京都で二番目に勤めた病院では、約3年間ほど一人医長でした。この病院は、京都市南東部にあり、その当時、京都市内の救急患者の約20%ほどを受け入れていました。NICUは有りませんでしたので、未熟児や胎児異常に関する、産科的救急は受け入れていませんでしたが、子宮外妊娠、卵巣嚢腫茎捻転、卵巣出血など婦人科の救急はかなり多く、毎週のように緊急手術をしていました。住まいも病院から徒歩1分くらいのマンションを用意していただき、非常に便利では有ったのですが、救急車のサイレンが聞こえると気が気ではありませんでした。大抵サイレンの音の後に電話が鳴るのですから。もっとも子供は、救急車が毎日のように見られて喜んでいましたが。
こんな日常でも、つぶれもせず、大きなミスもしなかったのは、看護婦さんを始め周りのスタッフと緊急手術の時に協力していただいた外科の医師たちのおかげです。一人で手術をしろと言われれば、出来ないことも無いわけですが、麻酔医が麻酔をし、手術の助手が一人いる、というのは本当に気持ちが楽なのです。もし何か不測の事態が起きた場合、一人では、麻酔の様子を見ながら、術野で起こっていることも判断し、周りのスタッフに指示を出さなければなりません。それが、術野に専念できれば、それだけ、肩の荷が軽くなると言うものです。どこの病院でもそうでしょうが、夜中でも、婦人科の緊急手術時には外科の当直医が気軽に手伝ってくれたものです。彼らにとっては迷惑だったのかもしれませんが、産婦人科医が一人医長で、ヘルプの産婦人科医の居ない日で有れば仕方有りません。
思うに、日本では、個人の善意に頼っていて、システムとして全体を考えない領域が多いようです。最近、小児科や産婦人科医、麻酔科医の不足、医療事故が話題になっていますが、地域の基幹病院にもっと多くの小児科医や産婦人科医、麻酔科医を集め、報酬もそれなりに与えた上で、救急を一手に引き受けるような体制にしないと、問題は解決しないのでは、と思います。
自分で開業していて、言うのもおかしいですが、もし、全てのお産で赤ちゃんも、母体も安全に、と言うので有れば、全てのお産を総合病院で行うか、せめて、正常分娩だけを小規模な産院で行い、帝王切開となりそうな、あるいは少しでもリスクの有りそうな妊娠、お産は全て総合病院に紹介すると言うような体制にしなければいけないと思います。
(04年2月29日)