三次元漂流記 2003
雀のマンション [4月のモデル; 都会の雀はマンション住まい]
5月中旬。
賑やかなさえずりが聞こえるなと見上げれば、
人間用マンション脇の電柱に、雀のマンション。
四角い筒の両端にそれぞれ別の部屋があり、1本に2家庭が住めるようです。
住人のいる部屋は中にワラなどが詰まっているので判ります。
透けて灰色に見えるのは空き部屋。
穴から出て来る親鳥を拡大してみましたが、
丸い頭に白い模様のほっぺた、判るかちら、、、くるちいわね〜〜〜。
この翌日、302号室から子雀兄弟が顔を出して外を眺めていました。
そして次の朝には、部屋の外に出て遊んでいました。
時々、親鳥に餌をねだっていましたが、ビュ〜ッ、
と、上手に遠くへ飛んで見せました。
この時期、布団を干していると、間にワラが沢山入っていたりします。
せっせと作ったマイホームを壊してしまうのは、何だか申し訳ない.....

□■■ Apr 30th

ザリガニに出会わない。
去年、猛ダッシュするキョンとステキチに傍をかすめられ、
驚いてハサミを高くかざしていたのは、もっと後だったのだろうか?
さくらを見ながら川を上った時は、雨続きで流れが早くなったせいか、
魚が少ししかいなかった。
水も増していたので、去年のように飛び石を歩いて渡ることも出来なかった。
そのせいだろうか?
生き物が減っているのでなければよいのだが。
螢の数は、間違いなく、著しく減少している。
今年も、網と袋を持った人間達が、無抵抗な彼等を捕らえに来る。
子供でなく、欲深い中年達が。
自然のありがたさ、大切さを教える立場にある、彼等が。


□■■ Apr 29th

隣の親子犬の世話を頼まれた。
今回は1週間近い。
ご飯にお散歩に、この機会に周りを掃除したり、食器を洗ってあげたり。
大変だけれど、嬉しい。
毎日、お外に出たいよとか、うんこがしたいよ、
なんて延々叫んでいる悲愴な声を聞きながら、心配したりなくて済むからな。
お腹は虫だらけだから虫下しを呑ませて、ご飯もうちのに変えてあげた。
下痢が治って、気持ち良さそうだね。
あと、体表の寄生虫を退治すれば、耳のただれや目やに、みんな治ると思うよ。
ご飯を変えて貰えるように、言ってみるね。
去年、チビ達の為に作った資料があるから。

放ったらかしにされて、表情が乏しくなっていたね。
通りかかる度に話しかけて、おやつをあげたりしていたら、少し笑ってくれるようになった。
この間、よしよししに行ったら、大口を開けて歓迎してくれたね。
そして今週はお散歩にも一緒に行くから、すっかり仲直りさ!
これからも元気でいてね。
よその子の健康を守るのは、とっても難しいことなんだけどね。
君達のこと、好きだから。


□■■ Apr 24th

魂を売ったんだって?
冗談だろう。
そんなくっさい魂、買う奴なんているもんか。
詐欺に遭ってるのさ、あんた。
悪事を積み重ねても、願いなんて叶わない。
罪が増えて行くだけさ。
嫌われ、裁かれ、惨めに横たわったあんたの横に現れたそいつは、
「私がいつ、悪魔だなんて名乗りました?」
なんて意地悪く笑い、さっと消えちまうだろうよ。

冬に食欲を増したキョンは、重くなった。
迷い込んで来た時はガリガリで、足を痛めていた。
何だか細長い、冴えない犬だった。
不思議なことに、汚れたまんま連れ歩いても、いつも「いい犬ですね」と言われた。
今では、ダダをこねながら歩くせいか、後足ががっちりと逞しくなった。
太い胴に引き締まった腰、長い首に乗った小さな頭。
体にしては細めの口と、切れ長の目、大して手入れしないのに、つやつやの茶色い毛。
鼻に残った、今は亡きステキチの咬み痕が笑えるけれど。

「いい人」は、悪いことはしないだろう。
「いい人であろうとする人」は、悪いことをしてしまった時、直ちに改め、詫びるだろう。
「いい人の振りをする人」は、悪い行いがバレた時、
嘘を重ね、人を陥れ、「いい人」の顔を守ろうとする。
「いい人」からは程遠い、悪人そのものである。
己自身をも騙し遂せる域に達している場合、それはもはや習癖を越えた、病かも知れない。

