三次元漂流記 2001
剣と針 12KB [3月後半のモデル; 針を持つ者達]
百円ショップにぶら下がっていた、
指圧ねずみ"ハリちゃん"。
「強く握らないで下さい」と書いてあったが、
爪楊枝のような"毛"の先は丸く、緩く握っても効かない。
多少、強めに握っても効かない。
力を入れるとバラバラになってしまいそうなので、
ペットとして飾ることにした。
動かなくとも、愛嬌のある顔立ちが心をほぐしてくれる。
すっとぼけた表情、何故か自分を見ているようだ。
仲良く並ぶのは、手乗りサボテン。
身を守る為の針。
触れる者を傷付けない、優しい針。

百万ドルの夜景よりも魅力的なもの。
昼間の尖沙咀、散歩道に寝転がって眺めた対岸、中環のメタリックなビル群。
逆さまの世界はヒトゴトのように美しい。
私のいる場所もそうやって見てみようか。
何か新しいものに映るかも知れない。

人は何故、こんなに世界を広げてしまったのだろう。
この世の果ては、手の届くところでいいじゃない。
なんて欲張りなんだろう。
歩いて行けない辺境に、ハトなんて飛ばさなくてよかったのに。
私も又、もっと臆病ならよかったのに。

ねぇ、、、、、、やめた。
訊いてどうなるの。
私にしか答えの出せないこと。

ここにいる理由を忘れてしまいそうになる。
本当は遠くにいるべきなのだろう。
想像もつかないほど遠い場所に。
今、ここに留まっているのはそこへ行く為に違いない。

ステキチは真上を向いてあくびをしながら、笛のようなかすれ声を上げた。
餌を舐める舌が暖かい。
太めの三日月が、くすんだ空でそっくり返っている。
こちらには全く興味無さそうな様子。
観察しようとすると、不機嫌そうに姿を隠してしまった。
食べるのに飽きたステキチは、少し水を飲んでから、月のいた方へ向かって軽やかに歩み始めた。
なだめに行った訳ではないのだろう。
今夜は寒い.........
ばいばい、明日も来る犬。
おやすみ、明日も会う月。

私の心に"偶然"は起こらない。
要因は偶然でも、理路整然としていなくても、下す決断に必然以外はあり得ない。
だから無理に変えることはできない。

切ない音に同調してしまう。
他人の感情の浸食を受けているのだろうか。

暗さに目が慣れ、不安なく歩けるようになった頃。
一瞬の強烈な光が、見えかけていた景色を再び闇に沈めた。
蛾のように一定の角度を保ちながら、不確かな光源へと進んで行く。
以前と変わらず、確固たる足取りで。
でも、明かりが途切れれば立ち止まってしまうかも知れない。

ランキングものってひとえに馬鹿馬鹿しいな。
自分も参加したり、ランクインしたりはするけれど。
でもやはり、大した意味は感じない。

目覚めた時、腕の中にニャンがすやすや寝ていたら、そこは天国。
そうでなければ、現世か地獄。
地獄に限りなく近いこの世で、手にできる幸せなんてたかが知れている。
怖れずに求めていいんじゃないか?

複雑に絡まったように見えて、実はとても簡単。
ロープの端を引くと、最初の長さのまま綺麗に解ける。
タネ明かしをしない自由は認められていいと思うのだけれど。

まるむしさん、まるむしさん。
私は君が好き。
歩いている姿が好き。
みんなは怯えてだんごになった君を可愛いと言うけれど、
私は触覚をぴろぴろ動かす君が好きなの。

杖があっても寄り掛かっちゃいけない。
すっ転んでもすがっちゃいけない。
二度と自分の足で立てなくなる。
本当に病気になってしまうよ。

平日昼間の道頓堀って、、、、、、何で年齢層や服装まんべんなく普通の人で一杯なん?
渋谷の人混みって、、、、、、悪いけど"人ゴミ"って感じ。

目の前にぼんやりとした影がある。
それは正体の知れぬまま、大きくなって行く。
放っておいて良いのだろうか。もう随分成長した。
人は慣れに弱い。
毒だと判った時にはもう遅い。

動物のふわふわした被毛は人を幸せに包む。
ステキチの毛は少し硬いが、それでも気持ち良さそうな顔をしてくれると嬉しい。
指先から毛細血管を通って幸福の魔法が伝わって来る感じ。
毛なのかねぇ〜、キーは。
可愛いなと思っていた女の子が刈り上げにしたらショックを受けるし、
高校球児の頭が爽やかだなんて思った事は無い。
赤ん坊を見て可愛いと感じないのは、局部に毛が集中していてただ奇妙な姿だからだ。
全身ふさふさしていたら違うかもね。
............................................やっぱし発言撤回。

恵まれて育っても、恵まれずに育っても、
贅沢になってしまう......
ほどほどが一番いいかもね。

人の苦しみが痛くて
人の幸せも又痛くて
何故だろう
全然使っていないのに
この心 もうガタが来てる

人なんて愚かで小さい。
幾つになっても、初めてのことがあっていい。
見慣れた光景でも、毎日違っていておかしくないのだろう。
きっと..................
間違いかどうかなんて、最後の瞬間まで判らない。
消えてしまった後でも判らないかも知れない。
迷うことなど無い。
怖れずに手を伸ばしてみればいいのだろう。
当たり前のように戸惑いながら。

