三次元漂流記 2002
[7月のモデル; まだまだ続く、未確認シリーズ?!] 今度はハチかよおい
今年の春頃だったか、
部屋の横のベランダに落ちていた。
ふさふさした金色の細かい毛が残っている。
中はがらんどうで、昆虫の抜け殻っぽい。
手前に写っているのが、ほぼ実物大。
太く、尖っているのはお尻の針みたいで、
カッコイイがちょいと不気味......

□■■ Jul. 31st

景気のいい花火大会だったな。
キラキラと色を変えながら、空の一部を宝石箱のように飾っては消える。
と言っても、私の知っているのはアイスの"宝石箱"くらいだが。
そのアイスだって、我々にとっては充分、金持ちの食いもんだった。
何たって、花火はタダだもんな。


□■■ Jul. 29th

ファストフード星人よ。
お前の魂胆は判っている。
「お温めして宜し"かった"ですか?」
などと訊くのは、
「お砂糖要らないんだっけ?」
と同じ雰囲気を醸し出そうとしているのだな。
いつもご利用ありがとうございます、よもや初めてのお越しなんて事はないのでしょう、
えーと、お客様のお好みはこうでしたっけ?
と、さりげない親しみを演出したいのだろうが、充分に馴れなれしい。
初対面の人に、「私って〜〜な人じゃないですか。」と言われる気分だ。
ここではっきり、言っておく!
わたしゃ、あんたの顔見るのも、ここで朝飯食うのも初めてだ。
何しろ、ドーナツ屋にドーナツ以外のメニューがあるのを知って、びっくりしているんだから!
......な〜んて言っていたら、今朝のお姉ちゃんは、「温めて宜しいですか?」と、まともだった。
ちょっと、おっとりし過ぎだな。
昨日のお姉ちゃんは、さすがに客の返事を訊く前に温めてしまうだけあって、てきぱきとしていた。
「こちらでお召し上がりでしたら、一緒にお飲物は如何ですか?」
と訊かれ、元々注文するつもりだったミルクを頼んだのだが、
あの勢いだと、「飲み物は要りません。」と断っていたとしても、
勝手にレジを打ってしまっていたかも知れないな。
あっぱれ、せっかちなお姉ちゃん。
「毎度ありがとうございます、ごゆっくりどうぞ♪」
いやいや、君の前では、なかなか気を抜き難いものがある。


□■■ Jul. 28th

遂にやられてしまった。
朝、入ったファストフードで、「ジャーマンポテト何とかはお温めして"宜しかった"ですか?」
こういう妙な日本語に慣れていない私は、「えっ、いつの間に温めたの?!」と、その早業に驚いた。
それは、お伺いを立てる前に、勝手に行動を起こしてしまった時の表現である。
次の瞬間に、その壊れた日本語を取り上げたお笑いのネタを思い出し、文の意味を理解した。
これは接客用語などでは断じてなく、ただの間違いである。
"過去形は婉曲を表す"程度の半端な話を聞きかじった程度の人間が提案したのだろうなぁ。
だが、今時の高校生などは正常な日本語を知らないのだから、
これを"丁寧"な表現であると思い込んでいたりするのではと、心配でならないよ。


□■■ Jul. 27th

キョンの故郷が見付かった。
同じ体つき、色をした群れの犬達はみな、動物園のライオンのように、
思いおもいの場所に寝そべっている。
キョンは家族と一緒に、物置の下にいた。
手前の右側にいるお父さんは左とん平、
柴犬っぽく、短い口をしているが、赤茶色い毛はキョンにそっくり。
同じく左側には、同じ色形ながらも少しお母さんっぽい顔立ちの、泉ピン子がいた。
現実のキョンよりも体の小さいキョンは、奥で腹這いになってこちらを見ている。
変な夢だった。
犬にとって安らぎとは、何なのだろう。


□■■ Jul. 26th

機械による音程補正、まぐれ当たりの継ぎ接ぎ、カスケイド...... etc、その他、数々の下らないこと。
その人達は仕事でやっているんだよ。
アマチュアの君に、誰もそんなことは頼みやしないのに。
そんな事も判らない君の場合、
仕事を貰う為に脱ぐ役も辞さない役者を見て、
演技とは脱ぐことだと思うのだろうね。