「いい人」であるということは、地味なことである。
なかなか見た目には判らない。
私が「いい人」だと言われる時は、たいがいは「おせっかい」な時である。
「いい人」と呼ばれる為には、
殊更に言いふらしたり、強調したり、恩を押し付けたりせねばならない。
時には罪まで犯して手に入れるものらしい。
「あんないい人が!」という人に悪人が多いのは、そのせいなのだろう。

欲望に操られる者は、理性ある者を疎み、妬むようである。
物事が思い通りで御満悦の時の高笑いと、気に入らない事があって興奮した時の狂乱状態、
その極端な変化が馬鹿殿みたいで面白い。
権力や名声に心を奪われた者をしばしば襲う、社会的致死率の高い病である。
ことごとく話の辻褄が合わないのが特徴である。
時に、夢が叶ったような幻覚を伴う。

「我慢してます」と言うのは、涙を見せているのを同じこと。
耐えていることにはならない。
健気に見える女は、実際に健気な女よりも、当然、魅力的に映るものである。
太ももを見せるかどうか、それは本人のプライドの問題である。

「罪がない」というのは、罪の意識がないだけ。
「無知」は知ろうとしないだけの、怠けもの。
自覚を持っているなら、開き直っている確信犯。
後であやまったって、前科者。
己を規制して生きて行くのは、ある者にとってはとても難しい。
殆どの者にとっては、できない人間がいるとは想像し難い程、当たり前のことであるが。

とても不思議なことがある。
法律を言い訳でくぐり抜けられるつもりの人がいるという事。
国民としての権利を手放さないままで。

「どういう教育を受けたのだろう」と不思議にさせる行いをする人達がいる。
幼児のような大人。
まともな親なら、こんなことをしたら小学生でも叱るぞ。
そもそも教育などしなかった、それも考えられる。
余りに幼いうちに「個性」や「意見」を尊重してしまったのかも知れない。
正当な批判が、打ち勝つべき「逆境」に思えてしまう。
善悪の判断ができない。
欲しいものが我慢できない。
或いは、厳しく教育されたのかも知れない。
「これをやると叱られる」で育てられると、
人の顔色を伺ったり、相手によって態度を変えたり、陰でこそこそやったりするようになる。
「バレない=OK」となってしまうのだ。
仔犬の躾と同じだな。


□■■ Apr 21st

キョンは今日もモテモテだった。
大きな犬や、ライバルっぽい雄には吠えたりするが、
自分よりも小さい子には、雄雌問わず優しい。
ステキチの子分だけあって、涼し気な目、精悍な顔つき、たくましい体、
何と言っても男前だから、雌犬にモテるのは納得できる。
しかしどうも、雄にも人気があるらしい。
人間の目から見れば少々、怖いかも知れないお前が、平和を愛する生き物だということを、
同じく平和を愛する仲間達は感じ取るのかもね。

「いじめは、受ける方にも原因がある」
などというのは、
「強盗に入られる奴が間抜けなのだ」
というのと同じくらい、馬鹿げた認識である。
耐えて生きたって、頑張って何かを成し遂げ立って、他人に盗まれるだけ。
毎日が地獄。
本人には何の罪もない。
味わったことの無い人間に理解できる筈は無いし、
気付かずに利用して育った人間達に、あれこれ語る資格など無い。
当てにならない馬鹿な大人達に失望するな。
闇は永遠に続くように思えるだろうが、負けるな。
必ず、運命を己の力で破壊できる時が訪れる。
言葉を発することができるようになった正義感の強い君を、世間は疎むだろう。
相変わらず君を利用し、陥れるだろう。
戦いは一生、終わらない。
それこそが運命だ。
だから、負けるな。
死ぬな。
醜い奴らを刺したりするな。
ひねくれるな。
何の落ち度も無い君が、汚れてしまうな。

