三次元漂流記 2005
キョンの水 [2月のモデル;自然の芸術]
洗面器に入れたキョンの水が毎朝凍り付く。
厚い時は1センチ近くもある。
散歩から帰って来たキョンは、
体当たりをするような勢いでつつき、割って水を飲む。
イライラして、邪魔な破片をバリバリと食い散らしていることもある。
これは、その氷を葉牡丹の鉢に乗せたところ。

溶けたら水になるから。
.....今日はこれだけしか水を貰えないの???



□■■ Feb. 29th

キョンが、こちらを見て何かを訴えている。
干してあった布団は小屋に戻してあるし、夕飯は貰っている筈だ。
屈み込んで訊いて見ると、手を舐めてご飯の催促。
しかし、何度確認しても既に食べさせたとの返事。
おかしいな。
本人(犬)は食べていないとしきりに言っているぞ。
はっ、もしかして.....
「昼ご飯は?」
「あ、忘れてたかも」
寒い間は食欲旺盛なので、昼におやつをあげる代わりに、
1日2食から3食に切り替えたのだった。
今は満腹の筈なのに、1食分少ないと訴えているのだ。
少なめにご飯入れに入れてやるとペロリと平らげ、満足そうに小屋に戻った。
おまえは、我々よりもずっと記憶力がいいな。


□■■ Feb. 22nd

カタログ雑誌に、こんなものが載っていた。
「ヒツジさん.....」とつぶやきながら、
「子羊1頭分を丸まま使いました」
なるほど、子羊の形を残しているワケだ。
勿論、ウールではなく、ファーであり、スキンである。
これで癒されろってか?
ほぉ。
生皮を剥がれた、或いはステーキになった子羊を思い浮かべながらね。
ま、毛皮を見て「かわい〜!」なんて言ってる女には、普通か。
情ないのは、そんな女に貢ぐアホ男よ。


□■■ Feb. 20th

裁判員制度って何やねん?!
どこのアホが思いついたのか知らんが、法廷までベスト10番組にするつもり?
誰か止める奴はおらんのか?

アメリカへの無知な憧れが日本を急速にアメリカと化させたと嘆く勿れ。
半端な日本のこと、建前社会は健在である!
生き物を殺す場所を「動物愛護」センター、
資源のリサイクルを規制する「リサイクル法」、
動物愛護を封じるための「動物愛護法」、
.....etc, etc.
さぁ、自信を持って!
ゲイシャ、フジヤ〜マ、いなばうあー♪


□■■ Feb. 9th

新しい液晶モニターの性能を見ようと、一昨年のMOMO公演のDVDを見ていたら、
灰色の顔の時間泥棒がこんなことを言っていた。
「愛情だの、友情だの、そんなものは、お金があれば後から付いて来る!」
何だか最近、同じことを言ってる奴がいたな。
でも本当は、付いて来ない。
本物は付いては来てくれないのを知っているから、嘘を突くのではないかな?
逮捕されたアノ人も、かつて私の横で友のフリをしていた人達も。
周りを見回して、「友」たちの顔の色を確認していみた方が良さそうだ。

「勝ち」だの「負け」だの、幼稚な判断力しかないからそうなるんだよ。
ある事が成功か失敗かは、死ぬ瞬間まで判らない。
大人になってそんな事にも気付かないなんて、一体、社会に出て何を見て来たの?
せめて30過ぎたら気付きなよ。

幸か不幸か、最初にクラッシュしたのは、ハードディスクレコーダーだった。
1曲分の歌とギターが丸々、飛んでしまったが、どちらも妥協した出来であった為、
新しく録音し直した事により、満足の行く作品になった。
そのお陰で、以来、ハードディスクは幾つも壊したにも関わらず、データを失った事は1度も無い。
何台分ものレコーダーやパソコンのデータは、
役に立つかどうか判らないものから大事な証拠まで、幾つものメディアに保存されている。
常にいつ、何がクラッシュしても全く困らない環境なのだ .....頭には来るだろうけども。
結果的には「全てよし」となった。
短絡的な人達は、こんな下らない経験のひとつも無いのだろうか。
無い筈はないね。
見てない、聞いてない、考えてないんだろうね。

生き物の背中は美しいね。
綺麗だからって、皮剥いで着たって美しくないね。
そんな吸血女、何が「セレブ」か。

かつてこの辺りにも、他人の飼い犬を盗む輩がいたそうだ。
学校から帰って来ると、犬がいない。
返してくれと言いに行くと、「どれじゃい、言うてみい!」
と、ずらりと並んだ皮を指して怒鳴るのだそうだ。
近所の女達が、洗面器を持ってその肉を貰いに来たと言う。
その人物は、もう死んだ。
だから今では、そういう話も聞かなくなった、と。
リアルな話だ。