ただ、良し悪しを述べただけで"誹謗中傷"というのなら。
ならば、言われた人はどんなに無能なのだろう。
素行を報告しただけで"陥井"というのなら。
ならば、言われた人はどんな悪党なのだろう。
富士山が汚いのは、ゴミを見付けた人が悪いのではない。
ゴミを写したカメラが汚れているのでもない。

私に挑んでも無意味だよ。
丸腰の私の背中を狙っているあんたの武器は、他人からくすねたものばかり。
私のも沢山、あるね。
第一、あんたは自分で闘わない。
私が前を向くと、すぐに白旗を振るしね。
本当は味方が一人もいないことにも気付いていない。


□■■ Jul. 25th

才能とは人に衝撃を与えるものだ。
「何とか使えるかも」「悪くないな」「売れるかも」「手直しすれば何とかなるだろう」
今時のプロデューサーの仕事は主にゴミ箱あさり。
それを見たプロ志望のアマチュアの勘違い。
プロフェッショナリズムとは、埃にまみれて目が濁っていても我慢できることじゃないよ。
君の針も、他人の走るマラソンで振り切れてしまうのだろうな。

たとえアレサ=フランクリンを知っていたって、君達の歌はR&Bじゃない。
技術やセンスの点で及ばないのは言うに及ばないのだが、
たとえどんなに上手くても、白人がやれば"Blue Eyed"と呼ばれてしまうのだ。
誰もソウルだとは認めてくれない。
当然だ。
白人には黒人として差別を受けた経験のある筈が無いから。
POPSに於ける音楽のジャンルとは、精神及び文化によって分類されるものである。
外見ではなく、質なのだ。
R&Bやソウルと言った音楽には、単なるrockとは違う、異文化を受け入れない壁がある。
それ故の白人達の憧れ、敬意なのだろう。
とにかく、R&Bを本気で名乗る日本人には、実はその真似事すら出来ないのである。

個性、個性、ってうるさいな。
じゃあ、寝転がって、いびきかいて、はなちょうちんふくらませながら歌ってみな。
間違いなく、とても"個性的"だから。
何を笑っているんだい?
君達はそれを、大勢の人の前でやっているんだよ。

先生が"個性"を連発したら、裸足で逃げだしなさい。
基礎も授けずにそんなまやかしの言葉で誤魔化すなんて、
やる気がないか、能力がないか、間違いなくどちらかだ。
教える順序も知らないなんて、先生じゃない。


□■■ Jul. 24th

人を楽しませるのは、そう簡単なことじゃない。
気のいい人達に「楽しかったよ」と言って貰って気を良くしているのだとしたら、
楽しませて貰っているのはどちらだろう。

すごいでしょ、と、粘土細工を見せるあなた。
もう、判っているから。
あなたの腕の確かなことと、センスの悪いのは。

名人が何故、その素材を選んだか、教えてあげようか?
それは、腐っていないから。
それだけ。
極上である必要も、稀少である必要もない。
何故?
名人だからさ。
腐っていては駄目だがね。
普通の目には見抜けないかもね。


□■■ Jul. 23rd

"ゆとりの教育"って何やねん???
義務教育なんて、ゆとりだらけやないかい。
本当に余裕を持たせないのなら、もっと時間を有効に使って基礎をしっかりと教え、
応用を楽にしてやる事を思い付きはしないのか。
ただでさえ、自分や、自分の好きな人の為にしか苦労できない人間が増えているというのに。
朝から晩まで机に向かう集中力が無くて、どうやって自分の道を切り開くの???
自分との闘いなのに、"受験戦争"なんて言葉で被害者面して、何でも人のせいにして。
何が"夢"よ?!
難しいこと、面倒なことは、全部、人にやって貰うのかい。
もう、沈んだ方がいいね、こんな未来の無い国は。
我慢の出来ない子供や、しつけを放棄した親に媚びを売る。
そんな下らない事の為に、勤勉な子供達の"学ぶ権利"を侵害しないで貰いたいものだ。

