三次元漂流記 2001
ぐうたらキョン 66KB [8月のモデル; 強く犬らしくな〜れ]
疲れたにゃ。
この家の人達、遊び過ぎ。
仔犬だってへとへとだい。
おいら男の子だけど、
ステキチ君が大好きなの、にひ。

今月の11日に拾われました。
名前はキョン、だって。
変なの。
鹿じゃないのに。
全身、綺麗な茶色だからだって。
他にも意味はあるって言ってたよ。
あのね、
えーーーっと、、、、、、、わしれたっ。

キョンの顔がコワイ。
甘えておねだりする顔が凶暴そうでコワイ。
コワイ顔が最高にカワイイ。

言い訳されるのは きっととても優雅
嘘をつかれるのは きっととても幸福
なりふり構わず抱き留めてもらえる
気分はきっとゴージャス♪

私は結構、ロクでもない。
知っていて近付く人がどれだけいるのだろう。
君は結構、ロクでもない。
知っていて尚、惹かれる人がどれだけいるのだろう。
私達はロクでもない。
自分で気付く人がどれだけいるのだろう。

君が陰り沈む時、光となって足下を照らそう。
君が光り輝く時、闇となって安らぎで包もう。

捨てるなんて勿体ない
愚かだね
価値が判るのはお前だけなのに
大事に守らないでどうするの

何故、笑うの?
嬉しい?
なら、よかった。

橋の上から川の中をのぞき込む犬のよう。
底石がきらきらと綺麗で、時折、魚の影が走る。
全部は見えないんだね、そこからは。
白く跳ねるしぶきが、眩く滑る陽光が邪魔をして。
身を乗り出しても、澄んだ流れに遮られて。
いつまでたっても、ちらっとしか見えないね。

靴下の引っ張り合いっこ。
時々、負けそうになってあげながらも逆転すると、
"わん!わん!"と甲高い声を上げながら踏ん張っている。
確かに、仕草は子供っぽくて可愛らしい。
ボロボロに食いちぎられた靴下を見なけりゃ......

知りたいのなら教えてあげる
髪の長さ 瞳の色
鏡に映っているのとは違う
あなたの形

その無防備な姿は
セキュリティの万全たる証し
大事なものは全て
重く冷たい金庫の中

理由なんて無いんだよ
きっと自然のいざないだよ
騒ぐ心を鎮められないのは
発情した犬を落ち着かせられないのに似ている

目覚めよう
夢の中でひそめた眉を元に戻して
走り出してもいないレースの実況中継をしている
いかさまラジオを少し乱暴に黙らせたら
ゆっくりコーヒーでも呑もうか

幼い孤独な寝顔に贈る 遠い孤独な子守歌
固い孤独な髪を撫でる 細い孤独な指
擦り寄せた孤独な頬に 深い孤独な口付けを
孤独な君には必要ないものばかりだと
孤独な女神は気付いているけれど

教えに忠実に生きる民族がある。
戒律が読めるようになって初めて、成人と認められる。
して良いこと、いけないこと、自分で判断出来るのが一人前の大人の最低条件。
問題を起こしても、幼稚な言い訳は通らない。
性差別を色濃く残す宗教の習わしを、手放しで讃えることは出来ないが、
形や数字ばかり気にする今日の日本社会の忘れたものがそこに無いだろうか?

舟は漂うのが仕事
寝言を言いながら
どこへともなく流されて行かないように
繋ぎ止めておくのは錨の仕事

新しい季節をいざなう風と
根を下ろす草花と
戯れる黄緑色のハナアブと
今....... 手を伸ばして
触れようとしたのはどれ?

