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黒人霊歌

アフリカの地から 連れ去られ 奴隷として売買された
黒人たちの境遇は
私たちの飽食の現代からは とても
はかり知ることのできない
過酷なものでありました。
私たちがこの歌の思いをどれだけ
追い求めたとしても
 たどり着けない
暗い深淵の彼方に 虚しさが残ります。

彼らのひたすらな願いは 死によってのみ かなえられる 安らぎ。
心おきなく歌い
着飾り 何者にも怯えることのない 平安の地。
肉体と心の飢え渇きが
彼らの切なる願いを さらに熱いものにしています。

黒人霊歌に見られる不安と熱望と祝福の喜びの 混沌と入り交じった旋律には
時を越え 今の私たちにも 何か心引かれるものがあります。
それは
研ぎすまされた美しいメロディのためでもあり、
切々としたその歌詞のためでもあり、
また
アフリカの熱きリズムのためでもありましょう。

あるいは 今に生きる私たちの
心の渇きのためであるかもしれません。

プログラムより

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