三次元漂流記 2002
蛇の抜け殻 〜 スルーネック? [5月のモデル;
 蛇の抜け殻 〜 スルーネック?]
お散歩の途中でキョンが見付けたそうな。
脱ぎ捨てられた冬服。
口がぱっかり開いていて、
脱いだ後のセーターみたいに、
首に皺が寄っている。
そこから、春の装いに着替えた蛇が、
るんるん気分で現れ、
デートにでも出掛けたのかしら。
こんなの丸ごと財布に入れたら大金持ちだね。
このまんま入る財布が手に入ればの話だけど。

□■■ May 31st

クロスケがステキチに似ていると、近所では専らの噂......
色だって、顔だって、そっくり。
性格はキョン。
もう、誰の名を呼んでいいのか、混乱してしまうほど。
ステキチに、次のフィラリアの薬をつけてあげなくちゃならないのに......
ここ数日、近所に姿を現していないらしい。
この間、首輪を換えた時にも、不安そうな顔をしていたな。
最近は、前のように並んでのんびりと座ったり、ご飯を食べたりしてくれないね。
お散歩には、相変わらずニコニコ付き合ってくれているけれど。
お願いだから、薬はつけさせてね。

テレビキャスターが眉をひそめて言うには、「悪質な事件が全国で模倣され、被害が広がっています。」
お前らのせいじゃ。
あほか。

目立ちたいんだったら、裸で通りを走りな。
他人の助けは要らないし、迷惑もかからないから。
何も持っていないのに注目を浴びるには、それしか無いじゃん。


□■■ May 28th

クロスケのお引っ越しが遅れたので、フィラリア対策を始めておくことにした。
迷ったが、この間、朝から叩き起こした先生を、挨拶を兼ねて訪ねることにした。
この人に、ピヨの悪臭を治して貰ったこともあるし。
案の定、来月半ばからでいいと言われた。
しかし、今年は気温が上がるのが早いし、よその病院では、それに応じて時期を早めていると聞いている。
一定気温を上回らないと蚊は刺さないから、うん、知ってる、でも、3月にわたしゃ刺されたんです、
刺されても虫は入らないんです、あ、そうですか、
でもね、、、、、、ヒトんちの家の中の気温まで、何故わかるんですか???
この子は私の手元を離れるから、と、無理に貰って来た。
「今呑んでも、6月からしか効きませんよ。」
何ちゅうハチャメチャな説明じゃ。
意味するところは判っているから、はいはいと返事した。
陽性が出ているキョンや鹿の子と違って、この子はミルベマイシン。
「この薬のパンフレットです。」
そう言って、モデルもびっくりの美人助手が差し出したのは、カルメドックのリーフレット。
カルメドックはミルベマイシンじゃないでしょう???
フィラリア予防について、全般的な理解を促す為、渡してくれたのかも知れない。
何種類もある予防薬について、素人が知っている必要は無いということかも知れないのだが、
フィラリア感染している犬を2頭も飼っていると判っている人間相手には如何なもんか。
人嫌いなんだか、コミュニケーション能力を欠くのか、とにかく、人当たりが悪くて無口だと、
客を失って来たこの病院、人嫌いならば、いつか分かり合えるのでは、などと通って来たが、
この日は、病院を変えようかとちょっと思った。
変人と変人は、必ずしもお友達にはなれないということか。

クロスケは、車が怖かったらしい。
布バッグにお尻から下を突っ込んで膝の上に抱かれた状態で、
ぐるぐる動く窓の外をじっと見ていて、すぐに鼻水を垂らし始めた。
帰り道、何だか、妙に暖かい感じがしたが、濡れている気配は無い。
さぁ、ただいま、と、ママの目の前に下ろすと、てん、てん、と、しずくが落ちている。
家に着いたので、安心して洩らしたのかな?
よく見ると、お尻がベトベトに濡れている。
あり〜? いつだ?
ママが、息子のお尻を丁寧に舐めている。
少しだけ濡れているカバンの中を見ると、待合い室で気を紛らわせられるようにと入れて行った、
お気に入りの羊さんのお尻が真っ黄色。
ウィンブルドンという小説のラストシーンを思い出した。
胸ポケットに入れた辞書が、主人公を凶弾から救うという、ハッピーエンディング。
何だか、とてもツイている気がした。
その後は、いつもの些細な出来事が皆、ラッキーな偶然に思えたのだから、不思議だ。