"豊かな星"などと、コンクリートに仕切られた緑や印をつけられた生き物を見て言うのなら。
本気で言うのなら、
その人は気が振れているとしか思えない。

時計の針に合わせて呼吸をすることは
本当はとても簡単
簡単過ぎて飽きてしまったから

もがけばもがく程、沈んで行く。
もう止そう。
泳ぐのは得意じゃない。
賭けて溺れる程、潔くもない。
あの無人島に戻って、何事も無かったかのように気ままに暮らそう。

"取って来て"を覚えた。
ロープを固く編んで作られたボールには殆ど興味を示してくれないので、
隙間におやつを挟んでくわえさせ、"ちょーだい"で放す練習だけ積んでいたのだ。
昨夜、足で遊んでいたら、靴下をくわえて引っぱり始めたので、"ちょーだい"と言ってみた。
何と、すんなり放すではないか!
頭の上で電球が点いた。
「犬は飼い主の足のにおいが大好き」
何故、思いつかなかったのだろう。
脱いだに靴下ボールを入れてみた。
喜んで追いかけてくれるではないの。
という訳で今日は買い物に出るにも関わらず、ゴムの伸びた靴下を夕方まで履いてニオイをつけた。
かくして、うちの子もイチコロのスーパーおもちゃが誕生した。
それにしても凄い力だ。
いくら小さな口と言っても、その気になれば、人の拳くらい簡単に咬み砕いてしまえる歯と顎。
"人間が上"だなんて大間違いだ。
人間仕様に改造された地球上で、犬を守る為に便宜上、そう位置付けるのであって、
本気で信じ込んでいるとしたら思い上がりもいいところだ。

臆病で残酷で
昔の私そっくりだね
その優しさは誰も癒さない
いっそ 握りつぶしてごらん
素顔の君ならかまわない

安心した寝顔を見ているとニャンを思い出す。
今日も面白おかしく、楽しい一日だった?
面白おかしく、楽しい一生だった?
幸せにしてあげられたと確信している筈なのに、
思い出す顔が嬉しそうな程、悲しくなるのは何故?

うるせ〜あほんだら絶交だ触んじゃねぇ二度と口きくかボケ!
なーんて固く決意しても
なーんにも気付いていない鈍感で間抜けな笑顔についつい
丸め込まれちまうのね
ちゃらんぽらんだから、あたしって

もしも桃太郎が手ぶらだったなら
犬はついて来ただろうか
猿はついて来ただろうか
キジはついて来ただろうか
もしも私の手の内に何も無かったなら

亜鉛が不足すると 味が判らなくなる
甘いもの 辛いもの
何でも苦い
味覚障害
私には何が足りなくて
君には何が欠乏しているのかな

来る日も 来る日も
同じ場所にやって来て
同じ事を考えて
同じ事を繰り返す
しつこいほど
そしてある日 何の前触れも無く立ち上がり
スタスタと旅に出てしまう
私もやっぱり野良犬
そろそろ ここも限界かもね

ねぇ アイスキャンディー
泣きたくなるほど甘くて冷たくて
よそ見してると消えてしまうのね
知覚過敏だからかじれないのよ
舐めまわした挙げ句 丸呑みしていい?
べろべろ〜〜〜ん

取水制限が解除されたので、早速キョンを洗った。
雨の中も平気だし、それ程に水を怖がる様子は無かったが、やはり厭がった。
植木の間を無理矢理くぐって逃げようとする。
ボキボキッ。
やめてくれっ、一緒に追い出されたいのか。
水を大嫌いにならないようにと簡単に切り上げ、シャンプー終了。
でもやっぱり茶色。
ニャンのように白くならないので達成感がない。
......なんて話をしたら、
「ニャンはきらきらしてたもんねぇ。
 洗っていなくても"洗って貰ったの?"て言われる位、綺麗だったよね。」
だってさ。
そうやってこの子も愛されて行くのだろう。

昨日、部屋に蟻が数匹いた。
放っておいてはいけない感じはしたが、取り敢えず捕まえたやつだけ外に出した。
機材の中に入るなよ。
そして今日の午後、部屋に戻ると、、、、、ワーーーーーーッ!
何故か知らないがティッシュの代わりに置いてあるトイレットペーパーに黒山の人だかりが。
窓の方まで行列が出来ている。
何事?
大災害の前には、蟻が移住するとか聞いたな。
トイレットペーパーに行列をなすとは、オイルショックの前触れかい?
ちょうど通り道になっている所にあった扇風機を持ち上げると、固まりで出て来るではないか!
捕まえては逃がし、そうこうしているうちにも、場所を変えた扇風機の下から這い出て来る。
持ち上げるとまた集団が!
扇風機を移動させる度に、マジックのように蟻が湧いて出た。
こうなったら生存競争だ。
目的を"部屋から蟻を排除する"ことに切り替えた。
基本的には屋外追放だが、運の悪い奴はつぶれて死ぬ。
いなくなったかと思うと、一匹、また一匹と姿を現す。
そう言えば、咬まれた痕が残っている。
ダニにしてはでかいし、蚊にしては消えないと思った......

