三次元漂流記 2001
きょんのマイホーム 41KB [9月のモデル; あこがれのマイホーム.....]
"ハウス!"て言われて、思わず入っちゃった。
まじ〜〜〜?
"あっ、入れるじゃない"だってさ!
前のちっちゃい犬が使ってたおうちだよ、信じられる?
あたま出るっちゅうねん......
な〜〜〜んて文句言ってたら、
家の人達でお金を出し合って、
外が大好きな僕の為に、
大きなおうちを買ってくれたよ。
でもさ、玄関も結構いいな。
お座敷犬がいいっておねだりしてみようかな♪

反戦デモが起きているという。
"戦争が答えではない"と書かれたプラカード。
良かった。
民衆はまだ正気だった。

私は友たちの事で頭が一杯だから
陳腐なセリフと使い回しのテーマソングで
争いへといざなうのはやめて貰えないか
向かう相手ごとに演出を変えて
全くもって忙しい商売だね
おっと 奥さんの名前は呼び間違えないようにね

クロちゃんは今日も来た。
楽しそうにやって来た。
お腹にぶら下がった邪魔なものに文句も言わずに。
ここに友達がいる事を、思い出してくれたんだ。
毛が絡まってるね。
梳かしてあげよう。
お腹空いてないの?
もっとお食べ。
このご飯はやっかいなガンをほんの少し、懲らしめてくれる。
間に合わないかも知れないけれど。
こんな事しか出来ないけれど。
何の取り柄もない生き物だね。
でも、足が遅くても追いかけてみるね。

私を必要としている人はいるのだろう。
私が必要としている人はまだいない。
分業は苦手だ。
手伝わせるのはもっと苦手。

あの子が帰って来たかのように、みんなが集う。
あの子が帰って来たかのように、みんなが笑う。
あの子が帰って来たかのように、慌ただしく時が行く。

いくら顔がそっくりだからと言っても、
ニャンを喜ばせてあげることは、もう出来ない。
暗闇の中で抱き上げ、話しかけてあげることは出来ない。
そう思うと、何だか毎晩、台所でボーーーーーっとしてしまう。
ピヨを逝かせてしまった後の、あの日々のように。
そう言えば、ゆっくりと悲しんでいる暇が無かったね。

人の寿命が半分だったとしたら、尚、こんな事をしただろうか?
そこまで愚かであったのだろうか?

煽るな
追い立てねば動かせないのなら
導こうとするな

武器を手渡したらもう同じ。
自分は殴っていないなんて言えない。
そこを判っていないと、大変な事になる。

キョンの外の"おうち"を買うことになり、見に行った。
ゆったりと、くつろげる城。
母は、墓に植える白い花の苗を選んでいた。
ビオラとノースポールにした。
誰もがニャンを思い出している。

経済不振。
迫られる失業対策。
どうする総理?!
そこに浮かび上がる自衛隊派遣話。
しかも、世の半数は報復行為に協力すべきと言っている。
何ともうまいタイミング。
これで、全ての問題が即座に解決されるであろう。
.......なにっ、世論が一転して、反対が圧倒的多数になったと?
やっぱりね。そうだろね。

クロちゃんがステキチと一緒に遊びに来てくれていた。
ついこの間、厭な目に遭ったのに。
何とか医者に見せられないかと、門を入って庭で遊んでいたクロちゃんに、キョンの鎖を繋いでみた。
首輪のDカンを捕んだ時点で既に怯えていたが、
ナスカンを通すとパニックを起こし、道路に向かって走り出した。
が、鎖が付いた状態ではガレージを出られない。
ガクンという衝撃に驚いて、ワンワンと鳴き出した。
"ごめんね、ごめんね....."と言いながら放すと、テッテッテッ...... と行ってしまった。
家の前で一部始終を見ていたステキチと一緒に途中まで見送ったが、振り返りもしてくれない。
また遊びに来てくれるように言っておいてね、と、ステキチにお願いした。
通じたのかどうか判らない。
名前を呼ぶと、楽しそうに道路を渡って来る。
ご飯をあげると、バクバク食べた。
ぶら下がった余計なものは、一回り大きくなっているようにも見えた。
暗い中、観察しようとすると、触られるのを避けている風でもあった。
遊ぶ時には痛そうな様子は見せないのに。
涙は、諦めた時に流すもの。
元々、関わる意志が無いか、或いは、自分の能力の限界を認め、放棄した時に人は泣くのだ。
あんなに元気をくれた子に、してやれることが無い。
涙はこぼれないが溜息が出る。