□■■ May 27th

縁日で、ひよこ釣りがしたいなどと、せがんだのだろう。
だったら、私のせいだ。
うどん粉を練って、小麦粉にまぶして食べさせていたのを覚えている。
ひもをくくりつけた段ボール箱に入れて、引っ張って遊んでいたんだって。
ある日、突然、一羽残らず、いなくなっていた。
逃げたのだという嘘を信じて、私はがっかりした顔を見せたらしい。
棄てられたひな鳥が、幸せになんて、なっている筈がないんだ。
知らなかったからと言って、許されるのか?
誰に親切をしたって、罪は償えない。
あの子達は、もう、この世にいない。
とうの昔に死んでしまったのだから。
私が何も知らず、貧乏ながらも、不自由なく暮らしている間に。
きっと、お腹を空かせて、途方に暮れて。
或いは、猫に弄ばれて、怯えながら。

杖は要らないね。
私の体には何も悪いところなど無いのだと、
肩を貸してくれない君が、いつも気付かせてくれる。
怠けないで歩き続けられるのは、
病気でもないのに支えてくれる、おせっかいな人がいないお陰だ。

群れることが嫌いなのと、友達がいないのとは、全く違う。
私が孤立しているものと誤解して、平気で嘘をつく人には、どう対応したものか。

私よりも裕福な人が、お金を下さいと言う。
私よりも怠惰な人が、答を見せて下さいと言う。
私よりも暇な人が、時間を下さいと言う。
用意して来るから、部屋の外で待っていてちょうだいね。
決して、中を見てはダメよ。
あなた方が罪悪感に苛まれるからじゃなく、
真実を知っても尚、平然としているあなた方を見たら、
私はショックのあまり、寝込んでしまうだろうから。

ドキドキしなくても、ウキウキできればいい。
寄り掛かり合わなくても、触れ合っていればいい。
見つめ合わなくても、並んで歩けばいい。


□■■ May 26th

今日は、クロスケのお引っ越しの為に空けておいた日だから、ひまだね。
ゆっくり遊ぼう。
きっと、明日もゆっくり、遊べるね。
近所の人達は、みんな一足違いで、よそから仔犬を貰うことになっちゃったんだって。
お前達は、希に見る美男美女親子だから、評判だったもの。
欲しいって言う人が沢山いたね。
お兄ちゃんとお姉ちゃんは生まれた時からママ似で色が薄く、スマートな二枚目。
お前だけが、黒くって、ちんちくりんな感じだった。
歩き始めたのもお前が一番、兄弟の耳を咬んだりし始めたのもお前が一番。
1ヶ月位前から、少し、色が変わって来たね。
兄弟みんな、色が薄くなり、もともと薄い部分には黄色が混じり、上の2匹はママの色になった。
お前は、目の回りがくっきりとオレンジになって、
畑でよく見掛ける、縦に平べったいクチバシをした、
海鳥風の困ったような顔をした変な鳥みたいになっていたけれど、
1匹になってしまったここ2週間で、色がぼやけて、丁度いい具合になって来た。
黒いまんま、毛が長くなるんだと思っていたよ。
ねぇ、お前は隣のクマの子だと思っていたんだけど、横に並ぶと、色も顔も、ステキチによく似ている。
憂いを含んだ目付きなんか、そっくりだもの。
ステキチなの?
だったら、見かけも頭もいいのは当たり前か。
隣の子も、ママが血統書付きの柴だから、どちらがパパでもおかしくないけれど。
どこから見ても、カッコイイ柴の子だ。
丸で、みにくいあひるの子だね。
みんな柴犬がいいって言っていた。
一番、柴犬から遠そうだと思っていたお前が、結局は最も柴なのかも知れないね。


