三次元漂流記 2005
ひっつきむし [7月のモデル;ワイルド過ぎる犬]
病院での診察が終わり、精算を待っている間、
近くを散歩していたら茂みの中に突進して、
出て来たらこうなっていたんだって。

得意気に待っているお前をガラス越しに見て、
笑いが止まらなくなってしまった。
前を通ったおばさんも
「あらあら」
と呆れていたんだってさ。

なかなか取れなくて大変だったんだよ。

□■■ Jul. 17th

近頃、キョンの散歩は朝と夕方の2本立て。
今日は朝、帰って来てからずっと雨だからナシの予定だったが、
傍に行くと、意味ありげな目つきで見上げているので、やみ間に出掛けた。
ほんの短いコースだが、折り返し地点の手前で降り出した。
最初はキョンも気にしていなかったが、
大粒になると、傘を持つ私の横に「ツキ」気味で歩いた。
帰りにオカンがボールを見付け、キョンの方に蹴った。
少しは追い掛けるものの、余り興味がなさそうだったが、
我々が蹴り合っていると、急に気が変わったのか、
丁寧にくわえて歩き始めた。
「持って帰るん?」
どうやら、そのつもりらしい。
いつもは蛇行したり、駄々をこねて寝ころんだりするのに、
わき目も振らずにまっすぐに行く。
冷静に車を待って道路を渡り、トコトコ家へまっしぐら。
大事にする余り、道の際を歩こうとするものだから、
畑に落としはしないかと心配だった。
なくしたらがっかりするだろうな。
あごが疲れたのか、口を緩めた隙にアスファルトの上に落ちたが、
バウンドするよりも先に、慌てたキョンが捕まえた。
急ぎ足で、慎重に運ぶ。
電柱を嗅ぐけれども、また落としては大変なので、我慢。
すると、向こうから仲良しの女の子がやって来る。
わ、どうしよう?!
道路を隔てたところでウンコをしながらこっちを見ている。
キョンも「あ!」という顔をしたが、
2度ほど視線をやっただけで通り過ぎた。
相手の子は振り返りながら、何でだろうという様子だった。
最後の難関は、隣のクマちゃんだった。
キョンと息を合わせて、そっと走ってやり過ごした。
ここで興奮しては今までの苦労が水の泡であることは、
よく判っているようだ。
門を抜けると、予想通りに裏庭に直行する。
自分の「巣」を更に深く掘り、ボールを置いて鼻で土をかける。
モノが大きい上、焦っているせいか、なかなか埋まらない。
鼻でボールを押してしまって、埋まらずに表に出てしまった。
土を少しかぶっただけで、穴の中に転がっている状態だったが、
それで満足したようだった。
表に回り、玄関に入る。
足も鼻もどろんこ。
玄関口から覗き込んで「おかえり」を待つ段取りが、
今日は床に上がり、部屋にまで押しかけそうな勢いだ。
よほど嬉しかったのだろう。
お父ちゃんに報告したいらしい。
「拾ったのか」
と言って貰っても、まだ自慢し足りない。
暫し、興奮の冷めやらぬキョンであった。
明日の朝、ボールを取りに行くのが楽しみだ。
頭イイから覚えているのだ。


□■■ Jul. 16th

「誰かがどこかでトクしてる」
ということは
「誰かがどこかでソンしてる」
ってこと
そんなババ抜きみたいな国に住みたいですか?


□■■ Jul. 15th

最近、キョンが落ち着いて来た。
もともと、おかぁちゃんは弱いからちゃんと言うことを聞いて、
守ってあげなくちゃ、と思っていたようだが、
私のことは、ちょっとけむたくて馬鹿力、と認識していて、
渾身の力を込めて駄々をこねたりしていたが、
何だか、とても聞き分けが良いのだ。
蚊が多くて可哀想だからと玄関で寝かせるようになり、
始終顔を合わせる家族に「情が移った」のだろうか?
良い子でいることにプライドが持てるようになったのだろうか?
相変わらず、坂道は一生懸命牽引してくれて、
溝はバシャバシャと行くけれど。