なにっ、"十字軍"?!
や〜ね、パクらないでくれる?
じゃあ、あたいは"レコンキスタ"に訂正!
"戦国自衛隊"でもいいかな。

生きようと努力する事は本能であり、生き物に遍く共通する正義である。
"命の大切さ"なんてペテン教育はいい加減にやめにしないか。
多くの生き物の中の、ホモ=サピエンス=サピエンスという、1つの生命の形。
その中のたった1つが、大人達が目を潤ませ、鼻の穴を膨らませて熱く語る"命"の正体なのだ。
たかが1つの命なのだという事、それ故に、必死になって守るべきなのだという事。
その真実を、そろそろ認めるべきではないだろうか。
子供達は敏感だ。
矛盾に気付かない程、バカじゃない。
やがて"命の大切さ"のハッタリに気付いた子は、生命の重さまで一緒に否定してしまう。
たかが人間なんだよ。
そこまで戻らなければ、重なった皺は延ばせない。

どれもこれも、胡散臭い情報ばかり。
いちいち真に受けて、どちらが正しいの正しくないのと言っても仕方がない。
既に、報道そのものが信用できない。
人を洗脳するのに薬は要らない。
誰が真面目でどこまでがグルなのか、見分けが付かない。

ニャンの使っていた犬小屋の屋根を取り外して玄関に置き、中を指さし、"ハウス"と言ってみた。
キョンは半信半疑で頭を突っ込んだ後、隣にしゃがみ込んだ私の顔をのぞき込む。
「そうよ、合ってるよ、ここに入ってごらん。ハウス。」
もう一度小屋の中を見た後、嘘でしょとばかりにこちらをじーっと見ながら、お座りをしてしまった。
......そうだよね、小さ過ぎるもんね。
ごめんごめん、忘れてちょうだい、無かった事にしようね。
諦めてその場を離れ、また暫くしてから玄関に戻った。
小屋の前のスペースにお気に入りのマットを敷き、居場所を作ってあげなくちゃと。
キョンはすぐにマットの上にやって来たかと思うと、そのまま小屋に入って丸くなった。
あれ、入っちゃったの?
随分、無理矢理なサイズだ。
自分の部屋が出来て御機嫌な様子だが、かなり体に悪そうな体勢だ。
ニャンのおうちが捨てられなくて済むのはとても嬉しいが、やっぱり大きいのを買って貰いなさい。
それから、君は"ハウス"で玄関に入るから、小屋は"おうち"にしようね。

今日、買ってきた餌は結構、高価だ。
他にも試してみたいフードが幾つかある。
体に合うことが判れば、それなりに安い買い方もある。
"早く開けたい"病、再発。

気温が下がるという話だったので、水槽にヒーターを入れた。
水換えをしたばかりだったせいもあるだろう。
早朝、ブラックネオンが産卵を始めた。
体のラインと同じ、透けた赤色をしたグローライトの卵は綺麗だったが、
彼らのは少し白濁していて、何となくごつごつして見えた。
大きい雌から生まれたからか、如何にも孵化し易そうだったが、産む度に周囲の朝食となった。
彼らは子育てをしない。
限られたスペース内でなければ、幾つかは残って、育つんだろうな。

キョン、お前は頭がいいね。
ニャンの顔にピヨの頭脳。
ちょうど2匹分の体重。
ポストステキチ、と言いたいけれど、それは無理。
せめて子分、かな。

タンタライト。
主要産出国はオーストラリアにカナダ、ブラジル。
そして、国内に大規模な鉱脈が発見されたコンゴ民主共和国が加えられた。
輸出による利益は莫大なものとなる。
にも関わらず、危険を冒して採掘に当たる地元の人々の懐は全く潤わない。
よくある話だ。
鉱山は、地域一帯を勢力下に置く反政府軍の資金源となり、そのことが内戦を長引かせているという。
民家は破壊され、人々は安らぎを奪われた。
近隣諸国は国境を越え、盗掘する。
その鉱石が一体、何に使われるのか。
村人達が見たことも無いようなコンピューターに携帯電話、ハイテク機器の数々。
これでも無関係と言えるのだろうか。
無知と無実は違う。
我々の知らない事は少なくない。
知らなくてもいい事はそれ程に多くはない。
我々は直接、銃を突き付けてはいない。
そうしていない分、タチが悪いと言える。

何で"一般人が犠牲に"なった場合だけ悲劇と呼ぶのだろう?
他人事気分の"一般人"の分まで危険を背負う一兵士が傷付く方が心が痛まないか。
彼らの多くは、進んで戦を起こす訳でもなければ、血を好む訳でもない。
死傷者は死傷者。
区別するのはおかしい。