留守の君の居場所
もう帰って来ないのならいっそ
全部掃き出しちゃおう!

探し物.......
ひとつ出てきたら何でさっき見付けたのが無くなってるんだ?!
慌てなくていいように出しておいた靴下は布団にまぎれて出て来ないし。

"いい人"であるには、まずその前に"狡い人"や"卑怯な人"、"トンデモナイ奴"であってはならない。
見回せば、まずいない筈だ。

ニャンの小さかった頃を思い出す。
この子よりもまだ幼かった筈だ。
後に見た本には「食べ物をおもちゃにしてはならない」と書かれていたけれど、
ベランダでドッグフードを追いかけて、遊びながら食べたよね。
本当に楽しかったんだろうなぁと思うと、何故だか胸が痛くなる。
ステキチを思っても、クロちゃんを思っても何だか不安で切ない。
愛する事の根本は苦しい事なのかも知れない。
楽しいとしたら、それは副産物に過ぎないのだろう。

誰かが所有権を放棄したかけら。
私に預かっておいて欲しいのか、全く興味も湧かないのか、よく判らないけれど、
取り敢えず大事に抱いて世話をする。
ねぇ、寝返りを打つと時折、ちくりと刺すのはやめて。

泳ぐ。
現と夢の狭間。
確かな手触りが日常にかき消されて行かないのは、全てを突き抜けることが出来る幻だからかもね。
君の記憶の中に埋められた宝には手を付けないまま。
目印をつけておいて、いつか又、狂気と共にそっと掘り起こしてあげる。

まだあどけなく、素直なこの子もいずれは我々を追い越して行く。
淋しさを紛らわせる為に犬を飼うという考えは、何と刹那的なのだろう。
失った時の悲しみは、傍に誰もいない日々の積み重ねよりも遙かに重いというのに。
空のどこかに釘を打って、時を止めてしまいたい。

クッキーは片親ハスキー譲りの"目張り"も濃く、一段と精悍な顔つきになってきた。
やんちゃだが乱暴はしない。
今朝は自分より小さい犬に咬まれたそうだ。
遊ぼうと近寄ったところ、耳をがぶり。
可哀想に、大人しい子。
昨日はゴメンね......でも顔コワイよ。かっこいいけど。

インターネット。
勘違いの時代。
人はそんなに簡単に繋がらない。
顔も出さずに言葉なんて発することは出来ない。

耳をたらんたらん揺らしてぴょんぴょん歩くクロちゃん。
いつもニコニコ。
何がそんなに楽しいの?
厭なことは無いの?
辛い目にも遭ったろうに。
君に会えた日は最高に愉快。

善良なるこの子たちが永く幸せに暮らせますように。
苦しむことも、落胆することも、悲嘆に暮れることも二度とありませんように。

嬉しくて、楽しくてたまらないみたいだね。
不幸な捨て犬の、幸せの始まりかな。
だとしたら、あの白い犬のお陰かも知れない。
同じような柔らかい毛をした、よく似た顔立ちの白い犬がいた。
うちの家族に抵抗無く受け入れて貰えたのは、その素晴らしく愛らしい犬のお陰かも知れないよ。