日曜日、知り合いのライブを見に行った。
何年ぶりだろう、ライブと呼んでいいライブは......
いるんじゃないか、まともなバンド。
"MP3アーティスト"なんて訳の判らんものが流行り出す前は、
演奏能力以前の"ビジュアル"バンドなんてものが全盛だった。
その前は、地元出身の人気バンドの真似みたいなのばかりが人気を博していた。
カラオケよりもひどい世界になってしまったのだと、すっかり遠のいていたが、
そうでないライブハウスもあったのだろうか......
学生時代は、私がミュージシャンを名乗る、というより目指すなんてとんでもない、
しちゅれいしました、おととい来ます......
などと、謙虚にさせてくれるような人達が当たり前のように出ていたものだ。
"情熱"だけでなく、力も持っている。
そういう人達の演奏を久しぶりに聴いた。
同時に感じたのは、音が良いと、上手く聞こえるもんだということ。
しかも、本人の意図が判らないから、下手なのか計算なのか、よく判らない。
加えて言えば、失敗しても流れてしまうライブでは、上手く行ったような錯覚に陥ってしまう。
客も、いちいち指摘しない。
何となく良ければ、それでいい。
下手なのに場数を重ねるほど危険なことは無いと、改めて思った。

勉強の足りない人に経験を積ませようとする先生は、どう考えても教える能力があるとは思えない。
"慣れ"を"成長"と勘違いしてしまうし、まともに出来ないまま繰り返す事で、悪い癖が付いてしまう。
しかも、麻痺して、欠点すら自覚出来なくなってしまう。
挙げ句の果てに"個性"などと言い始めたら、もう取り返しが付かない。
いい事はひとつも無い。
そんな事も判らない人に教わっているのなら、今すぐ、裸足で逃げるべし。
出来ていないのに褒めるのは論外である。
客観的に見られない先生はダメ。
入れ込んじゃう人には無理なのである。
批判は無視、お世辞しか耳に入れない。
とは言っても、生徒の出来が悪い真の原因は、
目利かずがあちらこちらで平然と指導者の看板を掲げていることだが。
悪い先生は、生徒を上達させられないのではなく、下手にしてしまうのだ。
この深刻さを、"教える"側も教わる側も理解していない。
そもそも目が利かないから、下手にしてしまっていることにも気付かないのだが......


□■■ Jul. 20th

心配していたのに、拍子抜けだよ。
自分の夢の為に悪魔に魂を売った、あの子の度胸に感心していたけれど。
まだ天使の翼を離そうとしないなんて。
そんなに欲張りだとは思わなかった。
しかも記憶喪失になってしまったのかい?
護衛の矢を見て、眉をひそめているよ。

君がいる。
全てを見ている、君がいる。
この異常な体験が全て現実であると証言してくれる、君がいなければ、
「お前はイカレているんだ。」
そう信じ込まされてしまったかも知れない。
君がいる。
それは、私がいる、ということ。
そして、私がいるから、君がいる。


□■■ Jul. 19th

不誠実な者どもは、正直者を精神異常者に仕立てたがる。
だが、彼の言動が首尾一貫していること、誰に対しても同じ基準で物を言うこと、
自分に甘くないこと、言い訳しないこと、これらを見ている者達には、
誰が嘘つきなのか、一目瞭然なのだ。
すると今度は、抹殺しようとしたり、抱き込みにかかったり、もう大変なのである。

あなたは、礼状を持った捜査官ではありません。
大先生ではありません。
白馬の王子でもありません。
ただの人です。
煩悩だらけの、ただの人。
とても他人の手本にはなれない、ただの人。
取り返しの付かない過ちを重ねながら、尚、赦されて来た、
愚かで卑怯な、ただの人。

