三次元漂流記 2002
アーティスティックな寝姿 [3月のモデル; 凝った構図で寝るのね......]
鹿の子ちゃんの子供達は、はや1月と1週間。
生まれた時は虫みたいで、
ついこの間までモグラだったのに、
すっかり犬の子になって、
わんわん言いながら暴れている。
今が最も成長のめざましい時。
大きくなったら覚えているかなぁ。
思い出す暇がない程に毎日が楽しければ、
それが一番だけどね。

□■■ Mar. 25th

叩きつける雨に塵と化粧を落とされた地球が、
氷のように済んだ空気に桜色の吐息をにじませる。
早い春。
動かない花びら。
カクカクと進む時間は、美女の笑みの奥の頭蓋骨を思わせる。

仔犬達が自力で排泄できるようになったので、トイレを教えることにした。
昼間は鹿の子が全て面倒を見ているから、夜の間だけ、オシッコにまみれながらの運動会。
1週間位かかると聞いていたが、さすがは鹿の子の子達。2晩で覚えた。
ついこの間までモグラみたいだったのに、もうすっかり犬の子だ。
鹿の子、おまえは偉いね。
こんなに逞しい子供達を、産んで、自分で育てているのだから。
これからは、人間が支配する社会で幸せに暮らす知恵を授けなくちゃならない。
少し、手伝わせてね。


□■■ Mar. 21st

仕方がない、か......
一般の人は、それで許されるつもりなんだ。
個人の事情は、他人に迷惑をかける言い訳にならない。
人間社会における事情は、地球に迷惑をかける言い訳にならない。
金は、貸した相手から返して貰え。
プラマイゼロになってるのは、あんただけだ。


□■■ Mar. 19th

キョンと久々に行く池沿いコース。
菱の実が浮いている。
ヌシの姿は無い。
雑草だらけの畝道に、つくしが顔を出している。
ちょっと待って!
しゃがみ込むと、立ち止まって待ってくれる。
「賢そうなわんちゃんやねぇ」
確かに頭は良いが、聞き分けは余り良くない。

鹿の子ちゃんを連れて病院へ。
自転車のカゴは気に入らないらしく、飛び降りてしまったので、歩いて行った。
喉が渇いたようだし、産後なので、少し抱いて歩いた。
あの体で8キロもある。
ニャンが痩せていた頃よりも少しだけ、軽い位だ。
まぁ、今は育児期でよく食べるから。
年齢は3〜4歳、フィラリア弱陽性。
心配はなさそうだが、貰い手を探すには、ちと微妙だ。

昨日、梅田に行ったついでに、
曾根崎にあるというペットショップに、おやつを見に立ち寄ることにした。
鰻の寝床に、まだ親から離すべきでないとされる月齢の幼犬達が、排泄物まみれでひしめいている。
里親詐欺や、犬を仔犬製造マシン扱いしているブリーダーを儲けさせている店だ。
店が知らない筈はないし、又、基礎知識の無い人間が店をやっているのだとしても問題だ。
健康を謳った不健康なおやつが並んでいるが、まともなものはひとつも無い。
不勉強なのか、ただ、儲けたいのか。
いずれにせよ、ひどい店だった。
犬達の表情を見てもよく判る。
何も知らない客達が、可愛い仔犬や子猫に見とれている。
殆どが、可愛がられている生き物の顔はしていないのだが、判らない人には判らないらしい。
入り口付近の客寄せ牢では、
目ヤニだらけの小型犬が客に媚び、皮膚のただれた中型犬が横たわっていた。
その奥に、サーバルキャットがいた。
アメリカのヤマネコらしい。
ヒョウほどもある体で、1メートルの台へと、音も立てずに移動する。
前爪は抜かれているそうだ。
ネコ科で最も美しいと書かれている。
野生なら、そうかも知れない。
美しさは、自然環境が与えるもの。
生き物の肉体と精神の状態に他ならない。

キョンに自然食を与えて半年、余りの毛並みの良さに驚いている。
2ヶ月ほどで、少し、綺麗になって来たかという気もした。
日々、せっかちな思いで観察していた。
その頃から既に体臭は無かった。
陽を浴びて艶々と虹のように光る、チョコレートから真鍮色のグラデーション。
肉体美も素晴らしく、顔も男らしい。
知らない人々が男前だ、綺麗だと口々に言うのだから、やはりそうなのだろう。
この子を棄てた人間は、こんなに格好良い犬に成長したとは想像もしていないのだろうな。
餌のパッケージには、美しくなるとは書かれていない。
キャッチは"Feed your dog the way nature intended."だったか。
自然界から切り離した動物を、如何に自然に近い栄養状態で育てるか。
体にいいものを摂る事を考える前に、如何に余計なものを摂らないように努力するか、
即ち、よく落ちる洗剤を探すよりも、汚さない工夫をすることの方が大事だということだ。


