1997年9月3日
この日はパロという町の山の麓にあるタイガーネスト・リゾートというコテージ風のホテルに泊まっていました。
ここからはタクツァン・ゴンパを見ることができます。
朝7:30にホテルを出発して、標高約2900mの断崖絶壁に建つタクツァン・ゴンパを目指してトレッキングしました。
ゴンパに向かう道の横にはウマを数頭飼っているところがあり、聞くところによるとウマでゴンパまで行くこともできるようです。
小さな釣り橋を渡るとあとはひたすらゴンパに向かう野道が続いてます。
途中にはドツォと呼ばれるブータン独特の石を焼いて入る露天の風呂なんかもありました。
最初は坂も緩やかでハイキング気分でしたが、しだいに上り坂も急になってきてだんだんと息づかいも荒くなってきました。
いつまでたっても目標のゴンパは見えず、あとどのくらいかかるのか見当もつきません。
カメラも重くなってきたので、ガイドの人が気を効かせて途中から持ってくれました。
ガイドの人は登り慣れているせいか何ともないようです。
何回か休憩をとり、ようやく目の前にダルシンがはためく建物が見えてきました。
ダルシンとは経文旗と呼ばれる祈りの旗です。

ここまで来るとタクツァン・ゴンパ見えるカフェ・テリアはもうすぐだということです。
そしてホテルを出発して約2時間、ようやくカフェ・テリアに着きました。
ここからは断崖絶壁に建っているゴンパがよく見えます。
やはり3000m近くもなると冷たい空気が肌を刺し、空気も薄いと感じますが気分は最高です。
ここで飲んだミルク・ティーはとてもおいしかったです。
カフェ・テリアで休憩後、さらに上の方に展望台があるのですが、そこまで行ったら帰って来ようということになりました。
というのは現在は外国人は展望台までしか行くことできず、ゴンパには入れないということだからです。
入るには前もってパーミットを取得してなければならないということでした。
さらに続く坂道を登り続けると30分程で展望台までたどり着きました。
ここではさらに間近にゴンパを見ることができます。

しばらく休憩していると欧米人数人と彼らのガイドがやって来ました。
彼らもここで休憩してましたが、どうやらゴンパまで行くようです。
ガイドの人が「お前も行くか?」と言ってくれたので、こんなラッキーなことはないと思い、もちろん同行しました。
あとでわかったことですが、彼らはパーミットを取得していました。
ちょっと歩いた所に小さなチョルテンがありそこからはしばらく下り坂が続きます。
断崖絶壁の続く人一人がようやく通れるような細い道を歩き続けます。
滑ったりしたらまず命はないと思います。
ガイドの人も「ゆっくり、ゆっくり。注意して!」と言ってくれます。
下り坂が終わるあたりから「ゴッー」というもの凄い音が聞こえてきます。
見上げれば遥か山の頂上あたりから流れ落ちてくるような感じのする滝がありました。
これには自然の壮大さを感じました。
滝の水しぶきを浴びながら歩くともう目の前にゴンパがあります。
そして最後の登り坂を上がりきるとゴンパに到着です。
ここはもう下界とは全然違う世界でした。
よくこんなところにゴンパを建てたものだと感心します。
僧侶に案内され、ゴンパ内に入れてもらいました。
まず案内されたところは小さな窓から光が入るだけ小さい部屋で、奥の方は暗くてほとんど何も見えないところでした。
ここで中欧米人達は座り、静かに瞑想をし始めました。
実は彼らは熱心なブッデストでした。
ここにこうして座っていると、静寂な空気が伝わってくるのがわかりました。
そして、欧米人や僧呂といることがすごく不思議に思えてきました。
次に階上の部屋に案内され・・・ここが本堂と思われますが・・・金色に輝くグル・マサンババの像、仏画などがありました。
欧米人の人達はブータン式の五体投地を始めました。
僧侶の方からは聖水をいただき、少し口に含み残りは頭につけました。
そして、再び階下に降りて、最後に案内されたところにはトラに乗ったグル・マサンババの像がありました。
トラはよく見ると仰向けに倒れている二体の人の上にいました。
こうして短い時間でしたが、なんとも言えない静寂で落ちついた時間を過ごすことができました。
そして、親切に案内していただいた僧侶に別れを告げてもと来た道を戻りました。
この日は雨もほとんど降らずとても良い一日だったと思います。
ホテルに戻るとぐったりと疲れて、夕食を食べたあとはぐっすりと寝ました。
次の日は飛行機でカトマンドゥに向かいましたが、ここで会った欧米人の何人かとはカトマンドゥまで一緒でした。
このときの飛行機から見えたヒマラヤはとても綺麗でした。
いまだにタクツァン・ゴンパに入れたことが不思議です。