8月15日(月)


コロッセオ外観  横に寝ていたヤツの声で目が覚めたここはローマのテルミニ駅前広場。
 わりかし眠れたな。
 スリやかっぱらいの出現を心配していたが、荷物も私も無事だった。
 まだ午前7時か。
 宿探しには早すぎるので、そのまま横になっていた。
 やっぱり背中が痛い。

 ウツラウツラとしていた8時頃、駅員が“Hello!”と言いながら、寝ている若者たちの足の裏を蹴り飛ばしながら回ってきた。
 そりゃこんなに寝袋が駅前を占拠していると迷惑だよなぁ。
 私は起き上がり、荷物をまとめて独立広場で手と顔を水道で洗い、しばらく時間をつぶしていた。
 ようやく9時を回ったところで宿を当たり始めた。
 しかしどこもNo!。シングルって極端に少ないのか、それとも全くないのか。
 グルグル歩き回った後、駅へ戻ってTourismを訪ねるが、まだ閉まっている。そこで“10時になったらもう一度来い”と言ってた宿に再度アタックをかけるが、再びNo。
 もうドミトリー(相部屋)でもイイやと、『地球の歩き方』の一番頭に載ってる所を訪ねた。
 そこも探し当てるまでに時間を要したが、発見して入口脇のインターホンで話すと「まぁ上へ来てくれ」とのこと。
 上がると宿の若主人が出てきた。
 「ここはfullだ。CINAならドミトリーだけど空いてるよ、電話して予約してやるわ」と若主人。
 “Thank you”と私はホッとした。そしたら主人、
 「コンニチワ」
 日本人だから、何でも日本語使えばイイと思ってる。まぁおかげで助かったし、
 「ありがとう」
と告げてその宿を出た。
 すぐさまCINAという宿へ向けて走った。
 あぁ疲れたぁ。
 しかしまだその宿とやらは開いてないぞ‥‥‥まだ開かん‥‥‥オイ、どうなってるんだ。
 今日は休みか!?‥‥‥様子がおかしいぞ。
 イライラしていると向いの建物から学生っぽい外人が出てきた。
 私は声を掛けた。
 「すいませぇーん。このCINAっていう宿、休みなんでしょうか?」
 「エッ、そこ映画館ですよ」

 振り返って看板をよく見ると“CINE”と書いてある−−−。
 「CINAはここです」と学生。
 彼が出てきた建物にちゃんと“CINA”と表示が出ていた。
 中へ入り階段を昇って行くと思い出した。
 ここは夕べ来たぞ。
 でもシングルないかとたずねたのでNoだったのだ。CINAの主人が出てきた。
 「もういっぱいなんだが、ベッドをもう一つ入れてやるよ」
 ようやく宿が決まったわけだ。
 良かった良かった。
 体はだるいが腹が減っていたので出かけることにした。

 Totteriaとある。つまりはレストランのことだ。
 これまで私はたいていマクドナルドのようなファーストフードを愛用してきた。
 その理由は、国による違いが小さく、しかも利用が簡単だからだった。
 今のところローマでは見当たらないし、たまにはまともな食事もいいだろうと思って私は中に入った。
 店内は決して綺麗ではなく、いささか暗い雰囲気の中に木製の机や椅子が少しばかり置いてあるぐらいだ。
 いかにも大衆食堂という感じ。
 私の他に女性客が2人。店の家族も食事をしていた。
 メニューを見せてもらったがイタリア語を解しない私にはさっぱりである。
 主人はTourist?と私に尋ね、旅行者用のメニューを出してきた。
 8,000リラと書いてある。1,360円だ。
 待っているとスパゲティ、パン、鳥肉、サラダ、そして小っちゃなカップに入ったコーヒー。
 パンは固くてボロボロこぼれてしまった。
 さて勘定となってからがタイヘンだった。
 私は10,000リラ札を出して釣りを待っていたのに、向こうは受け取っていない、どうのこうのとイタリア語で文句を言ってきた。
 私も憤慨して、財布や荷物の中味まで見せろというのでリュックをひっくり返した。
 険悪な雰囲気が店を包み始めた。
 すると客の中に英語とイタリア語の両方を喋れるカップルがいて、私達の間を取り持ってくれてなんとか怒りを鎮めることができた。
 カップルの女性の方が言うには、
 「5,000リラ返してもらったから、これ受け取ってチャラにしなさい」
とのこと。
 不満タラタラの私もそう言われちゃ、これ以上喧嘩するわけにもいかず、店を出た。
 あぁぁぁケッタクソ悪ぅ〜。