□■■ May 25th

犬が好きだから、進んで面倒を見ているとか、犬好きの為に仲介をしているとか、
果ては、犬を欲しい人の為にボランティアをやっているとか。
何度、そんな下らない勘違いをされたことか。
ふざけるな。
勝手な人間どもは消えてくれ。
自分のことばかり言う奴は、一人残らず、地球上から失せるがいい。

クロスケがドタキャンを食らった。
かなり早い時期に貰い手が決まっていたから、近所でも遠方でも、何十件、断って来たか判らない。
何度もやり取りしても、ダメなんだ。
もっと厳しい目で、相手を家ごと見なかった私が悪い。
こんなに大きくなってしまって、非常に困難ではあるけれど、
いい加減なところへはお前をやらないから。
蛍が飛び交うのも、見せてやれるかもね。
いいんだか、悪いんだか、判らないけど。

横からしゃしゃり出て来ることで、
自分の手で子供の信用をぶち壊していることに気付かない親には困ったもんだ。
黙って尻を拭いて回って、この子は何も出来ないんです、なんて吹聴して、
優しくて忍耐強い母親を気取っているのも同じ。
感謝されなければ何も出来ない、困った人種。


□■■ May 24th

少し早いかな、と言いながら、クロスケを連れ、懐中電灯を持って、みんなで出掛けた。
飛び交う蛍を見せてあげたくて。
数日前にも、やはりクロスケを抱いて見に行ったらしい。
ワクチン接種がまだなので、ずっと抱っこ。
草は少なく、田んぼにはまだ水が入っていない。
やっぱり、もう少し後なのだろうか。
半ばあきらめながらも、執念深く、草の中を見つめていると......
自然とは、何と慈悲深いのだろう。
明後日には旅立つクロスケの為に、4匹、姿を見せてくれた。
車のライトよりもずっと小さな、歩く光。
3匹目が、クロスケの顔の前で、飛んだ。
目の前にゆらゆらと浮かぶ不思議な灯を、じーーーっと追っていたね。
前は、うちの庭にも飛んで来ていたんだよ。
ニャンのいた頃だって。
これから行く遠いところも、緑豊かな土地の筈。
面白いことがきっと、たくさんある。
楽しい仲間達が、お前を待っているよ。

「プロ」や「アマ」は言い訳の道具ではない。
「プロとしては下手」なら、アマチュアとしても下手。
枕詞をつけてみても、ごまかせない。
逆に「アマチュアにしては上手い」のなら、アマチュアにしなくても上手いのだ。
上手いのにアマチュアである、そう名乗っていることに対する、驚きが込められているのであって、
正しく表現するなら、「上手いのにアマチュア」である。
CDを売ったり、企業へ売り込んだりするのなら、
都合のいい時だけ「アマチュアだから」などと逃げないで欲しいものだ。

頼まれたことをきっちりとやってくれない人は、往々にして、
頼みもしない、余計なことに手を出して、段取りを狂わせてくれる。
自分の為すべきこと、その優先順位が判らない人に、責任という概念は無いのだろう。
やりたいことと、やらねばならないことが、ごっちゃになっていて、
文句を言われると、忙しいなどと逆ギレするのだ。
姑面したこんな人が職場にいると、非常にヤリニクイ。


□■■ May 22nd

一昨日だ。
鹿の子ちゃんとのお散歩道。
車の入って来ない道路の脇の歩道の上に、汚い段ボールが見えた。
蓋が開いている。
トラックから落ちたような感じ。
やめて、やめてくれ!
何も見えるな、空っぽの箱に違いないから。
近付くと、底に少し、藁か草が入っているだけ。
ホッ...... としたのもつかの間。
真横の草むらに、何かいる。
......猫だ。
頭の天辺が禿げていて、茶色だか黒だか、覚えていない。
少し離れるとダックスフントに見えた。
病気で棄てられたのだろうか。
興味を示す鹿の子を引き離し、急いで引き返した。
夕方、お散歩時。
犬を連れた人が何人か通り過ぎた。
一人か二人が、「あ、猫がいるよ。」と、犬に話しかけたぐらいだった。
凍り付いた私の足は、鹿の子におしっこをさせなくちゃ、
そんな思いに、ただ引きずられて歩いた。
病気の猫......
今日は、あの箱だけが、同じ場所で、同じように口を開けて、猫の帰りを待っていた。