戦士になる
母になる
愛する者だけを守る為
冷酷非情な獣になる
一緒にいて心の底から優しくなれる相手は
赤の他人ということかも知れない

おーい、ステキチー、こっちだよぉ。
稲穂の上にのぞいた尻尾がスタスタ移動する。
川と田んぼに挟まれた道。
キョンがダッと走り抜けた後に、小さなザリガニがハサミを広げ、顔を真っ赤にして立ち上がる。
わ〜〜〜〜〜〜っ!
ステキチがなかなかこっちに来ないので、威嚇のポーズを解けないザリガニ君。
ステキチは特に興味を持つでもなく、警戒するでもなく、ゆっくりとその横を通り過ぎた。
ギリギリ後足が当たりそうだったので、冷や汗かいて固まっていたかも。
やっぱり田舎はオモシロイ。

キョンは夜のおしっこから帰ってもう家の中。
ステキチと私の時間。
目が少し丸くなった。
甘えた仕草。
疲れたら癒しにおいで。
幾らでも休んでいいよ。
昼間は充分に凛々しいから。

もしも この世の終わりに
誰かといることを許されるなら
友とでもなく 家族とでもなく 恋人とでもなく
犬達と肩を組んでいるだろう
彼らが私を選んでくれればの話だけれど

映画みたいな事件に映画みたいなからくり
映画みたいな保安官に映画みたいな民衆
下らない暴力映画並みに金かかってるね
どんでん返しが効いている
まさか"正義"がテーマだったなんて

多国籍バレエ団
あんたらのショーは最低だ
お粗末な茶番には
親バカだってカメラを回す気になれない

ある意味、凄いことになっている。
実は大した思想家でもない学生達が、
火炎瓶を持って闘争した時代もこんな風だったろうか。

不安だ。
戦争を知らない世代はやはり、戦う理由も知らない。
語り継ぐのは無理なのかもな。
身をもって知るしか無いのか。

地球を壊すような喧嘩の仕方はするなよ。
他の生き物にこれ以上、迷惑をかけるな。
切に、せつにそれだけ願う。

"平和"な時代なんていつあった?
目を閉じていただけじゃないか。
あたかも突然に闇が訪れたような表現が飛び交う。
煽る方も、嘆く方も、私には同じにしか映らない。

結局、どこに生まれ育っても、ここに辿り着いた筈。
教科書は手本にならない。
テレビは情報源にならない。
雲。山。犬。虫の糞。枯れ草。トカゲ。
文化が違っても違わないもの達こそが、私の先生だから。

だから言っただろう。
団結は危険だと。
ナショナリズムは狂気だと。
正確な和訳をつけられることの無い、アジア映画の中の憎悪のセリフのように。
牙をむき出しにした"正義"は哮り、悪魔のように民家を焼く。
今回のように多数派がそれを行えば、その凶悪性には弁解の余地がない。
せめて1対1で正面から戦った、今よりはましだった野蛮な時代に戻れないか。

包んでよ
たまにはおせっかいに
かくまってよ
でないとこのまま
自然の中に溶けてしまいそうだよ
当たり前の厳しさに甘えて

"お座り""待って"を教えられるキョンを黙って見守るステキチ。
賢い君は、芸としてではなく、全てを理解しているのだろうね。
キョンに"取って来て"や"キャッチへちま"を教える。
フリスビーが出来るようになったら楽しいね。
広い所で思い切り走ってさ。
ステキチと一緒に遊ぶの。
いつになったら覚えてくれるだろう。
気分が乗らないとすぐに飽きるんだもんね。
ステキチが年を取ったと言う。
確かに、白っぽくなった。
黒い睫毛に混じった白毛を、埃と間違えたこともある。
一匹狼風だった顔つきは、温厚な物知り老人のようになった。
散歩中の尻尾は、リラックスしたキョンとは違い、ピンと立ってまだまだ勇ましいのに。
毎日会っているから気付かなかったのかな。
気付きたくないのかな。
君たちの世界では、時間がとても速く進んでいるということに。
振り向きながらリードしたり、後に付いて守ったりしてくれる。
待ってと言えば寝転んで気長に待ってくれる。
でもいつか......
追いかけても、おいかけても、影も見えない位に引き離されてしまう。
そんな日がやって来るんだね。

追いかけっこ
楽しそうに走る姿
ほんの昨日だよ
手を伸ばせば届く
写真の色だって褪せていない
なのに
もうそんなに遠くにいるの?
いつも いつも
追い越されてばかり
どうしてこんなに足が遅いのって
笑われちゃうね

主義の為には民間人相手でさえ容赦しないと名言する人物が「私は関与していない」と言った。
一方、陰で何をするか判らない連中が、偽造可能な証拠を手に「正義のために」と言う。
さて、どちらを信じたものか。
破壊は嫌いだからテロリストは好きではないが、
嘘や猿芝居などという舐めた手段はもっと嫌いだ。
いずれにせよ、我々も又、背中に銃を突きつけられ決断を迫られている。
選択権はあるが、選択肢は無い。

