とってもいいお話し
「母ちゃんの弁当箱」
青森県の山村に住む良太は、子供の頃、東京に出稼ぎに行っていた
父を亡くしたため、母の手一つで育てられてきた。昼は農作業、夜
は内職と一日中休むことなく働き続けてきた母。貧乏ながら誕生日
には必ず良太の大好きな卵焼きを作ってくれた。母のおかげで、高
校卒業を無事迎えることができそうな良太だが、今、その後の人生
を大きく左右する重大な決断を迫られていた。東京の大学に進学し
て医者を目指したい良太。しかし、母はその決断に反対だった。
苦労を重ねてこれまで自分を育てくれた母をたった1人残していくこ
とはとてもできない。悩み抜いた末に担任の島田先生の励ましも受
けて、見事希望の大学の医学部に合格する良太。しかしある日合格
通知を見つけた母はやはり東京の大学への進学を猛然と反対する。
そしていよいよ出発の朝、列車の発車時刻が迫っても母は現れない…。
やはり許してはくれないのか。いよいよ出発のその時。母は来た。
卵焼き弁当を持って。泣きながら卵焼きをほおばる良太。ふと見る
と弁当箱の下から預金通帳が出てきた。わずかな金額だったが、大
きな大きな母の愛を知り、涙が止まらなかった。それから42年の
月日が流れ、立派な医者になった良太は故郷へ向かう汽車の中にいる。
使えなかった母からもらった通帳のお金にいっぱいの利子をつけて、
母に立派なお墓をつくるために。
「天国のビデオレター」
病気のため余命幾ばくもない若い母親・雅子は、3歳になろうと
する一人娘・エリの幸せを祈って、自分の死後見せるために3本の
ビデオレターを撮影した。それぞれ娘に見せる時期を指定したラベル
を貼って、夫の浩に時期が来るまで見ないと約束させた上でビデオを
託し、雅子は天国へと旅立った。最初のビデオレターを見せたのは、
エリの3歳の誕生日、雅子が亡くなってから3ヶ月後。幼いエリは
まだ母親の死を理解できずに寂しがっては、父の浩を困らせていた。
ブラウン管から雅子がエリに語りかける。「ハッピー・バースデイ・
トゥー・ユー、エリちゃん…。 ママはビデオの中にお引っ越ししました。
だからエリちゃんの側にはいられなくなったけど、いつでもここから
ちゃんと見ているからね…」そしてお誕生プレゼントに魔法をかけて
あげると言った。それはエリがパパのことを世界で一番好きになる魔法。
だからママがいなくても大丈夫…。「良い子にしていたらまた会いに来
るからね」というママの言葉を聞いて、その後エリはパパと一緒に仲良
く暮らした。2本目のビデオレターを見せたのは、エリが小学校に入学
する日。だんだん母親が死んだということに気づき始めていた頃。
ブラウン管から語りかける雅子は、自分が実は天国にいると告げる。
でもいつもここからエリのことを見ているから寂しがったりしないでねと。
そしてまた魔法をかけてあげると言う。今度の魔法はエリが少し大人に
なる魔法。だからパパを手伝って家の仕事もできるようになる…。
それからエリは一生懸命家の仕事も手伝い、すくすくと良い子に育っ
ていった。そして月日は流れ、エリがもうすぐ5年生になるある日のこと。
パパがある女の人を紹介してくれた。とても優しくて温かい女性。
でも今でもママのことが大好きなエリにはショックなことだった。
やがて新しいママを家に迎える日がやってきた。3本目のビデオレター
には「新しいママが来る日のエリちゃんへ」書かれてあった。浩も初めて
見るビデオレター…。今度は「ママを忘れる魔法」がかけられていた。
しかしエリは決してママを忘れることなくパパと新しいママの三人で
仲良く暮らした。