「不正を嫌うあなたを、犯罪者は怖れる」
と言ったね。
だから、私が怖いんだね。
気付いているのは、実は私だけじゃない。
世の人はそこまで馬鹿じゃない。

また、嘘をついたね。
あなたは弱いのではない。
狡いんだ。
それは、意志の力ではなかなか直せない、"弱さ"よりもずっと悪いこと。

或る意味、下手そのものには余り罪は無い。
問題なのは、目の利かない"評論家"達、素人耳の"専門家"達、言いなりの業者達。
彼らが日本をダメにしているのだ。

癒されたいね。本当の意味で。
"癒し系"商品、"癒し系"の人、"癒し"ジャンル......
どれも私をイライラさせるばかり。
ペテンだらけの世の中、それこそが、私の神経を擦り減らすのだ。


□■■ Jul. 18th

この世界は異常だ。
一般社会に出て、一人の大人として成立する人がどれほどいるのだろう。
本当に異常だ。

ヒナ達よ
大きくなっても子供の顔をしておいで
くちばしのはじの黄色いまんま
大きな口をあけて
頼りない声でピーピーお鳴き
苦労しないで生きて行ける
楽しく愉快に暮らして行ける
心すさむことも無いだろう
小じわを気にすることも無いだろう
親鳥達が飢え死にしても
可哀想にと誰かが餌をくれる

自業自得。
何と素敵な響きだろう。
自分の過ちに対してしか、責を負わなくていいなんて。
出来る人間が損をする、我慢強い人間が馬鹿を見る、そんな社会は最低だ。
平等など、あり得ない。
人といたって、損をする以外のことは起こらない。
群れるのは大嫌いだ。
与える一方、奪われる一方の人生なんて、飽食のこの国に於いて何の意味がある?!
Give and Take なんて、あり得ない。
水は下から上へは流れないのだから。

「お互い様さ」
よだれを流しながらハイエナどもが言う。
お前達が、私に何をくれた?
失せろ。
お互い様と呼べる獣達の所へ行って、獲物を横取りし合うがいい。
だが、私の前に二度と現れるな。

嫁と姑の確執を、女の世界のトラブルであり、他人事だと思っている男は愚かである。
それは、今なお、未開のこの国に憑いて離れない、封建社会の亡霊、
性差別の現存する動かぬ証拠なのだから。


□■■ Jul. 17th

趣味でやってる日曜大工のおやじが職業大工を指して
「ものを作って金貰おうなんて、セコイよね〜」
なんて言ったら
100%、金槌で殴り殺されます

独りで歩いて発見したこと。
"コネ"というのは、一般に思われているように仕事を手に入れる為に使うものではなく、
実力に付いて来るものなんだ。
電話やFAXと同じ。
丸腰で闘えない奴には、あっても仕方の無いものだ。

弁解、陥井の為に理屈をこね回していたら、いつの間にか自分自身を否定している......
そんなマヌケを最近、よく見掛ける。
仕方ないよ、本物であったかも知れない部分まで、自分で嘘だと言ってしまったのだからね。
信用も仕事も友も失い、見回せば物乞いしかいない。

受験指導に幼児教育、歌唱指導...... etc。
"先生"なんて死んでもやらねーぞ、なんて思っていた割には、そう呼ばれる仕事が多かったな。
その経験を通じて思うことは、"指導"とはその名の通り、
目的の場所へと導き、確実に連れて行くことだ。
時間が来るまで、知っていることや思い付く話を並べていることではない。
自称"指導者"は星の数ほどいるが、本当にそう名乗る資格のあるのは、そう多くはない。

「やっぱ戦争はいけないと思いまーす。」
日本のアイドル達の言葉には、
軍役を控えた台湾や韓国のアイドルの語る"平和"とは全く重みの違った、
他人事の響きがある。
"自己表現"ブームの為か、自分のことしか言えないことを恥じる様子も無い若者達。
「好きよ、好きよ、会いたいわ。」
せいぜい、「夢をあきらめるな!」
誰にでも出来ることしか出来なくて、何が"アーティスト"だ。

教育だの、発掘だの、偉そうに語るんじゃないよ。
てめぇらの出来ることと言えば、「出来ちゃった」ものを「売る」だけだろが。
「才能」なんて言葉をちらつかせて、堅実な若者をたぶらかすんじゃない。