とことこと、時折、振り返りながら、少し前を行く君。
斜め上から見た後ろ姿。
丸っこい頭は、長女と末っ子に引き継いだんだね。
みんな尻尾がくるっくる。
真ん中の子だけは、体の左側に巻いていた。
頭がいい印だって、新しいおうちで気に入って貰っていたね。
喜んで振る時も、ママと同じ、まぁるいまんま、ぴろぴろ。
体の右側にカール組の2匹のは、リーダー資質を表してか、
遊ぶ時は、お猿のように長く伸びて、先だけ、くるんと返っていた。
嬉しい時も、真っ直ぐ伸びた尻尾の先が、大きな弧を描いていた。
猫みたいだったね。
ママはと言えば、どちらに寄ることもなく、真ん中にくるくる巻いている。
そして、そのカールの接触する背中の一部が、いつもクレーターのようにへっこんでいるんだ。
近所で評判の、美男美女親子だったね。
末っ子も、お兄ちゃん、お姉ちゃんに似て、格好良い顔になって来た。
どんな犬になるのかな。
可愛がって貰って、色々と学んで......
どんな素敵な犬になるのかな。


□■■ May 20th

鹿の子という犬は、決して人を咬まない。
ニャンも咬まない犬だったが、それは、むしろ咬めない、に近かった。
鹿の子の場合は、少し違う。
犬というのは、極度の恐怖や苦痛から、咬み付くという本能がある。
鹿の子も、出産の折、2度ばかり、苦しさに嗚咽を洩らし、吠えながら、
そばにあった私の手に軽く歯を当てた。
くわえて、力を入れたかったのだろうが、ぐっと堪えた。
子供達のしつけを始めてからは、口や首根っこを咬むようになった。
勿論、当てて、押す程度だ。
子供達の方は、本当に咬み付いて来る。
昨日、最後に残ったやんちゃ坊主の相手をしている鹿の子を見ていて、ある発見をした。
つながれていて、直線で2メートルほどしか動けないのに、
庭を猛スピードで駆け回るやんちゃ坊主をあっさりととらえては投げ飛ばし、押さえ付ける。
実質、歯を使えない鹿の子は、エネルギーたっぷりの、大きさもさ程変わらないきかん坊を、
体全体でコントロールしているのだ。
強い......
咬まないのに、この強さ。
小柄ながら見事な喧嘩テクを持つお姉ちゃんは、ママの血を引いていたのだろうか。
そう言えば、子供達がまだお腹にいた野良時代、
ゴミ箱あさりで隣の柴犬チェリーと睨み合いになり、あっさりと勝ったのを目撃したっけ。
お前は、強い犬だったんだね......
決して表には出さないけれど。
力、精神、愛情。
あらゆる意味に於いて「強さ」の意味を教えてくれるのは、いつも犬。


□■■ May 19th

お金をかけて貰うことが全てじゃない
可愛がられている顔をしている子はたくさんいるよ
でもね
楽しそうにお散歩していても
毛艶の悪い
目やにだらけの犬には
なって欲しくないんだよ
心も体も元気でいて欲しい
かゆいのを我慢するのも
臭いと嫌われるのも
「犬の宿命」なんかじゃないんだよ
野生の動物をごらん


□■■ May 17th

お姉ちゃんとお兄ちゃんがいなくなって、遊び相手が、
最近、ヒステリー気味のママとうちの家族だけになってしまったクロスケ。
コミカルで可愛らしいお前は、いつも誰かと一緒だね。
ママの根気と、生への執着力のおかげだよ。
雨の中もずーーーっとうちの門の前で待っていたママは、
うちで子供を産まれると面倒だからと、閉め出されていたんだよ。
道端で生まれたお前達が、車にひかれようと、凍死しようと、知ったこっちゃない、って。
そんなこと言っていた人が、お前を孫のように抱いているよ。
生まれて来てよかったね。
ここで産んで貰えて、よかったね。