十字軍ですか?
うちは無宗教なので結構です。
「勧誘・押売お断り」

な〜〜〜んか、無責任な君に無責任な体を預け、
無責任に絡まって寝っ転がって、漠然と遠い考え事をしていたい。
おちゃめなあの子達の三角、四角のアゴに両腕を貸して、
風にそよぐ稲穂の音を聞きながら、紗を織りなす雲を眺めて語っていたい。
気の向くままに。
飽きるまでずっと。

何だ、もう撃墜の噂が広まっているばかりか、新聞にまで載っているのか。
管制官の証言まで出て来ると、今度は逆に疑わしさを感じるね。
ほんとに何を信じて良いか判らない、ばかし合い。
死人まで利用してさ。
もう勝手にやれば?

救助の為の自衛隊派遣を断ったという事は、
来るべき侵略戦争への協力から逃れる道を閉ざす為には、
助けを待っている被害者を犠牲にする価値がある、という事なんだね?
確かに、真珠湾奇襲によく似ている。
軍に大した打撃が無く、ナショナリズムを掻き立て、
死の兵器の使用を正当化する事に見事に成功した、あの戦いの幕開けに。

爆風に散った人々に冥福を
瓦礫に埋もれた人々に希望を
救助に当たる人々に幸運を
それ以外には無い
何も無い

"墜落"した旅客機の標的と言われる場所は、
今回のテロで狙われた中では最も重要なポイントだったろう。
テレビは当初、墜ちる前に"後方で爆音がして白煙が上がった"と伝えた乗客がいたと報じていた。
軍機が追跡していたと知れるや否や、
犯人グループに立ち向かったという映画のような英雄話に光が当たる。
おいおい、前の話はどうなったんだ?
各国民間人が犠牲になったことは、報復行為を正当化するのに大いに役立つことだろう。
適度に破壊された軍の施設の映像も、国内世論に訴えるには有意義ではないか。
"我が国を陥れようとする彼らの計画は失敗に終わった"との大統領の言葉が不気味だ。
ハイジャックとテロは疑ってはいないが、
その先や細部が大国の書き換えたシナリオでないことを祈るばかりだ。

イライラの原因が判った。
過激な思想に根差した破壊行動よりも、
操作された情報に振り回され、拳を振り上げ、嘆く民衆の姿に、
地球レベルでのファシズムを見る気がするからだ。
法による強制ではなく、一般大衆の心理、というよりもむしろヒトという生物の本能に訴える。
かつてヒトラーがそうしたように。
その内、マスメディアを通じて誰かが疑念を口にするだろう。
或いはアンダーグラウンドという名の現代のメジャー媒介において、
"ここだけの情報"が増殖するだろう。
バーゲン品に群がるように大衆は付いて行く。

不幸とは善良な者を選んで降りかかる卑怯者。
どうしてあげられる?
肌が荒れて目が充血する。
寝よう。
起きていたって何も解決できない。

要らないなら
次の金曜日に出して貰えないか
面倒だなんて言って
カビ臭い物置に放り込んだままにしないで

大切なものは全て手の届く距離にある。
力が及ばなくとも手は届く。
だからこそ、精神を蝕むのだけれど。

熱い瞳に冷める。
過ちにはもう慣れてしまった。
無垢な涙に引く。
そして私は数字に弱い。

ある動物病院で飼われている大人しい犬。
確か、ゴールデン・レトリーバーだったと思う。
数ヶ月前だと思うが、クイズ番組の問題になっていた。
診察に訪れる動物達の緊張をほぐす他にもう1つ、重要な仕事があるが、それは何でしょう......
答えは献血。
ふ〜ん、位にしか思っていなかったのではないだろうか。
犬の血液型を判定する為の試薬の輸入が許可されていないのが原因だと、ついこの間、知った。
国内で唯一、生産していた会社が倒産してしまって、治療に深刻な影響を与えている。
その為、人間で言えばo型にあたる、取り敢えずはどの型にも輸血できる血液型のその犬が、
仕方なく駆り出されているということらしい。
知らなかった。
そんな事情を番組内で紹介していたか否か、記憶には無い。
輸入は未だに許可されないままだという。

戦争はオセロ。
政治は将棋。
正義や悪は存在しない。
負けたことのある国にはイヤという程、判っているから、
熱弁を振るわれても、余計に冷めてしまう。

山麓癒しコースを、ステキチ、キョンと行く。
道の両脇を彼岸花が彩る。
緑の穂、黄色い穂。
段々畑。
何が植えてあるか判らない棚。
放ったらかしの空き地。
ステキチがゴロンと寝転がって背中を草にこすり付けたかと思うと、
悪戯っぽく跳ね起きて駆け出した。
待てぇ〜〜〜!
夏から秋へと移ろい始める、精霊達のすみか。