いたずら女神がこう言った
ダチョウよ、ダチョウ、翼が欲しいのですか
ならばダチョウよ、与えましょう
強靱な足と引き替えに
空飛ぶ力を与えましょう

宝という名の船が海の宝を汚してしまったのなら
今度は毒という名の気球を飛ばしてみてはどうだろう

だっら〜〜〜っとしなだれかかってもいい?
岩のように、黙って、じーーーーーっとしていてくれればいいから。
凍えない程度に温かければそれでいいから。

飢えて、金があっても物がなくて、食事の時間は限られていて、、、、、、
そんな生活の中での、ただの上手く炊けた米の有り難さ。
満たされた人々には決して判らない。
心も又、同じ。

何かが掻き立てられる。
流れのままに新しい手応えを探そうと覚悟した私の中に、必死に逆らおうとする者がまだいる。
暗く険しく慣れた道か、冒険に満ちた未知の海か、それだけの違い。
どうせ楽なものに逃げることはないだろう。
それ位の信用はしてあげられる。今の自分なら。

ゆめうつつの枕元に青い鳥
来てくれたんだね
願い事を聞きに
だったら
願いは今、叶ったよ

花見をしない?
手ぶらに裸足で出掛ければ
鳥達が甘い蜜の木を教えてくれる
花見をしない?
森の奥で落ち合って
遠慮がちな薄い月を秘密の目印に
花見をしない?
ほら、かがみ込んでのぞいてみて
クローバーが日陰で居眠りしてる
ねぇ、花見をしない?
地図を捨てて歩かない?

旅に出よう。
足りないものを見つけに行こう。

子供時代にモテるのは余りいいことじゃない。
"好きだからいじめる"なんて、判んねぇもん。

飼い犬を可愛がりすぎると、エラくなったのだと勘違いするという。
子育ても全く同じであることに気付かねば。

色んな武器を隠し持っている、一番凶悪な奴、きっとそれが私。
オマケに命を惜しまない。
最悪だと思うよ。

おやすみなさい。
今夜も"つづく"。

考え事をしながら歩いていると電柱にぶつかるよね。
思い込んで走っていると赤信号も青に見えるかもね。
多分、そんな時には忠告も耳に入らなかったろうね。

花火の写真なんていらない
星の首飾りなんていらない
空を眺めて寝転んでいられる場所が欲しい
一番贅沢な 永遠の特等席

どうして優しいの?
どうして暖かいの?
ねぇ、ここは砂漠じゃないの?
張り詰めていたトゲをゆるめた丸い小さな植物は
初めての笑顔を 無口な温帯の雨に見せた

虫取り網を持って どこへ行くの?
その花は どこからさらって来たの?
討ち取った首は どこに飾るの?

地球のどこが"平和"だと言うのだろう。
徴兵制を肯定するつもりなど微塵も無いけれど、
その廃止が日本人をあらゆる争いの傍観者にした事実は否めない。
何もかも他人事、他人のせい、こんな骨抜き国民が主権者でいいのだろうか。

思い過ごしだといいなと思うことと、思い過ごしでなければいいなと思うこと、
手の届かない所で何故か同時に起こる無関係なその2つは、どうやら思い込みではないらしい。
溜息をつき、頭を抱えた私の前を、女神が通り過ぎた。
.................まっ、まっ、待って!
彼女が昔、洩らした言葉を思い出した。
彼女になら、、、、、、絡んだヒモが解けるかも。
ひたすら、影を追った。
お願いなんてできないけれど、せめて今、何を考えているのか、表情から読み取れないかと思って。

原始的な欲求を、コンピューターを通して処理することが"進化"だと信じているのだろうか。
インターネットはこんなことの為に考案されたのではなかった。
いくら技術開発に精を出しても、肝心の人間は進んでいない。
誰か教えてあげなければ。虚しい研究に命を捧げる人達に。

つづく。
今夜も明日を想いながら眠りたい。
ハッピーエンディングなど要らない。
じれったくて先の気になる、"つづく"でいい。
次も、その次も..........

さて、何を起こせばけじめが着く?
いつ、どうやって始まったのかさっぱり判らない事柄には決着がつけにくい。
私の主義なら放っておく手のものだけれど、そうも行かないのかも知れない。
そもそも、自分が当事者なのか部外者なのかも把握できない。
私は鈍い。
人という生き物の心情に関してはとてつもなく鈍いんだ。

せっかちな心とは裏腹に、何時間でも待てるこの足。
ちぐはぐな取り合わせ。
神なるものの万能でない証拠。

気ままなハンター
心優しくなどない、赤茶けたハンター
命懸けの毎日は平穏で
孤独な日々は誇らしく
お洒落な白ギツネをからかっては
長い夜に怯え
若葉の茂る季節にはひとりはしゃぐ
得意のジャンプでレミングをしとめ
喜び勇んでくわえ、走る
情けを知らぬハンター

青白い揺らめきに魅せられたなら
金色の炎をくぐってここまでおいで
安らかな香りで酔わせ
穏やかな熱で縛り
火傷しないように動けなくして
絹の衣でそっと包んであげる