□■■ May 16th

又、先生を叩き起こしてしまった。
「うちの仔犬がゴキブリ駆除剤を食べちゃったんです!」
その夜は何度も起こされていて、最後は5時半頃だったか、
空いていたドアから入っていて、枕元で「あそぼー」とにこにこしていたのを覚えている。
寝なさい、と追い出して、ドアを閉める。
これが大間違いだった。
台所から持ち出したのだろう、6時前に、降りて来た父親が大騒ぎ。
「こいつ、ゴキブリの薬食うとるぞ!」
何故、玄関にそんなものが?!
半分位、減っている。
ゴキブリにおいしく作ってあるものは、犬にもおいしかったのだろう。
蓋を外し、プラスチック容器の端もかじって食べてある。
何で、そんなものがあるんだ、苛立ちを覚えながらも、目を離した自分を責めた。
塩を小さじ2杯ほど食べさせて水を沢山呑ませると、吐くから、とのこと。
早速、クロスケを連れて来ると、自分から塩の山に食い付いた。
暫く食べてから味に気付き、ぺっぺっと逃げ出すところを、無理に口をこじ開け、塊を放り込んだ。
あまりのまずさに、じたばた、必死の抵抗で、周りは飛び散った塩でべたべたになった。
成分を調べると、ヒドラメチルノン、哺乳動物に対しての毒性は低く、
クロスケが食べた程度の量では、害は無いらしい。
動物実験で見られた、幾つかの症例が挙げられていた。
ここでも実験か......
騙し取られた生き物達、道具として繁殖させられた生き物達の犠牲の上にあぐらをかき、
何も知らずに善良な顔をして暮らす、文明人とは......
如何ほどの値打ちのあるものなのだろう、果たして、失われたものに匹敵するのだろうか???


□■■ May 14th

ボンのお引っ越しには2時間ほどかかった。
途中、休憩した田んぼの中の草むら。
猫の家族が、怖がりもせず、小さな犬を珍しがっていたね。
初めて足を下ろす、門の外の世界。
大冒険の始まりだね。
お前の大きな手を気に入ってくれたおばあちゃんとは、もう仲良くなれたかな?
4度目の夜を過ごす、お城の居心地はどう?

じゃじゃ犬のお姉ちゃんは、昨日の朝に旅立った。
1時間もかからない距離だけれど、酔ってしまったみたいで、膝の上でずっと、よだれをこぼしていた。
小さな檻の中で鳴き疲れて、眠っている間に帰って来てしまったから、心配だよ。
もう、2回も電話しちゃった。
キャンディは、新しいおうちでもキャンディだね。
それ以上にぴったりの名前が見付からないって。
近いうちに、会いに行くね。
どっちも素敵なところで、大事にして貰えそうだから、ハンカチを持って行ったのに、
2回とも泣けないまんま、帰って来たよ。
ママは元気だよ。
クロスケは、更に甘えん坊になった。


□■■ May 12th

友達というのは、友達であって、それ以上のもんでも、それ以下のもんでもない。
それがいいところでもある。


□■■ May 11th

誹謗中傷とは、賢明な人間の取るべき手段ではない。
批判を受けている者に、己を正当化する絶好の道具にされてしまうからだ。
汚れた名を洗い流す、タイミング良く放り込まれた石鹸だ。
攻撃された筈の相手は、そのぐにゃぐにゃの矢を正常な論点からの他の批判と一緒にゴミ箱に捨て、
不当な仕打ちに耐えるいけにえの顔をし、逆にお説教を始めるかも知れない。
救世主でもゲリラでもない、ただの勘違いなお荷物だ。


□■■ May 10th

昨日、子供達の目がようやく開いた頃の写真を久しぶりに見た。
ぺしゃんこの鼻に、うつろな瞳。
こんなに可愛らしく変身するなんて思わなかったな。
毛色も薄く、黄味がかり、どんどんお母さんに似て来た。
黄土色のアイシャドーと頬紅つけた、おめかし兄弟。
鹿の子ちゃんの顔も、変わって来た。
柴犬特有の眉の上の毛色の切り替わりライン、子供達と同じ、黄色がかった頬。
季節のせいか、それとも、餌により、本来の色が出て来たのか。
黒い長い睫毛の上に、茶色い短い睫毛が重なって、化粧上手な美人犬だ。
いよいよ、明日はボンが旅立つ。
きっと、号泣するな。
この時の為に、世話をして来たのだけれどね。

