■結波さんよりいただきもの
「じゃぁね!また明日ねーっ」 南ちゃんと公園の前でお別れして、吉っちゃんとおうちに帰る。 まだおひさまはかくれてないから、吉っちゃんも寛和も、オレンジ色。 祥ちゃんがごはんを作り始める時間。 「お腹ぺこぺこ・・・」 「そりゃ、あんだけ走り回ってたらね」 「えへへーv今日はね、かくれんぼしたの!」 「俺も参加してたんだから知ってるよ。・・・ほとんど鬼ごっこになってた気がするけどね」 「楽しいよー♪」 「寛和がいいならいいんだけどさ・・・」 吉っちゃんとおてて繋いで歩く。 手が冷たい人は優しいってほんとなのかなぁ。 そいえば、祥ちゃんもおてて冷たいよね。 んぅー・・・あとで寛和とアルちゃんであっためてあげよー♪ 「えへへーv」 「何いきなり笑ってるの?」 「あのねあのね!・・・あれ?どうして今日はゆっくり帰るの?」 「家に着いたらわかるよ」 「う?」 よくわかんないから、いいや。 吉っちゃんとのんびり歩きながらお話するのも楽しいから好きーv 帰ったら、祥ちゃんにも今日遊んだコト教えたげたいな。 祥ちゃん、今日は何作ってるかなー? *** 「ただいまー」 「ただいまーっ」 おうちについたら、まず手を洗う。 ちゃんとやらないとばいきんさんがいっぱいだから! って、元ちゃんが言ってた。 「寛和ー?」 「ふぇ?禄ちゃん?」 「手、洗ったか?早く行くぞ!腹減ったし」 「???」 禄ちゃんに手を引っ張られてみんなのところへ行く。 なんでもう禄ちゃんがいるんだろう? まだごはんの時間じゃないし、禄ちゃんいつも寛和よりおそく帰ってくるのに・・・。 *** 「・・・わぁ・・っ!」 嘉禄に引っ張られて嘉祥達の元へ行くと、もうみんな席についていた。 アルももうちゃんと居る。 寛和は驚きながらも、嘉祥の膝に座る。 「どうしてもうみんないるの?」 「今日は寛和の誕生日だからね」 「そうなんだ!」 「そうなんですよ。ちゃんと覚えておいて下さいね」 「うん!・・・あ、今日おかずひとつ多いね♪」 「プレゼントもあるんですよ。はい」 嘉元が寛和に渡したのはビン。 中には桜色の・・・じゃむ? 「きれー・・・・」 「公園の桜で作ったジャムだよ」(ビンは苺ジャムの空きビン) 「砂糖は調理実習の時に頂いてきましたv」 「ありがとう!」 寛和はとっびっきりの笑顔をみんなに向ける。 それに反して、嘉祥はどことなく暗かった。 「寛和・・・ごめんな、大したお祝いしてやれなくて・・・。 ケーキもないし、プレゼントもおもちゃなんて大そうな物は用意できなかったし・・・・」 「か、嘉祥さん、落ち着いて;;ちゃんとプレゼントは渡せたじゃないですか!」 「そうですよ兄さん!」(タイタニックのように沈んでる・・・) 「寛和も喜んでるし」(効果音がつきそうなくらいにずーんと・・・) 「そんな気にすんなよ・・・・」(曇りの夜のように真っ暗に・・・) 寛和は嘉祥の顔をじーっと見つめる。 嘉祥が首を傾げると、寛和は急に立ち上がった。 桜ジャムを両手で大事そうに持って。 「祥ちゃん、寛和ね、おもちゃいらないよ」 「寛和・・・?」 「寛和、これだけでじゅーぶんだよ! 今日は吉っちゃんがたくさん遊んでくれたし、元ちゃんと祥ちゃんはジャム作ってくれたし、 アルちゃんと禄ちゃんは早く帰ってきてくれたから、たくさん一緒にいれるもん! それだけで寛和は嬉しいんだよーっv」 にっこり笑う寛和。 そんな寛和を嘉祥はぎゅーっと抱きしめた。 温かい雰囲気に包まれる。 寛和だけじゃなく、みんなが幸せの笑顔。 「あー・・・早くメシ食べようぜ」 「それには主役が席につかなきゃ」 「おかずが取られちゃいますよー」 「寛和、ほら」 「うんっ」 『HAPPY BIRTHDAY!寛和!』 今日は家族と一緒にいることが一番嬉しい健気な少女の誕生日。 あたたかい家族からの精一杯の優しい祝福をいっぱい受けて、 少女はまた幸せな笑みを浮かべたのでした。 |