車に乗るのも上手になった。
お前の飲み込みの早さと言ったら.....
「気にしない」性格だから、病院へも進んで入って行く、。
厭なことが終われば、さっきまで牙を剥いていたのが嘘のようにご機嫌で、
あちこちを観察しながら、奥の部屋に行こうとする。
「先にエコー検査をしますので」
と言う看護師のお姉さんに素直に連れて行かれながら、
「まっすぐまっすぐ、左」
という私の指示に正確に従っている。
少し経ってから我々が診察室に呼び入れられると、
何の違和感もなく、検査室から出て来た。
前回、影のように写っていた膿のようなものは小さくなり、
いきなり破裂するという心配はほぼなくなった。
最終的には去勢ということになるかも知れないが、
あと2週間、ホルモン剤を1日置きにして様子を見ることに。
部屋の外の鳴き声に、首を傾げて聞き入るキョン。
賢いお前が誇らしいよ。
みんな、よくしつけられた犬だと思っているだろうね。
頭が良くても言うことは余り聞かないお前が、
自分で判断して行動しているのだとは、夢にも思わないだろう。


□■■ Jul. 13th

キョンを病気にしてしまった。
してしまったのか、気付かなかったのかは判らない。
雄特有の病の予防の為に、去勢をする。
チビたちの引き取り先には説明して約束して貰っていたのに、
いざ、キョンとなると、田崎さんの言葉が引っ掛かっていた。
「人間だったら簡単に去勢なんて言う?」

「ドクターズアドバイス」にはこうある。
「ほとんど危険のない手術です」から「安心して下さい」
身内だったら、いや、そもそも相手が人間だったら、
「ほとんど危険がない」程度の安全性の手術を、
病気でも何でもない患者に「安心」して受けろと勧めるか?
そんなこと家族に言う医者いるか?
しかも、去勢には「メリット」が沢山あるそうな。
マーキングや無駄吠えなどの「問題行動」が減り、
「性格もおとなしくなりますよ」だと。
あんたらは神様のつもりか。
それとも、救いようのない馬鹿か。

とは言え、唯一のメリットである「病の予防」については、
考えずにはいられなかった。
「元気で楽しく、永く生きるんだぞ」
毎晩、頭をなでながら、まじないのように何度も呟く。
病は既にそこにいたのに。

ちょうど1ヶ月前に吐き、便に粘液と血が混じった。
下痢止めの薬と缶詰で、症状は治った。
何年か前にサツマイモで大腸炎と診断された時と違い、
思い当たる原因が全くなかったのが気になっていた。
サイエンスの缶詰なんか、
日頃、食べている餌に比べて消化に優れている筈もない。
あの時は、便を持って行きたかったが、取るチャンスが無かったのだ。
今回は、病院に行く前に散歩に行ったが、
空腹のせいか、何も出さなかった。
幸いなことに、診察の待ち時間、外で遊んでいる折に、
「完全なウンコ」1回分を取ることができた。
ケーキのパッケージにちょうど一杯、
診察室に入って見せる時には、蓋が蒸れていた。
便は正常だったが、ひと目で前立腺に問題がありそうだと判ったようだった。
最初が硬くて後は柔らかい−−
それがこの子の特徴だと思っていた。
もっと早く気付く事はできた筈だった。

エコーで調べると、前立腺過形成のようだ。
これを恐れて悩んでいたのに。
悩んでいたこと自体が無意味だったというのか。
ホルモン剤を呑ませて様子を見る。
これで小さくならなければ去勢である。
10日目である明日、また病院に行く。
私は、ここの院長先生を信頼している。
だから連れて行くのだが、人は信頼できても、
私には天を信じることができない。
癌だと言われた訳ではないから、それほど大きなショックではない。
そう思おうとしている。
だが、今夜は落ち着かない。
落ち着けないのだ。


□■■ Jul. 11th

蛍道コースはスズメバチにとうせんぼされた時に逃げ道がない。
山コースは日差しが厳し過ぎる。
そんな理由から、近頃のキョンの散歩は専ら川コースである。
尤も、スズメバチには毎朝、当然の如く遭遇するが。

今年も烏骨鶏に育てられたカモっ子達が、すくすくと育っている。
まだヒヨコ体型のちっちゃいのと、生意気な体つきのがいる。
時期的には2段階らしい。
最近、川デビューした彼等を見て、
育ての親たちは首を傾げているに違いない。
「やっぱりか」
何故、育てても育てても泳ぐのだろう、なんて。
決してコケコッコとは鳴かない。

横を通る我々を見上げながら、大きい子が「グワーッ」と声を上げた。
この間までピヨピヨ言っていたのにエラソーだな。
その後をちっちゃい組の子が一生懸命に泳いで追いながら、
「ピー、ピー.....」
大きいのは6羽、ちっちゃい組は5羽。
時に、大人のカモの群れ+アヒルと一緒に、かたまって座っている。
足が短いせいか、いちいちモーションの大き過ぎる走り方がコミカルだ。
これまでのヒナ達同様、アヒルの近くを好むのは、
育ての親に色が似ているからだろうか?
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