ボン。
我が儘を言わない、いい子だね。
お目々がくりくりして、可愛くなった。
クロスケは勝手にサークルをよじ登って抜け出すけれど、
お姉ちゃんはぴょんぴょん飛ぶだけで、手を出すタイミングが悪く、いつまでたっても出られない。
お前は、立ち上がってクンクン言うくらいで、すぐに諦めてお座りして待っているんだよね。
この間は、クロスケのおかげでお前とお姉ちゃんが、夜中に何度もキュウキュウと呼んだもんで、
私はすっかり参ってしまっていたんだ。
玄関でお前達を見守りながら転がっていたら、上ってきて、一緒に寝てくれたんだよね。
犬と寝るの、ニャン以来かな。
腕まくらで、お前が何度か寝返りを打ったのは覚えているけれど、私も少しだけ眠ったかも知れない。
起きていても、ふわふわの毛に触れていると、まるで夢の中にいるみたいだ。

キャンディの後、ボンもベランダに連れて行って、親兄弟と離れる練習をした。
その後、裏庭に降りて、ピヨおばあちゃんとニャンおばあちゃんに報告に行った。
大きくなったよ、守ってくれてありがとね。
ニャンおばあちゃんか......
最後まで仔犬みたいだったのにね。


□■■ May 9th

キョンのフィラリア検査をしたところ、9ヶ月前と比べ、幼虫の数が激減していた。
餌のお陰だな。
一緒に歩く、線路伝いの道。
道端の草花、山の色。
みんな、元気になあれ、幸せになあれ。


□■■ May 8th

鯨。
大きく、賢い生き物。
殺すことが正当だ、誤りだなどと、誰が言うのだろう。
種をコントロールするなんて、何と傲慢なのだろう。
反則の武器を手にした、ただの落ちこぼれの身で。

鯨相手でも、人相手でも、よく似たものだ。
各方面の利害関係、主義主張を考慮して......
その中に、肝心の当事者が含められていない。

キャンディー達におすわりや伏せを教え始めて、少しだけ、
咬んだり、ダダをこねたりするのがマシになった。
ほんの少しではある。
子供達を幼稚園に入れたようなもんなのだろうか。
自分の住む世界の秩序というものを、認識したのだろう。
犬は人と同じく、群れで生活する生き物。
だからこそ、人の社会の中で暮らして来られたのかも知れない。


□■■ May 6th

ちゃ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ら〜ら〜〜らら〜〜〜〜〜〜〜〜〜ら〜ら〜〜らら〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ら〜ら〜〜らら〜〜〜〜〜〜〜〜〜ら〜ら〜〜らら〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ららら~ら~らら〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
仔犬達とママを表に出して、うんことりの朝。
こっちを取って、あっちを取って、振り向くと、いつの間にか増えている。
わーっ、ここにも、ここにも!
タケノコでも見付けたかのように、嬉しいね。

食いしん坊のクロスケは、ご飯を持っていると注目してくれるから、
お手もお座りも伏せもちょうだいも、一度に覚えた。
ボンは、貰えなくてもムキにならずにがっかりしてしまうから、覚えたのは次のご飯の時。
小食のお姉ちゃんは、すぐどこかへ行ってしまうので、なかなか教えられない。
困っていると、気紛れに戻って来て、全部、あっさりとやって見せた。
こんなの簡単だよ、一度やったら出来るよ、とでも言うように。
課題をさっさと済ませてしまって外で遊んでいる天才児みたいだ。

最近のWEBサイトでよく見掛ける、「皆さん、こんにちは、〜」ってやつ。
あれは、「日記」なのだろうか。
みんながやっているからと、深く考える人はいないようだが。

私達、熱いうちに離れてしまったからにょ〜っと伸びちゃったのね。
今度は風呂の釜で溶けてしまったセルロイドの人形のように、
寒い中、くっついたまんま、固まってしまったのね。
どうしましょう、ねばねばして来ました。
次は、マーブル状に混ざって、かたまりのまま震えていましょうか。