□■■ Mar. 18th

象達が水飲み場にやって来る。
逃げろ、踏み潰されるぞ!
怖いものなしの群れは、何時間もどろんこ遊び。
おおい、象が帰ったぞぉ、みんな戻って来ぉい。
蹴散らされた動物達が、再び集合する。
地球の上に線はない。
誰のものでもなく、誰ものものでもある。
虫も、魚も、そのことを知っている。

表札かけたり、チケットを売ったり。
破壊したり、保護したり。
偉いの? 賢いの?


□■■ Mar. 16th

一羽では鳴けない鳥達が
一緒になってつついてる
巣立ちをおしよ
そんなに立派なクチバシがあるのなら
あっちへパタパタ こっちへパタパタ
群れから離れて お行きよ
そんなに器用な翼があるのなら

政治家の世界は
「バレたら返せばええやんか」
の万引き少女達に似ている


□■■ Mar. 15th

仔犬達が歩き始めた。
資料を調べた。
大変だ、離乳食の準備をしなくちゃ。
慌てて買い物に行った。
少し、遠くまで。
よその人に貰った犬ガムを小屋の奥でしがんでいた鹿の子ちゃんに、
買ってあげたいおやつがあって。

仔犬達には、良い引き取り手が見付かりそうだ。
もう一息。
何とかなる。
この誠意が本物なら。

穴を埋めて行く。
どこの誰の責任とも判らないけれど、それが私の義務の一部。
私が自分で空けてしまった穴は、もう埋められないから。


□■■ Mar. 14th

職業や勤務形態で人を判断する人。
金の為に働くという、労働の基本すら否定しようとする人。
なんですか、あんたらは真面目に働いている気分が味わいたくて働くのですか。
自分はまともな人間です、そう大声で言いたいのなら、言えばいいのに。
弱そうな立場の人間を見つけ出し、集団で踏みつけなくては自分を肯定できないとは、気の毒に。

見えないものは、"存在しない"のではなく、
往々にしてその人に見る力がないだけなのだ。


□■■ Mar. 11th

ステキチが連れて来た子は、シカの子供みたいだから、鹿の子ちゃん。
久々にきょんの散歩に付いて来てくれたステキチ。
「もう一匹、付き合ってね!」と言うと、家の前で待ってくれていた。
きょんと行ったのとは反対の方へとことこと。
草だらけの青空駐車場の隅でおしっこさせる間、寝そべって待ってくれている。
ここはみんなの便所らしい。
毎日のように通るのに、何だか懐かしいな。
そうだ。
ニャンといつも来ていたんだっけ。
ステキチにボディガードして貰って。

数日前に蝶を見た。
嵐の前だと言うのに、せっかちだな。
お前が行ってしまってから、3つめの春がやって来る。
たった2年なのか、もう2年なのか。
あれから、美しい生命を幾つも見たよ。
美しいものに出逢う度、「あ、ニャンだ。」って思う。


□■■ Mar. 10th

クロちゃんは、田んぼで死んでいたそうだ。
先月の十日、私が帰って来る二日前。
とても、とても寒い日に。
最初に決めていた日に帰っていたら、会えていたのかな???
年末にほんの一週間ほど、家にいた時に会ったのが、にこにこ顔の君を見た最後だった。
ステキチ君と並んで駅まで付いて来てくれた君を、見送ってくれる人はないんだね。
文句も言わずに、痛みを誰のせいにもせずに。
にこにこ顔のまんま、行ってしまった。
みんな、私を追い越して行く。
私を置いて行く。

生き物とは、死んでしまうものじゃない。
諦めるものじゃない。
生き物とは、生かすものなんだ。
痛みを決して忘れるな。

二度と同じ過ちを繰り返さないために
また 同じことに挑む


□■■ Mar. 9th

昨日の午後、末っ子の目が、片方だけ開いていた。
いい家を見付けようね。
うちでも段々、風当たりがきつくなるから。

人間が如何に素晴らしくなれるかを説く天使がいれば、
人間が如何にどうしようもないかを示す悪魔がいる。
目的は同じなのかも知れない。
それぞれに使命がある。
私は、悪魔。
建て直しは往々にして、一度、全部壊した方が早いから。


