三次元漂流記 2003
すずめっこ [5月のモデル; はぢめてのぼうけん]
文字通り、くちばしの黄色い雀ちゃん。
隣かうちの屋根んちの子だと思います。
初めての冒険の日。
5月20日の日記に書いてあるのは、
デジカメで撮ったこの写真と、まだ現像していない銀塩写真。
ちっちゃいので、なかなかうまく写りません。
この写真では振り向いているだけですが、
こっちを向いてにょ〜っと首を伸ばしたりしていました。
   (キャ〜ッ、のぞきスズメよぉ〜!)

□■■ May 29th

地球上のどの国の常識もわきまえない
あなたはまるで宇宙人だから語彙も当然違って
「こだわり」と言えば弁解を
「善意」と言えばエゴを
「正義」と言えば見栄を
「プライド」と言えば意地を
「復讐」と言えば証拠隠滅を
それぞれ指すようです


□■■ May 28th

又も大変な仕事を引き受けてしまった。
あれやこれやと忙しいのに、どうも現実のような気がしない。
私のことだから、きっとこなせるのだろう。
私には、自分に出来ることは判るけれど、何故出来るのかは判らない。
途方もないように見えることも、難無くこなしているみたいだ。
私の中の、私という人。

疫病という嵐。
治療法の無い病は、貧富や地位に関わらず、平等に淘汰して行く。
強くも賢くもないのに食物連鎖の頂点に立つ、資格を持たない支配者。
堕落した生き物はそんなに要らない、天がそう判断したのか。
生死を分けるのは、運。
ただ、それだけ。


□■■ May 27th

嘘つきの友達は嘘つきだけ。
不実な友をいくら多く持っても仕方がない。
犯罪者の友達は犯罪者だけ。
甘い汁を吸っていても、明日、罠にかかるのは自分だよ。
正直な馬鹿が、騙されて付き合ってしまったりする。
私も時々、馬鹿になる。
大掃除をしたところだから、取り敢えず、今はきれいなもんだ。
身の回り1メートル位の範囲に限ってのことだけれど。


□■■ May 26th

飼い犬の問題行動の多くは、人間との主従関係の誤認によって説明されるという。
自分が人間のボスだと「勘違い」する「アルファシンドローム」。
そもそも、非力で愚かな人間どもが、動物のリーダーになろうなんて、
それこそが大いなる勘違いである。
時に、人間関係に於いて同様の勘違いをしているイタイ人もいる。
人類の問題行動の多くは、
地球、そしてあらゆる生命に対する「アルファシンドローム」によって説明できる。


□■■ May 21st

時代劇の見過ぎだね。
悪事の限りを尽くし、後始末にと正直者を陥れて役所に突き出し、
口を封じて高笑いの悪徳商人と悪代官。
追い詰められては手下をどなりつけ、桜吹雪を斬れと命じる。
本当にそんな奴が存在し得るとは思わなかったよ。
そんな世界が実現可能だと信じる馬鹿が。
いや、そんな生活に憧れるハレンチ野郎が。

あんたが悪魔だと信じて魂を渡してしまった相手は、ただの人間だよ。
煩悩だらけの、ただの人間。
考えてみな、悪魔が嘘をつくかい?
あんたが天使だと崇め、焦がれている相手こそ、悪魔なんだよ。
タブーに触れる喜びは錯覚、本当の毒にシビレているだけさ。
檻の中にいるのはどっちだか、よく見てごらん。

とんでもない悪党だと知っていて
どうして
自分に都合のいい部分だけを信じようとするんだい?
どうして
盗品だと判っていてありがとうと言うんだい?
そんなのが人間の優しさなの?
そんなのが礼儀?
問い詰められた君の涙は
工場の煙の色
黒ずんだ心を薬で澄ませたり
白いペンキで厚く塗ったり
死ぬまで自分を騙し続けるのかい?