生ゴミが入っていると判っていながらフタを開けてしまう。
腐り具合を毎日確認してどうなるというのだろう。
ヒマなのかマゾヒストなのか、両方なのか、、、、、、憂鬱。

宝の地図を探し当てても
魔法の鍵を拾っても
智恵の無いものに
力の無いものに
勇気の無いものに
守り神は道を譲らない
足下を這い 頭上を舞い
貪欲な愚か者を骨ごと呑み込むだろう

ロックの定義を論じたがる人が未だにいるなんて。
rock and roll の語源を知ったら彼ら、がっくりするだろうなぁ。
何だか妙に神聖化しちゃってるみたいだから。
どーでもいいんだよ、そんなこと。
分類は評論家の仕事。
当事者になりきれない人達の向かう場所だ。
音楽に限った話では無いけれど。

ロックにもその内、歴史が出来るだろう。
その時、ロックはロックである意味を失うのかも知れない。
我々はきっといい時代に生きているのだろう。
尤も、私は自分の音楽がロックかどうかなんて全く気にしてはいないけれど。
音楽かどうか、それさえもどうでもいい位だ。

大きな音や振動が、たまに部屋の隅のアコースティックギターの中で響く。
あそこにもひとつの宇宙がある。

人工衛星は宇宙空間へ廃棄出来ないのか。
地球に落とす方が安上がりらしい。
そんな会話が聞こえた。
マジかよ。
山のゴミは持ち帰れ、とやかましく言う癖に。
ならば、日本のどこかに落としてでも処理すべきか。
勿論。先進国全土に落としてでも。
無責任で無計画な文明など、滅んだ方がいい。
まさか、みんなそう思わないの???

大衆の気持ちを代弁するのも表現者。
誰もが考えつかないことをやってのけるのも表現者。
ぶち壊す事もまた創造。
但し、物理的破壊はただの破壊。

鏡を 見てみな
化粧を落としたら何が残る?
友達を 見てみな
お世辞を除いたら何が残る?
心を 見てみな
虚栄を棄てたら何が残る?
よ〜く 見てみな

こだま
オウム返しがあなたの言葉なら
それでもかまわない
木の葉
沈黙があなたの言葉なら
それでもかまわない
こぼれ出るヒントに目を凝らし
待っているから
メッセージを下さいな

うずくまった緑色を包む
無数の赤い産毛
恐ろしい毒の針
気を付けていたのに
触れてしまった......
とげとげしい先端は
遠慮がちに返事をするように
指先を細くなぞり返す
囁くように そっと
はにかむように 優しく
それでも眠り姫は
眠りに堕ちてしまった

予言者よ。
笑うがいい。
お前の言葉通りになって行く私を。
運命ならば逆らいはしない。
それがお前へのささやかなる反抗。

世には心の美しい人達が一杯だ。
決して憧れはしないけれど、安心するね。
私みたいなのは一人でいいよ。

私は夢見ない。
現実を夢の尺度で測る、恐ろしい現実主義者だから。

乗り物の性能は、アクセルよりもブレーキで判断したい。

さぁ〜て、どこに落ちるのやら。
"ミールまんじゅう"の包装紙とのぼりを用意して、村興しの準備をしましょうかね。

汚れなき花びら
怖れず開き
その名を棄てる時
届かぬ唇に舞い降り
再び咲く......
身躯に薄桃色の証を刻みながら

死にかけの地球という惑星に、人間という、欲深く野蛮な生物がいた。
他の生き物を囲っては食らい、地形を破壊し、有害物質を撒き散らす害獣であった。
やがて彼らは自らの毒により滅亡した。
間もなく、人間から進化したと見られる"猿"が現れる。
智恵深い生き物であったらしいが、肉の他に植物も必要とする面倒な体質であった為、絶滅。
代わって、雑食獣より機能的な体を持つ"肉食獣"が栄えた。
体の大きい彼らはやがて滅び、"草食獣"の時代が訪れた。
他の生き物を殺すこと無く生きる事が出来るという、優秀な体の仕組みを持っていた。
草の他に水が必要であった為、長期的な水不足を伴う自然現象と共に滅んだと推測される。
生き残ったのは、葉緑素を体中に取り込むことに成功した動物である。
運動機能と並び、光をエネルギーに変換する能力を備え、
他の生き物に害を与える事なく生命を維持する事が出来る。
今回、我々が発見したこの"ミドリムシ"は、
生のメカニズムをたった一つの細胞の中に集約する事に成功した、最も進化した生物であると考えられる。
以上が、先日発表された、この地球という星に関する研究報告の要約である。

天気予報です。
明日、23日は全国的に晴れ、
時の運により人工衛星落下、
打ち所により意識不明の重体となるでしょう。
お出掛けの際は鍋やヘルメットをかぶるなど、充分な気休めをご用意下さい。
尚、国際紛争関連は当日夜のニュースで生中継の予定です。

空が落ちて来るまでにゃ、他の色んなものが落ちて来る......