□■■ Mar. 8th

魚の場合は、魚病治療薬の開発の為、病気にされ、治療条件を分けられてデータを取られる。
運良く生き残ったものは、その後、どうなるのかは知らない。
大事に飼われる、なんてことはないのだろう、食用の家畜と同じなのだから。
里親詐欺の犠牲になる動物達に対して行われる実験は、
人間の薬は勿論、化粧品や洗剤の類の安全性の確認が目的であることが多いらしい。
苦しい実験の最中に死んでしまうものもいるが、生き残ったものは実験後、"処分"されてしまう。
イギリスでは、化粧品の為の動物実験は全廃されたとか。
動物実験をする会社の製品など、消費者が買わないからだ。
「そんな事を言ったって家計が」、
「私達の生きている間は関係ない」式の他人事感覚の日本からは程遠い。
動物を犠牲に作られた化粧品が、人を美しくするのか。
動物実験が必要であるということは、危険な成分が含まれているという証拠でもある。


□■■ Mar. 7th

シンデレラは、闘わずに諦めていたから、魔法使いのおばあさんが助けてくれたのだろうな。
白馬の王子様は、これ見よがしに待っていないと素通りしてしまう。
思いがけなく現れた王子様は、王子は王子でも幸福の王子だったりするのだから、
やはり手放せない、この剣。

お姉ちゃん、真ん中の雄の目は、ぱっちりと開いている。
末っ子の目はまだ開かないな、と観察していると、大きなあくびをした。
「焦らなくても、じきにあちこちかじっては、夜中に鳴いて起こしてあげるから。」
やめて〜。


□■■ Mar. 6th

教育とは、どうしようもない社会を変える為に施すもの。
子供達に食いぶちを与える為でも、アーティストを製造する為でもない。
今の小学生が大人になり、人を導いたり、政を動かしたり出来る歳になって、
ようやくその効果が現れ始めるのだ。
たとえば、戦後の人間は平和教育を受けて来た筈だ。
学校で習うことが現実とかけ離れていても構わない、理想なのだから。
もしも現実が目を覆うようなものであるなら、変えるべき現実に気付かせるべきであって、
意味がないなどと言う意見には耳を傾ける必要もない。
何年も教育を受けた筈の大人達には、何故、それしきのことが判らないのだろう。
救世主はどこかにいる。
地域や家庭の誤った価値観の汚染から、国は彼らを守らねばならないのだ。
教科書を簡単にするとか、個性を見付けるとか、寝言を吐いている場合じゃない。

個性を「生かす」ということは、可能性を限定するということ。
若者には、遍く知識を授けるべきだ。
道は、本人が選ぶだろう。

仔犬達の目が開き始めた。
朝見たところ、真ん中の雄の目が、初めての小屋の外の世界に、まぶしそうに少し曇っていた。
小屋の入り口は新聞紙と毛布ののれんに覆われ、昨日の雨よけのビニールがまだかかっている。
そして午後、もう1匹、末っ子の雄だったか、目頭の方だけ、少し開いた。
数日でもっとはっきり見えるようになり、耳も聞こえるようになり、臭いも判るようになる。
今日は、雌の仔犬を欲しいという人と電話で話した。
毒の入っていない餌をあげてくれ、とはなかなか言い出しにくい。
が、言わなくちゃ。
市販のものは殆ど毒入りだから。

愚かなる母ども 何故
人として産んだ娘を 奴隷として育てる
お前達を解放する為に遣わされた救世主を
背後から刺すのだ
そんな事をしても息子は王にはなれぬ
永遠に奴隷のまま 屈辱のうちに果てるがよい
扉は再び閉ざされた
お前達自身の手によって


□■■ Mar. 5th

久しぶりにCD屋をのぞいて、不思議なアルバムを見付けた。
なんと帯に、「隠しトラック収録!」という宣伝文句が。
吉本新喜劇やないかい。
「ここには絶対、隠れてまへんで!」

バラエティ番組の予告でおかしなナレーションが流れた。
「〜に堂々、潜入!」
堂々やったら潜入ちゃうやないかいっ。

恩を売るのが大好きな人は、人に受けた恩は勘定に入れない。
いつまでも、やってあげた、やってあげた、とうるさい。
あげる、あげる、サンタクロース!
持ってけ、持ってけ、ありがとうは?
......お待ち。
それは私のパンツじゃないか。