ごろごろとノドを鳴らして
じゃれついてごらん
そそうぐらいは許しちゃう♪

ステキチは、我々の居場所を常に把握している。
きっと、他の色々な事も知っているのだろうな。
今夕も散歩に付き合ってくれた。
そのままうちの路地へ戻って座り込んだステキチにお礼を言った後、
キョンをガレージに繋いで用事をしていたら、
お隣さん一家がクッキーと一緒に散歩から帰って来るのが見えた。
ステキチでさえ遠巻きにして避ける大型やんちゃ犬クッキーが、
番犬の歓びを覚え始めたキョンの目の前を通る。
どうするのかと思っていたら、命知らずにも吠えかかった。
フレンドリーなクッキーも、雄犬に喧嘩を売られては黙ってはいられない。
負けじと吠え返した瞬間、旋風が吹き抜けた。
無言で飛び出して来たステキチが、既にクッキーに襲いかかりそうな位置にいる。
慌ててキョンを抑え、争いに発展する危険の無い事を示すと、
ステキチは、そのまま家に帰って行くクッキーを牽制しながら見送った。
クッキーが一歩でも前に出ていたら、咬み付いていただろう。
"うちの犬"を守る為に。
全く頭が上がらない。
何度、こうして義理堅いこの犬に助けられたことか。
方や、散歩中に勢い余って飼い主にオシッコをひっかけてしまうボケ犬だけど......

愛想を尽かし切れない自分に
いつもながら愛想が尽きる

偶然でもついででもない
ただ君のためにここにいる
だって君が私を呼んだもの

お金以外のものをあげよう
お金は誰にでもあげられるから
他に何も無くなってしまってから
あげればいい

街灯が付いたとは言っても、まだ暗い南の空。
宝石のような星々がひしめく。
頭上の天の川。
ステキチに護衛されて、キョンの夜のお散歩。
そして鼻歌〜♪

豹にしては不器用で
狼にしてはマイペース
蟻にしては欲浅く
蜂にしては毒が無い
どれともつかないこの生き物を
四不像と名付けよう

気まぐれ猫ちゃん
今夜帰って来るかもにゃ!
と言って出掛けたら
帰って来ないかも知れないということ
そう判っていても
眠らずに待ってしまう
そんな呆れた飼い主もいるんだよ

あんたのことなんて知ったこっちゃないよ
四六時中 知ったこっちゃないよ
寝ても覚めても 知ったこっちゃない
顔を見るたび 知ったこっちゃない

和歌山のある場所では、動物園から逃げた台湾猿と日本猿との混血が増えて生態系を脅かしているという。
隔離して面倒を見るには金が掛かるので、日本猿以外は薬殺しようという事らしい。
餌付けの完了には半年ほどかかる見通しであるという。
殺す為に信用させる。
動物たちよ、おとぎ話のペテンに騙されるな。
"良い人間"も"悪い人間"も存在しない。
人間という恐ろしい生き物がいる。
それだけだ。

昨夜の雨は水源地には降らなかったらしい。
人々は、雨が降ったから大丈夫などと気を緩めていることだろう。
湖は枯れて湿地になってしまっているというのに。

意地もプライドも、主義も見栄も要らない。
そんな場所が、ひとつならあっていい。
真実さえあればいい。
誰も知らない私がそこにいる。
その私も又、本物。

全国的な水不足。
中国にいる時も、日本は確か水不足だった。
断水続きの私の滞在していた町から買っていたというのは本当かどうか知らないが。
住民には知らせが行き渡っていないが、断水寸前だという。
そして、今、雨が降り始めた。
天の恵み。
その有り難さを、これ程までに深く感じることはない。

「みんなで雨乞いでもするか」
本気で言った。
それこそ、現代の日本人に欠けたものだ。
自然に対する畏怖の念、生かされているという偶然への感謝。
人は地球を占領したのであって、支配などしていない。
制御などできはしない。

木星食があった。
妖しい三日月に隠れる瞬間はよく判らなかったのだが、
約一時間後、反対側の闇から銅色の姿を現すのを見ることができた。
夜に見ることができるのは日本では57年ぶりだとか。
見かけ上は離れているが、双眼鏡で見ると月の影の部分と重なっている。
真夜中のランデブー、、、、、てか。
みんな窓から覗いてるてば。