締め切った窓。
ガラスは磨かれていて外はよく見えるのに、サッシに埃が溜まって、、、、、
掃除したから明日は開けられる。
何故?
春をここへも入れて、私も春の中に出て行ってもいい頃かと、ふと思ったから。
多分、深い意味は無い。
ずっと閉じこもっていたことにも。
きっとね。
明日も晴れだと判ってる。

よし。
心臓はちゃんと動いている。
乱れてもいいからマイペースで頼むよ。
私は寝るけど宜しくね。

"孤独"はU.F.O.目撃談と同じ。
全ての報告が嘘では無いものとして。
"幸せ"は神様と同じ。
信じることそのものが結果。
今、きっと生まれて初めて孤独ではなく、幸せを感じる事すら学び始めている。
何だか気持ち悪いけれど大丈夫。
孤独なんて、呼べばすぐにやって来るし、幸せなんて吹けばすっ飛んで行く。
全てはこの頭の中で起こせる奇跡だから。

起きているとどんどん溶けるから布団に入ろう。
とろけてしみ込んでしまおう。

今夜も浴槽には月の影が浮かんでいた。
或いは浴槽に浸した頭に浮かんでいたのか、定かではない。
どちらでも同じこと。頭の中身も浴槽に溶けていたから。
この世で見た、一番美しいもの。
それは雪の日の月。
ベランダから見た獅子座流星群の深紅の大きなかけらよりも尚、印象的だった。
金の粉を放つあの月の夜を、生涯、忘れる事は無いだろう。
この世で見た、一番大きいもの。
それはあの海。
海南島へ向かう船の、金柑の鉢で一杯の立入禁止の舳先に立って見たあの光景。
視界は全て海。世界の果てが丸い。
地球そのものを初めて見た瞬間だったのかも知れない。

びっくりばこ。
少し前までなら、フタを開けるまで芝居をして見事に驚かせてみせるのに。
渡す前にひとしきり笑ってしまうからダメ。
秘密袋の底に穴を開けられてしまったみたいです。
繕う気もしないから、取り敢えず放ってあります。
どうしたものでしょう。
今日も面白いものを沢山見ました。

小泉八雲の言葉。
"妖怪達が消え、電気と蒸気と数字だけになってしまったこの世は、虚しく空っぽである。"
同じだ。
兵役中に片腕を失った水木しげるが、漫画を通して描き続けたもの。
自然への畏敬の念、と一言で括るには余りにも大きく存在の根本に関わるもの。
そして、私が音楽を以て記そうとしているものに余りにも近いことに驚いた。

何をくれるのかって?
見てみてよ。
何をくれたのかって?
本当は何でもいいんだけどね。
同じものをあげたことになるんだから。

今日の日中の布団は"サソリ固め"。
よく耐えるよね。でも判るよ。
夜毎の"ブレイク"が、本当は"ギブアップ"と同じだってことも。

ここ数年、自分の曲をアレンジしたりする以外に、音楽を聴くこと自体に興味が無くなっていた。
内へ内へと渦巻き、時に乱反射したエネルギーが増幅されて独特の勢いを保っていたのかも知れないが、
LORELEIの後はそんな流れも冷えておさまってしまっていた。
そんな折に何となく、他人の曲を"鑑賞"してみた。
意外なことに、外からのエネルギーが中へと流れ込むのを感じた。
続いて、中で一巡りして混ざり合い、再び外へと放出され始めた。
体の中が"refresh"されるのが見えるようだ。

クロちゃんの首輪と魚の飼育用具を買いに久々にチャリンコで出掛けた。
よくニャンを乗せて走った山際の道を一人で行く。
春の野だった。
はこべ、おおいぬのふぐり、ホトケノザ、ペンペン草、、、、、、ネコヤナギ。
ネコヤナギが気に入った。
地味で個性的。
川沿いの道に出た所で、通行止めの看板に出くわした。
アスファルトによって分断された緑の中を遠回りするのも悪くない。
何たって春だから。

アリゲーターガーの若魚がいた。
まだもう少し大きくなる。
上段の水槽にいて、特に見下ろすでもなく、古代魚と呼ぶにふさわしい威厳と共に漂っている。
水の中は神秘の生物にあふれている。
熱帯魚店をのぞくのは、無条件に好きなのだ。
自然保護だの何だのといった頭の中の理屈は、ただその揺らめきに溶けて吸収されてしまう。
同郷の見知らぬ人々に出会うような、そんな静かな興奮に満ちて。

紅のオウムに触れた。
と言っても、インコと名の付くものではないかと思う。
強靱な嘴を下に向けさせておいて、本当はやっちゃあいけないのだが、おでこをよしよしした。
羽を膨らませて目を閉じ、喜んでいる。
シ・ア・ワ・セ♪
妙なる羽衣をまとった鳥が、喜んでくれるんやで。
他の臆病な鳥達を怖がらせないように足音を忍ばせて去ろうとすると、もっとなでろとせがむ。
そりゃあ、店にいてはこんなことはして貰えんわな。
早くいいところに行けるといいね。
都会のペットショップと違って、行き先は動物に慣れた家が多いと思えるせいか、
売り物としての生き物を見る時独特の息詰まる思いは、それ程しないのだ。

さて、我が家のすてれんきょうとの語らいの夕べ。
今夜は何を話す?
なついたから住み着いたのか、住み着いたからなついたのか。
この魚は、残念ながらなついた者にしか愛嬌を見せない。
こいつは、私が仕方無しに世話をしていると思っているのかも知れない。
私が頑固なの、知らないね。
別にいいんだけどさ。

身内が花粉症で苦しんでいれば、やはり、原因となる植物を何とかしてしまえ、などと思ってしまう。
やはり、人の子だな。

瓦礫の中から何が出て来るのだろう。
砕けたガラスの間から出て来たものは何だろう。
物憂げに埃を払ったそれは、今、こちらを見て笑った。
ぞくっとする。
魅力的なのか、怖いのか。
とにかく、ぞくっとした。
待ち切れずに、ゆっくりと歩み寄り始める...........