狂っている
美しいことでもなければ
同情を誘うことでもなく
芸術的なことでもない
ただ
おかしいんだ
そして
大勢の迷惑なんだよ


□■■ May 20th

玄関先の茂みに、巣立ち損ねた子スズメがいた。
土の上だから、よく観察しないと見えない。
暫く見ていると、大きな黒い昆虫を加えた親鳥がやって来たので、
慌てて家の中に入り、風呂の窓から覗いた。
兄弟らしき一群も一緒で、賑やかだ。
クチバシの黄色いのは、地面で跳ねている子だけ。
ちょっと焦って巣を出てしまったのか?
それともお母さんがスパルタなのか。
裏庭でなくて良かったね、キョンに見つかったら、おもちゃか餌にされてしまうところだ。
少し前から、予報に反して雨が降っていた。
裏庭のキョンにただいまを言う。
いや、その前だったか?
激しい雷が轟いた。
キョンは怯えて、家の中に入れてくれとせがみ始めた。
その時、母親が慌てて、キョンはどこにいるかと叫んだ。
子スズメが、路地を通って裏庭に向かっていたらしい。
どこって、キョンはパニクって、こっちにいるよ。
キョンを家の中に入れ、路地側の窓から、子スズメの冒険を観察。
どうやら、親に導かれているらしい。
おや?
あっちの窓枠でもう1羽、黄色いクチバシくんが、頼りない声を上げているじゃないか。
その窓のある部屋から、そーっと覗いてみた。
向こうも、振り返って首を伸ばし、こちらを覗き返す。
可愛い.....!
不安と好奇心の入り混じった動作。
あまりの愛らしさに、何度も覗き、覗き返され、写真まで撮ってしまった。
親鳥は、順に餌をやりながら、2羽を裏の方へと導いているようだ。
暫く経つと、路地には、もう誰もいない。
裏から声が聞こえるので見ると、垣根のバラの木に、
少し飛べるさっきの子らしき1羽がいた。
手ぶらで飛んで来た親鳥は、いつもキョンが寝そべっている辺りに降り、
草の間から幾つかの拾い物をして、バラの木のところへ行った。
少しだけ子スズメの口に入れ、後はくわえたまま、隣の裏庭へと誘導する。
雨はすぐに上がった。
.....と思ってキョンの散歩に行ったら、帰りにどしゃ降りに遭った。
キョンは、玄関でご満悦。
夕方か、明日の朝には飛ぶだろう。
それまで、天が味方をしていてくれますように。
さっきの大雨と雷みたいに。

カラスの大きな羽を拾って持って行こうとしているスズメがいた。
重くて、なかなか持ち上がらない。
何度も挑戦したが、自転車が近付いて来るので、諦めて飛び去ってしまった。
巣作りに使うんだね。
働き者だね、君たちは。
一生懸命に育てられるから、一生懸命に生きるんだね。
命がけで守られるから、諦めちゃいけないんだね。
そうして大きくなった子供たちは、いつしか親となり、
当たり前のように、一生懸命、働いて守るんだ。
生き物は、一生懸命に生きる義務があるんだよ。
権利じゃなくて、義務なんだね。


□■■ May 16th

鳥達が、いつもと違った場所に群れて、忙しそうにしている。
我々を怖がるというよりは、邪魔をされて煩わしがっている様子。
妙に数が多い。
巣立ちした子供達のお勉強会だろうか?
野苺だか蛇苺だかが、荒れ地の斜面に沢山なっている。
キョンを触った手だから、取りに行けないな。
そう言えば、うちの苺も色付き始めていたっけ。
庭の鉢よりも野生の果実が気になる、私は都会育ち、、、、、


□■■ May 15th

キョンは年に2回程度しかお風呂に入らない。
それも、さっと。
傍にいても臭わない。
小屋を覗き込んでも、哺乳動物特有の、いい匂いしかしない。
一般に「犬の臭い」と思われているのは、粗悪な餌に混ぜられた、強烈な香料。
ピヨやニャンには、申し訳なかったな。
自分のものでもない変な臭いを押し付けられて、鼻がいいのに迷惑だったろう。

「あいつは醜い、あいつは汚い、あんなのを生かしておくな!」
他人の部屋をのぞいで何を大騒ぎしているの?
窓際の鏡を指して、何を真っ赤になっているんだい?


