三次元漂流記 2001
[3月前半のモデル; 小物] 借りパチ辞書とEX5とブレスレット 16KB
私はファッションに興味が無い。
役者時代から小物は持っているが、普段使う事はまず無い。
ミュージカル出演とライブを控えた年末、実家に帰った時。
記念日でも何でもないのに、母が私に箱を差し出した。
光り物のネックレスとブレスレットだった。
高いものではないと言うのだが、舞台では最も役立つものだ。
母には私が江戸で何をしているか話していなかったが、
また人前に出始めたのを察知していたのだろう。
私は、そのブレスレットをライブに着けて出た。
仲良しの詩人の娘が、CD発表記念にとくれたものと一緒に。
最近も、何だかお守りのようによく身に着けている。

キューピッドよ 何故泣く
娘が死んだのは お前のせい
お前の放った 毒矢のせい

白夜の島の植物達は
長過ぎる一日をどう思うのだろう
光に出会えた歓びも いつか麻痺してしまうのだろうか
それとも
やがて訪れる終わりに 怯えているのだろうか
いつ果てるとも判らぬ闇をどう思うのだろう
明日の遠いことも知らずに 待っては失望するのだろうか
それとも
オーロラの魔術に魅せられ 忘れてしまえるのだろうか

残酷でもいい
凶暴でもいい
狡猾よりは ずっといい

動物達は潔よい
命懸けで逃げるインパラと 今日を賭けて追う豹
勝者のみが生き残る苛酷なレース
涙など流さない、
勝っても 負けても
同情などしない、
勝っても 負けても
二者択一の 当然の競争
彼らが見たら笑うかもよ
一度でも 真剣に生きてみなよと

この世に生を受けたばかりのトナカイの子
必死に立ち上がり 上手く2、3歩行くと
ころりと転んで雪だらけ
又 立ち上がっては転び 起きあがる
その姿は人間に似ている
大人の世界の 人間に似ている
クズリが茂みで狙ってる

共存共栄とは
互いに生け贄を捧げ合うこと
そんな約束の中に
ヒトはもう帰れない

灰色の翼 木々の間をちょんちょん踊る
頭の天辺の赤いまん丸模様がこう言った
「私はここよ」
「ここにいるよ」
ちょん ちょん
素敵な相手に見つけて貰えるといいね

大人は目で世界を認識し、そのあり方を言葉で把握しようとする。
赤ん坊は何でも口に入れ、仔犬は何でもかじる。
まるで世界を舌で知ろうとするかのように。

でこぼこの地面の上のゴムマリのように弾む、
仔狐の瞳が昆虫をとらえる。
風に散る綿帽子を映す。
仔狐の中に世界がある。
仔狐の中に宇宙がある。
そして仔狐の外にも世界がある。
もしも仔狐がいなかったなら、生き延びられた小動物がいたかも知れない。
もしも仔狐が食べられなかったなら、その日に飢え死にしてしまった肉食獣がいたかも知れない。
もしも仔狐が死ななかったなら、実をつけなかった植物があったかも知れない。
絡み合いながら存亡する無数の環の中の小さなちいさな一つとして、
仔狐は確かに存在した。
自分の中の世界に気付かない人は、退屈で、虚無なのだろう。
自分の外の世界、その中の自分の存在に気付かない人は孤独なのだろう。
その中での自分の存在を余りにも大きく捉えてしまう人は、重圧に耐えられないのだろう。

"巻き舌"が上達して来た。
何でも同じ。如何に余計な力を抜くかだ。
勿論、必要な所には全神経を集中させたまま。
雷鳥模様の目の前の山々は、間もなく緑に包まれる。
鳥達が恋のさえずりを覚える頃、私はどすの効いた巻き舌を身に付けるだろう。

庭の薔薇に水をやりに行くと、茎にまた誰かの血が付いていた。
花は染まりもせず、色褪せもせず、いつものように揺れている。
立ち入り禁止の札でも掲げようか。
でもお前は私のものじゃない。

日本人が海外で犯罪の被害に遭うのは、不必要にへらへらしていているからだ。
己の身を守るという責任感、気合いが全く感じられない。
中国から帰って来た時の私は、この上なく無愛想だった。
作り笑いを一切しない。
あれから何年、もう数えるのも面倒臭い。
昔から、上辺の付き合いは苦手で、何が本当で何が社交辞令だか、よく判らなかった。
無愛想は治ったものの、はっきり断る習慣は残してある。
変に気を持たせるのも偽善も良くない。
その気も無いのに「じゃあ又、今度どこかで」なんてまず、言わないだろう。
後々、"お友達"を利用して何かいい思いをしようというのなら、こんなんじゃダメだけど。
私はそこまで人生に対して前向きになれないということかもね。

嫌いな言葉があるとするなら、、、、、、"ありがとう"かな。
社交辞令や習慣でない場面に於けるそれは、
関取の"ごっつぁんです"や、厚かましい女の"ごちそうさま〜"を連想させる。
"あんたは強いから"と来たら暴れるかも知れない。
"ありがとう、元気でね。"
何だか知らないが、今は一番ムカッと来そうな言葉。
機嫌悪いのかな、寝よう。

欲しがるものを与えるのが愛情ですか?
身を削ぎ取って与えるのが愛情ですか?
奪って与えるのが愛情ですか?
可憐に揺れる花を折りに 崖によじ登るのが愛情ですか?
外国の絵画を買い付け 部屋に飾らせるのが愛情ですか?
私は違うと思います
全部違うと思います
父親だけに許される 限りある我が儘だと思います
父親志願の人にも許されません
涸れることない泉から 惜しみなく注ぎ込むのでなければ
あなた自身の体の中に 無限に湧き出すのでなければ
それはただの 愛情ごっこでしょう
他人を巻き込んだ ままごとでしょう
大事な人は それで幸せになれますか?