水槽の水を換え終わった頃、パチャリとしぶきが上がった。
磨いた後のガラスの向こうに、見慣れぬ魚がいた。
地味だけれど、何だか吸い寄せられそうなヌメリを放ちながら、じっと見つめ返す。
ここに居着くつもりなの?
その魚の名はすてれんきょう。
どうしよう、飼い方が判んない。
だってすてれんきょうだもん。
そうして、もう何ヶ月いる?
未だに正体が判んない。
、、、、、、だってすてれんきょうだもん。

私は野生児。
その気になれば、誰よりも下品に走り回る。
あのえくぼはじゃじゃ馬の証拠。
忘れてた、わすれてた。
このところ、必要無かったからね。
時々、誰かの首にぶら下がって"ギャーッ"と引っ掻いて驚かしてみたくなるのはそのせいだ。

何が欲しい? 言ってみて。
きっと叶えてあげられる。
目を閉じて。じっとして。
........はい。叶えてあげたつもり。
叶えられたつもりにならない???
そういうものしか、あげられないかもよ。

いつまで見えない月とお話してんのっ、もう寝なさい!
ルナティック.......
眩しくて眠れないんだよね、あの黄金色が。

必要なものは全て持っている。
始まりと仕上げに必要な、途方もない幻想も。
蹴っ飛ばしてエンジンかけな!

起きている者に夢を見させてしまう人達は
何故、夜から睡眠を奪うのだろう
逆じゃないの、あまのじゃく
おやすみなさい

何だ、この昂揚感は。
"春"というやつなのだろうか。
困ったね。
このエネルギーを、ゼンマイか何かに蓄えておかなければ。
放っておくと、あらぬ所から洩れてしまいそう.......

これまでに登って来たものよりも、ずっと緩やかで短いこの坂。
一気に駆け上がる時、感じたことのない程の重力と、向かい風の洗礼を受けることになるだろう。
準備運動を終え、覚悟を決める為に深呼吸をしているところだ。
いつもと違って丸腰だから緊張してしまうなぁ。

分け隔てない太陽の暖かさと、土の香り。虫達の羽音。
りんごについた大小様々な嘴のあと。
澄んだとは言えないけれど、すぐ前を流れる山の恵み。
満たされないなんて言ったら罰が当たる。
ここに一緒に存在することを許されているのだから。
もしも、この上何か手に入る事があるとするなら、その幸運を喜ぶべきだろう。

後天的には悲観主義でありながら、先天的にして驚異的なる楽観主義、
というのがあり得るのであれば、私は間違いなくソレだ。
悲観が時に飛躍し過ぎてしまうのは、楽観のせいではないだろうか。
悲しむべき結果をも、実は楽観的に眺めていることが出来るような気がする。
真面目な気分になってしまう"夜"が弱点だ。

自然に対してアレルギーを起こす生き物とは、、、、、、
一体何なのだろう。
私もやけどね。

エビ反った布団。
軽いくせに固いから、ベランダに干しにくいの。
だから部屋の中でエビ反っていてちょうだい。
ギブアップしないと判っているわ。
夜のブレイクまでもう少しの辛抱よん。

知らない事は訊けるけど、
知っているなら訊かなくていいけれど、
何となく判らない事って訊けないもんだ。
半ば、判っているだけに。

「ここは俺達の土地。ライオンは茂みの向こうにいる。」
緑の絶えない理由は、その言葉の中に隠されていた。

大地を共有し、寝る場所を確保すれば、
生き物にはもう"所有すべきもの"など無いのだろう。
"望む"贅沢は許されていいと思う。

ざわめくせせらぎがあり、噴き出す泉があり、湯気を吐く滝がある。
どれも美しいが、やはりうねりを秘めた海でありたい。
そこに注ぐ為に流れて来たのだから。

久しぶりにクロちゃんが来た。
何であんたは首輪を失くすの?
珍しくポニーテールしてるの、気付いてないでしょ。
髪を洗ったのは判るよね。
シャンプーくさ〜〜〜っ。

隣のチェリーが笑った。
いつものようにへらへらではなく、お腹を見せて、歯を見せて笑った。
初めて口に舌を伸ばしてくれたが、よけてしまった。
くっせ〜〜〜んだもん。

発情期の雌犬は手が付けられない。
雄なら何でも飛びついていく。
見ていると、どうも雄の方が選り好みをしているような感じだ。
私の知っている雌犬達がモテないだけかも知れないが。
人に飼われると、元々は年二回のその時期が、年中に近くなるという。
きっと、飼い主に似るのだろう。
人も、大昔はこんなにだらしなくなかったのかも知れない。