□■■ May 5th

クロスケ、お兄ちゃんを咬んじゃいけないよ。
その子は弱いんじゃない、優しいんだ。
お前やお姉ちゃんがやんちゃだから、咬まれる痛みを知っているんだよ。
体も口も一番大きいのに、たとえ優位に立ったって、強く咬まないでしょ。
弱虫には、できないことだよ。

仔犬達をしつけるついでに、鹿の子にも、「お手」を教えてみた。
すぐに覚えた。
お腹が空くと、ずっと「お手」でアピールしている。
犬は賢いな。
「待て」のできない人間とは付き合い辛い。


□■■ May 3rd

鞄を開けると、タオルが入っていた。
何故、犬のタオルが?
同じだ。
ニャンが死んだ時と同じだった。
鹿の子が、前日に吐いて病院に行った。
夜と朝に、少し様子がおかしかった。
家に朝と昼、電話した。
問題なさそうだった。
仕事の後、一目散に帰った。
鹿の子達一家は、元気に遊んでいた。
昨日の天の声は音痴だったらしい。

明らかな問題点を指摘されて、見直し、改善の努力をせず、
言い訳に終始する人とパートナーシップを組むことは躊躇される。
たとえ営業手腕があろうが、表面的には"成功"に見えようが、それは一時のこと。
何か起こったとしても、対処よりもやはり言い訳に精を出すのだろうし、
ビジネス全般に於いていい加減なのであろうから、
外で交わされる契約に不備があることは大いに考えられる。
一緒にトラブルを背負わされることにもなりかねない。
ハンコは気安く押すものじゃない。
口約束の方がまだましだろう。


□■■ May 2nd

大人しくて聞き分けのいい2番目の子、ボン。
お姉ちゃんとよく似ているけれど、頼りなく下がった目が、控えめな性格を表している。
他の2匹が取っ組み合っていても、ひとりでおもちゃで遊んでいるいい子。
おっとしりているので、いつも逃げ損ね、飛ばっちりを受けてママに叱られている。
ママ、その子じゃないよ、暴れていたのは。
可哀想なので、抱っこしてよしよししてあげる。
近頃は、朝一番、お座りして顔を見上げ、あはーっと笑ってくれるようになった。
みんな、日に日にママに似てくる。
柴犬特有の眉毛、ランドセル、くるんと巻いた細い尾。

鹿の子ちゃんとポストまで一緒に行った。
砂糖菓子のような、小さな花が咲いていた。
ねぇねぇ、鹿の子ちゃん、綺麗な花!
......と言っても、君の目線には高すぎるな。

仕事しない警官はクビにして下さいな。
税金が勿体ないから。
交通事故の報告を受けても、意地でも現場に行かない奴とかね。
一人、二人じゃないもんね。
少なくとも、うちの管轄の警察署では。


□■■ May 1st

天の声というのはある。
ニャンが死ぬ時もそうだった。
それから、起こるようになったのか、私が意識し始めただけなのか。
天なのか、神なのか、そんなものだとは思いたくないし、思ってもいないのだが、
出掛けない方が良い時は、明らかに常ならぬ、阻止しようとする力を感じるのだ。
昨日も、郵便局本局が締まる時刻ギリギリに速達を出しに急ぐ私を、
関連性の無い幾つもの物事が、続けざまに引き留めようとした。
後悔することになるのだろうと予感しながらも、そこで止める訳に行かなかったので、
雨まで降り出した中、びしょ濡れ覚悟で自転車に飛び乗った。
ははーん、暗くて見通しの悪い路上で、事故にでも遭うのだなと、慎重に走った。
着いてみると、集配は明日だから、到着は明後日だと言われた。
一日空くなんて、速達ではない。
料金を払うに値しないので、そのまま、断って局舎を出たら、雨は止んでいた。
こういうことだったのか。
この程度で良かったけれど。
今度こそは、声に耳を傾けよう。
オカルト趣味でも何でもなく、己の無知を知る、ヒトの謙虚な姿勢として。