誰かのためにと言うのなら
尽くし続けねばならない
使命のために生きると言うのなら
死ぬまで貫かねばならない
会ったこともない、もうこの世にもいない人が
私を正面から見据えてそう言った

"生きることは食べ続けること"
その言葉を聞いたとき、思い出した。
大好きな食べ物すら受け付けなくなって死んで行った彼らのことを。
食べなくなることは死を意味するのだと思い知らされた日のことを。
体調を崩して食欲を失った時の、あの恐怖を。
生きることも死ぬことも、余りにも簡単に、余りにも大袈裟に考える現代人。
生きている間に何を手に入れるかに必死で、何が残せるかなど考えもしない。
自分の肖像画などでない、伝記などでない、
本当に遺産と呼べるものを残す努力をする人がどれ程いるのだろう。

人の脳の発達を操作する。
そんな時代になれば、技術的な意味に於ける才能は、もはや"神の贈り物"ではなくなる。
"魂の存在"なるものがより大きな意味を持つようになるのだろう。

魂が宙を飛ぶなどとは思わない。
体の中にあるのだとも思わない。
魂とは、生きようとする本能。
生きているものが、証拠として放つエネルギー。
個々に説明し辛いそれらの、便宜上の総称だと私は理解している。

超自然的な力を体験したことが無い訳ではない。
でもそれは、全く説明がつかないものでもない。
足りない知識で無理に解説するものでもないと思っている。

人間という生き物。
父の足は疲れを知らない。
遠く、山深く、危険を承知で獲物を追う。
近付く者にも寛容なのは、物理的な強さを持つ者の特徴だろう。
母の目は空にある。
遠くにいれば穏やかに見守り、
胸に抱いている内なら、敵と思しき者は容赦なく攻撃する。
随分と"間合い"の違う、異文化の愛。

鳥が綺麗な声で鳴くのは本能だと思ってる?
鳥は学ぶんだよ。
大人達から学んで、言葉を覚え、懸命に練習するんだよ。
春になったら、森の茂みで聴いてごらん。

名前なんていらない。それは名前を持つ人間の言うこと。
私は誰?何と言うの?
一度だけ教えてくれたら、一生呼ばれなくても平気かも知れない。

君の魅力的な瞳の語る言葉は........... 外国語。

ヒヨコは 抱っこされるのがヘタクソ
気を抜くと 手からすぐにポトリ
可愛いくせに 誰にもなつかない
いつだって 何かに向かって一直線
崖っぷちだって 長い足で歩いて行こうとする
バランスの悪いおばかさん ここで見ていてあげる
口笛を吹いたら止まってね

天使を見た
記憶喪失の天使を見た
故郷を知らない天使は
雲を見つめて微笑んでいた
空色の瞳が濡れていた

正直な人達がいる。
真摯な人達がいる。
何とか守りたい。
だが彼らは私よりずっと大きい。

誰に嫌われても、誰に踏まれても、
鏡の中のあの人が頷くなら私は何も迷わない。
今の私は何も迷わない。
.......誰も踏みゃしないけど。

私は蛾だ。
見掛けは蝶だけど。水色がかった絹色の蛾だ。
意味無く嫌うあんたに違いなんて判らないだろ?
標本の一部になんてなってやんない。

誰に褒められても、誰に好かれても、
一番厳しい人に認めて貰えないで何の意味がある。
鏡を覗き込め!彼女に言い訳は通用しない。

御簾を上げて見る、、、、、か。
高貴なお方は怖いもん知らずだな。
まぶしくて網膜が焼けるよ。

天使は翼を抜いて何を織る?
幻を見つめる幸せな瞳が、現実に潤んで濁ってる。
伸ばした見えない手の先に、いつしか感触を求めてる。
舞い降り、羽を抜いて、、、、、天使は何を織った?

何が欲しいの? 言ってごらん。
命だったらあげるでしょう。
命じゃないからあげられない。

山道を行きたい。野道を行きたい。旅行じゃなくて。
一人で行きたい。みんなとじゃなく。誰かとじゃなくて。
誰かと行きたい。犬と行きたい。人間とじゃなくて。
犬みたいな、猫みたいな、ありんこみたいな人間と一緒に行きたい。
犬みたいに、猫みたいに、ありんこみたいに、 なんにも話さず、ただ行きたい。
空の端が直線じゃないところを、ずっとずっと行きたい。

貧乏人は損ばかりしているとこぼし、金を持てば欲を出す。
金持ちは金持ちでなくなると嘆き、ほどこす余裕を失う。
回頭望, 那条雪白的尾巴揺了揺, 晃了晃。
笑容。
放在何處?
想不起, 找不到, 可不可以再給一個?
振り向けば あの雪色の尾がゆらゆら ふわふわ。
笑顔。
何処に置いて来たっけ?
思い出せず 見付からなかったら もう一つくれる?
朝、散った雲は、又どんよりどす黒い塊となって、胃のあたりに、、、、、
息を思い切り吸い込んで、一緒に吐き出してみよう。
ふーーーーーーーーっ。
明日も純白の雪景色だろう。

