三次元漂流記 2003
軒先のペンギン [8月のモデル; 大人びた会話]
6月でご紹介したツバメ一家の、これは少し前の子供達だけのところ。

  う〜、腹減ったのぉ。
  何言うてんねん、お前の方がよーさん貰とるやないか。
  そら、おのれがどんくさいからやないかい。
  食べたばっかしの癖に、大きな口開けてピーピー鳴きやがって!
  ワシが一生懸命ねだっとるから、おのれにも分け前が当たるんじゃ、お前も働かんかい。

奥にいる子が、餌を貰える頻度が高かったようです。
全然、子供らしくなくて、、、、、ペンギンみたいだねぇ。

□■■ Aug 31st

群青の空に輝く、金色のバナナ。
.....乱視???
月が大きい。
月が近い。
各駅停車の電車で行けそうだ。
同時に、薄汚い人間どもが行ける訳がないと思わせるほどに美しい。

どこまでも続く田んぼの間は、土でなく、アスファルトだけれど。
ニャン達を抱き、キョン達を育む大地を包む空は、丸い。
視界を遮るのは、山と、地平線。
ほんものの空は、海原に似ている。

キョンの散歩道に、昨日の毛虫軍団はいなかった。
時は、その都度、一瞬、一度きり。
録画して後から見るものでも、冷凍して保存するものでもない。
君達だって、遺伝子の中の記憶は死んでいないだろうに。


□■■ Aug 30th

マンションの螺旋階段の3階から見下ろした駐車場に、大きな黒猫がいた。
猫にしては毛がバラけているな、犬かな?
堂々と歩く黒猫の大きさを正確に把握しようと、車の幅と比較していると、
1階の高さの塀の上に、下にいるのよりはひと周り小さなブチ猫が現れた。
器用に細い足下を伝いながら、下を伺っている。
後ろには、灰茶色の子猫がついている。
気の知れた仲間という雰囲気ではない。
首を伸ばしたり、座り込んで丸くなったしながら観察する親ブチの横で、ちびが真似をする。
視線と姿勢、体の向きまでそっくりだが、時折、よそ見をしたり、警戒を緩めたり。
黒猫を観察する親子の観察をする人間を、更に上から誰かが観察していたかも知れない。

家の玄関に、さなぎがぶら下がっていた。
枯れたビオラの鉢を掃除していたら、奥にいたらしい。
茶色のボディに、純金の装飾品。
何年か前には、銀や、メタリックグリーンをつけたのも沢山、葉にくっついていた。
野山にこんな色があるなんて。
キョンの散歩道では、真っ黒の身体にオレンジの大きな頭を持つ、無気味な毛虫の集団が、
さなぎになる場所を探しているのか、田んぼの間のコンクリート道を急いでいた。
キョンにちょっかいを出された1匹が、驚いてひっくり返っていた。
ハエ男を思わせる、2つのふくらみを持つ、異様な頭。
君達は、一体、どんな姿に変身するのだろう。


□■■ Aug 28th

観光地の池では、今日も亀が人の目を和ませていた。
他にこれと言った特徴も無く、亀でも見る他は無いところである。
こんな場面でもなければ、亀の面白さを発見する機会は無いかも知れない。
亀や鯉の餌にする麩を売る店が横にある。
池の中に幾つもある岩や木の上でくつろぐ亀達の中に、何羽か鳩が混じっている。
ちょうど同じ位の大きさで、お腹が茶色っぽく、甲羅にそっくりだから、よく見ないと判らない。
互いに争うこともなく、遊ぶこともなく、ただ、じっとしている。
似ている。
全く違う筈の君たちは、平和なところがそっくりだ。


□■■ Aug 25th

空は桃と薄紫の縞模様。
夜明けの色は、桜貝。
砂場でよく探したあの貝が、本当にそんな名だったのであれば、だけれど。

火の星と名付けられた惑星。
傍で消え入りそうな程に控えめに輝く、薄い金の大きな星も、
誰かの力で光っているなんて。


□■■ Aug 20th

オレンジのアゲハを見た。
そう言えば、庭の茂みにも舞っていた。
何だろう。
黒地に黄筋の入ったアゲハならよく見るが、黄色でなくて、
薄いオレンジだった。
きっと、とてもありきたりの風景なのだろう。
珍しい生き物がいるということも、あたりまえ。

