T.はじめに −−−塗装の目的とその重要性−−−
塗装は、製品の最終仕上げであるだけに、その商品の価値を左右する重要な仕事です。
最近、デザインに対する一般の関心が高まるにつれ、製品の表面効果は非常に重要になってきています。
そして、塗装に使用する塗料は、
(注)
保護作用:木材や鉄材が風雨日光により腐食されたり薬液等により侵されるのを防ぐこと
修飾作用:物体表面に希望する色彩や光沢を与え、その外観を改善すること。
これらの美的効果と共に、保護面においても、耐久性、耐薬品性、或いは耐熱性等が要求されています。 これらの要求に対しても、新しい合成樹脂が出現し、又、塗装機器、設備等の目覚ましい発達につれ、塗装技術は一段と進歩してきました。
ことに、素材に良いものが減少してくるにつれ、それを塗装によりカバーしようとしてきました。 家具などでも、丈夫な堅い木が減少し、成長の早い、安い素材、従って、柔らかい素材を使いこなす必要がありました。
柔らかい素材という性質をカバーするために、丈夫な塗膜が必要となってきました。
ポリエステル樹脂塗料の様な、厚塗りの出来る塗料で、表面をプラスチックで覆い、素材の欠点をカバーする・・・ある意味においては、非常に合理的な方法です。
近年では、厚塗りによるコストアップを抑えるためと、鏡面仕上げに対する人気の減少に伴い、ポリエステル樹脂塗装は減少し、ウレタン樹脂塗装が主流になってきています。
しかしながら、塗装された商品を見ると、必ずしも満足する塗装ばかりとは言えません。
大量生産方式がすすむにつれ、塗装に対する考えが安易になり、結果として、品質を低下させている一面もあります。
生産性に比重を置きすぎ、結果として、製造側の論理が強くなってきました。
塗装に関しては、人により、価値観の相違により、意見の分かれるところです。
何も塗装しないのが良いと信じる人もいれば、
一方では、素材を綺麗にし、美的にも優れ、かつ、長期間耐久性を保持させる為の必要からとそうする事に価値を見いだす人もいます。
昔から、人は、家具の外面は塗装し、丈夫にする、一方、タンスの引き出しの様な内部に関しては、木の持つ通気性、調湿性を生かすため、無塗装にするといった使い分けをしてきました。
木の有効活用の為、合板が発明されました。
強度的にも優れ、かつ、間伐材より、寸法安定性に優れた新しい素材として、合板や、集成材が開発されてきました。
それにより、自然に対する負荷も減少させることが出来ました。
何でもかんでも否定することは簡単ですが、例えば、食品に添加されている防腐剤、これは、無い方が良いに決まっていますが、入れないと腐りやすい、
腐ったものを食べるリスクと、新鮮な状態を維持するためのコストと、防腐剤による体への害とで、いずれが、デメリットが大きいか?
又、原子力発電もしかりです。
石油や石炭といった化石燃料を燃焼して、エネルギーを得る、と同時に、空気を汚染し、資源を減少させてしまう。
一方、原子力発電は、放射線の漏洩が無ければ、綺麗なエネルギーであり、かつ、使いようによっては無尽蔵のエネルギーを引き出すことが出来ます。
話がそれてしまいましたが、結局、塗装に関しても、良い点と悪い点があるので、どこに価値観を置くかにより、各自の判断で取捨選択すべきであり、この小文で、考える機会を戴ければ幸いです。