□■■ Feb. 8th

キョンと山道コースを散歩していると、スピッツのような白い犬がやって来る。
去年、何度かハーネスをつけたまま、うろうろしていた子だ。
あの時と同じ、愉快そうな顔で、パカパッ、パカパッ、、、、、と軽快に走り去った。
ハーネスはついたままだ。
どうやら、飢えてはいないらしい。
やれやれ。
この間の茶色い子はどうしたろうか。
あれから全く、姿も見ないが。

布団を干せば雪が降り、玄関の洗面器の水は連日のように凍りつく。
1センチ位の氷を割ってから水を飲むのが、散歩から帰ったキョンの日課になっている。
この間は固かったようで、歯から「体当たり」しても一向に割れない。
頭に来たのか、がりがりと上からかじり始めた。
水を入れて来てあげようかと声を掛けても、夢中でそっちのけ。
3センチ程の直径の穴が開いたが、ペロペロ舐めてもらちが開かない。
穴から歯をこじ入れて、氷を咬み出した。
手伝ってあげようとしても、無視して自力で頑張っている。
イライラしているのか、半分に割れたのを外にくわえて出し、ガツガツと食らい、
洗面器に残った半分も、食べながらバラバラに砕いてしまった。
咬まれるんじゃないかという勢いだったが、すぐに気が済んだ様子で、
機嫌よく外を眺めながら、丁寧にチューをしてくれた。

職業に貴賎は無いというが、それは大昔の話だ。
私には、とてもそうは思えない。
犬を狩って殺す職業を「犬殺し」と言ったそうだが、
放送上は「衛生何とか員」などと訳の判らない表現をしなければならない。
体面だけを繕って何が良くなるというのか?
腫れ物に触るような対応は、根本解決の意志の無い証である。
「犬殺し」と呼ばれて厭な人は、その仕事自体に疑問を感じているのだ。
「衛生何とか員」と呼んでみた所で、それが誇りに変わるとしたらおかしい。
そもそも、呼ぶ方に敬意が無ければ同じことだ。
犬猫を残殺する場所を「動物愛護センター」だなんて、
日本語学習者が聞いたらショックを受けるだろう。
大企業の支配する世の中、心から誇ることのできる仕事をしていられる人はどれだけいるのだろう?
地球や人間、動物を大規模に破壊しながらも消費者を騙し続けているそこここのメーカー、
食品関連企業、化粧品会社、略奪者としか言えないペット産業、
動物の生皮を剥いでモデルに着せるファッション雑誌、
彼等の嘘のCMを作ったり、流したりしている会社、
それら企業の経営者始め、彼等に雇われている従業員やアルバイトは、
日本の人工の何割を占めるのかと考えると、ぞっとする。
汗水流して働いても、そんなのは「社会貢献」とは言わない。
どんな形であっても、「労働」そのものは尊いのか?
たとえば、罪も無い人に鞭打つ仕事があるとすれば?
誠実に生きようとすればするほど、正気ではいられなくなる世だ。
どうすればよいのか判らない。
子供達を教育する以外に、この惨状を変える方法を私は思い付かない。


□■■ Feb. 7th

ブラックネオンはあれから殆ど動かなくなったが、
それでも朝、電気を点けた時と夜、餌を回収する時には力を振り絞り、
横になったまま、底を這った。
無駄かも知れないが、口から欠片でも入らないかと、餌を傍に沈めてやった。
そして15日の朝、呼吸も止まっているようだった。
電気を点けると、待ちかねていたかのように、大きく、ゆっくりとエラを羽ばたかせた。
朝だぞ、よく頑張ったな。
何度見ても、口をパクパクさせる動きはない。
昼頃に、深呼吸でもするように、腹全体を大きく波立たせた。
それが最後の動きだった。
或いは、体内に溜まったガスが移動した為かも知れない。
その翌朝、目からは完全に生気が消えていた。
次には蝶になっておいで。
そう言っていつも魚達を葬る玄関先のプランターには、季節がら、幼虫の来そうな草も無い。
裏庭で、キョンがほじくり返さないようなプランターを選んで、餌と一緒に丁重に埋葬した。
うちに来てから5年半、大往生と言ってよい、その見事な生きっぷりには、敬服せずにはいられない。
死は、生きた果てにしか無い。
反対側には、決して無い。
© K. JUNO ALL RIGHTS RESERVED.
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