強く育てなきゃ
この子は強く
愛される事に慣れ 愛してくれる人が傍にいないほど
淋しいことは無いのだから
ニャンのように顔を見上げればすぐに抱っこして貰える
ピヨのようにピーと鳴けば夜中でもすっ飛んで来て貰える
そんな保証は無いのだから
たとえ手を触れることが出来ても 慰めることすら出来ない
そんな場所があるのだから
独りでも元気でいられるよう
この子は強く育てなくちゃ

せっせと運ぶ
子スズメに餌を運ぶように
くわえては運ぶ
ただ その黄色い嘴角を見ると
与えずにはいられない
持って行く度 大きな口を開けるから
足りないのか お腹一杯なのか判らないけれど
次から次へと運ぶ
我を忘れて

出会う定めなど無いけれど
出会ってからどう感じるかは決まっている
それを運命を呼ぶのなら
運命はあるのだろう

地味ながら香しい花がいて
派手ながら堅実な鳥がいた
派手ながら堅実な鳥は
蜜を吸う訳ではないけれど引き寄せられ
地味ながら香しい花びらに嘴を触れた
初めて鳥に触れられた花は
何故鳥に触れられたのか判らずにただ揺れていた
初めて花びらに触れた鳥は
何故花がただ揺れているのか判らずに飛び立った
派手ながら堅実な鳥は
地味ながら香しい花の真上を飛ぶ
地味ながら香しい花は
派手ながら堅実な鳥の影を見つめる
自分のことなど覚えてもいないだろうなどと
溜息をつきながら

虫のように懸命な足取りで
虫のような無心な君を追い
虫のように敏感な触覚で
虫のような無骨な君を感知し
虫のように軽い体で
虫のような固い君を守っていよう

深い意味なんて無いよ
大した意図は無い
でも知ってる?
無意識の中に本心があると

かくれんぼしよう
いい隠れ場所を見付けたから
あっと言わせてあげる
......だから探しに来てよ
ねぇ 誰か

終戦記念日。
少し下の世代になると、親がもう戦争を知らない。
核家族世帯が中心のこの時代。
食卓で戦時中やGHQ統治下の日本の様子が、体験談として語られる事は無いのだ。
おまけに、徴兵制すらない。
昔話か、他人事のようにしか聞こえないのかも知れない。

徴兵に応じるのを拒否して青酸カリを呑んで死んだ人がいたという。
見上げた根性だと思う。
健康検査で不合格になって入隊できないだけでも罵られ、嘲られた時代に。

犬のようには規律を守れない癖に、犬みたいに群れようとするからややこしくなる。
猫でいいじゃないか。
時間帯によって縄張りを変え、衝突を避けるという賢明な生き物と聞く。
その位は見習えるだろう。
カラカルと〜〜〜っぴ!

「一人きりなら孤独ではない、周りに誰かがいるから孤独なのだ」
今日だったか、新聞の片隅に載っていた言葉。
確かに、話しかける度に虚しくなる。
会話じゃなくて答えるだけ。
私の問いには誰も答えない。
扉を開いて案内しても、こっちは門の中にすら入れて貰えない。
他人が否定する権利の無い場所で、秘かに存在しよう。
話しかけることもなく、話しかけられることもない。
狡い普通の人達も、身勝手な変わり者達ももう沢山だ。
誰もが自分のことばかり言う。
とっくに癒えた傷跡を見せ合うナルシスト達。

キョンが外で鳴いていた。
鳴き声を聞くのは初めてだ。
見に行くと、ステキチがいる。
ステキチに向かって鳴いているのだ。
メスを見た時に出すような声で。
......お前、せめて犬の性別位は判れよな。
近くで聞くとやかましい。
アシカに似ている。
ステキチは煩しそうに、隅っこで丸くとも四角くともつかない格好でうずくまっていた。
今日は又、格別に暑い。
テレビでも熱中症予防をしきりに呼びかけている。
犬の休める場所としてはかなり涼しいうちの庭ではあるが、
ボケ犬がいてはゆっくり出来ないのか、ステキチは一軒離れた家の路地へ入ったり、
うちへ戻って来たりしながらしのいでいたようだ。
キョンがステキチに何度も咬まれながらもくっ付いていた理由がはっきりと判った。
そりゃ失礼やで、人間が見ても惚れぼれする雄っぷりのステキチに"発情"していたなんて......