近所の郵便局は改築工事中だ。
鉄筋コンクリートの新局舎が出来た頃、私も引っ越せるかな?
生々しいプレハブを出て。
星空を見上げながらの野宿もたまにはいいけれど。

粉雪の朝の、花達への静かなモーニングコール。
雨の日にはしょんぼりしていたパンジー達も、雪と肩を組んで何故か陽気だ。
雪は暖かいのだと言う。
部屋の中のポリアンサーが、すりガラス越しの光にたくましく手を伸ばす。
飼い馴らされた生命にも、造られた生命にも、強さがあることを示そうとするように。
自由を奪われた生命、証拠を与えられない生命にも、存在の苦しみと歓びがあるのだと知った私に。
フランケン=シュタインが人間であるかどうかは学者が決めること。
生命であることに違いは無い。
欲深い人の生み出した、限りなく不幸な。

風の中に投げた紙ひこうき
どこまで飛んでくれるのか
じっと見つめていると
宙を漂ったまま いつしか見えなくなって
いつも いつも 見えなくなって
探しに出ても見付からないくせに
あきらめた頃に戻って来るんだね
いつも いつも 投げたときの形のまま
しまっておけばいいのに 飾っておけばいいのに
また 風の中へ飛ばしに出たくなる
いつか 本当に帰って来なくなるよ
春を呼ばない嵐の中で
探しに出て迷子になるよ
春を呼ばない嵐の中で

"自分らしさ"とは、目標を定めること。
自分に必要な厳しさを受け入れること。
衝動や欲求に甘えることではなく。

素顔の無い女 いるとしたら私だな
自己を持つなんて許されなくて
造り上げた人格
人造人間
自分らしさなんて存在しない
望みは叶えるものではなく 空想するもの
人になんて教えない だって持っちゃいけないもの
だから 何をすべきか
それが唯一の存在の意味だった
今更 目覚めるな、本能
操り方なんて判らないから

のっぺらぼうの女の子がおりました。
のっぺらぼうの女の子は不思議に思っておりました。
何故、自分だけのっぺらぼうなのだろう。
周りの子供達は色んな顔を持っていて、とても楽しそうなのに。
のっぺらぼうの女の子は、自分も顔が欲しい、と思いました。
そう思って鏡を覗き込んでも、のっぺらぼうの女の子にはやはり顔がありません。
仕方がないので、いつも両手で顔を覆っていました。
絵の時間には、適当に自画像を描きました。
運動会の時には、大急ぎでクレヨンで笑っている目と口を描きました。
当然ながら、雨が降ると消えてしまいます。
そうして年頃になったのっぺらぼうの女の子には、相変わらず顔がありません。
そこである日、決心をしました。
マジックを買って来て、顔を描いたのです。
雨が降っても、お風呂に入っても消えないように思い切り濃く、生涯消えないようにきつく、きつく。
この時、のっぺらぼうの女の子は可愛い顔を描かずに、怖い顔を描きました。
これまで見て来た可愛い女の子達を、美しいとは思わなかったからです。
のっぺらぼうだった女の子は、顔を手に入れました。
マジックで描いた怖い顔を手に入れました。
怖い顔になった女の子は一生懸命、元から怖い顔であったようなお芝居をして暮らしました。
下手な演技だと、のっぺらぼうだったことがばれてしまうからです。
半ば、楽しみながら演技を続けるうち、女の子はのっぺらぼうだったことなど忘れておりました。
こんな顔を持って生まれたのだと、心の底から信じるようになりました。
しかし或る日、女の子は失敗を犯してしまいました。
女の子は怖い顔ですから、涙の流し方を知りません。
流し方を知らないまま、体の中に溜めてしまっていたのです。
目から流れ出ることの出来ない涙は、汗となって外に出ようとしました。
女の子は汗だくになり、原因に気付かないまま、倒れてしまいました。
怖い顔の女の子は倒れたまま、汗を流し続けました。
女の子の異変に気付いた友達が心配して集まって来ました。
水枕を用意し、汗を拭ってくれました。
「大丈夫、大丈夫、ありがとう」
女の子は友達に語りかけ続けました。
その内、その中の一人が叫んだのです。
「お前、顔が無いじゃん!」
それまで女の子の言葉に注意を奪われていた一同は、その時初めて、
汗でマジックのはげ落ちてしまった女の子の、のっぺらぼうの顔に気付きました。
女の子をのっぺらぼうだと知らずにいた友達は驚き、ショックを受けました。
騙されていたと知り、呆れて帰る者もあれば、同情に泣いてくれる者もいます。
一番ショックを受けたのは、自分が本当はのっぺらぼうだったことを思い出してしまった女の子でした。
途方に暮れ、悩み、のっぺらぼうに生まれた運命を恨めしく思いました。
のっぺらぼうに戻ってしまった女の子の体からは水分が抜け、元の軽さが戻りました。
女の子の心も次第に軽くなりました。
女の子は、もう一度新しい顔を描こうとしています。
今度は、もっとありきたりな顔にしようかな。
幾日も幾日も迷いましたが、結局、最初に描いたのと同じ顔を描くことにしました。
怖い顔を描いた女の子の心は、怖い顔にしか似合わなくなっていたからです。
再び怖い顔を手に入れた女の子は、もう迷いません。
何故なら、彼女は間もなく知ったのです。
生まれつき顔があるように見えていた他の子達も、
実は、お父さんやお母さんがこっそり顔を描いていたことを。

外国に行って、現地の人に言葉が上手いと褒められたなら、
それは外人だと判る程ヘタクソだということだ。
人の強さに関しても同じ事が言える。
無理、不自然などとは別次元にあるもの。
いつしか体の一部になる。
悩みなさそーでいいね!と言われる位にならなければな。

頼って来る者は包み、
真っ向から挑む者には手加減せず、
懐を貸してくれる人には全身で体当たり。
但し、怠け者は相手にしない。
これが私の誠意で、流儀なんだな。
こればかりは、恥じる必要は無いだろう。相手が大人なら。

探す?
まだ何か探す?
諦めて突っ走るんじゃなかったの?
何も無かったらどうするの?
何か見えた気になったらどうするの?
また何も無いと知ったときどうするの?

