「ねー、もしもーし。」



持続する夕方が終わった時、

まだまだ部屋の真ん中に寝っころがったまま、

「風鈴の音は?」

と尋ねた。

声は部屋に響き、一通り響き終わった後、外に出てった。



床にはテキストが開いたまま、ページ数は26。

“空想する夕方。それは、リピートする夕方。”

そんな内にウトウトとして、気付く間もなく眠ってしまった。



メトロノームみたいな音。

静かな残響音。

足跡みたいな音。

窓からみた友達?の住処。



目が覚めたらまだ夕方だった。

うーん、それは夕刻というより、ダイダイイロの浮かぶ空間?

和紙みたいな質感の暖色の空気がいっぱいいっぱいスーッと漂ってるやつ。



急にひらめいて、自転車でプラスチックのしっぽを買いに行った。

でも、ディスカウントショップをいくつか回ったが気に入るのがなく。

回る階段はしっぽ。

それを解くのもしっぽ。

誰かが書いたそれは紙の上にやわらかく響いたっぽい。



帰り道、自転車で坂道を上る。

「あー、今日も夕方だったね。」

電柱Aがそう鳴る。

スーパーの買い物袋の中でおからとごまクッキーやらがカタコトいってる。



上りきって、遠くを眺めていたら、どこからかトランペットを練習する音。

遠く遠く遠ーく、複数のメトロノームのリズムのよーに重なる音。

で、音階はあるけど、明確なメロディにはなってないくらいの音。

遠く遠く遠ーく、から木霊する感じ。

何だか、音が周りの空気に溶けていくみたいに。

ふと下を見ると、道に白いチョークでこんな落書きがしてあった。

発見?

“向こうへ消えていきそうなしっぽを追いかける、音が続く限り夕方も続く!”



「変なの。」



それから、坂道を下っていった。

すごいスピードで。急降下。

坂の途中で何となく急ブレーキ。

ふと、スーパーの買い物の中からたまねぎが飛び出す。

「拾った方がいいよね。」

瞬間?

辺り一面に転がるたまねぎ。不思議な重さの洪水。

正確には洪たまねぎ。

その光景は長くも短くも一瞬でもなく、のらりくらりと過ぎ去ってった。

“向こうへ消えていきそうなしっぽを追いかける、音が続く限り夕方も続く!”



「しっぽ?」

「誰の?何の?」



家に辿り着き、自転車を裏口の近くにとめた。

その時の会話。誰としたかはちゃんと分からない会話。

その誰かが、誰なのかちゃんと分からない状態。

そして、会話というよりは一方的発言。

「おっと、これはこれはまた夕方!」

「この夕方は果たして何号であるか? 何号であるか?」


回り続ける夕方の音。持続するリピート。


「おやおや、何号であるか? 何号であるか?」

「「うーん・・・。」」

考え込んでると、そいつはふーっと浮かんでいってしまった。気がする。

気付いたら、自転車の鍵がしっぽのよーになっていた。

いやいや、正確には自転車にしっぽがはえていたのだ。

正体不明でちょっとカワイイ。

しかし、そのしっぽは何となく機嫌が悪そうだったので、ほおっておいた。

”果たして、この夕方は何号なのか?”

”果たして、なんでこの夕方は続いているのか?”

そういえば、もう3日も夕方なんだべ。



夕方の薄暗い部屋。

夕方の薄暗い学校の廊下。

その2つを主に繰り返し、

あとは自転車に乗っているか(必ず洪たまねぎに遭遇する)、

その場所で寝転がってぼーっとしてるか、

なかなか夕方は終わらない。

それは、空気の中にビニールシートみたいに、ぴたぴたひらひら広がるやつ。

夕方が始まってから1週間。。。



夕方が始まってからの1週間、周りには誰もいない。

正確にはたくさんいるけど、皆、間接的なのだ。

それがちょっと心地よく。ちょっと寂しく。

意識が麻痺するよーな心地。

”たまねぎに流されてどこかに行ってしまう感覚”

「「あー・・・。 バイバイくらい言ってよ?」」



ある日、自転車のしっぽがやたらと上機嫌そうだったので、

ちょっくら、掴んでみた。

ふさふさふわふわしっぽ。


その時、

「何号であるか? 何号であるか?」

「「キミは何号なのさ?」」

「・・・・・・。」


そいつはシュルシュルしぼんでいった。

それを見たら、意味もなく泣けてきて。

ただただ泣く。

なんで泣いてるのか意味不明だったけど、めちゃくちゃ泣いた。

スプーンの形に意識が割れてった。



気付いたら昼間だった。



ゆっくり外に出て、自転車に乗った。

しっぽは確かに確かに、どこに?

坂道を急降下。

遠くからトランペットの音とメトロノームのリズム。

空に2つ3つ浮かぶ雲がとてもキレイであった。