すべき事は山程あって、どれから手をつければ良いか判らない。
陽気が気を散らす。
春って、、、、、、、悪い遊びに誘う友達みたいだな。

ジェラシ〜、切なく揺れるその瞳
いっそモザイクかけたいわっ、他の誰にも見せたげない
夜のシャッター降りたまま
今日も 明日も 「準備中」
放送禁止の恋のおと♪
、、、、、、なんて歌、流行んねぇか。ぷっ。

碧く芽吹く木々の下
ことづて握って生えて来る......
うららかな陽の中で待つうちに
うとうとまどろんでしまったね
蝶よ つぼみは何て言った?
花はにこにこ揺れている
白いつぼみは何て言った?
伸びをしながら何て言った?
教えて そして帰る時
私の言葉を持って行って
まだそこへは当分の間
辿り着けない私の代わりに
お礼に お前の命の舞
絵にして ここに飾りましょう

また来たんだね、眠れないの?
目尻に血がにじんだよ
あんたをさらって行った野良猫は
あの日、飢え死にせずにすんだって
あれから何度か見たからね
もう、寿命も尽きてるね
あんたは何度も生まれ変わるのに
私はまだ、こんなところで
おんなじ形でうろうろしてる
淋しくなったらついばみにおいで
欲のない、ちっちゃなその嘴に
夢のはじっこを分けてあげよう

傘をね、間違えて持って帰ってるかも知れない
晴れ続きだから気付かなかった
よく似てるけど、違うかも知れない
もしも、そうだったら暖かい内に来て
雨の日に外出なんてしないけど
手元に無いと不安なの
そっと置いて行ってくれればいいよ
帰り道には少し濡れるかもね

物語の続きは判らない
誰もページをめくろうとしないから
また明日 また明日......
一人でこそっと見ちゃダメ?

考え事や悩み事は好きだけれど、
出来れば永遠に悩んでいたいけれど、
答えを出すのに期限があるとしたらどうしよう?
何かの針が時を刻んでいるのだとしたらどうしよう?
........判った、答えるからっ。訊いて!
私ってこういういくじなしよ。

正直者の寝言を録音してみたら、、、、、
きっとつまんねぇんだろ〜な〜!
私は嘘つきではないけれど秘め事が好きだから、
滅茶苦茶に面白いと思うね。

比較的穏やかな日々。
私って最高........!
そんな自己暗示には、まだちょっとかかれそうにないけれど。
普通はきっとこんなもんだろ。

おかしい.......
逃げる筈が追っていて、追う筈なのに逃げている。
いつの間にか、、、、、逃げている。
一体、何から?

薄闇の中 いつものように庭に降り
その薔薇に似た植物の 愛らしいトゲを愛撫する
見えているから大丈夫
私が血を流すのは お前を抱きしめるとき

狂気の花 幻の花
いっそ刈ってしまおうか それとも
振り上げた鎌を捨ててひざまづき
力の限り そのしなやかな茎を握りしめ
体中を突き抜ける感覚で やはりそこにいてくれたのだと知った後
一粒の雨を受け 歪んだ幸せを噛みしめながら目を閉じようか
全てをお前のせいにして
全てをお前の美しさのせいにして

動物相手の方が意志疎通が容易である訳。
それは簡単。
人が、動物本来の言語を忘れたから。
余りにも表面的な言葉に頼り過ぎた為、その言葉さえ、伝達能力を失いつつある。
言葉には限界がある。
その限界によってこそ、無限を創り出す事が出来るのも又事実だが、
過信して寄り掛かるだけでは、文字通りの意味を伝えることすらままならない。
動物が人の言葉を理解するのは、彼らが寛容だからであることを忘れてはならない。

浴槽に浸かって霞みゆく天井を見上げていると、
天上からの、、、、、、お客様。
「は〜い、初めまして、天女で〜す」
実際に何と名乗ったのかよく覚えていないが、そんなようなもんだった。
信じ難いというよりも、むしろ何だかおめでたい気分にひたる私に天女は、
いきなり、体を一日貸してくれとせがみ始めた。
優雅な天の世界は規律が厳しく、味気ないと言うのだ。
「お粗末な生身の人間の生活を一日体験してみたいの〜っ」
........何ちゅうわがままじゃ。
お礼に、その幾昔か前の美貌と、現代でも通用しそうなナイスバディーをくれると言う。
一瞬、ぐらっと来たが、イマイチ私には使い道が無さそうだ。
私は天女に、私の一日がどんなものか、話して聞かせてやった。
「映画で見た"人間"ってもっとスリリングなんだけど〜」
天女は明らかに不満げな表情を浮かべ、口を尖らせた。
うるせー、どうせ私の人生は特別つまんねぇよ。
もっと面白おかしく暮らしている人もいるのだ、と教えてやるのもシャクだ。
何で私が他人の贅沢遊びを手伝わにゃならんのだ。
天女のいる辺りは遠いのか近いのかよく判らない。
今や蒸気だか雲だか区別のつかない、境目のはっきりしない塊が彼女を囲んでいる。
「ふーん、もう寝るの?」
「出来ればね」
天女はあくびをしながら、私もそうしよう、じゃあねと言いながら薄くなった。
あ、そうだ。
「ねぇ、地獄ってどんなところぉ〜?もわわわ〜ん」
エコー付きで慌てて尋ねたが、答えは無い。
真っ白なもやもやが、依然として真四角の空を隠している。
まぁね、、、、、、、、天上暮らしの人が知る訳もないか。
ちゃぽーーーん

馬鹿だねと笑ってくれる方がいい
冷ややかに観察されるより
見て見ぬふりされるより
一人昇る階段でつまづいた時はね
ガクッ、、、、、、

ハリちゃん、、、 何故私に似てるの?
何故、顔が似るの?
じーーーっと見つめるから?
手や頭に載って遊ぶから?