天使になれたら。
あどけない笑顔で魂を握りつぶす、無垢な天使に。

人になれたら。
槍を突き合わせて奪い合う、正直で貪欲な人に。

大人の言うのを聞いて馬鹿にしたもんだ。
牛は労働力、或いは肉を提供して人の「役に立つ」と。
残さずに食べて「あげなければ」。
"利用される"のと"役立つ"のは違う。
利用されて死ぬなんて何と納得の行かない。
役に立ったならまだ慰められもするだろうが。
「牛さん、ありがとう」
そんなん言われたないわ!
口がきけたらそう言うだろうな。

盗っても仕方がないが、盗られると困るものってあるもんだ。
うちの部屋にあるものも殆どそうかも知れない。
一本しか無いヘタレベースとか。
自分の曲のDATとか。作りかけのMIDIファイルとか。
こういうこともあるよな。
トントン。
開けて。
引き出しに忘れ物したんだ。
あんたが持っていても仕方がないけど、私には無いと困るもの。
居留守は結構だけど、鍵は開けておいて。
あれ、取りに来ただけだから。

私の命は私だけのものではない。
何故なら、私を産み落とす為に病に感染してしまった人がいるからだ。
その止血剤が使われていた時期は、私が生まれた時期にほぼ一致する。
自然によって保証された無償の愛情とは別に、
気付かない内に親の人生を削り取り続けた結果、存在するのが私だ。
「お前の人生はお前の人生だ」
違う。
たとえそうであっても、だからこそ私は己の信念に従うという決断を下したのだ。
そしてそれは正しかった。
音楽の為になど何も犠牲にはしない。
音楽家であるつもりはない。
たかが日本語を話すだけの人間を日本語学者だなどと呼ぶのはおかしいだろう。
歌詞を書いた程度で詩人を名乗れるか?
道具だ。道具に過ぎない。
道具の為に何を犠牲にできる?
そんなもので何が表現できる?

地球の導火線に火を点け、吹っ飛ばしたい。
ステキチ達がいなかったら、そうするだろう。
誰かの幻想の中の私も、見せかけの優しさも、実体を失ったこの肉体と共に。
道連れになりたくない者は、私の目の前で脱出するといい。
哀れみの表情なんて見せずに、堂々と棄てて行ってくれ。
私の頭からは、義理で思い出さねばならない人達の顔は消え、
最後の5秒間、残った記憶を大事に抱きしめ、すがすがしい気分で横たわっている筈だ。

たまに「あなたの様になるにはどうすればいいのですか?」と訊かれる。
その手の人は往々にして、私が作曲からアレンジ、演奏まで一人でやっているとは知らないから、
詞を書くとか、歌うとか、、、そういう事なのだろう。
その場合には「私のようにならない方法」を教えてあげた方がいいのだろう。
自分を愛し、人間を愛し、愛されている事に気付いて受け入れよう。
でないとこんなになっちゃうよ、と。

時は何も変えはしない。
時は何も癒やしはしない。
折り返し、折り返し、ただ重なり、積み上がり続けるだけ。
いつまでも濡れたままの傷の痕を、鮮やかな生命の色に保ちながら。

鐘の音を合図に
早々と仕度を始めた
花嫁は悪魔に嫁ぐのだという
主人の目を盗んで
闇に囚われた王子に会う為に.....

"天"よ。
何故、私がお前に義理を尽くさねばならないのか。
仇だからか?
決していい人になれとは言ってくれない。
優しくなれとは言ってくれない。
だからと言って素直になれとも言わないまま、
動けない私を引きずってどこへ連れて行こうとしている?
血みどろになって従いながらいつしかお前の懐に潜り込み、斬りかかってやる。
そして微小な塵のように払い落とされ、砕け散り、ようやく解放されるのだろう。

宗教というものも、人の言う神も信じない。
だが問わずにはいられない。
聖母マリアが全てを許せるのは何故だ?
母だからか?
たとえ母の愛を以てしても耐えがたい事は幾つもある筈だ。
彼女が人として、他の人間達と同じ形で同じ場所に存在した頃もそうだったのか?