君たちに恩返しがしたいけれど
何をやっても
迷惑をかけることしか出来ないのかな
せめて
逢えた時には甲高い声ではしゃいで見せて
口を大きく横に開いて舌を出し
大好きだって伝えたい

沢山だよ
人間社会なんて大嫌いなんだから
もう 明日を憂える気にもならない
あんた達もそうなんだろう?
いっそ 終わりにすればいいじゃないか

棄てられた生き物達は今日もたくましく走る。
泣き言も、恨み言も無く。
腫瘍を抱えていても、寄生虫を宿していても。
大した苦しみも無く膝をつく我々に笑いかけながら、
朗らかに、そして軽やかに。

今日、病院の付き添い帰りにクロちゃんに会った。
いつものところに座っていた。
名前を呼ぶと、ピョンピョンと陽気に跳ねて来る。
以前に増して体を持て余すような、斜めの足取り。
内蔵が悪くなったのだろうか?
喜んでいきなりお腹を見せたクロちゃん。
そこには握り拳よりも少し大きなコブがあった。
昨日、久しぶりに見た時には、キョンがいたのでゆっくりと出来なかった。
気付かなかった。
腫瘍にしては成長が早過ぎる。
メス犬だからいつもお腹はチェックしていたのに。
激しい動揺を隠しながら戯れた。
その内、クロちゃんは我々を誘うように歩き始めた。
早く、おいで、おいで!
その先にあるのは我が家。
つい最近まで、クロちゃんが自分の家のように気軽に入って遊んだ玄関にはキョンがいる。
数ヶ月前から、あまり姿を見せなくなった。
よそでご飯も貰っているようだった。
お腹も当然、触って貰っていたでしょう???
子宮が腫れているのか、寄生虫がいるのか、妊娠しているのか.......
そっと持ち上げるように触っても、相変わらずニコニコ、嫌がる様子すら無い。
引き続き、お散歩に行こうと誘う。
ステキチもやって来て座り込んだ。
クロちゃんは抱っこさせてくれない犬。
鎖にもつながせてくれない。
今度はいつ現れるか判らない。
ステキチ、どうすればいいの?
どうしてあげるのが正解なの?

あらゆる人が健康に生きられますように......
誰もがそう願っていると思っていた。
あらゆる生き物が仲良く暮らして行けますように......
それが、叶う筈の無い夢だと知らない頃は。

"聖戦"と言われては何も言えない。
もう長いこと、
物欲の為にしか戦ったことのない先進諸国の民には......

君の事なんか考えている暇は無い
昨日も言ったでしょ
一昨日も言ったでしょ
毎日言ってるでしょっ 聞いてるの???

"罪の無い一般人"という。
確かに、犠牲になった人々は実に不運であり、気の毒だと思う。
だが、その言葉には、たまたま被害に遭わなかった我々も又、清廉潔白だという響きがある。
そう言い切っていいのだろうか。
どこかの国の侵略行為の恩恵を、それと知らずに受けたことは無かったか?
座ってコーヒーを呑んでいる間に、どこかで代わりに命を賭けた人々がいなかったか?

国の指導者の行為は感情に基づくのではない。
彼らが求めるのは国益、いや、まだ現代に於いては民族の利益であると言うべきかも知れない。
その為に民衆の感情を利用し、煽り、追い風を作り出す。
戦争とはそうやって起こるのだ。
悲惨な映像を見せられ、深い悲しみ、激しい怒りを抱いたならば、
それは半分以上、為政者の催眠術にかかってしまっているということ。
ほら、マジシャンの声が、まるで自分の魂の奥から響くようだろう?

紫色の粉塵と黒い煙に包まれる霧の島
ざまぁみろと手を叩く国民がいる
様式にこだわる余り、生きることの意味を忘れた
その人達も又、間違いなく文明人

扇動者がいて、プロパガンダがあって、民が続く。
ありきたりの構図。
人間の習性。
高価なおもちゃを持たせるな。
火を起こすことは出来ても、コントロールする知恵がない人類に。

同盟国が爆撃を受け、多数の同胞も被害者となっている。
こんな状況でも尚、飛行機が運行すれば旅行に出ようと空港に来る人がいるし、
笑えないバライティ番組はいつもと変わらずたれ流され、
下手くそな歌手は相変わらず下手くそに歌っている。
この驚異的なまでの緊迫感の薄さ。
徴兵制があれば少しは違ったろう。
あればいいとは全く思わないけれど。