私は商売人じゃない。
ただの職人だ。
職人芸に於ける偏執狂的なこだわりや緻密さが誤解を招くのかも知れないけれど、
やはり商売人にはなれない。
専門外のことには丸で不器用な「〜バカ」が多岐に渡っているだけだ。
私の人生、振り返れば計算なんて微塵も無い。
正に虫だったね。
無心に歩いて、歩いて、風を感じれば飛ぶ。力尽きれば落ちる。
これからだって多分そうだ。
無論、虫なりの努力はするけれど。

本当は薔薇じゃない
知ってるよ ずっと前から知ってる
だって匂いが違うもの
そっと近付けば 初めて見る形
まだ誰も気付かない内に 名前をつけて呼んであげる
........返事したね?

君が薔薇じゃないと判った時
薔薇を欲しがっていた人達はどうするのだろう.......

春の微笑みは凍った心をひとつ、又ひとつ、解かしてゆく。
でもね、、、、、、ちょっと解かし過ぎ。
あっちこっちで燃えてるじゃん。

金持ちに群がる人間達
美女に群がる男達
どこか似ている
枝にぶら下がるナマケモノや
腐った食物にたかるハエとは
似て非なるもの

熟れたメロンを二つに割って。
間に挟まって眠ろう。
崩れそうな果肉に溶けてみよう。
拒絶し難い香りに誘われて楽園をのぞこう。

"ハリちゃん"をなでなでしてみる。
この血の通っていない生き物、やっぱり可愛い。

小躍りしたくなるような夜があってもいいじゃんか
たまには素直に喜んでみるか
いい夢見たっていいよね?

何もしたくないということは 何かが無性にしたいということと
何も考えられないということは 何かで頭が一杯であるということと
何も要らないということは 何かを切に望んでいるということと
この上なく近い感覚だ

その薔薇に触れて
落胆しているのは君だけじゃない
口付けても 恥じらいもしなければ
凍えさせても 震えもしない
手折られるほどに か細くもなく
包み込むほどに おせっかいでもない
時の間をすり抜け 開いたばかりの
無邪気な 一輪の薔薇に

タレントのアホは素か芝居か。
そんなことはどうでもいい。
頭の悪そうな振りをしなければ出して貰えないテレビ、そんなものを見たがる視聴者、
見なければ付いていけない世間、、、、、問題はそっちだ。

"個性を尊重する教育"の目指すべきものは、
変わっているものを、ただそれだけの理由で排除しない社会。
"個性"をほじくり出すことでも、間違ったものに目をつぶることでも無い。
尋常ならぬ勇気と決断力を要するこの任務に堪え得るほどの大人が、
しかも教育現場という限られた世界に、そう多く存在するとは思えない。

服装や言葉遣いで人を判断してしまう癖がついてしまっているのだとしたら、
作り笑いの奥を見抜けなかった大人達と同じだ.......

薔薇がある。
真っ赤な薔薇がある。
ただ、そこにある。
それだけでいい。
灰色しかない風景に色彩を加えてくれる。
夢の痛さを思い出させてくれる。
それだけでいい。
それだけでいいから....
ただ、そこにいて。

滅茶苦茶な部屋だな。いつ片付くことやら。
生きている内は片付かないかも知れない。
私がここにいる内は、その必要もないのかも知れない。

コンコン。
ノックの音だよ
コンコン。
誰か来てるよ
コンコン。
行っちゃったよ
放っとけよ、どうせ不在配達票入れてったろ?
まだまぶしいよ、外は

パッパラパーに見えるギャルにも。
深い悩みがあるのかも知れない。
苦しみを隠しているのかも知れない。
表す手段を持たないだけかも知れない。
"性格"なんて、氷山の見えているほんの天辺だ。
化粧だらけの顔なんて、本当はどーでもいいんだ。

奈良在住のアーティストのインタビューを見た。
レポーターには気になる塗料の臭いが、彼女には慣れてしまって判らないという。
シンナー漬けの日々を思い出した。
舞台の小道具制作で部屋にこもり、たまに外に出て帰って来ると、耐えられない程の息苦しさに気付く。
一週間も続くと、知らない内に体が思うように動かなくなっているのだ。
都会の毒に似ている。
都会は汚い。
その汚さを見抜くことが出来なければ、本当の美しいものなど発見出来る筈がない。
陽を浴びながら植物に囲まれ、今、毒抜きの真っ最中だ。

チューリップ。
すぐに判るよ、特徴のある葉の形。
粋だね。素敵だね。どんな花をつけるのかな。
「期待すんなよ、咲きにくいよ」

日本の子供社会に於いて"みんなと同じ"であることは重要だ。
親は、愛情があるからと言って必ずしも子供の気持ちに敏感ではない。
成長とは、大人という名の記憶喪失症患者になることだろうか。