ステキチが散歩につき合ってくれた。
昨日は、偵察という感じで、キョンのマーキングの臭いをかぎながら、少し付いて来ただけだった。
今日は様子が違った。
最初は同じように後をつけていたが、途中からは前に出て付いて来いと合図をしたり、
寝そべったり、一緒に道路を渡ったりしながら、最後は家に入る我々を道を開けて促した。
「ありがとうね」と言いながら、
私がステキチの方へ行こうとするキョンを引っ張って家に入るのを見届けると、
遅れて歩いて来たオカンを座り込んで待っていた。
ステキチは我々に、あくまでもキョンとではなく、
我が家の犬のお散歩というイベントにお供してくれたのではないだろうか。
ニャンの時もそうだった。
最初に仲良くなったのは私で、ニャンは私の連れている犬だから仲良くしてくれるようになったのだ。
確かに、犬付き合いを知らないニャンは、なかなか犬に仲良くして貰い辛い犬ではあっただろう。
本当に頭に来る、許せない雄であったキョンを、
うちの飼い犬として認識してくれたということのように思えるのだが、どうだろう。
キョンがステキチに狂っているうちは近付くことは出来ないが、
このまま良い関係になれるのではないか、淡い期待はしている。
それにしても賢い犬だ。
頭脳、プライド、責任感、社会性、あらゆる面から見て、これ程に優れた生き物は他にいるだろうか。
いや、強調でも比喩でも何でもなく、
ステキチよりも賢い"人間"はと言われても、私の頭には誰も浮かばないのだ。

犬がいる。
うちに犬がいる。
他のことは結構どうでもいい。
かなりどうでもいい。
全くと言ってもいい位にどうでもいい。
明日も起きて階下に降りるのが楽しみだとか、
ステキチ達との関係で大いに悩んでいるとか、
そんなことじゃなくて、
犬がいる、そのことが、事実そのものが、私の精神の多くを占めるのだろう。
円グラフにすると、99%、「ああ、犬がいるな」という意識で埋まっている。
人並みの悩みも歓びも、これからは縁が無いかも知れない。
犬以外の事には上の空だろうから。
今、玄関でキョンの首の鈴が鳴った。

妖しい香りで怒りを溶かしてしまう君は天使なのか
魂を打ち付けたまま干涸らびさせてしまう君は悪魔なのか
そんな疑問さえむしゃむしゃと食べては
煙にして吐き出してしまう
ほら また天に吸い込まれて消えた

君んちの窓はマジックミラーだね
興味のありそうなもの 無さそうなもの
並べて置いておくからさ
隠れて見ているうちに取って行ってよ
要らないものに砂をかけて隠したりせずに

音楽のことしか知らなくて、他のことに興味が無くて、音楽を使った何かが出来るのだろうか?
演奏は出来るだろう。
しかし、果たして創造が出来るのだろうか?
音に込めるべき中身が大して無いとするならば、一体、何が入っているのだろう。
殻ばかりの音楽に囲まれて育った人々は、もはやそんな疑問すら持たないのだろう。

昨夜は結局、7つほど流れ星を見る事ができた。
どれも明るくて長かった。
何度見ても、"あ〜〜〜!"しか言えない。
人に教える事はおろか、願い事を思い浮かべる余裕なんて無い。
神秘に満ちた綺麗なものには、慣れる事無く、いつ遭遇しても動揺したいものだ。

黒い首輪がよく似合うキョンは、今日もひょうひょうとしている。
あちこちにある咬まれ傷も何のその。
古くなっていたステキチの首輪も買い換えた。
さんざん迷ったのに、よく見ると、前回あげたのと型も色も同じものだ。
反射アクセサリーも付け替えた。
夜にはクロちゃんも現れたので、アクセサリーだけ交換してあげた。
そんなこんなで、買い出しと工作で一日が潰れた。
ステキチは今日も御機嫌斜めで、クロちゃんはキョンが嫌いで、
鈍いキョンが依然としてピンチであることは昨日と何ら変わらない。
ステキチの攻撃は本気だ。
但し、意図的にだろうが私は徹底的に無視される。
勢いで人に咬み付いてしまったりしない分別はさすがではある。
他にも体の小さい雄が何匹かうろうろしている。
頼むから騒ぎを起こさないでくれ。
ここは貪欲で愚かな猿の支配する、死に行く惑星だから。

