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県外廃棄物の県内搬入禁止を

はじめに

 県外廃棄物の県内搬入が、奈良県の産業廃棄物問題の大きな要因の一つとなっていることは、これまでも県議会などで繰り返しとりあげられてきました。産廃業者の協力による搬入量調査は奈良県としても行われてきましたが、実際に県外から産業廃棄物がどの程度入っているかを裏付ける調査は、これまで行われてきませんでした。

 今回の調査は、こうした実態を調べるために、奈良県および三重県上野市でゴミ問題にとりくんでいる32名の方の協力を2000121日に実施しました。なお、この調査は、主要道路のみの調査であり、不完全なものですが、県外廃棄物の県内搬入の実態の一端を明らかにしているとのことから、みなさんにお知らせします。

一、調査の概要

1.      調査の目的

調査は@奈良県内への産業廃棄物の搬入状況を調べるA産廃処分場間の関連性を調べる。B産廃車両による交通や通学への影響を調べる、などを目的として行いました。

2.      調査方法

調査時間帯は、概ね午前6時から午前12時まで実施し、調査地点を通過する車両のナンバーや台数を確認するという方法で行いました。

二、調査結果について

1.奈良県内への産廃搬入状況

調査地点

 

積み

不明

合計

総合計

名阪遅瀬

三重県〜奈良県へ

39

60

99

16

115

24号木津

京都府〜奈良県へ

21

 

21

 

21

名阪香芝

大阪府〜奈良県へ

52

12

64

24

88

24号五條

和歌山県〜奈良県へ

6

6

12

7

19

 

 

118

78

196

47

243

2.各産廃処分場への搬入台数

 

搬入

 

 

 

搬出

 

 

 

 

処分場名

積み

不明

合計

積み

不明

合計

総計

三重中央開発

 

 

153

153

 

 

153

153

306

ヤマゼン

57

1

6

64

1

41

14

56

120

中和営繕

24

 

 

24

 

 

 

 

24

同逆ルート

8

11

 

19

10

25

10

45

64

大願興産

15

 

 

15

 

12

 

12

27

中央開発

9

 

 

9

 

6

 

6

15

合計

113

12

159

284

11

84

177

272

556

 

三、調査の結果明らかになった問題点

1.「搬入抑止対策要綱」は全く機能せず

 「廃棄物の県外より本県内への搬入を抑止することにより、本県の自然と生活環境を保全し、適正な廃棄物処理の運営に期」すことを目的として、奈良県は1976年に「県外廃棄物の本県搬入抑止対策要領」を定めています。ところが、現実には、大量の県外廃棄物が県内に持ち込まれていることが明らかになりました。

2. 一年間に「豊島」が2つか3つもできる莫大な量

調査の結果をもとに試算してみると、午前中の6時で118台から196台のトラックにより県内に産廃がもちこまれており、1日に換算すれば、その2倍、236台から392台にもなります。1台のトラックに少なくとも12トン、16立米積載されている(産廃業者の証言)として、1年間300日操業すると849,600トンから1,411,200トン、1,132,800立米から1,881,600立米が搬入されることになります。

いま、全国的に問題となっている瀬戸内海の豊島の産廃は50万トンといわれています。この豊島の産廃の山が1年で奈良県に23個できるほどの莫大な搬入量となっています。

3.桜井市の中和営繕処分場に、三重中央開発からくりかえし産業廃棄物が搬入されています。同処分場は許可条件として、「取り扱う産業廃棄物は、主として県内の事業者から排出されるものとする」としており、これに抵触していることが明らかです。

四、全国の県外廃棄物県内搬入規制の実態

1. 200021日から2日にかけて全国の都道府県に県外産業廃棄物の県内もちこみ規制状況について電話による実態調査をおこないました。各都道府県の状況は次のとおりです。

都道府県名

状況

規制の有無

都道府県名

状況

規制の有無

北海道

原則禁止

京都府

×

 

青森県

事前協議制

大阪府

×

 

岩手県

事前協議制

兵庫県

×

 

宮城県

×

 

奈良県

×

 

秋田県

事前協議制原則禁止

和歌山県

 

山形県

事前協議制

鳥取県

 

福島県

事前届出制

島根県

 

茨城県

事前協議制

岡山県

 

栃木県

事前協議制

広島県

 

群馬県

事前協議制

山口県

 

埼玉県

事前協議制

徳島県

 

千葉県

事前協議制

香川県

 

東京都

×

 

愛媛県

 

神奈川県

×

 

高知県

 

新潟県

事前協議制

福岡県

×

 

富山県

事前協議制

佐賀県

 

石川県

事前協議制

長崎県

 

福井県

管轄保健所承認制

熊本県

 

山梨県

×

 

大分県

 

長野県

事前協議制

宮崎県

 

岐阜県

届出制

鹿児島県

 

三重県

事前協議制

沖縄県

×

 

滋賀県 

×

 

 

 

 

     原則禁止 ○事前協議制 △届出制 ×規制なし

運用実態については各都道府県で相当な開きがあります。

2.上の表のとおり全国で10県が原則禁止、それらも含め36県がなんらかの規制をおこなっています。しかも、産廃問題に対する関心の高まりや住民運動などが反映し、98年に三重県、99年に埼玉県があらたに県外産廃の県内搬入を規制する要綱をつくるなど、最近そうした傾向が強まっています。

おわりに

 2000224日に奈良県議会環境・廃棄物対策特別委員会が開かれ、県生活環境部長が、「県外から搬入される産廃は、年間22万トン、逆に県内から他府県へも約10万トンが搬出」(朝日新聞)されていると答弁しています。

 県の数字は、私たちがおこなった実態調査の結果と大きな開きがあります。この要因として、県の調査が@業者の自主申告にもとづくものであること。A自社処分や不法投棄分について集約されていないこと。住民の調査がB通過車両を正確に把握できていないこと、などが考えられます。

 県は、「奈良県だけが搬入を抑制して、搬出をするわけにはいかずに、お互い助け合わないといけない(県生活環境部長)と答え、「搬入抑止対策要領」の形骸化を容認しています。

 しかし、仮に、県の調査の結果どおりであったとしても、県外廃棄物の県内搬入が搬出の2倍以上となっており、県外廃棄物の問題が奈良県の産廃問題がおきる大きな要因の一つであることに変わりはありません。

 奈良県として、正確な県外廃棄物の実態調査をおこなうこと。とくに不法投棄や自社処分の実態について調べること。また、県が少なくとも現在ある「県外廃棄物の本県搬入抑止対策要領」の積極面を活かし、搬入規制をおこなうとともに、「県外廃棄物の県内搬入原則禁止」を含む県条例を制定することが、今あらためてもとめられているのではないでしょうか。

 

 

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