矢鴨の次は環アヒルか。
助かってめでたしめでたし、、、、、本気かぃ。
"一部の心無い人間"の仕業か? 事故の犠牲者か?
不運にも標的となった一羽からそれを取り除いたところで、何か解決したのか?
都市を築き、その中に暮らして落としたものは視力だけではあるまい。

曇り。暗くなりかけた庭を眺める。
少しばかり前、その個性的なパンジーに気付いた時、目を奪われた。
見たことのない珍しい色合いだった。
夢なのか、或いはこの世に存在する筈のない、存在すべきでない色なのか。
植物に詳しくない私には判らない。
もしもこれが人の練り出した色であるならば、これを美しいと言ってしまってよいのだろうか。
隣には、古来、妙なる形とされてきた梅の枝に花びらの塊が散らばる。
化学調味料、美容整形、人工ペット、、、、、
そして嘲笑うかのような音と共に空からの水滴が景色の一つ一つを叩き始め、
見る間にみぞれとなり、窓の外を内から切り離した。

どーにもこうにも動けなくなり、道端でうずくまっている時に、
「どうなさいました?」と覗き込んでくれた親切な人に、
「あ、ちょっと靴紐が......」
と答えられるような粋な奴になりたいなぁ〜、、、、、なりたいっ!

罪悪感に苛まれる時、精神的苦痛を隠す必要の無い時、人は目蓋を閉じる。
更なる情報から閉ざされたいのか。
それとも、疼きに意識を集中させ、噛みしめたいのだろうか。

私の中に良心が棲む。
私とは全然似ていない彼らは、時に鏡となり、私の姿を鮮明に映し出す。
この歳になるまで出会えなかったことが不運なのか、
ここまで来てでも出会えたことが幸運なのか、、、、、
この先、たとえ地図が無くとも渡って行けるだろう。

夕方、庭で陽を浴びていた4株のポリアンサーが、今は台所で眠る。
単純な模様を色付けるグラデーション。
野生だけが美しいなんて嘘だ。
強さを放棄したものの優雅さに癒やされることもあるものだ。
霜に立ち向かう必要の無い植物。
そんな事をして華やかな花弁を傷付けてしまう位なら、ずっとここにいるといい。
人に飼われたお前達の武器は他に無いのだから。

見慣れた病院の水槽。
いつも真ん前で見ていたから気付かなかった。
グラミーは離れると木の葉のように見えるのか。
鮮やかな色彩により警告を発する者もあれば、
目立たない事を武器に敵から逃れたり、獲物を捉えたりする者もある。
手段は違っても目的はみな同じ。
人が気付くか否かに関わらず、時の流れの支配を受けることも無く、彼らは証を刻む。

智恵のある生物が、器用に海草の巣を編む。
餌が尽きると、食糧として活用されるのだと言う。
卵を乾燥から守る泡もそうだ。
"優しさ"という名の人工皮膚に似ている。

刃物は、固い木を彫って何かを記す為にある。
直接交わらせたり、ちらつかせて脅したりするものではない。
人を斬った刀は、刃がこぼれて使い物にならないという。

他人の利益と自分の利益が衝突する時、自分の命を選ぶのは本能。
本気で他人を選んでしまうとしたら、生物として故障していると言わざるを得ない。
他人の利益を自らの理想の中に包括して初めて、自己犠牲の意義が発生するのではないか。
自分を捨てるような信念の無い行動など、賞賛には値しない。
「〜のために」という言葉はこの世に存在しなくてもいいと思っている。

斜陽が庭を照らす。
花々が水彩画のように透ける。
鉢によって隔てられた彼らが、大きな恵みの環の中で巡り続けることができますように。
他の命を故意に枯らすことのありませんように。

私は醜い。
だからと言って、他人の美しさを羨むことは無い。
私は己の醜さに気付いていて、他の大勢は気付かない。
それだけのこと。
真実を見極めようとする好奇心と、認める度胸を持っているだけなのだ。
大事なのは、そこから何処へ向かうか。
開き直ることだけは決してしてはならない。

親から教えられたこと。「泣くな」
それだけ。
他人の気を惹く為に泣きわめく本能の働くような年頃に、二つの事を叩き込まれたのだ。
本当に泣くようなことかどうか考えろ、そして、甘えるな。
泣かないことは、感じないことを意味しない。
怪我をして痛がるのも、夕陽の美しさに感動するのも当たり前のこと。
脊髄反射も生命活動維持に於いて不可欠だが、それにとどまらず、
あらゆる器官を以て観察し、知覚し、そして脳で感じる時、
初めて原始の力の偉大さに触れ、畏れを抱くのだ。
現代文明の中に育って人はもはや、そんな努力をしなければ本当の"人"らしくはあり得なくなってしまった。
そして私はやはり"人"でありたいと、その前に"生物"でありたいと願っている。

また私を叱りに来たんだね。
どうして呪わずに見守ってくれるの?
肩を貸さずに、まだ自分の足で立てる事を示してくれる。
地面に膝をついてしまっている事を知らせてくれる。
手のひらに載ってしまうような小さな肉体を私のせいで失ったあんた達は、
記憶の果てから尚、限りなく大きな暖かさで私を包んでいる。

夢から覚めると共に目が醒めた。
大事な魚達が他人の鳥によって次々に食べられるのを止められなかったのだ。
引け目のある立場にあった為、声を発することすら出来なかった。
おまけにそのことを後で訴え、他人による正義に頼ろうとした。
正に、人間の言うところの"人間的"な私がいた。
躊躇しながらも、友を救いに炎の中に突っ込むことを選んだ半年前とは違う。
夢の中では本性が現れるものだ。
愛するものの為に命を棄てられない。そんな自分を見せられた。
鋼鉄の心と言われても構わない。取り戻そう。
殺人鬼の前に身を投げ出して我が子を救おうとしたどこかの母親、
強盗犯に頭部を斧で割られながら息子を奪い返した異国の父親、
自分よりも体の大きい相手に立ち向かう親鳥........
本当の生き物の姿を、真の本能を取り戻そう。
蜘蛛の巣と埃を払えば、まだ立派に使える筈だ。