昔は、天才なら何だって許されると思っていた。
能力があるなら、人格に問題があっても、凡庸な善人よりも使えるんじゃないかと。
大きなスケールに限らず、例えば、アマチュアバンドのメンバーなんてレベルの話でも。
しかしながら、才能以前に口の聞き方を知らないのや、人の話を聞かないの、
そんなのとは、いくら適当に能力があったとしても、一緒にいられないと最近は思う。
疲れ果てて、余計なことにエネルギーを奪われたくなくなったのかも知れない。
ましてや、礼儀以前に常識の無いの、善悪の判断の付かないの、極端におかしなの、
体験したことでも聞いた話でも、多過ぎやしないか。
この世界で、普通に仕事をしている普通の人を見ると、必要以上に安心するよ。
まともに、普通に、正直に生きるって、そんなに難しいことなのかい?
業界が人を狂わせるのか、狂っているから向かう世界なのか。
「業界」を言い訳になんてできないよ。
人間界に於けるルールが先なのだから。
醜い人間の皮を被って商売を続けるんだったらね。

歌って踊って有名になることが「夢」だなんて、なんてさもしい時代なんだ。
人知れず積み重ねられる努力の尊さは、
ただの悔し涙やありきたりの感動に負けてしまうものなのか。

平気で嘘をつく人というのが、我々、普通の人間には理解できない。
何かの事件をきっかけにそうなってしまったのか、
嘘つきの仲間に囲まれて、世界はそんなものだと錯覚してしまったのか、
それとも、そんな遺伝子があるのだろうか?


□■■ Apr 20th

帰宅する度、チビ達が足下に鈴なりになった。
早朝からおしっこさせて、運動会やって、鹿の子ちゃんのお散歩に行って、
それから仕事に出かけ、早く帰って来られたらキョンのお散歩。
頼もしいステキチが、いつも護衛してくれる。
そんな1年前が、とても遠い。

ニャンが咲かせる白い花は、スノードロップでなくて、スズランスイセン。
うつむいた可憐な花弁の6つの先端近くには、草色の控えめなマーク。
覗き込むと、雌蕊の先にも同じ色。
時に、上を向いている陽気なのもいる。
年々、背が高く生い茂り、今年は3度目の春。
ニャンが自由に歩き回っていた庭の階段の下。
窓からは尻尾が見えるから、居場所が判る。
お前がいなくなってからは、色んな子がやって来て、穴を掘っては休んでいたよ。
今では、外に目をやるだけで、お前の花がここから見えるんだ。
そろそろ、実を付け始めているね。
下のノースポールに日が当たらなくなるといって、
種になる前に刈り取られてしまうから、又、来年までお別れだ。
今朝、牡丹が咲いた。
ピンクの大輪。
でもね、花だけじゃ、つまらない。
一時でも、君たちがいなくなった庭は、下りて行く理由すら見付からない。


□■■ Apr 10th

侵略が悪だとは言わない。
人の本能だから。
群れる理由だから。
大掛かりな仕掛けを作って、金を掛けて宣伝して、茶番見せてんじゃねぇ。
そこが頭に来るんだ。
下手なシナリオに最低の芝居、みんなうんざりさ。
あんたの国じゃ、通用してもね。

ピヨのことを思い出していた。
気高く、賢く、誠実な犬。
傍にいた筈なのに、何もしてやれなかった私に、文句も言わず、すがるように泣いただけ。
もう一度、抱き上げてやりたい。
ニャンは、見送ってやれなかったのに。
亡骸でもいいからと、苦しんだ日々が嘘の様だ。
時が過ぎたからではない。
同じ目をした犬がいるから。
性格も、大きさも、色も、生別も違う、お前の顔を持った犬。
きょんを可愛がることは、お前を可愛がること。
私の中、そして宇宙に於ける全ては、お前があってこそ存在し得るもの。
お前がいるから、真実が見える。
そして、真実しか見えないんだ。
スズランスイセンは、一段と背が高く、草色の斑模様の白い花を沢山つけている。
今年も、姿を現したね。
確かに、そこにいるんだね。


□■■ Apr 9th

戦争は続く。
負けた事の無い国。
永遠に終わらない。

「盾」ではない、武器である。
ボランティアではない、外国籍の兵士である。
軍事力として「配置」されている彼等が、どうやって攻撃を阻止できるというのだ。
善意を悪用されること程、無念なことは無い。

信じてくれとわめく。
これだけは真実だとか。
やかましいよ。
その1つの単語、或いは1文だけが本当であったとして、何の意味があるんだい?
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