電車の駅で何かを懸命についばむ雀。
そんなに食べるものが落ちているのかい、と覗き込んでも、何も見えない。
嘴は、人間には到底、真似できない程のスピードで動く。
そうか。
生き物には、それぞれの時の流れがある。
君達は、君達の速さで進み、強く羽ばたき、生き抜いて死んで行くんだね。
だらだらと生きる我々よりも、ずっと速く。

犬の寿命は、人の5分の1。
人の1日は、犬の5日。
1月待たせるのは、半年待たせること。
私は、ニャンを随分、待たせていたんだな。


□■■ Aug 18th

植木鉢に、オレンジの毛の綺麗な毛虫がいた。
何に変身するのだろう。
裏庭には、少し前、大きく鮮やかな青虫がいた。
あれは、きっとアゲハ。
或いは、ヒナの餌になるのだろうか。
山道には、シジミ蝶のカップルが舞う。
やはり、お盆かな。
ニャン達を連れて来るのは、春の蝶のような気がするな.....


□■■ Aug 17th

元々、Hip Hop という音楽にはシンパシーを感じないが、
黄色い猿によるなりきり物真似大会には、もううんざり。
ロックという音楽は、どうあがいても黒人にはなれない、届かないという、
白人達の憧れと敬意から、あれだけのパワーと哀愁を持ったものになり得たのである。
ひと昔前なら「Yeah」しか言えなかったであろう連中が、
今は「Everybody」を連発すれば、もう最先端だと勘違いしている。
ルーツとはスタイルじゃない。
哲学、信念がなければ、うわべのファッションでしかない。
誰も真面目に耳を傾けてなんかくれない。
3ヶ月で懐かしがられる、ダンゴみたいに。

押し売りも略奪もごめんだ
感動を押し付けるのも
他人の場所にずかずか上がり込んで感傷を分かち合おうとするのも
見せ掛けの仲間に囲まれていないと落ち着かない人達の群れでやってくれ
ここは
ひとりの人間が真面目に生きているところだから


□■■ Aug 16th

夜の11時だというのに、こんな田舎の国道に車が連なる。
いつもこんなだっけ?
それとも、帰省からのラッシュだろうか?
山の向こうの一角の空が白い。
低くたれ込めた雲が、下から煌々と照らされている感じだ。
何だろう、無気味だ。
12時過ぎに見ると、まだ白い。
1時を過ぎると、明かりは無くなっていた。
不思議に囲まれたここでの生活では、ミステリアスな光景も、
何が何でも解明しなければならないものではない。
現象そのものに感心し、感動するということが身に付いた。
都会で生まれ育ったのでなければ、その大切さにも気付かなかったかも知れない。
今、田舎の人達は、身の回りにあるものの素晴らしさを忘れかけている。
美しい流れに空き缶が浮いている。
それを見て、一番に嘆くのは、都会からの客なのだ。

NHKラジオで Rod Stewart 特集が始まったので、仕事を中断してしまった。
喉を患っていたとは知らなかった。
何でも、癌だったとか。
まだ力を入れて歌えないと言うが、あの人の場合は、卓越したフィーリングと、
言葉に対する細やかな気遣いであるから、以前と比べて劣るところは無い。
上手い歌手になることは、そう難しいことではない。
何でも習得できる優れた脳と、血を吐き続けても鍛練を休まない根気と、
同じ失敗を繰り返さない集中力、等々、人並みレベルの努力があれば達成できる。
太い声になりたければ、最近流行りのボイトレに通えばよい。
だが、 Rod Stewart には、 誰もなれない。
匹敵するものにすら、なれないという意味である。
達人とは、辿り着くもの、天才とは、生まれつくもの。


□■■ Aug 13th

忙しい.....
贅沢だが、この半分くらいの忙しさが常にあるとちょうどよいと思う。
裏庭に巣を作ったヒヨドリは、今日は姿を見せなかった。
場所を変えたのだろうか。
我々の目の高さにあるし、距離もあまりに近い。
おまけに、巣立ちに失敗すれば、キョンの餌食になってしまう。
© K. JUNO ALL RIGHTS RESERVED.
Back
show frames