病人扱いされ、嫌われ、振り向く人すらいなくなっても本当の事を言い続け、
地球がドッカーーーン! という瞬間に「ほらねっ」と言いたいな。

鳴らない電話ほど目障りなものは無く、
大した用件の書かれていない手紙ほど嬉しいものは無い。
修行が足りないってことだ。

「鏡よかがみ、この世で一番美しいのはだぁれ?」
残念ながら奥様、私には真実を映すことしか出来ません。
美しいか醜いかは、ご自身で判断なさって下さいませ。
.......鏡には厚い布が被せられた。
覆われたまま鏡は、布の向こうの音を反射しながら、真っ黒な布を映し続けた。

透明人間になって 会いに行こう
誰かの瞳の中の影に
誰かの夢の中の声に
かけらになって溶けた私に
違う何かになっていても
私を見たなら思い出すはず

透明人間になって 会いに行こう
孤独に凍えるあなたのもとに
私のまばらな鼓動を届けに
最後の一つをあげた時
奇跡という名のあぶくになって
目醒める頃には消えているはず

虫達よ 教えておくれ
どこまで飛べば落ちていい?
とこまで挑めば負けていい?
鈍感な我々には その答えは聞こえなくて
冬の刃を言い訳にしなくてもいいように
春の日射しに甘えなくてもいいように
せめてお前達のように 血を冷たくしていよう

閉ざされて 隔てられて
何もかも涸れ 力尽きた時
暗さにようやく慣れた目が
色々なものを映し始める

私は私の中にいて、私は誰の中にでも存在できる。
いないこともできる。
いるのに見えないこともある。
無理して存在したがらなくてもいい。
いや、存在を示したがる振りをしなくてもいいのだろう。
人間としての器と心は常にリアルに存在する。
その中に異質で冷静な何かが宿るか否かは、実は本人以外には関係ないのだ。
人として付き合うレベルでは必要のない代物だし、無い方が魅力的かも知れない。
本人すらそれを必要でないと感じるのなら、それでもいいのだろう。
強引なたとえではあるが、スカートを履かない女性のようなものだ。
しかし私にとって創作は、心だけでは行えないもの。
心だけでいいのなら、もっと素直になって笑い、泣き、語りかければいい。
山を下りて眺めることにより、その真の姿を知るという言葉の様に、
あたかも無機質なマシンを操る様に肉体に乗り、精神を観察する事によって、
その生々しさをより忠実にとらえたいのだ。
本能に従うという本能が欠落しているのかも知れない。
淋しい生き方だと言われても、選択の余地が無かったのだから仕方がない。
人が思う程に哀れではないことは確かだ。

なーんか変な曲作ってしまいそやなー。
いややなー。
でも今、音楽を使ってやりたいことは"変なこと"の部類に入るからなぁー。
頭の中は"VANITY"を作るのにぴったりの状態のような気がするのはする。
曖昧な概念のような、漠然とした不安のような、不満のような、
立ち昇る蒸気のような、少し色のついた香りのような、脳にかかったもやのような。
決してキャッチーでなく、かと言って、つかみ所の無いものでもなく。
あぁ〜、難しい!
でもこんなもん作りたくなる時期は今しか無いやろうから.........
その前に音源の説明書。

触れる空気を、吸い込む色を、ビンに閉じこめて流そう
拾われるかどうか判らなくとも
返事がここに届く保証が無くとも
この音がどこかに漂っている

海中の発光細菌は弱った魚に寄生してその表面を光らせる。
陸にもいる。
何も出来ない少女達に寄生して光らせようとするバクテリアが。

あなたの光は私の影を濃く縁取り
その黒さがやがてあなたを包み込む
鈍く、赤く、膨張しながら逃れようとするあなたは
まるで星の命の尽きるように微笑みながら冷えてゆく
青白く、侵略者のように猛りながら私は
閃光と共に全てを焼き尽くして消える

「みにくいアヒルの子」は苦労の報われぬ人を励ます話ではなく、
「はだかの王様」は権力者を笑う話ではなく、
差別社会、大衆の弱さを指摘した寓話ではないのか。
平易な言葉の中の深いテーマを覗き込もうとする人はどれ程いるのだろう。
"作品が判りにくい"と批判される事は果たして悩むに値するのだろうか?

私は"醜いもの"に興味がある。
醜さに気付くというのは、紛れもなく、自分の中に同質のものが存在するからであり、
時に鏡を見せられているようで耐えられないのだ。
美しいものに身震いする感覚は、醜いものに身の毛がよだつのにこの上なく近い。

私はよく振り返る。
振り返らない人間であるかのように見えるのかも知れないが。
良くも悪くも、間違いなく過去は現在の部品だ。
網膜に映っていたのに認識できていなかった光景が、
10年や20年の時を経てようやく脳に到達することもある。
人は20歳の時点では、20年分の人生をフルに体験していないのだろう。

根拠の無い自信だって構わない。
自己暗示で無理やり前に進んで、後から中身が満たされる事もある。
己とは、時に荒馬のようなもの。
乗りこなすのも容易でない時期がある。

誤ちを認めること、改める勇気は大切だけれど、
目の前の醜いものに視界を閉ざさせてはならない。
賛美した気持ちに偽りが無く、その素晴らしさをいつまでも肯定し続ける、
いさぎが悪いのでは無く、それは信念。
敬意は褪せない、たとえ相手が気付かなくても、私を憎んでも、
たとえ今の私がその人にひどく失望していたとしても。

