三次元漂流記 2003
夏の終わりの雲 [9月のモデル; 夏の終わりの雲]
餅つきますな。
粉まきますな。
丸めますな。
指まっしろなりますな。
その手で窓ガラスさわったら.....

夏の空はオモシロイ。
その終わりを惜しむような、遊びおさめのような雲でした。

□■■ Sep 30th

キョンの笑顔は、今日もきらきら。
どうしたら、そんなに綺麗な顔になれるんだ?
目に映るもの全てが面白くて、漂い来る匂い全てに興味津々で、
何もかもが楽しくて、こんな素晴らしいもの全部、全身で味わわないと勿体無い!
そんな感じだね。
与えられたものを素直に喜び、今、その一瞬を精一杯に生きることができたら、、、、、
お前みたいに、綺麗な笑顔に、人間もなれるのかい?
善良な心。
無心の闘い。
それ以外に、生命を美しく輝かせるものがあるというのだろうか。


□■■ Sep 29th

米を洗っていたら、モスラがうにょうにょ。
ライスストッカーを開け、たった今、開封して入れたばかりの米をチェック。
わぉ。
砂の惑星を悠然と行くワームが。
コメガの幼虫だな。
キティんちで飯を作った時のコクゾーちゃん以来だ。
日本で見ると、さすがにびっくりする。
「洗い方わかる?」
と私に任せて、キティは別の用事をしていた。
私は、よくある「蟻入りきゅうり炒め」のように、食べる時に取り除くのではと、ぞっとした。
幾ら何でも、勘弁して!
あのゾウとも蟻ともカブトムシともつかない、虫界の四不象とも呼ぶべき生き物を、
こっそり掴んでは、1匹ずつ、床に落としていた。
それを見たキティは、
「きゃー、何すんのー!」
と、靴で踏んで潰していた。
「こうやって洗うのよ。」
ざーっと水を入れ、荒っぽくかき混ぜ、四不象が浮いて来た所を、水と一緒に流す。
「日本でもこうやって洗うでしょ?」
いやー、、、、、、洗うって言うか、その、、、、、
そういうのは入ってないから。
「そんな訳ないわよ、米には絶対、入ってるって。」
と笑う彼女に、それ以上、言えなかった私。
日本ではあり得ない、までは言えない。
と思っていたが、、、、、
モスラ米の袋を見ると、大きな穴が沢山開いている。
圧着不良だ。
翌日、販売店とメーカーに電話した。
店はまだいいが、メーカーは、
「ああそうですか。入っていたのは悪いけど、、、、、店で交換すればいいじゃん。」
という感じだった。
あるある、日本にもこういう時の流れの場所があったんだ。
キョンの蛇騒ぎの起こる数時間前のことで、実際にクレームの電話を入れたのは、
注射を打って貰って、落ち着いた後だった。
まぁ、今となっては、虫ぐらいいいんじゃないの、程度の感覚で、、、、、
私の時の流れも、ここに住み始めて変わったのかも知れない。


□■■ Sep 28th

「本音で語る」なんて度胸に憧れた頃は、まだ良かったのかも知れない。
「No」と言えない国民性を恥じていた時代。
文字に記せない「間」を感じる文化が、古来、この国にはあった筈だ。
食べつけていないと判らない、「ダシ」「旨味」と同じ。
今となっては、第六感と同じく、「超能力」に近い。
自分のことばかり主張する、誰かよりも損をしたと言っては大声でわめき、
厭なことには知らん顔、誰かがやって当たり前。
己の行いは顧みず、揚げ足取りに明け暮れる。
誰も口に出さないこと、形となって現れないものには気が付かない。
争いも起これば、犯罪も増える訳だ。
誠実さ故の真実、責任ある「Yes」と、後先考えない我が儘は違う。
無責任放題の今の日本人は、欧米的ですら無い。
どの世代に於いてもそうであるということは、教育のせいでもない。
自分のことしか見えない、口先ばかりの薄っぺらい現代人よりは、
扱い難いが主義の一貫した頑固親父の方が、ずっといい。
「個性」すらも流行りに合わせてコロコロ。
いつからこの国の人間はカメレオンになったのだろう。
そもそも、そういう種なのだろうか?


