撮影悲話

 

 蝶の撮影を開始してから2年と3カ月。それまでは採集屋だったので、蝶のポイントもかなり知って

いるし、飛んでいる蝶の種名もほぼ瞬時に特定出来るので、採集屋から撮影屋へはスムーズに移行でき

たような気がする。現在蝶のホームページを開設しておられる方は全員、現在もなお採集を続けている

か、つまみ食い程度に採集するか、きっぱりと採集は足を洗うかの違いこそあれ、元採集屋であったこ

とは間違いないと思う。次に鳥。昨年12月に新しいデジカメを購入したのをきっかけに、前々から興

味のあった鳥の撮影にもチャレンジするようになった。元バードウォッチャーならばポイントもわかる

し、種名の特定もたやすいので、もっと楽しいであろうが、私の場合はズブの素人。それでもネットや

書籍等で情報を入手し、初めてのフィールドに行く心境は蝶と同様、ワクワクするものである。

 前置きが長くなったが、いよいよ本題。今年の2月、いつものようにネットで情報を入手し、某所に

出かけた時の話である。「オシドリ」が時々姿を現すという情報をもとに出撃したのであるが、その池

には、カワウ、カルガモ、マガモ、コガモ他普通種ばかりで、「オシドリ」の姿はなかった。仕方なく

付近を探索していた。ジョウビタキ、モズ、シジュウカラ等が間近に見れるポイントでバシバシとシャ

ッターをきっていると、一人のオバサンが近づいてきて、「何を撮影されているのですか」と質問を受

ける。蝶の場合だと、「カメムシ」です。とか「蛾」ですとか言って、極力質問者を遠ざける措置をと

るのだが、鳥の場合、何と言って良いのかわからず、正直に「野鳥の撮影をしています」と答えたとこ

ろ、実は私は「あそこ」の者なんですがと、100bほど先のホテルのような建物を指さす。「あのと

おり窓が大きいものですから、お客様から電話がありまして、ここに来た次第です」。鈍感な私でも瞬

時に判断がついた。○○ホテルに滞在している客が、変な奴が撮影しているとフロントに電話をし、従

業員(オーナー?)が調べに来たという筋書きであろう。「私はご覧のとおり鳥の撮影をしていますが

誤解があったらいけないので、これより先には行かないようにします」と言いつつ、じわじわと撮影の

ふりをして、その場から時間をかけて遠ざかる小心者の私であった。撮影屋の皆さん、撮影時にはまず

周囲を見渡しましょう。でないと、私のようにあらぬ疑いをかけられ、一日中不愉快な気持ちを引きず

ることになりかねませんぞ。 完