長年行きたいなーと思っていた合掌造りの里、白川郷をついにたずねました。何年か前に UNESCO の世界遺産に登録されたため、観光客が増えたと聞き、早いうちにたずねておきたいと思っていたのです。合掌造りといえば白川集落!と思っていたのですが、UNESCOの世界遺産としては、3つの集落(相倉集落、菅沼集落)が合掌造り集落として登録されています。白川集落は岐阜県に、相倉と菅沼集落は富山県に位置します。
出かけたのは3月の連休だったのですが、しばらく好天が続いていたので、雪はないかもしれないねーといいながらも、車にチェーンだけは積み込んで出かけました。雪に囲まれた合掌造りという絵が印象にあったので、雪が残っていればいいなと思いつつも、現実のアクセスを考えると雪は困ります
しかし、白川集落に近づくと雪が降り始めました。標高もあがり、道路に雪が降り積もっていきます。チェーンがなければ途中で諦めて帰ったかもしれません。なんとかチェーンを装着するほどではなく、集落に到着しました。
とりあえず白川集落の「ふるさと」という合掌造りに泊めていただくことにしました。白川集落に行ってみて驚いたのは、ほとんどの合掌造りで宿を営んでいることです。といってもいくつかは、休業中であったり普通の民家であったりするのですが。宿の名前は「幸エ門」、「孫右エ門」などの屋号が多く、それぞれ少しづつ個性があります。私の田舎でも屋号はいまだ使われていて、親近感が沸きました。
到着日最初はあまり時間もなかったので、集落内をふらふらした後、夕食をいただきました。この夕食が山の幸、川の幸ととてもおいしく、うちの旦那は和食が苦手なのですが、このお料理に関してはおいしいといって、いつもより多くたいらげていました。私達が泊まった宿は「ひえご飯」を出してくれることで有名だそうです。ひえご飯は普通のご飯よりも味わいがあり、おいしいと思いました。
夕食を終えて、夜の集落を徘徊することにしました。どの合掌造りにも室内に照明がともされ、外からみると、二階、三階のふすまがオレンジに光り幻想的です。人の住んでいない合掌造りや、観光用の合掌造りにも明かりが灯されています。何枚か写真を撮り、宿に帰りました。
翌日、早くから本格的な集落巡りに出かけました。まずは、明善寺です。ここは、合掌造りの中を見学させてくれます。お寺なので、お坊様がお住まいの様子です。はしごのような階段をあがり2階、3階へ。階上は、メッシュ状の床になっていて、1階の囲炉裏でたかれた煙がもくもくと上がってきます。この煙が柱や萱にしみこんで、虫などから家を守ってくれるとか。階上は蚕を飼ったり、絹をとるための作業場の意味合いが強いようです。古くから集落で使われてきたさまざまな用具が陳列されていました。
次は、和田家住宅に向かいました。こちらは古くから白川集落の有力者のおうちで、非常に凝った合掌造りだそうです。こちらは現在もご家族がお住まいなので、その一部が公開されています。1階には、板の間や畳の間のお部屋がいくつかありました。また、たくさんの塗りの食器なども展示されていました。もちろん囲炉裏もありました。
それから、合掌造り民家園に向かいました。合掌造り民家園は、白川郷の離村民家を展示・保存した野外博物館です。園内では、いくつかの実演が見せてもらえるそうです。途中、また雪が降り始めました。私達が行った日は、実演の数が少ないからと入場料を少し安くしてもらえました。最初に見たのは機織の実演です。実演の部屋は、観光用に改築されており、階上につながる天井がメッシュ状になっていなかったため、囲炉裏の煙が逃げていかず、部屋の中は煙で息もできない状態です。機織の方は平気そうに機をおっているので、やはり地元の慣れた人は違うなあと妙に関心しました。2つ目は、墨絵書きです。合掌集落を主に書いていらっしゃる墨絵師の方がいて、作品はおみやげにもなっています。この頃から雪がかなり降り、とても寒くなってきたので、帰りのことも考えて、そろそろ移動することにしました。
せっかく来たのですから、他の二集落に向かうことにしました。この二集落は富山県に位置し、越中五箇山として有名です。白川集落、菅沼集落、相倉(あいのくら)集落と北に向かっていくので、相倉集落を見てから、帰りに菅沼集落に寄ることにしました。相倉集落は白川集落よりもこじんまりした様子です。こちらも宿を営んでいるところが多く、おみやげとしては和紙が有名なようです。あまりに和紙でのおみやげ品がかわいく、名刺入れを買いました。白川集落とは窓のつき方が違ったり、集落毎に合掌造りに特色があります。次にもう一つの有名な合掌造りである村上家に向かいました。村上家は、相倉集落と菅沼集落の間に位置し、山草から鉄砲用の硝石を作っていた後が残されています。中では館内説明のおじさんが合掌造りや流刑地としての五箇山、硝石づくりについてお話してくださいました。また、こきりこ節も有名で、おじさんがこきりこを使いながら歌ってくれました。こきりこ節は小学校の時に習ったことがあり、節はわかります。2本の竹を鳴らしながら踊ったこともありましたので、懐かしく思い出しました。
次は、菅沼集落です。こちらは、国道からでも集落が見渡せます。ただ、大きな集落ではないらしく、観光客もまばらです。一回りして帰ることにしました。帰りは来た時よりも雪が降りつもり、かなり不安を感じました。途中、横滑りして道路脇の溝にはまっている車もありましたが、なんとか無事帰宅できました。
三つの集落を訪れて、観光地としてあるいは本来の生活の場として、集落毎のこれからに思いを巡らせました。合掌造りの数が激減してしまった現状を考えると、合掌造りに根ざした生活そのものの維持の難しさも感じました。