06. 谷村コオタ  『TYPICAL LOW LIFE』
ぐにょんぐにょんに歪んだ奇妙な空間。 無数の人の声や物音らしきものが聞こえてきて、何だか怖い。 倒れてしまいそうな廃屋、せせこましい都会の雑踏、窮屈な路地裏。 そこに漂うやる気をなくす夏のむせかえるような湿度と熱気。 普段の生活の中で自分達が見ている景色の中には負のものもたくさんある。 この音楽はそんな”ありふれているのに、皆が敢えて音にして表そうとしない部分”までを、
分裂症みたいな展開をする曲で聴かせてくれる気がする。 音のコラージュが何層にも連続的に投影され、突然ノイズや奇型な飛び音が割り込んでくる空気は倦怠感に巻かるようでやっぱりちょっと不穏。 でも、このアルバムの中心にあるのはとても平穏で懐かしくて安心するような空気なのだ。 何気なく弾かれた物悲しい鍵盤のメロディ、おもちゃ箱をひっくり返したような無邪気な電子音のパレード、見慣れている景色で涙してしまうような気持ちになる、優しくおぼつかないギターの奏で。 それは、見落としがちなキレイなものをちゃんと見るために必要なこと。 最後のチープなファンファーレを聴き終えて、また明日も生活はちゃんと回り続けるんだと思う。
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