施設を立てましょ 離れ島
自分の名前を飾りましょ〜
大臣 役人 太鼓もち
来週は楽しい証人喚問〜♪

"大女優"の"大"って何だろう。
若いうちに人気が出て、ド下手なまま、態度だけ大きくなった事を言うのだろうか?
一流ブランド店やレストランでよく効く、でっかいでっかい顔の事だろうか?
人気にも、キャリアにも、実力が伴わなければ、それは恥でしかない。

人から聞いたこと、本で読んだことを語ることしか出来ない人が学者を名乗るなんて、
ちゃんちゃら可笑しい。
クイズ王とどこが違うのさ。

"絶対"を保証出来ない人間が、足を踏み入れてはならない世界というものがある。

今日の芝居はいまいちだったね、と言われて、「風邪気味なので」
なんて言い訳をする役者は、即、クビだ。
舞台のある日に風邪をひいて来るなんて、なめている。
本当はもっと出来るんです、とでも言いたいのだろうか。
ならば、「〜さんは本日、風邪をひいているので演技が下手です。」
と、登場の度に四カ国語アナウンスでも入れて貰えばいい。
勿論、病気であっても、健康な時に全く劣らぬ芝居ができるのなら話は別だが。

良い指導者に巡り会わなかったからと言って、ハンディは貰えない。
他人から何かを恵まれなかったことは、言い訳にならない。
「医者の息子に生まれなかったから、医学が判りません。
 頑張りますから、私の分は試験を簡単にして下さいっ!!!!!」
二人羽織で執刀しますか。
熱心さを売りにする人は、太股を見せる女と同じだ。

私は"アーティスト"とは違う。
便宜上、営業上、名乗ることはあっても、本気で勘違いしている訳じゃない。
一思想家のつもりだ。
即ち、人間、ということ。

無添加、無添加と、それが売りになる程、食生活がおかしくなっているということ。
何だね、本当に自分で作品を仕上げているアーティストと同じだな。
当たり前のことが珍しい社会、異常だね。

運命共同体の法則
他人を必死で弁護する人は
己の中に同じやましさがある

「君は役に立つ」と
私の役に立たない人に言われたくないぜべいべ〜

もの貸して
感謝されたら気を付けな
返すアテは無いってことだ


□■■ Mar. 4th

仔犬達の鳴き声に、時折、犬っぽい吠えや唸りが混じるようになった。
生まれた直後は「おぎゃあ、おぎゃあ」と鳴いていた。
いや、泣く、だろうか。
否、人間の赤子の方を「鳴く」と書くべきなのだろう。

「常識」を振りかざす人ほど、世間知らずである。
何故なら、それは社会によって異なるものだから。
「常」は、その群れに於ける「常」であって、普遍を意味するものではない。

先生と辞書は同じ。
到達レベルと学習速度は、その良し悪しに比例する。
先生の良し悪しは、生徒を見れば判る。
物事を上達させてくれるのは、良い先生ではなくて普通の先生。
「上手くなる」ことと「上手い」という状態になることとは、全く意味が違う。
生徒をなだめすかしながら教えるのは、良い先生ではなくて商売上手。
大して良くない先生にひっかかると、一生を棒に振ることにもなりかねない。
上達させられなかったり、下手にしてしまったりするのは、先生ではなくて害獣。
芸能界を見ても、アマチュアの世界を覗いても、低いのは芸人の資質だけではないのがよく判る。
これほどに低いのは、先生の質か、志か、はたまた両方か......

「初心者なら教えられる」というのは、
「歌はまだまだ下手なので、メインでなくてバックコーラスをやらせて下さい」
によく似た勘違いだと思う。

不合格の中にも使えるのがあるかも...... なんてゴミ箱をあさり始めるとキリがない。
点数で言えば60〜70点というのが一番多いから。
世間一般で「できる」と言えば「中の上」を指す。
これもあれも、もしかしたらいつか使えるかも...... と物置はもう一杯。
元が低いのは伸びるのが早い分、有望に見えるし、そんなのを80点台に引き上げる事は容易い。
だからと言って90点、100点にはならない。
ならない事もないが、何故ならないのって訊く人には先生は無理だ。
教育に対する考えが甘いにも程がある。
教育者側の。

ニワトリが先かタマゴが先か。
先生がダメだから、歌手が下手。
手本が下手だから、歌手志望もダメ。
生徒がダメだから、先生も妥協する。
先生がやる気ないから、歌手が......
ニワトリだよ、ニワトリ。
もうどちらでもいいようなとこまで来てるけど、哲学的に探求するなら、答えはニワトリ。

© K. JUNO ALL RIGHTS RESERVED.
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