コンデンサーマイクを買おうかという気になっている。
SUREの58で、ここまで出来るテクニックを磨いたから、もう使ってもいいと思う。
機材は、技術の未熟さを補正する為のものではないと判っているから。

今朝から、子供達の教育を開始した。
ママが食べている間は、我慢。
手に咬み付いて抵抗しているキャンディー以外は、大人しく待っている。
さて、仔犬達の番。
すぐに飛び付くのでダメかと思っていたが、2回程で"おすわり"を理解した。
何だ、出来るんじゃん。
やっぱり、私がいけなかったんだ。
押さえ付けたり、叩いたりしないでどこまで行けるかだ。
異文化コミュニケーションだからな。

ダメな生徒を教育することも出来ずに、ひたすら弁護をしながら尻を拭いている先生は、
生徒以上に救いが無い。

人を信じて傷付くのが美しい、なんて下らないセリフは前世紀の遺物入れに捨てませう。
むやみに疑わない為に、安易に"信用"しないことだ。
信じるというのは、ひとつの責任。
それなりのエネルギーと覚悟が必要だ。
安易に人を頼っておいて、裏切られたと言うのは、相手にも失礼ではないのか。

こんな時代だから、まぐれ当たりをつぎはぎしたものが"実力"だと勘違いしている人が多い。
物事の本質が判らない人に、真に有能な人はいない。
「一発録りなので」というのは、上手さをひけらかす為に言う言葉であって、
下手の言い訳に使ったら、逆にそんなの聴かせるなと怒られるよ。
下手なのが判っているのなら、まだいいけどな。

見て下さい、感想を下さい、と言ってお世辞を言わなければダダをこねる幼児はもう沢山。
幼稚園の中で発表すればいいじゃない。
幼児なら、きちんと教育すれば、特に出来が悪いのでなければ普通にできる位には成長するでしょう。
10年後あたりで、技術だけ見ればの話だけれど、世に出してもいい程度には。

「美人モデル!」と、表玄関にでかでかと貼られたポスターを見て、
「ブサイクやね。」と感想を洩らすのは、誹謗中傷とは言わない。

夢や希望とは、己の身を削って叶えるもの。
コネや一生懸命さだけで叶う夢なんて、ろくなもんじゃない。
努力というのは、そんな生易しいものではない。
勉強してます、なんて言うのは、古今東西の学生を見てからにした方がいい。

厳めしい口調でさとしても、下手な理屈をこねても。
言い訳は言い訳。
みっともないだけ。

当たり前のように愛されることに引け目を感じないのは、
当たり前のように愛することが出来るからなのだろうな。

キャンディーの鋭い歯で、手のひらがざっくり切れた。
こわ〜い。
咬まれた体験から犬を怖がるというのが、判る気がするな。
成犬は、咬まれても痛いだけ。
仔犬のように尖っていない代わりに、仔犬と違ってあごが強い。
本気であれば、小さめの犬であろうが、拳くらいは砕かれてしまうだろう。
普通はそこまで敵意を持っている訳ではないから、という意味でしかないが。
引き渡しまで、あと10日。
こんなん渡したら、即、保健所に放り込まれてしまう。
明日から特訓じゃ。

喧嘩は一番強いが、小柄で食が細い。
一度、倒れさせてしまったから、何時でも体力をつけさせておかねばと、一生懸命、食べさせようとした。
食いしん坊で子供達のご飯まで食べてしまうからと、母親の鹿の子よりも先に、特に優先的に食べさせた。
鹿の子はいちいち、お座りをしないと貰えないのに、子供達が鹿の子の分を横取りしても、黙認していた。
無意識の内に、こんな初歩的なミスを犯していたなんて。
犬族のリーダーは、先に食べなくてはならない。
キャンディーがママの言うことを聞かないのは、私のせいかも知れない。
ごめんね。
痛いけど、頑張ってみるわ。

キョンが、庭のトカゲを捕まえたそうだ。
くわえて地面に置くと、すたこらさっさと茂みに逃げたのだと。
残った尻尾がくにゃくにゃと動くのを、キョンはじーーーっと見ていたらしい。
なるほど。
尻尾ってそう使うのか。

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