プロだのアマだの、日本人だの、甘ったれた言い訳をしなくていい、
そんな音楽の世界がこの国にも築けたらなぁ。
何万人集めるライブバンドであろうが、宅録マニアであろうが。
音楽は音楽として、同じ台の上に載せる。高下駄は無し。
実際に海外から貰う感想やメッセージはそういった観念に基づくものであるし、
私が本気で人の歌を聴く時は、初めて人前で歌う人間であろうと、
ホイットニー・ヒューストンやロッド・スチュアートと同じ耳で聴く。
最終的には、音楽的な正しさが全てでは無い。
しかし、正しくないものが結果オーライである確率が高くないもの確かだ。
自信を持って、しかし驕ることなく、それでいて開き直ることなく、
蹴落とすのでなく、刺激し合い、高め合いながら絶対的な尺度での理想の地を目指す。
少しでもそんな仲間を増やすことが出来たなら、
そして私もそんな刺激の一部であれたなら最高だ。

ネット放送の時代になり、動画用前歯修正ソフトや輪郭修正ソフトなんてものが開発されたら、
高くて面倒な整形手術の需要は減るんだろうな。
現に、音程矯正機能で修正された歌なんかが出回る時代だ。

目の前がくらくらする。
ヘタクソな巻き舌は体力を消耗する。
何でも同じなのだろう。必要な場所だけ操り、他は意識して弛緩させる。
役に立つことがあるかどうか判らないが、取り敢えず引き出しに入れておけ!
これしきがマスターできない内は、"鬼コーチ"のシバキに説得力が無い。

冒険好きの蛍は 季節はずれに現れた
無邪気に舞って 渇き
遊び疲れて 憩いを求め
妖しい泉めがけて 飛んで行った
甘い蜜に飽きた蛍は 忠告を聞かずに
水を飲み干し 森の苦さを思い出した

体の中で激しい変化が起こる。
全てが入れ替わり、混じり合う。
これまでの方法論が成り立たなくなる。
今まで一体、何だったのだろう。
何の為に歩いたのだろう。
無心に生きようとした。
虫のようにただ生きようとした。
草を食み、歩き、眠り、、、、、草を食み、歩き、、、、、
、、、、、さなぎ?
..........................
んなアホな。

天使には死の恐怖が解るのだろうか。
愛する者を失う苦しみが解るのだろうか。
或いは、それらの無意味さを知っていて微笑むのだろうか。

もう少しお休み
このままお休み
私の夢など見なくて構わないから
この腕の中で
いつまでもお休み

機材の配置が大体決まった。
もうじきここに、新しい四次元ポケットが出現する。
但し、そこから出て来るものは夢のマシンでは無いだろう。

家庭を持って良き母となった元不良娘のように、
私は安定してしまったのかと思っていたのに、何だか最近、とんでもない。
核融合反応を起こし始め、善悪、優劣、そんなものを超越した勢いで弾けて行く。
何をやらかすか判らない。
ドーピング中のランナーのように。
今の私に触れた人は吹っ飛んでしまうかも知れない。

無防備な人。
あなたの姿は私を安心させる。
私の隙間無い鎧は人を緊張させるのだろう。
時折、顔を出して呼吸をする度、あなたは笑うから。
長く着ていると、肌に癒着させることが出来る。
でも脱ぐとなったら、皮膚が一緒に剥がれて大変だ。
因幡の白兎のようにひぃひぃ言っていたら、今度は自然に殻が形成された。
軽くてよさそうだ。
脱いだらそのまま置いて行けばいいんだろう。
水を浄化しそうな、あの手の殻だから。

光り物の鉄則。
光を当ててやらないと光らない。
多分、私はわざといつも照らさないのだろう。
何だかうっとおしくて。
考え事をしたい時のダンスミュージックみたいなものかも。

埃の中から訳の判らんものが出るわ出るわ、"タンスの後ろの五円玉"状態だ。
新たなる伴侶、EX5を撫でれば、その長い鍵盤がえらく弾きやすい。
バイエルの腕で言うのも何なのだが。
ここ数年は、音楽を鑑賞することなど殆どなくなっていた。
ふと立ち止まって耳を澄ませば、素敵な音もあるもんだ。
素敵.........こんな言葉を使うなんて、何てしおらしい瞬間だ。
外は内。そして内は外に通ずる。
世界の中に私は無いかも知れないけれど、私の中に映し出された世界があり、宇宙がある。
その宇宙は今、キラキラ光る神秘的なものに満ちている。
何となく世界も"素敵"なものに見える、何とな〜くだけれど。

目覚めたら今度は海底に横たわっていた。
水面が時折きらりとする。
暗くはないが、まぶしくもない。
海原ではもや達が囁いたり、溜息をついたりしている様子だが、ここまでは聞こえない。
彼らにも私の姿は見えない。
わかめになりすました何かが、目の前をゆっくりと通り過ぎるが、互いに気付かぬ振り。
波に呑まれて溺れかけたヤコウチュウが、くるくると舞いながら器用に水面に戻り、ぼんやりと光った。

迷っているのだろうか。
これは、迷っているという状態なのだろうか。
迷う余裕なんてあったのか。
そんな事が私に許されるのか?
明日はどうなんだろう。
もしも、今と同じなら、"生まれ落ちたところからやり直し"ということだ。
いい事なのかどうか、全く見当が付かないけれど。