□■■ Sep 27th

飛び起きた。
「キョンが蛇に咬まれて元気が無い。」
絶体絶命の窮地に陥った時にしかやらない秘密のおまじないをした。
失敗したのでやり直した。
そして、祈った。
お願い、ニャン、ピヨ、ステキチ、それからそれから、、、、、
いつもの病院へ歩いて行く訳にはいかない。
鹿の子ちゃんとクロスケが昨年、お世話になった先生に電話。
往診に来て下さることになった。
犬は蛇では滅多に死なないそうだ。
.....が、見なれない蛇だったとか。
「ヒョウのような、キリンのような、、、、、」
太くて短く、「蛇行」する。
調べてみると、それは毒蛇で有名な「マムシ」。
この辺りにもいるとか、いないとか聞いていたが、いないという話で落ち着いていた。
また電話。
犬には血清など無く、ショックや炎症を押さえる為の注射を数日間、打つしか無いという。
咬まれた口は腫れ、よだれが伸びて、キョン自身はパニックで怯えている。
よだれがティッシュに当っただけで、痛そうにヒーヒー泣く。
1時間半程してから、先生が到着、「やはりマムシですね〜。」
押さえ付ける手を咬む元気もない、お尻にチクリと注射。
マムシで死ぬケースは極、稀だそうだ。
ひとまず落ち着いて、買い物へ出かけて帰って来ると、
先生の予言通り、昼頃には腫れが頬から顎に移っていた。
片側だけ牛みたいになっていた顔が、今度は前から見ると水牛だ。
まだシュン、としている。
食欲が無かったらと、成犬用ミルクを買って来た。
もう一度出かけて帰って来ると、今度はかなり落ち着いていて、喜んで出迎えてくれる。
腫れも少し引いたかな。
ミルクを飲み、御飯も少し食べたとか。
まさに「喉元過ぎた」感じで、散歩に行けとせがむ。
横になると、まだ鹿のようだが、上から見た顔はもう元通り。
一日中、みんなに甘やかされ、昨夜は玄関でお休み。
今日は午後に注射。
腫れがわずかに残っているのか、胸の前の毛が余ったように垂れているものの、
見かけはもう、すっかり「犬」。
昨日の落ち込み様はどこへやら、いつものやんちゃな凶暴犬に戻っているので、
電話を受けて押さえ付けに戻ると、ニコニコとお散歩をねだる。
よしよし、先生に訊いてからな。
「マムシは今年は4匹目ですね。」
.....いるんじゃん。
ヤマカガシらしい毒蛇もどこかにいたとか。
処置が早かったので治りが良く、注射は今日でおしまい。
散歩もオッケーということで、早速、山ではなくお花畑コースへ。
丸1日ぶりのお散歩に笑顔ではしゃぐキョン。
「可愛いですね」と立ち止まって話す人はいるわ、知らない人が畑のミニトマトをくれるわ。
道の脇には、群生するヒカンバナ。
蜜を吸うキアゲハに、人参色のアキアカネ。
トノサマガエル、バッタ、すばしこく追いかけるキョン..... 全然懲りていないじゃん。
やれやれ、お前の生き甲斐なんだもんな。
明るい間でも、眼鏡で行くとしよう。


□■■ Sep 21st

この国は
物質に溢れた未開国
人々は
機械に操られた野蛮人


□■■ Sep 16th

田んぼの真ん中に、背の高い雑草が群れている。
花束の中のカスミソウのようだ。
農薬を使わないのだろうか。
自然の芸術。

水溜まりに、小さな丸いものが泳いでいる。
まだカブトエビがいるのだろうか?
随分、小さいな。
良く見ると、げんごろうのような体系の、体長7〜8ミリの水生昆虫だった。
ベージュ地に、茶の縦縞。
おや?
何だコイツ?

頭上には乳白色の雲。
夏の空は、もう終わりかな、、、、、


□■■ Sep 13th

パソコンに向かって作業をしていたら、小さな虫が指に.....
細長い。
中国のお洒落な女の子達が穿いていた、腰から足首まで一直線のスカートみたいだ。
黒地に渋いオレンジの太ライン、その境目には、金縁。
おひなさまの嫁入り道具みたいな、古風なルックス。


□■■ Sep 12th

キョンにねだられて、久しぶりのお花畑コースへ。
ここは、ステキチ君が教えてくれたんだったね。
折り返し地点で、もっと先へ行きたいと反抗するキョン。
時間のある時は、古墳の横まで行ってたもんね。
ごめんな、涼しくなって、余裕ができたら、また行こうな。
新しい友達、来ないかな。

おいしそうな入道雲。
真っ白で、キメ細かな泡のような光沢がある。
学校の体育館の向こうから生えているのではないかという程のリアリティをもって、
田舎町に進出して来た巨大デパートのようにそびえている。
「新店舗・メレンゲ館!」
夏の空はオモシロイ。

子を亡くす苦しみと、友を亡くす悲しみは違う。
子を亡くすのは、自分の身体の一部を失うこと。
身を切られる痛みは当然である。
友を亡くすのは、遠くにある道しるべを見失うこと。
迷子になるのは当然である。

ステキチがいなくなって、
誰もが、もう帰って来てはくれないのだと諦めて、
私もそう認めて、
もう1年以上が経った。
公平と、勇気と、忠義の象徴であった君がいない今、天に北極星が見えない。
目指すべき方角が判らない。
ただただ、目の前の草を刈り取りながら、その都度、正しいと思う方へ一歩づつ、行くだけ。
近道を知りたいよ。
最短距離を超特急で行ったって、君達には追いつけないんだから。