問題は、何故、如何なる理由で、かのたいそうな名前の神社にA級戦犯が祀られているかという事だ。
大日本帝国の責任を引き継ぐという前提の下に新たなるスタートを切った筈の日本国政府は、
最初から横を向いてアッカンベーをしていたことになるではないか。
政治的無関心である私は詳しい事情は知らないが、
終戦記念日を外しての参拝、といううやむやな逃げには"ブルータスよお前もか"な気分だ。
アジア諸国への配慮ではない。
一国家のあり方としての問題だろう。
政府が見解を明確にしていないのに、歴史教科書など作れる筈がない。
それはもう、でっちあげるしかないのであって、一概に教科書だけを責められないのだ。
金の力無しには国としても認めて貰えない日本からいつ"復興"するの???

アカンタレなので、強い名前にしよう。
"阿強"。
広東語読みで、アキョン。
キョンちゃん。
そのキョンが昼に逃走した。
逃げたのは仕方がないが、鎖ごと消えていたので、
もし、事故にでも遭ってしまったら、それは私の責任だ。
ま、見付かったんだけど。
焦ったな。

さて、一日勘違いしていた流星群の極大とされる時間がやって来る。
今日の星空も素晴らしい。
犬達の仲は最悪だ。
そして私は憂鬱。
久々にステキチと一緒にやって来たクロちゃんに挨拶をしていると、
クロちゃんが新入りを見て唸りだした。
そうなればステキチも黙ってはいない。
一向に怯える様子のないアキョンに咬み付いた。
私に遠慮することもなく、何度も襲いかかろうとするので、しかたなく間に入った。
ステキチ達を追い払う事はしたくないので、アキョンを抱いて家に入った。
玄関に降ろすと、立ち上がって私にしがみつき、腰をカクカクし始めた。
これは、必ずしも発情のサインという訳ではない。
こいつ、嬉しいんだな。
最初はそう思っていたのだが、何だか違う。
「お前、本気かぁ?」
腕をガジガジするな馬鹿。
「お座り、お手、お代わり。いい子ね〜〜〜コラがじがじすなっちゅの!」
落ち着かせてはかじられる。
抱き上げた時に立たせる状態になったのがいけないのか、
クロちゃんが雌なので発情してしまったのか。
なかなか賢そうな犬ではあるが、ボケっぷりもまた申し分ない。
それはいいのだが、ブルーだ。
ニャンのいる時からの仲良しのステキチとの関係を悪化させたままなんて。
いつものように遊びに来てはくれているのだが........
何とかならないのかい、おまえさんたち。

無節操にひしめき合う街灯。
不必要なまでに明るく照らされた夏の空。
それでも、天の川が久々にきれいに見える。
半月は切り分けられた西瓜のように呑気に光っている。
その下には、少し不機嫌なステキチと、
門に繋がれた若いオス犬が寝そべる。
ピヨのように賢こそうな口元、ニャンのように素直な眼。
捨てられたばかりのようだ、
昨夜から、どうしていいか判らないような不安げな様子でステキチにしつこく寄り添っては、
何度も咬まれて追い払われていた。
ステキチはこのところ、殆どの時間をうちで過ごしている。
お願いだから仲良くしてやって。
ここはいつまでもあんたのうちなんだから。
何度もそう語りかけた。
判ってくれたような、納得してくれないような。
いつの間にか、見上げる方向が変わっている。
もうどうでもいいんだよ、流れ星なんて。
犬達が傍にいてくれるなら。