戦争は軍人同士がするものではない。
民間人が犠牲になったから悲劇だなどという、
いつもながら他人事モードな報道はどうかと思う。
文明社会に生きるという事。
もともとそういう世界にいるのであって、"巻き込まれた"訳ではない。
その中でしか暮らせないのだから。

入浴中、門の近くに不審な物音が聞こえたので、外を確認した。
その頃、アメリカが最初のテロと思われる攻撃を受けていた。
ジャックされた旅客機と言われる航空機がビルに激突する瞬間が何度も映し出される。
真似事の映画のシーンを見るよりずっとヒドイ気分だ。
ナショナリズムが尊いとは思わない。
かと言って、平和ボケた国が素晴らしいとはとても言えない。

分かたれた大陸よ 島々よ
もはや 懐かしむことは無いのか
求め合うことは無いのか
ひとつであった頃の夢は
二度と見ないのか

道端に転がっている"恋"に興味が無い。
それはただの"本能"だから。
多くの生き物にとって必要ではあるが、特に尊くはない。
求め、押し付け合う"愛"に興味が無い。
それはただの"惰性"だから。
脳の暇つぶしにはいいが、人を成長させる力は無い。
昨夜とは違うところから出発したつもりでも、
今夜、身を横たえる場所は結局、同じ。

生き物を育てて学ぶのは、"命の大切さ"なんかじゃない。
人間中心社会が如何にイカレているかに気付いても、いいことなんて何も無い。
何らかのメリットがあるとするなら、親の気持ちが判るってことぐらいかな。

ネコが小判を拾った。
価値のあるものだと聞いて、捨てるのが惜しくなった。
抱っこして大事に寝てるとさ。
盗人が何人も引っ掻かれたらしい。
本物だかどうだかすら、怪しいんだけどね。

戦争と裁判は似ている。
勝ったものが正しい。
故に、正義は勝つ、という言葉があるのではないだろうか。

まぁ、"のぞき"の何に腹が立つかって、、、、、
のぞいて"得した"と勘違いされるのが悔しい。
私は誰にも何も隠しちゃいないし、判る人には判るし、見えないものは誰にも見えない。
国民のつとめとして、当然、警察へは届けるが。

キョンを連れて行きたい所がある。
ステキチも一緒だったら、絶対に行こう。
暑いからうちの路地にいるに違いない。
表に出て呼ぶと、のそのそと出て来てくれた。
「今日はこっちに行きたい!」
せがむように行って歩き出すと、ステキチは得意げに先導を始めた。
ニャンは車の通る知らない道を怖がったので、途中までしか行った事が無い。
寄り道した川沿いで、ステキチが腰を丸めた。
ウンコするところは初めて見た。
目的地目指してトコトコ行く。
いつもに増してにこやかな表情のステキチ。
前に通った花の季節の時とは違った、青々とした景色が広がっていた。
その細い道は、記憶とは違って舗装されていた。
ステキチについて、キョンと少し走った。
体の大きさも色もよく似た仲良し二匹。
兄弟か親子に見えているだろうな。
山道を思わせる曲がりくねった道を、車の通る道路に出るまでらんらんと歩いた。
引き返してから、田んぼの中の草むらへ入ってみる。
猫を見付けてダッシュするステキチ。
山の麓まで続く緑色。
家々の小さな屋根。
元の道へ戻ろうとした時に、散歩中の犬にステキチが喧嘩を売った。
我々の為に牽制してくれたのか、個人的、いや個犬的に馬の、、、、、
犬の合わない相手なのかは知らないが。

キョンがウンコをしなかったので、いつもの家の前コースを往復した。
ステキチはうちの前で水を飲んで一休みし、後半だけ付き合ってくれた。
ニャンのようにくるくる回らずに、しゃがみこむとすぐにする。
しばしば、片足を上げたまま器用にする。
フェンスに足を乗せたまま、横の畑にぼとぼとと落としてしまうこともある。
今日は、花畑の仕切りブロックに足を掛けた。
危ないと思ったが間に合わず、その穴の中にみごとに全部入ってしまった。
こりゃ拾えない。
別に誰が踏む訳じゃなし、臭いを嗅いだ犬に病気を媒介してしまう危険も極めて少ない。
罪悪感は無いが、わーーーっと逃げ帰った。
楽しかったね。
明日もきっと楽しいよ。
おやすみ......

