コンサートでも『小さい秋みつけた』『かあさんの歌』などを歌い上げている(私の知る限り)。童謡ではないが『見上げてごらん夜の星を』(坂本九の歌)を歌ったりもしている。驚くべきは、これらの歌を玉置浩二が歌うことで、歌の持つ魅力を再発見することだ。考えてみれば童謡は愛唱歌でもあるから、誰もが簡単に歌えるようなメロディであることも条件の一つ。だから逆に歌い手の上手い下手も明白に出てしまうと言えまいか。玉置浩二の歌う童謡は不思議に心に沁み入ってくる。玉置浩二の手による作品にも『ゆびきり』『夢のポケット』など童謡チックな曲がある。NHKあたりで企画してくれないかな、『玉置浩二の日本の歌ショー』なんてね。