□■■ May 14th

マンション横の電信柱は、雀達のマンション。
四角い筒から、餌をねだるヒナの声。
用を済ませて出て来る親鳥が、外の様子を窺う。
へぇ、都会の鳥は、こんな所に住んでいたのか。
昨日、仲良く並んだ小さな顔が2つ、飛び立ちたそうに背伸びをしていた。
そして今朝、ピョンピョン飛び回る小柄な鳥がいた。
何だか頼りない羽。
周りには別の部屋の住人達が遊ぶ。
そこへ、餌をくわえた立派な雀がやって来ると、大声で「お腹空いたよー」。
やっぱり!
あの子達、巣立ちをしたんだ。
自分のいた部屋を覗き込んだり、周りを跳ねて踊ったり。
暫くすると、ピューッと屋根を越えてまっすぐに飛んだ。
これから、ご飯の見付け方を、そして生き方を習うんだね。
偉いね、君たちは。
こんなに早く一人前になるんだ。
こんなに可愛いのに、甘えずに挑んで行くんだね。
当たり前じゃないかって?
そうだね、そうだよね。


□■■ May 12th

ステキチのような素晴らしい犬は、どうやって育つのだろうと考える。
確かに、お手もお座りもできた。
それは、初めて会った日に、どういう犬なのか知る為に試したものだ。
他にも色々できるのだろうが、その日以来、彼の「芸」を調べることはしていないので判らない。
あの義理堅さ、優しさ、強さ、賢さ、リーダーシップ、
人間が教えてどうこうというレベルではない。
言わば「本能」なのだろう。
自制は本来、本能である。
種族を、そして己を守るものである。
理性は、本能の一部なのである。
「生」と「死」の関係と同じく、相反するものではない。
ヒトとは、本能としてそれを生まれ持たない不可思議な生き物である。
如何にも不自然な二字熟語で押さえ付けなければならない程に、
我々の欲望は深く、果て無いものなのである。

「行間」は、書き手の思う程に正確には伝わらない。
手紙よりもお手軽でありながら、電話や対面よりも理論を組み立て易い、
冷静に見えて、刹那的なメールという方法。
「伝達」の手段として過信するのは、かなり危険である。

人に話を聞いて貰えない子にその機会を与えられるのは素晴らしいことだと思う。
しかし、それは「苦肉の策」に近いものと認識されなくてはならない。
押さえられた人格を解放する唯一の場としてはならない。
はけ口があるからと言って、現実世界に於いて何らかの解決が得られたことにして、
問題を放置する言い訳として利用すべきではない。


□■■ May 6th

他人のロープをぞろぞろ上がって来る。
欲深くも、切り離して独り占めかい?
おやおや、まっさかさま。
争いながら必死にしがみついているそれは、本当は蛇さ。
持ち主じゃないから、判らないだろう。
あばよ。

キョンの体からフィラリアが消えた。
早かったね。
お前の元気のお陰。
ちょっとだけ、私の勉強のお陰。

お散歩道、畑からの小道で、気が付くとキョンがひもを振り回していた。
ひも???
背中についているぞ。
同じ位の太さと長さと言えば、考えられるのは、、、、、
こらっ、離しなさい!
同体の真ん中を咬まれた蛇が、ぐったりと横たわった。
跳びかかった様子は無いから、地面でひなたぼっこでもしていたのかも知れない。
可哀想に、眠りから覚めたばかりなのに。
この時期、蛇達は、いたずら犬達のおもちゃ。
厳しい寒さの後の春。
多くが生まれ、多くが死ぬ。
繁殖の機会を巡って、争い、尽きる。
楽園だと思うのは、お気楽な人間達だけかも知れない。


□■■ May 2nd

このロープが蛇に見えるのかい?
何をしでかしたんだい?
怖いのかい?
天罰に見えるのかい?
ロープを置いたのは誰だと半狂乱で叫ぶお前を
誰もが奇異の目で見るよ
ただのロープがそんなに不吉なものなのかと
首を傾げているのさ
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