人格という概念が今一つ理解できない。
私は、私の中に存在する宇宙そのものであり、私の壁は、その宇宙の果てだ。
外郭が必要な時には作るもの。
それ以前の無意識を指すのだとすれば、それはただの原始的な反応だ。
私は原始的なものを否定しない。
ただ、それを神聖化した上、科学的な地位を与えるのは嫌いだ。

電話が苦手。
掛ける習慣が余り無いものだから、何だか緊張してしまう。
呼び出し音の間に、やっぱり切ってしまおうか、、、、、なんて思ってしまう。
気心が知れていたって同じこと。
用事があっても、ただ話がしたいだけであっても、同じ。
自分の存在を肯定できなかった幼い頃の私が、まだどこかにいるんだろうな。
「てめぇなんか好かれてる訳ね〜よ」
奴の言う事はいちいちリアルだ。

人工ペットを可愛がるのが間違いなら、
子供に縫いぐるみを与えるのは間違いかも知れない。
"ペット"は、自然に代わって大切に育てることを絶対条件として預かった生命。
そのことを理解していなければ、相手が生き物であろうが作り物であろうが同じ。
CRTの上の100エン指圧器具"ハリちゃん"が、愛嬌のある目でこちらを見ている。

書き始めようとしたものの、何だかまとめようが無くて中断した例え話を頭に、風呂に浸かった。
精神を囲んでいた壁が溶け落ちる。
思考がぐにゃぐにゃと自由な活動を始めた。
アメーバだ。
私の正体は、まだアメーバ。
ミドリムシもかっこいいし、ゾウリムシも面白いけれど、まだアメーバでいいのかも知れない。
形を定められるほどに進化してはいないのだろう。

だらしない女は嫌いだ。
はしたない女は好きだ。
だが人間という距離で付き合う場合には関係ない。
男に関しても同じ。
だらしないとされる"人"は嫌う理由が無い。文化の問題だ。
逆に、人間としてはしたないのは嫌いだ。
私は女である前に人間だから。
順序が逆である人もいるみたいだけれど。

感情と理性。
両者の従属関係は人によって違う。
感情に支配される理性もあるのだろう。
理性によるコントロールを受ける前の感情。
それは、細い枝の上をその先に向かって歩むような、
目隠しをして下り坂を大きく前に踏み出す様な、素足の感覚。
頼りの筈の視覚と聴覚は言葉を失い、指令を断ったまま。
導く手に全てを委ねる勇気も無く、ただ、立ち尽くす..........

黄蝶が空き地の草の上を舞う。
花で一杯のこっちへおいで。
やって来そうで来ない蝶に気を揉みながら座り込んだままじっとしていると、
隣の草むらでガサッと音がした。
いつものメジロが目の前の植木鉢の上に姿を見せた。
食べ残しのりんごをつついている。
私は植物かな。風景に溶け込んでいるのだろうか。
時々、ちらっ、ちらっとこちらを横目で見る。
警戒心の強いヒヨドリも現れた。
トンボにとまられた時、メダカに足をつつかれた時、、、、、
自然の一部として認めて貰えたようで少し安堵を覚える。

なぜ笑うの?
なぜ怒るの?
なぜ泣くの?
、、、、、なぜ又笑ったの?
可笑しくて答えられない。
全部同じ理由だったなんて。
そろそろ、また怒る頃?

鏡の中に見覚えのある姿があった。昔の私みたいだった。
首を傾げてみた。鏡の中の頭もおそるおそる傾く。
右手を挙げてみた。左手が挙がった。
暫く見つめ合った後、懐かしいような、愛しいような気分で話しかけていた。
独り言だか、会話だか、見ている人には判らなかったろう。
見慣れた顔の中に、時折、見覚えの無い仕草が見え隠れする。
何げなく瞬きをすると、鏡の中の私はウィンクした。
驚く私。笑う鏡の向こう。
私の動く通りには動かないんだ。
当たり前だ。だって今の私と、昔の私。
中身は随分違うもの。
その内、彼女が動く度に、見たことのない風景がちらほら見え始めた。
私に知らない景色の中に彼女がいる!
私の通ったことのない道を彼女が歩く........
そうだ。未来は一つじゃない。
一つ、又一つ、彼女の中の、私に似ていない表情が生き生きと輝き出した。
鏡の中の私は、彼女なりの決断をし、選択をし、やがて私の知らない未来を見つけるのだろう。

あの時のニャンみたいに 急に走り出してみようか!
あの時の私みたいに 慌てて抱き留めようとする人がいるかな?
どこからともなく現れて 一緒に走る犬がいるかな?
飛び出して来る車に注意しながら でも遠慮せずに
喉がカラカラになるまで 大きな口を開けて
北風に逆らうように 耳をピンと立てて
捕まりそうになったら くるっと身を翻すよ
犬同士にしか判らない とびっきりのスマイルで
逃げるのって楽しいよね
追い掛けられるのって楽しいよね

株価暴落なんて それが経済に及ぼす影響なんて
どうでもいいんだよ それどころじゃないよ
そんなことより 今夜の会議
人間代表で出なくちゃ
空に開けてしまった穴をどう埋めるのか
滅茶苦茶になってしまった環をどうするのか
辞任くらいじゃ許して貰えないからね

© K. JUNO ALL RIGHTS RESERVED.
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