□■■ Sep 11th

ボーカルトラックの編集が大変だ。
期待されれば、倍にして渡すのが礼儀というもの。
こんなの、フツーの人達は半時間で終わると思っているんだろうな。
どの仕事でもおんなじだけど。
こき使い過ぎた機械がダダをこねたので、少し休憩。
と、外は雨上がり。
6時前だから、大した景色ではないな。
何気なく山の方を見ると、、、、、キレ〜〜〜〜〜!
反対側の、日の昇る茜の方角を見ると、、、、、、
わ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!
グレーとピンクオレンジのコントラストの見事な雲が、銀に縁取られて、
細長くたなびいている。
.....なんて言っている間にも、夜明けの色は映り、赤味の消えたモノクロの世界へ。
一般に自由の象徴とされる「青い空」が、主役の座を乗っ取っていた。
三日坊主にしては結構続く鍵盤の練習を少ししとこう。
空気が最高だから。


□■■ Sep 10th

空一面の入道雲。
カラス趣味としては、スーパーマンの住む氷の家もいいけれど、わたがしの家も棄て難い。
純白、ピンク、光の色.....
相変わらず、中ではゴロゴロと不吉な音が響くけれど。

夕食後、外に出る。
朧に空を染めるまだ月が低く、大きい。
雲が何ともいい感じ。
十五夜は明日だそうだが、お月見は今日の方がいいんじゃない?
昨夜、真下にくっついていた真っ赤な仲良し惑星は、右上の方で知らんぷりを決め込んでいる。

不意に人が訪れて言った。
「化け物を退治して下さい。」
.....本性が知れて、まだあそこにいたのか。
だが、見るがいい。
もう、息もしていない。
ねばねばの触手に触れた小さな虫の血を吸って、どうにかしぼまずにいるだけさ。
いまだ姫の婿にふさわしい王子だと言い張って聞かない、不思議な肉の塊を、
人はただ、践んづけて靴を汚さないように通り過ぎるのさ。


□■■ Sep 7th

連日の悪夢のような夜からはすれば、ここ数日は嘘のように涼しい。
日本の夏は、間違い無く亜熱帯に近付いている。
不要な冷房が気候を乱していることを、理解できていない人間が多いのだろう。
レース編み雲を透かして見る空。
不思議な色の夕焼け雲が、遠くオーロラのように踊り、くすんだ天に溶けて行った。
口をぱっかりと開いて上ばかり見とれているから、田んぼか川に落っこちそうだ。


□■■ Sep 5th

大阪の学校の校歌は、馬鹿の1つ覚えのように「金剛」が「紫」に煙っていた。
何で山が紫なのか、大人になってもずっと判らなかった。
ここに住むようになって、初めて知った。
山を包む空は、紫。
赤みがかっていたり、青くくすんでいたり。
その時々に、違う色と、匂い。


□■■ Sep 4th

夜明け前の紫もいいけれど、少し後のオレンジもいいな。
うろうろしていると、強烈な光が差し込んだ。
日の出!
立て簾越しの町が、生命の色に染まって行く。
今日も暑くなりそうだ.....

地平線を見下ろす日の出と違って、山の上から顔を出す太陽は、
「もう明るくなっちゃったんで、今頃って感じですけど〜」
なノリで、「日の出」という言葉によって連想される荘厳さは無い。
雀達が、さえずり始めている。
「活動する時間だ! 見えるようになったから、遊べるよ!」
子供の頃に見た映画では、タイトルが変わってしまったが「ブッシュマン」はこんな生活をしていた。
きっと、我々も、遠い昔には、同じように無心に生きていたのだろう。

無心でいることは難しい。
無心でいよう、そう思った瞬間に、もう無心ではない。

「欲が無いんです。」という言葉は、うさん臭い。
何かそこに、得られるものがあって、期待していなければ、
「欲」があるともないともいう発想は生まれない。
本当に欲の無い人は、自分でそう気付かないから、自分のことをそんな風に言わない。


□■■ Sep 3rd

直径15センチほどの見事な手芸品その中心に、主は、いた。
手足合わせても3〜4ミリ、糸の間隔は、せいぜい2ミリ。
すぐ隣には、ゴミ蜘蛛の、編み解いた毛糸のような汚い巣。
小さな蜘蛛の方が大きな虫を捕まえ易いのではなかろうかと、ふと思った。
小さく、糸の間隔の狭い罠の方が壊れ難く、頑丈な筈だ。
これはちょっとしたパラドックスだ、と思うと、楽しくなった。
まぁ、糸は体から出るものだから、
太くて丈夫な材料を使大きな固体の作った巣は、その分、丈夫なのだろうけれど.....


□■■ Sep 2nd

もう9月か。
8月中に終わりそうだと思っていた仕事の仕上げが残ってしまった。
間に合いそうだと思っていたから、まだ9月末のような感覚だったのに。
このところ、毎日、ハチミツレモンを飲んでいる。
冬場のように、お湯でビタミンが壊れるからと急いで飲まなくてもよいし、
冷たいと酸味が薄い。
レモンは日によって値段も違うし、種が殆ど無かったり、ジューシーだったり、
その逆だったりと、当たり外れがあるが、ビタミンCはやはり本物の果物から摂りたい。
冷蔵庫で冷やすと、果肉に甘味が浸透し、
酸味が炭酸飲料のような爽やかさになっている。
脳の疲労を癒し、新たなパワーを与えてくれる、、、、、気がする。
残暑の厳しい間は、ハチミツレモン依存が続きそうだ。
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