わーーーっ!
何で魚まで病気なんだ。
頭部を水カビに覆われたブラックネオンは、まるで鬼の面だ。
ヒレはボロボロ。
元気に逃げ回るから始末が悪い。
真っ暗にして寝ぼけさせ、何とか捕まえて隔離した。
治せるだろうか。
治療法は至ってシンプルなのだが。

じっとしているがいい
その中でしか生きられない哀れな寄生虫
お前たちの冒険に命を棄てる価値は無い
そこで淋しくくたばるがいい
ゆっくりと溶けて消えるがいい
急いでも誰も待ってはいない
行き倒れるのは勝手だが
道を塞ぐな
若い命を通せんぼするんじゃない

キョンが夜中に吠えた。
窓から覗けば隣の住人。
この時間に犬の散歩をすることもある。
そりゃ鳴くわ。
取り敢えず、番犬が鳴いたんだから駆けつけなければ。
歯を見せて身をよじり、怖い顔で歓迎してくれる。
悪い事をしていないのだから、叱る訳には行かない。
ご苦労さん、隣の人だから大丈夫だよ、よしよし。
おやすみと言って再び電気を消すと、納得して寝てくれた。
ふわふわの毛は人を和ませる。
ああ耳かいぃ。
いい加減に医者に行かなくちゃ......

フィラリア退治はやっかいな博打かも知れない。
賭けに出れば大負けすることもあり、ツイていても何かの弾みに逆転されることもある。
負けは、愛するものの死を意味する。
故に、自分の人生のように安易に賭ける事が出来ない。

"友達の友達"は"知り合い"だと思う。
"友達"になれるか否かは判らない。
知らない相手であっても、条件は変わらないと思う。

ステキチ...... 一緒に病院に行ってくれないかなぁ。
自転車に乗せようとした時もダメだったしなぁ。
リードを付けると、嫌がって一歩も歩いてくれないしなぁ。

愛情はたっぷりあるよ
でも配達はしないから
要るんだったら取りに来てね
うちにはちゃりんこしか無いし
今はめちゃくちゃに忙しいの

人の世には、正しい理解よりも、都合の良い思い込みや勘違いの方が圧倒的に多いような気がする。
いいじゃないか。
それで気分がいいのなら。
鈍感な生き物ならではの特権かもな。

面倒を見られるよりも見る方が、
猫を世話するよりは犬を世話する方が、
私には向いているな。
向き、不向きで言うならば。

初めての道でもすいすい行く。
今日は川に沿って歩いた。
明日も楽しいもの、見付けようね。

赤いリードに赤い靴。
紫の首輪に紫の上下、紫のヘアゴム。
茶色い背中に栗色の髪。
この辺にしては目立ち過ぎるペアルックだったかしら。

キョンは、みんなが起き出す朝が待ち遠しくて仕方がないらしい。
一緒に寝てあげたいね。
ニャンのちっちゃかった頃みたいに。
代わりに、玄関で一緒にお昼寝 ♪

首輪を買い換えた。
革製の黒くて細い、断面が円に近い真っ新の首輪は格好よかったけれど、
力の掛かり具合か、首の皮膚を痛めているので、
平たいものに換えた方が良いとのアドバイスを受けた。
ステキチなら、雨に濡れても大丈夫で、反射テープを貼る場所のあるものがいい。
キョンにはそんな制限は無いので、迷った。
全身、洒落た感じの茶色だから、柄ものでもよく似合いそうだ。
餌も迷った。
何しろ、獣医師推奨コーナーが充実している。
一般のフードは、安全やヘルシーを謳いながら、危険で早死にを確約するものが多いという。
健康は買うもの。
、、、、、と言うほど、高くもないのだが。
おもちゃも迷った。
いつもの如く、身ぐるみ剥がれた状態で店を出る......

フードは、よく知っているけれど今回初めて買うもの。
今のものも悪くないのだろうが、早く新しいのを開けてみたい。
いい臭いのついたおもちゃ。
少し興味は示すものの、靴下にはかなわない。
パープルの首輪はやはりよく似合う。
同じ色のリードがあったらな。
よく似た色のシーパンを買ったばかりだが、お揃いになるかな。
そういうのを履いた時に限って、どろんこのクロちゃんが遊びに来てくれたりするんだ。
ま、ズボンが汚れる位、なんてことは無いんだけど。

玄関でちりちりとキョンの鈴が鳴る。
二階で誰かがトイレに行ってる!
お互いに耳を澄ましてる。
何してるのかな、、、、、、ってね。

弱い人間に抱かれている動物は不幸だね。
生温かい水が背中に落ちたり、心臓の音が騒々しかったり。
安心して眠れないもの。

死に神よ、また来たのか。
おっちょこちょいだね、それとも方向音痴かい。
この子を運ぶのはお前の仕事じゃないよ。
もっともっと生きた後に、天使と一緒に空に帰るのさ。

