初夏の作業開始

ツルバラのシュート
どこを切る? ハサミを入れる場所

 ジャングルローズガーデンは開花のピークを過ぎ、ラ・レーヌ・ビクトリアやマダム・ピエール・オジェには早くも2番花の蕾を見つけることが出来ます。

 そんなバラの庭で今一番元気な表情を見せているのが伸び始めたばかりのシュートの数々です。

 私が理想とするバラ栽培の名人とは、たくさんの花を咲かせる術を持った人ではなく、どんなに古いバラでも毎年元気なシュートを伸ばす術を知っている人です。
 花が咲くのは結果であって、目的はシュートをたくさん伸ばすことなのです。
元気なシュートを得れば、後はバラ自身が花を咲かせてくれます。

 上の写真はツルバラとして仕立てているキャサリン・モーレーです。
(左が根元で、右が先)
 同じ枝に2本のシュートが伸びています。このまま育ててもそれなりに生長し花を咲かせますが、折角の生長エネルギーが2つのシュートに分散してしまいます。
 枝分かれすれば仕立て方も限られてしまい、結局は冬の剪定でどちらかを切り落とすことになるのです。

 そこで、無駄な力を使わないように、どちらかのシュートをこの時期に落とします。
そして、残したシュートから上の古枝は秋の剪定で切り落とします。
どうして秋まで切り落とさないのか?それには理由があります。
 この時期バラ管理で大切なことは、シュートの保護葉の確保です。
初夏の強い日差しを受けてバラの葉は光合成に大忙し。一枚でも多い方がバラによりたくさんの力が蓄えられるのは説明するまでもありません。
 病気や害虫で葉を失う可能性もあるので、この時期の葉は大切にしましょう。
しかし、バラ全体で十分に葉が茂っている場合や込み合って日当たりや風通りが悪くなる場合は秋まで待たずに古枝を剪定した方が良いでしょう。
(追記:最近の私は無造作に古枝を始末します。その方がシュートの伸びも早いし、心配しなくてもアッという間に新しい葉がフサフサ。)

 元気良く伸びだしたシュートを落とすのはちょっと勿体ない気もしますが心配は無用です。
1本のバラが持っている生長エネルギーの総量は変わらないのです。
 そのエネルギーをどこに出すのかはこの時期のハサミの場所でこちらがある程度コントロールすることが出来るのです。
 切り落としたシュートに注がれるはずのエネルギーは別の場所に姿を変えて現れるでしょう。
 ツルバラ管理の基本は、枝分かれせず一本のシュートを真っ直ぐに伸ばすことに尽きるのです。

 このシュートがもう少し生長すれば支柱などで保護してあげます。
元気なシュートは来年の花の約束手形なのですから。