2.心理学の世界

・・・フロイトの創始した深層心理学によれば、私たちの意識の底には、さらに膨大な無意識の層が横たわっている。・・・・
ユングの集団的無意識
後フロイトから分かれて、独自の分析心理学の体系をきずいたC・G・ユングは,私たち人類の無意識層には、私たちが個人として体験したものだけでなく、それ以外の、つまり私たちが祖先から受け継いできたものまでが潜在しているとした。

そして、その潜在意識、つまり無意識は、フロイトが言うような個人的なものではなく、同じ血を引く家族・親族など血族から、さらに種族、民族などの集団に含まれるすべての人々に共通したものであり、彼はそれを「集団的無意識」と呼んだのである。
 すなわち、このユングの仮説によれば、人間は本能的反応、祖先以来取ってきた行動様式、祖先の考えてきた解釈の方法、とを持って生まれてくる。つまり、私たちの遺伝子には、この三つの情報が刷り込まれており、この刷り込まれた情報が集団的無意識を構成していることになる。従って、集団的無意識は発生史的なものである。
社会的遺伝の重み
 生活様式やそのベースにある物の見方・感じ方・考え方のパターンが、世代から世代へ伝えられて伝統・因襲となるには、生物学的遺伝とは別の、<社会的遺伝>(リントン)という、大きな伝承の営みが絶えざる時の流れを通して行われています。
 社会心理学の先導者ル・ボン(Le Bon)が「死者は広大無辺な無意識界を支配するもので、一国の民は、生者よりも死者によってより多く指導されるものだ。(中略)死者は歳月を重ねて、我々の思想を作り感情を作り、従って我々の行動のあらゆる動機を作ったものである。」先祖伝来の社会的遺伝が、集団のメンバーの生き方に及ぼしている力の大きさを強調したものです

地霊の声
 ユングは、アメリカ滞在中の観察から、アメリカ人とヨーロッパ人のスポーツ観をくらべ、アメリカンスポーツの残酷さ、無鉄砲さは、インディアンの行動様式からきている、という結論に達した。
 また、スポーツに限らず「アメリカ人が本当に欲するものの中には、いつもインディアンが顔を出す」し、「アメリカ人の、特定の目標を断固として耐え抜く行動の中に、インディアンのあらゆる伝統的美徳が残り生きている」と述べている。

 なぜ、このような事態が起こったのだろうか。ユングはオーストラリアの原住民の長老の一人の言葉を引用して、その理由を示唆している。
 「よその土地を奪うことはできないものだ。というのは、よその土地にはよその祖先の霊が住んでいるからだ。だから、あたらしくうまれてくるものは、よその祖先の霊の姿をしてあらわれるだろう。

 つまり、異境はその土地への侵略、征服者をいつしか同化してしまうということである。ユングによれば、北アメリカ人は厳格きわまるピューリタン的精神をもって、ヨーロッパ的文化水準を維持しようとした。にもかかわらず、彼らにも、その敵である原住民のインディアンの心が彼らの心となることを防げなかった。

日本超古代宗教の謎 佐治芳彦 日本文芸社