葉っぱになるのは、もう少し後でいい。
まだまだ、今の形で出来ることがあるから。
やらなくちゃならないから。
そんな声が聞こえた気がした。

あんた今日はムチャクチャでっせ。
はよおやすみ。

あまりに上空まで行くには今日はちょっと寒く、
雨になる前に自分で帰って来てしまった。
そして明日は、、、、、片付けの続きだ。
現実の中に非現実的な空間を出現させるぞ。

雨になりたいのだろうか。
望まなくとも、その内叩きつけられ、流れ、又淀んで震える。
その前に、葉っぱに何となく吸い込まれ、少し休んでからだ。

地上を漂う、どこに漂っているかすら判らない水蒸気でいられたら。
凝結して水たまりになったら、すぐに振動に反応してしまう。
馬鹿馬鹿しいこと、深刻なこと、全て体を透り抜けてしまうような、
ヒトゴトばかりのようなこの感覚がいつまでも続いてくれないかな。

落第です、やり直し。
子山羊になって生まれ落ちたところから始めましょう。
大丈夫、見る間に立つから。
でなければ又生まれ直し。
この世は心躍るワンダーランド。
狼に出会わない幸運を祈りながら、緑の原っぱをぴょんぴょん行こう。
崖っぷちに出て途方に暮れるまで。

内なる世界へ。
一休みして観光に出掛けた私は、その素晴らしさに驚嘆する。
醜さを責めるのに夢中になる余りに見えなかった、美しいもので一杯だ。
ethereal........
天国がこんな感じだったらいいなぁ、、、、、と、私は行かないんだった。

湿っぽいので雲になってみた。
地上は少しばかりカラッとした筈なのに、まだまだ重い霧が沈んだまま。
爪先立ちで転びそうになっている人達が見える。
横を見ていると背伸びせずにはいられない。
動物は体の大きさに支配されるものだから。

何だか長〜い1ヶ月だった。
周囲の状況がどんどん変わって行く中、この変化を嫌う面倒臭がり屋にも試練の時が訪れた。
新音源 YAMAHA EX5 他の機材導入により、部屋の模様替えが余儀なくされたのだ。
まずは、いつも私の左隣に控えていたサンプラー、Roland S-10。
大学を辞める時に、音楽を"趣味"とするという前提のもとに、友人から譲り受けたものだ。
数年間眠っていたそれが叩き起こされたのは、
ドラムとベースの音を使って、何となく曲を作ってみた時だった。
フォーク狂でない私は、ギター一本で、という作り方は最初からしなかった。
初めての曲の出来に気を良くした私に付き合わされ、それから暫くは休む間もなく動くこととなった。
音色データを読み込まなくなってからも、MIDI入力用キーボードとして曲を生み続けた。
そして今日、後光の射す76鍵に替わられ、新世紀最初の曲、"LORELEI"を最後に引退。
感謝を込めて全ての鍵盤の上に指を滑らせた後、ハードケースに戻し、押し入れへ。
接触不良の切替スイッチと、感度のおかしな鍵盤のあるこのキーボードが、
誰か他の人の為に働く事はもう無いのだろう。
もっと上手い人に弾かれたかったろうに、申し訳なかったが、
お前と一緒に創り出した世界を愛してくれる人達がいるよ。
ありがとう、、、、、ん〜〜〜予期せぬ感傷。
そして、今度は部屋の隅から引っぱり出されるスピーカーがあった、、、、、

愛しいものよ
あなたの眠る間にそっと手放し
同時にこの手に入れたそれは
きっと誰と分かち合うことも 失うこともない
馴れた小鳥のように
ずっと肩にとまっているのだろう

地球の核と宇宙の果てとの隙間を
ささやかな重力の支配を受けながら
軽やかに飛び回る
思考が空気ににじみ出し
肌は絶えず新しい風をまとう
甦った魂が呼吸を始め
かつて肉体だったもの達と意識を交換する
走り出すのは追うからじゃない
逃げるのでもない
きっと アゲハが高く舞う理由と同じ
捕まえられてしまったら振り返り
まっすぐに見つめ返すから
何が必要か教えて
立ち止まることは出来ないけれど
今の私にタブーは無く
押さえきれない衝動だけ
立ち止まることは出来ないけれど
ついて来られるのなら構わない
もう 追い返しはしないから

たった今、門が開き、全ての外部の音がなだれ込む。
好きな音も嫌いな音も、直接耳へ。
誰が発するとも知らぬリズムに鼓動を合わせることすら出来る。
千里の先まで。
壁を取り除く勇気さえあれば、いつだって手が届く。

充分な強さと自信を持つ人間が、闘う構えを示す必要の無いように。
脅すことも、繕うことも、きっと要らないのだ。
明日の私には。

何と小さな体なのだろう。
満ち来るエネルギーが、まだまだ湧き上がるのに場所が足りない。
この夜中に走り、跳び回りでもしなければ四次元に向かって吹き出してしまいそうなほど。
誰か私の為に原子炉を用意して!

エビのように。
どんどん殻を脱いで大きくなり続けるエビのように。
脱いだ殻は、まるで独立した生き物であるかのようにリアルではあるが、
やがて朽ちて砂となり、また元の主の一部となる。
智恵の証拠である長いひげが、臆病を招き寄せませんように。
ただ、柔らかい殻を通して水の流れを敏感に感じ取る、エビのように。

© K. JUNO ALL RIGHTS RESERVED.
Back
show frames