「何でもやります!」
......というのは、何でも出来る人の言うことだ。
「好きで仕方がありません!」「楽しいことがやりたい!」「仕事を下さいっ!!!!!」
ボランティアじゃないんだよ。
他人の手を煩わせなくてはならないのは、"仕事"とは言わない。
アタマ痛くなる。
他人様の神聖な仕事場を、遊園地と勘違いして子供を連れてずかずか踏み荒らす......
そんな大人達の図々しくでかい体が邪魔だ。

至ってシンプル。
ふしだらな女、ハレンチな男、そして何よりも嘘つきが嫌い。
厳しいことは要求しない。
それから、我が儘な子供も大嫌い。
そういう人達とは、無理には付き合って来なかった。
そんなことをせずに来られたのは、もしかしたら幸運だったのだろうか。
これからもするつもりは無いが......


□■■ Jul. 16th

さようなら。
惜しい人をなくしました。
花や蝶に興味が無いと言いながら、
花と蝶しか見ていなかったのが原因で、崖からまっさかさまに落っこちてしまったのですから、
下に行って、鼻の下の長さを測ったりするのはやめてあげましょうか。
さようなら。さようなら。
あなたの渋とさは知っているけれど。
もう、這い上がって来ないでね。

最高の食材を生ゴミにしておいて、今度は不燃ゴミを煮込んでいるのかい。
それも最高級のワインで。
いけにえのカモシカと一緒に。
半生で味見しろってか。
スープだけで勘弁しちくり。

ねぇ、フランケン。
難しい論文を切り貼りしたお前の顔は、下手くそな福笑いよりもケッサクさ。
張りぼてのお腹がパタパタとはためいて、微かな風が吹く度に漂っているじゃないか。


□■■ Jul. 15th

日々、命を賭けている戦士が、
戦争ごっこの子供達におもちゃの銃を向けられて、
まさか本気でけんかしたりしないだろう。
「強いのは誰か見せてやる〜〜〜っ」
......なんてね。

オーディションなんていらない。
言い訳ばかりしている奴がいたら、つまみ出せ。
間違いなく、能無しだから。

友を陥れ、盗みを働き、プライドを棄てて尽くしても
お姫様は振り向いてなんかくれない
哀れな顔を鏡でごらん
みんな、見て見ぬ振りをして通るよ
目が合えば、蔑んだような愛想笑いを浮かべるよ

面と向かってはヘイコラする癖に
鞄から色々な武器をくすねては
背後に回って斬りつけようとする
振り向くといつも一目散
相手にする気は無いんだけど
これ以上うるさいと叩きのめすよ
醜い正体を大衆の面前にさらしたいのか?

お星さまにお願いすれば叶うのかい?
それとも、気前のいいおじさんに頼めばいいのかい?
ステキチに会いたい。
元気な姿が見たいんだよ。
緑の中を一緒に散歩したい。
肩を組んで、並んで座りたい。


□■■ Jul. 14th

ボン。
本当は上がっちゃいけないことになっていた廊下で、キャンディか誰かと一緒に遊んでいた時、
一番に旅立つお前の笑顔を最後に撮っておきたくて、カメラを向けた。
私のいる玄関に向かって、嬉しそうにトコトコ歩いて来たお前は、
「笑って!」と言ってシャッターを押した瞬間、二カッ、と口を開け、輝くような表情を見せたね。
現像してみると、近付き過ぎてボケていたので、がっかりしたけれど、
今、改めて見ると、何だか間抜けで面白いよ。
約束の1ヶ月が経ってから送られて来た写真には、
新しい家族と一緒に、あの素晴らしい笑顔を見せているお前が、くっきりと映っている。
それから、更に1月が過ぎた。
うちで過ごした時間の方が、まだ少し長いね。