秘密の抜け穴を通って会いに行くね
君にも内緒の方法で
隠し事なんて無い顔をして

我が子の為には何を犠牲にする事も迷わないのが正常な親。
国の為に美しく散ったと聞かされて喜ぶ事など出来るものか。
時代は群衆と同じ。
一度、狂気に流され始めれば、止める術は無い。
狡賢くなった先進諸国は自国を戦場にしなくなった。
平和の意味など、未だ誰にも語れない。

引退したスポーツ選手もタレント、
政治家の子供もタレント、
アイドルの二世もタレント、、、、、、、
そりゃあ芸の要らないバラエティー番組しか作れないわ。

応援しない事は、妨害とは違う。
応援しなかった人が落選したからと言って文句を言う前に、
応援が無ければ通らない人が、人気者のプッシュがあれば当選してしまう、
そんな選挙のあり方について考え直すべきであると言わざるを得ない。
そんな選挙ではないと言うのなら、文句を言う必要も無い筈。
そんな些細なことよりも、許し難い女性蔑視発言をしておきながら、
再選してしゃあしゃあと県会議員を続けているおやじがいることの方が、わたしゃ気になる。
大阪じゃああり得ないことだけどな。
ここじゃあ、タテマエですら平等など通らない。
"伝統"を言い訳に、進化しない人間達。

"つくる会"が作るのは、歴史じゃなかろうな。
まぁ、教科書を作るというのはそういう意味ではあるけれど。
愛国心もいいけれど、将来、子供達が海外に出たときに困らないようにしてくれよ。
軍国主義国家でも社会主義国家でも無いんだから。
いつもながら半端なんだよ、あんたら。

うちから見る月にしては綺麗だ。
ほんのり黄みがかって、高級感漂う和菓子、栗納豆を思わせる。
11日から12日にかけて、流星群が極大日を迎えるいう。
気分が良ければ見てみよう。

子供が欲しいのにどうしても出来ない人達がいなくなるのだとすれば、、、
孤児を引き取って育てるというドラマも無くなるのだろうな。
不妊症治療に人工授精と聞いた時に真っ先に頭をよぎったことだ。
故意にか否か、誰もその事に触れようとはしないが。

どんよりと曇った首都駅。
ビルの上のクレーン車。
灰色の背景がよく似合う。
パステルの泥に塗り込められた都市。

しくじったのなら、じたばたあがいたりせずに黙って去るがいい。
口の固いその人に目配せをして、無かったことにして貰おう。
ナメクジのように光る足跡を残さないように。

薄紺の空に散りばめられた白い粒。
大小並んだオレンジの星二つ。
ずっと下には羽衣をたなびかせる月。
木々の影の間をすり抜ける淡い風。
ここは一体どこ?

濃く沈着するかに見えたシミは徐々ににじんで周辺をくすませ、
やがて広がり、万遍なく透けて全体を染めた。
見た目には前とは殆ど変わらないような、全く変わってしまったような、妙な感じ。
この慣れない感覚。
慣れたい、慣れてしまうのもまた怖い。

見慣れない野良犬がうろつき始めていたそうな。
大型犬の子供らしく、人懐こく可愛らしいので、首輪をあげようと用意していたらしい。
仲良くなれそうな気がして。
が、近所の飼い犬の散歩についてステキチの前を通りかかった時のこと。
あどけなさを多分に残しているとは言え、オス同士の掟なのだろう。
ステキチが跳びかかった。
驚いて逃げたその仔犬は、以来、二度と姿を見せない。
二ヶ月の留守の間の出来事。
いつもの事ではあるが、自然界の厳しさには溜息が出るばかり。

大して愛らしい顔形をしてはいないコアラが、
可愛い動物の代名詞であり続けるのは何故か???
それは、抱き付いてくれるからではないだろうか。
自然の生活に於いて木や親の体にしがみ付くというのは彼らの習性であって、
人なつっこさや性格の良さを示すものなどでは無いのだが、
抱き付くものに愛おしさを覚えるのは、子供を抱いて守るヒトという生き物の性なのだろう。

諦めという翼に乗って
自由に飛び回ろう
どこへでも行ける
この手のぬくもり
錯覚にしてはリアル過ぎる
願い事は秘めたまま
叶っていないとバレないように

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