三次元漂流記 2002
[11月のモデル; 続・謎の地上絵] 謎の地上絵
さて、前月で公開した地上絵は大きな反響を呼んだが、
右は、その一ヶ月後の写真である。
一帯に張り巡らされた柵が我々、研究班の侵入者を頑なに拒んでいた。

辺りには、依然として人の気配はない。
勿論、動物の影ひとつ、見あたらないのである。
間もなく、この地は雪に閉ざされ、謎は氷の奥に封印された......

□■■ Nov. 30th

己の不正直に気付くのは難しい。
気付いても、認めることは簡単でない。
「誰かの為に......」「状況がこうだから......」
誰かの為だろうが、状況がどうだろうが、嘘は嘘。
正直は、ひとつしかない。

己の為に嘘を付く人は、己にすら誠実でいられない人。
幼児のような言い訳を繰り返す。
その姿は実に哀れだ。

ま、いっか......
良心を持たないものに関わっていては、時間も心も擦り減るばかり。
勿論、赦す理由はないけれど。
大事な友たちに手を振りたいけれど、煙に隠れて見えやしない。
たったひとつの悪の存在が、周囲を真っ黒にするなんて。

悪魔の館を潰してしまいたいけれど。
私の魂を解放したいけれど。
君が住んでいる。
怖がりもせず、平穏に暮らしている、君がいる。
壊せないから。
せめて、囚われの魂の世話をしてくれないかしら。

いじめちゃいけません。
泣かないからって、いじめちゃいけません。
その子が泣かないのは、悲しくないからじゃないんだから。

みんなの世話をしているような顔をしている人の世話を私がしていて、
みんなにお世話になっていますという人の世話に私がなっている。
この世は、あべこべ。
今度書いた共作の詞は、形と色と影があべこべの歌。
人に失望すると、人類が終わる歌になってしまったし。
いい経験も、悪い経験も、肥やしになってしまうとこがまたやらしい。
純粋に喜んだり、悲しんだりしたいね。


□■■ Nov. 24th

白昼堂々の犯罪が増えたのは、顔を出さずに何か出来るという勘違いと縁遠くは無いのだろうな。
インチキ手品に超能力ショー、女装ダンス。
いつまでたってもド下手だな。
面倒臭いからって、手を叩いて見てあげているからだよ。


□■■ Nov. 20th

日本は、世界的に見ても珍しい「無宗教」の国である。
他の生活様式や文化を尊重するのが極端に苦手であるのは、そのせいであろう。
むしろ、神仏など信じずに、さほど優れてもいない科学を盲信することが賢明であるとされる。
自らを進んだ種と信じ込み、優越感に浸る姿は滑稽でもある。
集団催眠的なカルトの性質を帯び、閉ざされた部族に於ける因習などにも通ずるそれは、
「無宗教」という名の宗教であると言える。


□■■ Nov. 17th

何かちらりと見たNHKの学校ものみたいな番組で......
「お前達、自分でやっていないことを褒められて、嬉しいのか?」
「そりゃ嬉しいじゃん! 自分でやらないのに褒められたら、得だもんね ♪」
なるほど。
そうなんだ。
そういう人種もあるんだね。
プライドや恥でなくて、損得か。


□■■ Nov. 11th

誰もが疑っている。
それが、答えだ。
今回はあなたの仕業なのかどうか、それは大きな問題じゃない。

悪がはびこるのは、それを利用する人間がいるからだ。
悪人の店だって、「安いから」とか「欲しいから」と言って、買うだろう。
利益になるのなら、知り合いでいようとするだろう。
そうして支援しておきながら、正直者の顔をしている一般人が大勢いるからだ。


□■■ Nov. 2nd

ツイていなかったのか。
今朝は勘違いで、一時間早く起きてしまった。
折り畳み傘を見付けられなかったが、曇という予報を信じて家を出た。
帰り、これを逃せば一時間位、乗り継ぎが無いぞという電車に、ダッシュで乗り込んだ。
放送を聞き違えて、一駅手前で降りてしまった。
朝、乗り継いだ駅に構造が逆だがそっくりだったので、気付かずに改札の外に出てしまった。
仕方なく、切符を買って次の電車に乗った。
雨が激しくなっていたので、
あまり外を歩かなくてもいいようにと経路を変更し、途中で急行に乗り換えた。
すると、斜め後ろで英語の試験勉強をしていた高校生らしき男の子2人が、
不意に私の名を口にした。
2、3度言ったから、間違い無い。
「K. JUNO」が「まだ」何かに「載っている」らしい。
何なんだ。
こんなローカルな場所で、しかも高校生が......
振り向いて、「何に載ってんの?」と訊く度胸は無かった。
進路変更はしたものの、自信が無かったので、またまた経路を変え、
よく知っている次の駅で降りて、途方に暮れた。
路線は幾つか通っているが、この時間、乗り継げる電車が判らない。
結局、最初の電車に乗り遅れて一時間待った場合に乗り継いだであろう電車に乗ることになりそうだ。
時間は滅茶苦茶にある。
飯でも食って潰したいところだが、夕方、軽く食べていたので食欲も湧かない。
雨はじゃじゃ降りになっていた。
コンビニが無い。
やれやれ、とんでもない出費だな、と思っていたら、百円ショップがあった。
傘を探すのに、結構時間がかかった。
乗り継ぎ駅へは3分程で着いた。
10分待って電車に乗れば、家の最寄り駅までは5分。
はぁ、長かったな。
何だか不運の連続の様な感じだったが、それも何かの巡り合わせかも知れない。
間違わずに乗り継いでいたとしても、
あの時、雨で無かったとしても、
又、諦めて最初から一時間後の電車に乗っていたとしても、
先程の高校生の乗っていた急行には乗らなかったのだろうから。
雷の中、私の他には誰もいない薄暗い駅に滑り込んで来た電車。
よく見える位置に立っていないと、素通りされてしまいそうな気がした。


□■■ Nov. 1st

好きな事をやるのは、別に美しい事でも何でもない。
そして、悪い事でもない。
責任や義務を先に果たしていて、尚かつ、他人に迷惑を掛けないのなら、好きなだけやるといい。
その程度のもの。

人としてのルールを守れない、社会化のできていない大人が多いのは、
「個性を尊重」する国家方針の成果だろうか。
「在宅ワーク」の流行は、その原因か、結果か。
© K. JUNO ALL RIGHTS RESERVED.
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