大丈夫だよ。
まだ行かなくていい。
まだなんにもしていないもの。

苦しいよ。
その厚かましい虫がお前のじゃなく、この心臓の中にいたらいいのに。
どうせ苦しいのなら。

コラ、虫ども。
暴れたらただじゃおかないから覚えとけ。

又、立てなくなるかも知れない。
立ち上がる気力も無くなるだろうな。
もう倒れる運命なのだから、それまでは立っていよう。
誰よりも気丈に。

一緒に歩こう
真横でなくてもいいや
一緒に歩いて行こうね
"待って"って言ったら、いつものように振り向いてね
せっかちに先を急いだりしないで
今度はちゃんと待っててね
きっとだよ

安楽な死。
そんなものは存在しない。
しないんだよ。

下らない相談をする人がいるね。
犬を治療するのに金が無い、なんてよく言えるよな。
自分の食費を上回るほどの薬代を払っている人なんて、そうそういない。
病気になった時につきっきりで治す覚悟が無くて、何故飼うの?
可愛いから???
冗談じゃない。
メカペットとでも遊んでな。

保健所で"処分"される動物は、苦しんで死ぬ。
"安楽死"ですらないから。
それ位は知っておけ。

涙を流したり、愚痴をこぼしたりしている間は、
苦しみも悲しみも大した程度ではないという事だ。
実際、それどころじゃないね。
そんな余裕は無いんだった。
どうしようもない時ってのは、ただ、目の前が暗くなる、そういうもんだった。
涙とは、廃墟から若葉がふき始めた頃にようやく訪れるもの。
春風に乾かされる時に、その冷たさに気付くもの。

おいで、抱っこしてあげる
頭を預けて 甘えて
少しぐらい手をかじっても怒らないから

散歩の後、"取って来て"をして遊んでいると、急に後ろを向いて座り込んだ。
痒いところを舐めるような仕草をしたかと思うと、左足を丸めた。
交通事故に遭ったかのように、けんけんで歩く。
痛そうな顔はしない。
慌てて病院に連れて行った。
自転車には乗りたがらないので、歩いて行った。
さっきの事を忘れるような足取りで、片道30分ばかりの早足のお散歩。
傷痕なのか皮膚病なのか判らない禿げかけた毛も気になっていた。
具合の悪くなった足も含め、怪我の後遺症だろう、という事だった。
次は、気になっていたフィラリア検査。
血を抜く。
顕微鏡で見ると、幼虫が蠢いていた。
愕然とする。
心臓には既にフィラリア成虫がいる。
少なくとも一年以上前に感染していたという事らしい。
、、、、、、で?
結論を言ってよ、先生。
数が増えなければ問題は無いだろうとのこと。
だが、数年の後に寿命を終えた成虫は、肺動脈を詰まらせる。
健康な犬のようには生きられない。
捨て犬を拾うというのはこういう事だ。
これからの日々、そのひとつひとつの重さを思うと、ぐったり来た。

犬が欲しかったんじゃないよ
お前となら一緒に暮らせるだろうと思った
だから どこへもやらないよ
絶対にどこへもやらないから
絶対にどこへも行かないと約束してくれるね?

"ジャンプ"も一生懸命にやっていた。
"右回り"も練習したよね。
足が痛かったのに。
ごめんね、気付かなくて。
よく頑張ったね。
明日はもっと別な、楽しいことしようね。

最初の頃は、頭を撫でようとすると目をつぶった。
殴られて育ったんだね。
それも頭を。
お手とお代わりの順序が違うとか、玄関におしっこをしたとか。
まさか、そんな事で叱られたんじゃないよね?
そんな下らない事で。

必要なのは音。
音楽じゃない。
ただの爆音でいいんだよ。
音の粗大ゴミ。
現代人の耳は、"雑音"ぐらいでは聞こえない程に退化しているみたいだからさ。

ビートでハッピー。
簡単な頭に乾杯!

人と自然の関係はどうあるべきか......
それは地球の抱える問題でも、生き物に与えられた選択肢でもない。
人間達の一人相撲。

君は私なしでは生きられない
私は君なしで生きられるけれど
望むのなら傍にいてあげる

不安気な上目遣い。
あごで小さく合図をすれば、尻尾を振ってついて来る。
意外に足が速いんだね。
ひとりなら、こんなに走らないでしょう?
私だって、走るのは好きだかどうだか判らない。
君と走るのは楽しいということだけ、判ってるけどね。

まるで絵だね。
誰にでも微笑みかけているようで、誰にも微笑んでいない。
見る者すべてを素敵な錯覚で酔わせる、君は魔術師。

一番大事な秘密。
それを明かせば謎は解け、憂いは消える筈。
蓋を開ける勇気があるのなら見せてあげるけれど。
好奇心ならやめた方がいい。
ただの探求心ならあきらめて。
私には命掛けの問題なのだから。

わがままな振りをしてみない?
何でも叶えてあげられると
証明したいから

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