コロッセオ中  テクテク歩いて行くと見えてきましたコロッセオColosseo
 コロセウムとも呼ばれる古代ローマを代表するこの遺跡は日本でも最も馴染みのあるものの一つだろう。
 近くの店でミネラルウォーターを買って(久しぶりに炭酸ガス無し)、コロッセオの中に入った。
 ここは闘技場であるから中央に闘うための場所があるはずなのだが、見えるのは、床面の高さ以下にある細かく仕切られた部屋。
 『地球の〜』によれば、猛獣の檻だったという。
 ないのは床だけでなく観客席もだ。
 中世以後、使用されていた石材が次々とはぎ取られたため、今のような姿になってしまったらしい。
 かつては4万人を収容していたそうだ。
 当時、コロッセオでは実に残酷な格闘ショーが催されていたとのこと。
 人間対人間、人間対猛獣など、どちらかが死ぬまで続けるという、血を見ずにはおかない狂気の見せ物に市民は狂喜したとか。

 続いてコロッセオの側にあるフォロ・ロマーノForo Romanoへ入る。
 ここも古代ローマの遺跡群でいっぱいだ。
 当時、市民生活の中心であった広場だという。
 神殿や凱旋門などがあるのだが、どれもボロボロでいつ崩れてもおかしくない。
 2,000年前の栄光か‥‥‥

真実の口  暑い。
 それでもドンドン歩いて次はベスタの神殿。
 この名前よりも“真実の口”のある建物と言った方がいいだろう。
 映画『ローマの休日』でオードリー・ヘプバーンが手を突っ込んだ、ライオンの顔をしたマンホールの蓋である。
 神殿の入口の脇に、柵もしないでポコッと安置してある。
 誰もが手を入れたり撫でたりするものだから、随分すり減っている。
 建物の中で絵はがきを2枚買った。
 テベレ川沿いに行くとトイレがあったので、好都合と用を足す。
 排水が悪いのか流れていかないので、入口に水溜まりになってるぞぉぉぉ。
 このテベレ川。
 その昔、この河畔にローマ人が集落を営み、ローマという都市国家を形成していったのは、ここがテベレ川の唯一の渡河可能な地点であったからだという。

 街中を歩いて歩いて、白亜のエマヌエル2世記念館、緑のベネチア広場を通り過ぎて、トレビの泉へ辿り着いた。
トレビの泉  街中の狭い場所にあるのには驚いた。テレビで観ると広く見えるのは、広角レンズなどを使ってそう見せているんだろうな。
 名所中の名所だけあって観光客でいっぱいだ。
 馬車も目につく。
 後向きにコインを肩ごしに泉へ投げている人があちこちに見られる。
 泉に入ろうとする人間に厳しく注意している警官もいる。
 私も100リラ硬貨を投げ入れた。またローマに来れますように。

 そしてスペイン階段
 ここも『ローマの休日』で有名。
 ヘプバーンがアイスクリームをなめた場所だ。
 早速私も階段を昇り、アイスクリームを買った。
 真っ白の階段では若者達がギターを弾きながら歌っていたりして、のどかな昼下がり。
小舟の噴水  階段の下にある“小舟の噴水”にも人だかり。
 湧き出る水を皆交代に飲んでいる。
 旅行に出る前「ヨーロッパでは絶対に生水を飲むな」と言われた私だが、噴水の水は結構冷えているのだ。
 生温いミネラル・ウォーターで我慢できるか。
 ガブガブ飲んてやったい。
 既にここへ来るまでにあっちこっちで飲みまくって来たから、今更遅い。
 ローマでは、街角毎に水が湧き出る水道があって、まるで飲んでくれと言わんばかり。
 これがまた旨いからたまらない。
 明日の体調より今日の快楽じゃぁぁぁ。

 陽光も弱くなり、ローマにも夕暮れが訪れ始めた頃、私はテルミニ駅そばの宿へ戻ってきた。
 そして同室にいた2人の日本人男性に声をかけて夕食に出かけた。
 一人は昭和36年生まれの二浪で入った大学2回生、もう一人は昭和38年生まれの現役入学の大学3回生。
 食後暗くなった街中で車の屋台を見つけ、ビールを飲んだ。
 冷えてないぞぉぉぉ。
 これなら水道の水の方がマシだ。




《データ》
8月15日 月曜日
天候晴がつづく
訪問地Roma
宿泊先LOCANDA CINA(Via Monte Bello,114 int.8,P.3゚,3rd floor)
宿泊料8,000Lit
食事Totteriaパン,サラダ,鳥肉,スパゲティ,コーヒー
Totteriaパン,オムレツ,サラダ,野菜スープ,フルーツサラダ
出費ミネラル1,500Lit(255円)
絵ハガキ450Lit(77円)
トレビの泉へ100Lit(17円)
アイス2,000Lit(340円)
夕食+ビール10,000Lit(1,700円)
宿泊料8,000Lit(1,360円)
合計22,050Lit(約3,750円)