2005年6月24日(金)。
sports
@心斎橋DROP


sportsの音は、どっか繊細というか内向的というか一癖も二癖もあるというか。壊れそうで壊れないポップをやってるんだと思ってた。でも、この印象は少し当たっていて大きく外れてたかも。

初めてだったらしい、ワンマンライブ。
バンドの基本型であるギター・ベース・ドラムの編成から、ピアノとギターだけの編成、ピアノ・ベース・ドラムの編成、ピアノだけの弾き語り、と様々に形を変えていく演奏形態もさることながら。ステージの視覚的にも、マイクスタンドに電飾が付いていてキラキラ光っていたり、「Belieaver」では映像をスクリーンに流しながら演奏したり、さりげなくクィーンのTシャツがアンプにかけてあったり(ファンみたい)。仰々しいことは一切してないんだけど、ワンマンという長時間のライブを魅せる細かい工夫が随所に配置されていて、時間が進むごとに少しづつsportsという空間を作り上げていくような内容。

sportsはとても器用なバンドだと思う。
3ピースという最小限に近い人数であるのに、鳴らされる音は3人とは思えない音色の豊富さで、打ち込みや動機を全く使わずにCDの多重録音された音を巧みに再現する。特にギタボの伊藤くんは、数個のエフェクターを使いこなし、1曲の中で次々にギターの音色を変えていく、弾くフレーズもどんどん変えていく。
シューゲイザーっぽい轟音になったかと思ったら、ハードロックのような熱っぽいソロをかき鳴らしたりもする。さらに、曲の間に挿入される効果音的なコーラスまで足元で操っていて、様相をくるくると変化させていく演奏模様だけでも、かなり興味を掻きたてられるし、おもしろい。それは、自分の納得の行く内装で、家具や雑貨にもこだわったsportsという部屋を作り上げて、おもちゃの鉄砲を持って、何だか楽しげで驚きのあることを企んでるような雰囲気。

なので、良い意味でsportsはやっぱり何処となく内向的で癖のあるイメージに見えてしまう。見た感じはすっげーポップでカワイらしく甘いのに、食べたら毒が入ってるようなお菓子みたいな。その辺の要素は、全然慣れていないのに、何気なくシュールで気の効いた笑いをさらっていくMCでも無意識に貫かれていて。
「ちと意地悪かもしれんけど、その空間に飲み込まれてしまっちゃおう!」
と観ている人を思わせる力がある。
だから、sportsの内向さには、不思議なほどにネガティブさが付きまとわない。大体、こんな細かいブロックをコツコツ組み立てるような音楽をやっていて、唄声は「女の子?」と一瞬間違う程、中性的(少年っぽいというより、ホントに中性的)でか細く、唄ってる内容も、表層的には憂鬱なのに、バンド名はスポーツ!
その時点で、人を食っちゃってるやん!

でも、時折そんなバランスや枠からはみ出してしまう瞬間も何回か垣間見れた。「Super Sonic」や「Sports Wear」、「Ivy」などの疾走感のある曲で、思わず客を煽る勢いは、先に熱狂の渦があって。チクチクと刺激的だった。お客さんのノリもグッと上がり、ステージ上のメンバーも興奮してるのが伝わってきた。ただ、照れてはいたけど。とにかく、型から外れた一瞬は、器用なsportsの唯一不器用で強力な魅力だと感じた。

あと、シンプルな鍵盤の弾き語りを基軸にした曲は、メロディが聴き取りやすく透過性が高いから、意識がクリアになる感覚。弾き語りの時は、ギター時の緻密や狂喜とは違った型から外れた静かな素が漂っていて。また、ピアノの静謐な空気をヘラって壊していく「鉄の街」なんかは、静と動の対極の感覚が混ざっていて。新鮮な気持ちに。

色んな武器を持っていて。2時間もあったことを全く気付かせない、天然でさらっとダレることがない。
「煙に巻かれてる気がするのに、楽しい!」
「時々、ぶっちゃけてしまうのがスリリング!」
ありそうでないタイプのいいライブでした。
あっ、だから、壊れそうだけど絶対に壊れないんだなぁ。