方向音痴
私は生まれながらの方向音痴である。新入社員の時、会社近くの文房具屋に事務用品を買いに行き、
会社からたった5分程のお店であったにもかかわらず、帰り道がわからず先輩に電話して迎えに来ても
らったり、人との会話で、「あの交差点を東にまがる」とか「○○駅の4番出口を西に向かう」とか東
西南北で言われると全く理解出来ず、苦労すること屡々である。極めつけは車の運転である。こんな私
でも一応運転免許はもっており、人並みに車を運転したこともある。もう二十数年前のことであるが、
新車を購入し、町内を慣らし運転した時のことである。町内を一周して帰る予定が、何周しても別の所
に出てしまい家には戻れない。7〜8周したところで、信号を左に曲がるところを右に曲がっていた事
に気付き、2時間後にやっと家に戻るという大失態もあった。そんな私が単独で山歩きをしているのが
不思議なくらいである。さすがにマイフィールドは年何十回も訪れているので、こんな私でも道に迷う
ことはないが、最近ついに大失敗をしてしまった。
9月27日に大阪府某所にキマダラモドキの撮影に行った時の出来事である。9月14日にF氏にこ
のポイントを案内していただいた時は、F氏の後を金魚の糞のようについていくだけでよかったので全
く意識をしていなかったのであるが、今回は単独行である。とりあえず入口までは順調に来れた。左の
方に進む事はわかっていたのだが、道が見当たらず、いきなり藪こぎをして、何とかポイントに到着し
た。撮影にも成功し、意気揚々と引き上げるつもりであったのだが、帰り道がわからない。とりあえず
道らしき所をズンズン進んだが、何度チャレンジしても元の所に戻ってしまう。4〜5回も繰り返すと
さすがに不安になってくる。まるで以前の車の時と同じループ状態である。それほど大きい雑木林では
ないので、警察に携帯で電話して助けてもらう事も躊躇われる。その後何回がチャレンジしているうち
に、前回確か一カ所、道ではない草むらを横切った事を思い出す。偶然にも一発でそのポイントを当て
やっと見覚えのある場所に到達する。しかし、ここから出口に通じる道がまたわからない。本当困った
御仁である。幸いな事に、そこでクリ拾いに来ている夫婦連れと遭遇する。「生きて帰れる」真剣にそ
う思った。二人の方に近づき、「すいませんが、出口を教えていただけませんか」と私。奥さんの方が
「この道を5分ほど下っていけば出口に出られますよ」 まじで女神に見えた。喜び勇んでその道を下
ろうとした時、「ところで、お宅どこから入ってきたの」と奥さん。予期しなかった質問に冷や汗が出
る。「それが私にもよくわからないんです」と言い残し、飛ぶように出口へと向かう私であった。 完