□■■ Jul. 13th

七光りなら、七だけでもいいから光っとけ。
頭の天辺から足の先まで、どこを切っても素人じゃん。

誰も彼も"アーティスト"。
形成されるのはピラミッドではなく、頂点のない台形。
横へ、横へと伸びて行く。

善良ぶっている人間は嫌い。
人間である限り、善良でなんかいられない。
そんなことにも気付かないおばかさんも、嘘つきも。

あの子は元気だろうか......
私と同じ形の牙を隠していた、
私よりもずっと賢い、あの子は。

いくら君が頑張り屋でも、その足では辿り着けないから、
すまきにして、担いで行くよ。
猿ぐつわを咬ませて、ズタ袋に押し込んで、ハイクしたトラックの荷台に放り上げるよ。
行き倒れにしたくないから。
酸欠に陥りたくなかったら、騒ぐんじゃない。

台風の前の風の中を行く。
髪は乱れ、踊り狂う砂が目に舞い込む。
いてててて......
犬は草と戯れる。
赤いとんぼ達が、立ちはだかるように群れ飛ぶ。
地球はお前達のものじゃない、とでも言うように。
そんなに軟弱で、王者のつもりかい、と嘲笑うように。


□■■ Jul. 8th

キョンは、お散歩に行く時、振り向きながら、後ろを気にして歩いていたんだって。
もう、誰も付いて来ないよ。
チェリーは外に出さないで下さいってお願いしたし、鹿の子ちゃんも、遠くへ行っちゃった。
いつもどこからともなく現れて、
もの凄い勢いで追い越してはリードしてくれていたステキチも、どこにもいない。
今では、まっすぐ前を向いて歩いて行くんだね。
そうだ......
私も、夜空を見なくなった。
ステキチがいるかと窓や扉を開けたついでに、ふと見上げた月。
まるで、おとぎの世界だった。
流れ星も、もう見ない。
みんな、ついでなんだ。
君達がいない景色に、何の価値があるの?


□■■ Jul. 5th

「勝利」とは相手を「負かす」ことではなく、
己を磨き、高めることによってのみ、得られる勲章。
採点者は天。
何も判らない一般大衆でも、有名なだけの審査員でも、業界に長いだけのベテランでもない。

合格したいなら、満点を取ればいい。
カンニングしたり、他人を陥れたりせずに。
ずるをしたって、騙せるのは素人だけ。
輝く未来なんて、転がって来ないよ。


□■■ Jul. 1st

嬉しい夢を見た気がする。
何だっけ?
そうだ。
ステキチがいた。
ほこりひとつ被っていないような綺麗な毛並みで、
とてもスマートに見えたから、すぐには判らなかったが、
背中を見た途端、とてもなつかしく、自然に顔がほころんだ。
「ステキチ......!」
自分の口から洩れた言葉で、それが誰かを知った。
何事も無かったように、うちの玄関に座っていた。
夢だったんだ。
ならば、思い出さなければ良かったのに。
無事を祈っている。
だけど私は、自分の都合のいいようにばかり世界を解釈して常に幸福でいられるような、
おめでたく、無責任な楽観主義者ではない。

クロスケがいなくなって、早寝早起きの週間が崩れている。
夕べは用事があったので、眠りについたのは朝の5時頃だったろうか、
昨日の仕事の処理の為、9時に起きねばならなかった。
体調が優れなかったので、昼過ぎから2時間程、眠った。
目覚めると、リズムの乱れか、風邪気味なのか、目の奥から変な臭いがした。
キョンの散歩に出掛けた。
青々とした田んぼの間、雑草に縁取られたアスファルトの上を行く。
ステキチのいない散歩道。
焦げたような臭いがつきまとう。
夢の焼け跡、失望の臭い。

穏やかな時の流れに心地よく身を任せる。
独りきり。
贅沢で、自由な時間。
きっと、本当の孤独ではないせいだ。

公平な報いを受けられる人は、恵まれている。
苦労の分だけ、実を手に入れられる、誰にも盗まれることなく。
それは、とても幸せなことだ。
気付かないのは、蛇口をひねれば水が出るのを、当たり前だと思っているのに似ている。

一生懸命、歯茎まで見せようとするのは、牙のちっちゃい証拠。
強い奴は、睨むだけで充分。
力というものは、氷山の一角。

© K. JUNO ALL RIGHTS RESERVED.
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